調布奇伝

左藤 友大

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第六話

あの世へ。そして、あの世から現世へ(1)

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商品祭から一夜明けた今日は、あいにくの曇りで外は暗かった。
翼は辰巳から借りているベッドに寝ていた。昨日は、夜遅くまで商品祭りに来ていたからまだ眠いのであろう。翼の寝ている顔は可愛らしく、いかにも可愛い寝顔をしている小学生という感じだった。翼は朝になってもベッドから降りずそのまま寝続けていた。

一方、辰巳は車の中にいて運転していた。今朝、依頼人から連絡が着てすぐ来て欲しいとの事だった。依頼内容は、幽霊関連の事だった。辰巳は今、調布から銀座に住んでいる人の家へ向かっていた。なぜ、銀座へ向かっているのかって?それは、一ヶ月前に遡る。辰巳の主な仕事は学校教師と妖怪や幽霊を追い出したり、または退治や和解を専門とする第六感者。辰巳もツイッターをやっていて、見えない世界が見える霊能者が活動で人間から依頼が来るのは、調布市だけ。もっと、視野を広げてみてはどうかと翼に言われ、妖怪や幽霊に困っている人だけの専門アカウントを開設したのだ。この新アカウント開設というアイデアを出したのは他でもない。翼だ。最初は、全く反応なしだったが、今月になってからちょくちょくだが依頼する人が出てきた。悪戯でわざと依頼を出す人もいるのでは?と思うが、プロフィール欄に悪戯防止のコメントが書いてあるので大丈夫・・・だと思う。辰巳にとって妖怪や幽霊関連で困っている人専用のアカウントを開設してからまだまだだが、今回で五人目となる。五人目の依頼者は辰巳が向かっている銀座に住んでいる人だ。その銀座に住んでいる依頼人は、どうやらお金持ちのお嬢様らしい。

銀座に着き辰巳が乗っている車が止まった。車から降りた辰巳は呆然としていた。それは、辰巳の目の前に大きな屋敷があったからだ。屋敷の建物は白く2階にはバルコニーが見える。目の前には屋敷と庭を囲む白い壁(へき)があって鉄格子の門があった。壁(へき)には「三木」と書かれたネームプレートが付いている。辰巳は鉄格子の門の隣にインターホンを見つけ押した。ベルが鳴ってしばらくすると、男性の声が聞こえた。
「はい。どちら様でしょうか?」
辰巳はインターホンに向かって名乗った。
「すみせん。私(わたくし)、山崎辰巳と申します。本日、ツイッターでご依頼された三木香(みき かおり)さんに呼ばれ参りました」
「山崎様ですね?お嬢様からお話を伺っております。今、門を開けますので少々お待ちください」
そう言った後、男性はインターホンの通話を切った。お嬢様から話を聞いたという事は、既にインターホンで話した男性に辰巳が来る事を知らせたのだろう。すると、目の前にある鉄格子の門が開いた。辰巳は鉄格子の門を潜り中庭に入った。この三木邸の中庭の広さは大体200坪ぐらいあるだろう。東京にこんな広い庭を持っている屋敷があるとは、正直知らなかった。
辰巳が扉の前に着くとひとりでに扉が開いた。すると、開いた扉から一人の男性の姿が見えた。男性は眼鏡を掛けていて紺色の白い長袖ワイシャツと黒のスーツ用ベストを着て紺色のスーツズボンを履き赤いネクタイを付けていた。そして、高身長であり30代前半に見える。
「遠い所、よくお越しくださいました。私(わたくし)は、三木香様の執事 小俣(おまた)と申します。あなた様のお話はお嬢様からお聞きしております」
辰巳は軽く会釈した後、小俣に訊いた。
「あの、三木さんは?」
「お嬢様はお屋敷の応接間で待っております。応接間まで私(わたくし)がご案内致します」
小俣は空いた片手で差し伸べて中へ入るよう辰巳を誘った。
「ありがとうございます。では、失礼いたします」
辰巳は会釈した後、扉を潜り屋敷の中へ入った。

