[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

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3 恋する2人

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 音が鳴り終わり、ダンスが終わった。
 レティシアとグレンが中央でお辞儀している。これで2人のダンスは終わりだが、レティシアが望めば二度目もあるかもしれない。あるいはグレンが望めば。もしそのようなことになれば、2人の仲は問題ないと言うことにもなる。
 少なくともあの王女の癇癪を見た者は、グレンが次にどう行動するのかをひどく緊張してみていた。
 その視線を受けているグレンが、さっと体の向きを変える。

「ルーラさん」

 どこか心ここに在らずであったルーラは、ミランダに呼びかけられてハッとした。
 気づけば目の前にグレンが立っていた。
 無言で手が差し伸べられる。
 本来ならば、誘いの言葉を言うものだが、グレンは唇を引き結んだままだ。そんな頑なな態度がむしろ好ましく見えて、ルーラはわずかに唇を綻ばせると、そっとその手を取った。
 グレンが二番手に選んでくれたことが嬉しかった。
 他の令嬢たちもわずかにほっとした様子を見せる。

 曲が流れはじめ、ルーラの黄金の髪がふわふわと揺れた。
 中央に躍り出た2人をレティシアが見ている。
 ルーラはその視線を感じながらも、今は何も考えまいと思考を遮断する。そしてそっとグレンの横顔を盗み見た。

「……どうした」

 低い声が、ルーラの耳朶を打った。
 グレンが、視線を合わせることもなく囁いたのだ。顔を見ていることに気づいたのだろうということがわかり、ルーラはわずかに恥ずかしさから頬を染める。

「いいえ。ただ……このように近くにいるのは久しぶりです」

 反応するように、腰に回された腕に力が入ったことがわかった。

「殿下?」
「すまない。忙しくて、手紙も出せなくて」

 本来なら会う必要も、手紙のやり取りだって必要ない。なぜなら2人は婚約者ではないから。けれど、時が来れば婚約することになると、2人とも疑っていなかった。だから親しくしていた。なによりも、2人は幼い頃からの共に育ったも同然。会わないことの方がおかしく感じるほど、距離が近い関係だった。

「仕方ありません。大事な、時期ですから」
「君は、それでいいのか」

 ルーラは黙った。それでいいのか。レティシアと婚約して、会えなくなってもいいのか。そういう意味ならば、よくはない。だが、国として国交を結ぶことを望んでいるのか。と言われれば、そうなれば良いと思っている。
 どう答えればいいのかわからない。

「……すまない」
「え?」
「意地の悪い質問だった」

 グレンは静かに謝った。
 2人のダンスは息があっていて、いつものようにピタリと合わさっている。そして心も。けれど、それは国という大きなしがらみの上では、もろい繋がりだったのだと、ルーラはようやく気づいた。

 ダンスが終わる。
 2人そっと離れる。
 ルーラは微笑んだ。

「ありがとうございました。殿下」

 あらゆる思いを込めて言葉を紡ぐ。
 グレンもまたあらゆる思いを詰め込んだ表情で、ゆっくりと頷いた。


 

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