靴からスリッパを履き替えた辰巳は執事の小俣に案内されながら応接間へ向かっていた。屋敷の中も広く三木邸で働くメイドの姿が見える。この屋敷に住んでいる三木家はかなりの大金持ちだ。三木香の両親は一体、何の仕事をしているのか気になる所だ。
小俣の後を付いて行くと目の前に焦げ茶色の扉があった。
「こちらが、応接間です」
小俣は応接間への扉を開けた。辰巳は開いた扉を潜った。応接間は広く洋風系の置物やレンガで出来た暖炉もあった。そして、その応接間に細い体をしていて白いワンピースが似合う綺麗な女の子が立っていた。
「お待ちしておりました。私(わたくし)は、ツイッターで依頼した三木香と申します。この度は、遠い所お越しいただきありがとうございます」
香は美しい姿勢でお辞儀をした。見た目は女子高生ぐらいの子で年齢は16か17歳ぐらいだ。高校生でありながらしっかりとした言葉を言い辰巳を迎えてくれたので、きっと、両親から厳しい英才教育を受け育ったのであろう。
「山崎辰巳です。本日はご依頼いただきありがとうございます」
辰巳は香に向かってお辞儀をした。
「どうぞ、こちらへお座りください。小俣。山崎さんに紅茶を」
香は応接間にあるソファに座るよう辰巳に勧めると、執事の小俣に辰巳の紅茶を持って来るよう指示した。
「かしこまりました」
小俣は頭を下げ紅茶を作りに応接間を後にした。

少し時間が経って、トレイを持った小俣はソファに座っている辰巳と香の目の前に淹れ立ての紅茶をテーブルの上に置いた。
辰巳は香から依頼内容を聞いた。彼女が出した依頼は、幽霊の正体を突き止めて追い出してほしいとの事だ。幽霊が出始めたのは、今から一ヶ月前の夜。香が自分の部屋で寝ていると1階の広間からピアノが聞こえるという。しかし、そのピアノが聞こえたる時間は夜中の1時だという。夜中にピアノを弾く人は誰もいなく香は一人だけピアノがある広間へ行った。暗い廊下の中、広間への扉を気付かれないよう静かに開けると女の幽霊がピアノを弾いている姿が見えたという。香は驚いて悲鳴を上げるとピアノを弾いていた女の幽霊は咄嗟に逃げて姿を消したとのこと。でも、まだその女の幽霊はピアノを弾く為にこの屋敷に来ているみたいで仕事であまり家に帰って来ない両親は丸っきり女の幽霊がいたのを全く信じない。彼女だけではない。何人かそのピアノの音に気付き見に行き女の幽霊の姿を見たメイドも多い。この恐怖は日に日に続き困っていたそうだ。そこで、ツイッターをやっている香は辰巳が作ったアカウントを見つけ現在に至るという訳になった。それに、女の幽霊が夜な夜な弾いているそのピアノはとても高級なグランドピアノで香がピアノの練習をする時によく使っていると聞く。彼女は幼い頃からピアノを習い数々のコンクールで優勝している最年少の有名なピアニストなのだ。しかし、あの女の幽霊が現れ始めてからピアノのレッスンに手を付けられなく、ここ一ヶ月は全くピアノに手を付けてはいない。それに、あの彼女が使うグランドピアノは呪われているのではと屋敷中、噂になっている。でも、最もヤバいのは、彼女は来月行われる単独ライブを控えているのだ。今まで、単独ライブを成功する為にも練習を積み重ねてきたピアノ弾きが運悪く女の幽霊によって弾けなくなってしまった。その事を聞いた辰巳は何としてでも彼女が安心してピアノが弾けるよう女の幽霊の正体を突き止めなければならない。
「話は分かりました。何とか、女の幽霊を突き止めて見せましょう。その代わりとはなんですが、その女の幽霊が弾いていたピアノを見せてはもらえないでしょうか?」
呪われているのではと噂されているピアノを見たいと辰巳の要望に応えるかのように香は迷わず頷いた。
「はい。私がご案内いたします」

辰巳は香に案内されてグランドピアノが置いてある広間に着いた。広間に置かれているグランドピアノはピカピカで新品同様だった。艶やかな黒色、光に反射するかのような清潔さを持っていた。
「素敵なピアノですね」
香はグランドピアノを見て言った。
「これは、スタインウェイといいまして160年以上続く楽器の金字塔と言われる有名なピアノです。」
「ちょっとだけ聞いた事があります。確か、1千万円ぐらいする有名なピアノなんですよね?」
香は頷いた。
「はい。両親は仕事で忙しい為、あまり私の事をかまってくれません。両親は、私が寂しい思いをさせないようこのスタインウェイを買ってくださったのです」
「でも、夜中の時間に女の幽霊がこのスタインウェイを弾いているせいで、なかなか練習ができないという事ですか」
香は頷いた。その頷いた表情は怖い思いをしたかのような怯える表情をしていた。香は怯えた声で言った。
「来月、単独ライブがあるので積み重ねの練習をしなくちゃいけないのに、女の幽霊が触ったピアノを使ったら、きっと、私は呪われてしまうんじゃないかって思って・・・怖くて・・怖くて・・・。ピアノを売るわけにもいかないし、壊す事もできない・・。だって、このピアノはお父さんとお母さんが私の為に買ってくれた・・・私が寂しい思いをしないよう買ってくれた大切なピアノですもの・・・・・」
震えている香に小俣は優しく支えた。
「お嬢様。お気を確かに」
辰巳は手に顎を乗せピアノを見た。スタインウェイのグランドピアノは蓋をしないで開いたままだ。それと、鍵盤はともかく、本体は黒色なのでもし、女の幽霊が触っていたとしたら〝霊痕〟という幽霊が触った跡がくっきりと残っているはず。それに、香は見えない世界が見えるという事も分かった。それに、一つだけ分かった事がある。このスタインウェイのグランドピアノから霊気とは違う別の気配を感じた。
「香さん。もしかすると、あなたが見た女の幽霊は妖怪の可能性が高いです」
小俣に支えながらも怯えながら暗い表情をしている香は顔を上げた。
「・・・・妖怪・・?」
「このピアノから霊気つまり、幽霊の気配は感じません。感じるのは、妖気という妖怪の気配を感じます」
それを聞いた小俣は辰巳に訊ねた。
「では、そのピアノを弾いていたのは妖怪という事ですか?」
辰巳は頷いた。
「はい。可能性は十分あります。その妖怪の正体を突き止めれば、今回の件は無事に解決します。今日深夜、その妖怪を捕まえてみせましょう。その為にも、準備が必要です。準備ができ次第、またお伺いさせていただきます」
それを聞いた香は元気を取り戻したかのように少し表情が明るくなった。
「・・はい!よろしくお願いします」

夕方になった頃、辰巳は車に乗って銀座まで運転していた。それに、お昼頃に一度、調布へ戻る時、家で留守番している翼にLINEをした。LINEした時は、翼は起きていたので本当は連れて行こうかと思ったが、今日は体調が優れないみたいで留守番する事になったのだ。でも、体調が悪い翼を一人で留守番させるのは心配なので、天神通り商店街にある大衆酒場の店長 大葉に一日だけ翼の面倒を見てはくれないか頼んで承諾してもらった。その後、大正寺にいる高徳和尚から妖怪の身動きを封じる札を受け取り三木邸へ戻っている最中だった。翼は運転をしながら大衆酒場の店長である大葉とスマホを使ったビデオ電話をしていた。
「大葉さん。僕のお願いを聞いてくださって本当にありがとうございます」
辰巳のスマホ画面に大葉の顔が見えた。
「いえいえ。大丈夫ですよ。もし、翼くんの容体に異変がありましたらすぐ連絡します」
「はい。お願いします。」
辰巳はビデオ電話を切った。

夜19時
辰巳は香からのご厚意で夜の食事を頂いていた。辰巳の前に並べられた食事は豪華でどれ見ても高級食品を使った料理が数々あった。これを毎日、広い広間で香はたった一人で食事をしている。辰巳がいるおかげか、久しぶりのお客と食事をするのは、久しぶりで喜んでいる様子も見られる。小俣は辰巳の方へ行きワインのおかわりはいるか訊いた。辰巳はワインをおかわりしてもらい飲んでから油が乗り熱々のステーキをナイフで切りフォークで刺してから食べていた。
そして、夜22時になった頃、辰巳は再び大葉のスマホに電話をした。体調悪くしている翼は大分回復してきて少し楽なったみたいだ。それを聞いた辰巳はホッとした。大葉は辰巳から頼まれた後、翼をおぶって病院へ連れてってもらい処方の薬を飲んだおかげで翼の容体は、無事である事が確認できた。今は、ゆっくり休んで寝ているみたいだ。辰巳は高徳和尚から貰った5枚の動きを止める札を持った。この札で、妖怪の動きを封じ追い出せば今回の依頼は完了になる。

午前24時
夜中になった頃、廊下は暗くなり静かになった。辰巳は一人だけ広間への出入り口である扉前でピアノが聞こえるのを待機していた。扉はちょっとだけ開いていてこれならば、妖怪の正体が見えるしすぐに動きを封じる札を投げかける事ができる。辰巳はちょっとだけ開いた扉の隙間を覗きながら動きを封じる札を握って待機していた。

午前1時
辰巳はちょっとだけ開いた扉の隙間を覗き続けていた。まだかまだかと思うと左からスーッと女の幽霊が現れた。広間の左側は、確か庭へ出られる窓があった。女の幽霊は誰にも気づかれず妖術で窓の鍵を開けて入ったに違いない。そして、女の幽霊はスタインウェイのピアノへ近付いた後、音を鳴らした。女の幽霊がピアノの音を鳴らし続けている瞬間、辰巳は勢いよく扉を開けた。勢いのある扉が開く音を聞いたのか、女の幽霊はピアノの音を鳴らすのを止め、一瞬だけビクッとした。辰巳は女の幽霊の隣まで行き動きを封じる札を勢いよく投げた。すると、動きを封じる札は女の幽霊に張り付き女の幽霊は身動きが取れない状態になった。そして、後ろから辰巳を呼ぶ声が聞こえた。
「山崎さん!」
香の声だ。
「香さん!広間の電気を点けてください」
香は慌てて広間の電気を点けた。広間の電気は光だし辺りが見える。電気をつけた後、香と小俣、ピアノの音で聞こえたメイド達も辰巳の方へ駆けつけてきた。電気を点けた途端、女の幽霊の正体が分かった。顔は黒く塗りつぶされてはいるが目があり、長い髪に白装束(しろしょうぞく)を着て足がない女。
「お前の仕業だったんだな。後神(うしろがみ)」
「後神?」
小俣は動きが止まっている後神を見て訊いた。
「後神は、ただ人間の後ろに付いて行くだけの妖怪なんです」
辰巳は後神に問いただした。
「後神。お前はあまり人間に危害を加えない大人しい妖怪のはず。なぜ、夜中に三木さんのピアノを弾いていたんだ?」
身動きが取れない後神は弱々しい声で言った。
「弾いてみたかったの・・・・・」
「弾いてみたかった?」
「一ヶ月前のあの日の昼、あたしは散歩をしていた時、どこからか美しい音が聞こえたの。その音を辿って行くとそこには、このピアノを弾く香ちゃんの姿が見えたの。あたしは、窓でこのピアノを弾く香ちゃんを見て一目惚れしちゃって・・・。あたしも香ちゃんみたに上手くピアノが弾けたらなぁって思って・・・夜中、寝静まった所でこのピアノを弾いていたの。でも、その子みたいに上手く弾けなかったから、指一本だけで「猫ふんじゃった」を引く練習をしていたの・・・・・」
その理由を聞いて後神は決して悪気があった訳ではない事に理解した。
「訳は分かった。でも、お前のせいでその憧れている人である三木さんと屋敷にいるメイドさん達は驚きしまいには、そのピアノは呪われているっていう噂が屋敷中に広まったんだぞ。それだけじゃない。お前が夜中にピアノを弾いていたせいで、三木さんは、来月に控えている単独ライブの練習があまりできなくて困っていたんだぞ」
それを聞き後神は悲しそうな目をした。
「そんな・・・。あたし、本当に弾いてみたかったの・・・。決して、悪気はなかったの・・。香ちゃんみたいに上手になりたかった・・。でも、こんなあたしの姿を見たら香ちゃんが怖がってしまうし、友達にもなれないって分かってたの・・。でも、諦めきれなかった・・。本当に上手に弾けるようなりたかっただけなの・・・・。驚かしたり香ちゃんの練習を邪魔したくてやったんじゃないのよ・・・・・・・。ただ、香ちゃんみたいに上手に弾いてみたかっただけ・・・・。それだけなのよぉ~・・・・・・」
後神は自分がして来た事は、間違っていると自覚をしたものの上手になりたいという執念が強く毎日、夜中のピアノの練習をし続けていた。別に後神は香達を驚かして怖がらせるつまりには何一つもなかった。でも、いきなり誰もいない広間でピアノの音が聞こえたら誰もが気味悪がる。顔は黒くて目だけしか見えないのでどんな表情をしているのか見ても分からないが声だけは分かる。後神の声は本当に弱々しく今でも泣きそうな声だった。
これで、今回の依頼は完了した。でも、大人しい後神を乱暴に扱いながら強く追い出す事はできない。すると、香が身動きが取れない後神に話しかけた。
「そんなに、ピアノを上手に弾きたいの?」
「うん・・・・」
後神は悲しげな声を出して答えた。
「だったら、私が「猫ふんじゃった」の弾き方を教えてあげましょうか?」
それを聞いた後神と辰巳達は反応した。
「お嬢様・・!正気でございますか⁈この妖怪は、お嬢様と私達を恐怖へと陥れたのですよ⁈」
「いいの。小俣。山崎さんが言っていたでしょ?あまり人間に危害を加えない大人しい妖怪だって。だったら、後神さんは悪い妖怪じゃないよ。ですよね?」
香は辰巳の方を見て訊かれたので頷いた。
「一人で練習するのもいいけど、一緒にやった方が楽しいと思うの」
後神は気遣うような声で言った。
「でも、来月は香ちゃんのソロコンサートがあるんでしょ?あたしのせいで一ヶ月間、練習できなかったから遅れを取り戻さなくちゃいけないんじゃ?」
香は笑った。
「大丈夫よ。来月まで時間あるし、こう見えて本番には強いの。時々でいいから遊びに来て。遊びに来たついでに曲の弾き方を教えてあげる」
「本当に・・・いいの・・・?」
「うん!」
香は笑った。彼女の笑顔とさっきの言葉を聞いて後神は申し訳なかったと思いながらも感謝の気持ちがいっぱいで涙が出た。
「・・・・・ありがとう。・・・それと・・怖がらせて・・本当にごめんなさい・・・。ごめんなさい・・。ありがとう・・・・。」
香が後神にピアノを教えるという言葉を聞いた時は、小俣とメイド達は驚いたが、香が決めた事なので仕方がないと思いながら笑みを浮かべていた。辰巳は香と涙を流している後神の話を聞いた後、後神に付いている動きを封じる札を剥がしてやった。良いムードになっていた途端、辰巳のズボンの尻ポケットからバイブ音が鳴った。辰巳は尻ポケットからスマホを取り出した。スマホ画面には「大葉さん」と書かれた文字が映っていた。辰巳は香達から離れ電話に出た。
「こんばんは、大葉さん。こんな夜中にどうしたんですか?」
辰巳は大葉の話を聞いた。すると、辰巳は驚いた顔をした。
「えっ⁈翼くんが⁉・・・・はい。・・・・・はい。・・・・・・分かりました!すぐ行きます!」
辰巳は慌てて電話の通話を切って香達の方へ向かった。
「香さん。せっかく、お部屋をご用意してくださったのに本当に申し訳ありませんが、ここで失礼させていただきます」
「どうかされたんですか?」
香は焦っている辰巳を見て訊いた。
「急用が入りまして、すぐ調布へ戻らなければいけないんです」
「そうなんですか。あっ、まだお礼が。」
「お礼は結構です。では、失礼いたします!」
辰巳は香と小俣達に頭を下げた後、急いで2階にある荷物を取りに行った。
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