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「ふむ。人間とは難儀だ。好きに理由がいるのか?」
「え?」
「……そうだな。あの時は、風に導かれるまま空中散歩をしていた。その時、偶々ぷりぷり怒っているお前を見かけた。観光地で一人怒っている奴に興味が沸いて後をつけた。観察を続けていると時折寂しそうな顔をしていた。なぜそんな顔をしているのか気になっていたがこの国の風景を見ている時だった。お前が笑ったのだよ。ふいに見せたその笑顔に私は惹かれたのは確かだ」
そ、そんな所を見られていたなんて――恥ずかしい。
「『理由もなく好き』というのはありえるとは思うが。敢えて理由を挙げるならそれが惹かれたきっかけだろう。ただそれはきっかけだ。今は……そうだな、例えば私は晴れた日の暖かい風が好きだ。心地良いからだ。たぶんそんな感じだろう。私は風芽といると心地良いのだ。それではダメだろうか?」
「……ダメ、じゃない」
ヴィフレアの淡々とした口調に拍子抜けした。
……十歳代なら自分はきっとこんな質問をしなかっただろう。『理由もなく好き』と素直に自分を捉え認めていた気がする。人間は大人になればなるほどつい理由を求めてしまう。
「私は風芽が好きなのだ。それでいいではないか。それよりも二人の将来の方がたいせつだ。そうであろう?」
綺麗な低温ボイスで応えながらアイスグリーン色の瞳を細め、とびきりの微笑を向けてくる。どうやら僕は超絶美形の笑顔に弱いらしい。気付けば「……そうだね」と頷いていた。
そうして、僕とヴィフレアはめでたくラブラブ生活を送る事になった。
【一章 結】
「え?」
「……そうだな。あの時は、風に導かれるまま空中散歩をしていた。その時、偶々ぷりぷり怒っているお前を見かけた。観光地で一人怒っている奴に興味が沸いて後をつけた。観察を続けていると時折寂しそうな顔をしていた。なぜそんな顔をしているのか気になっていたがこの国の風景を見ている時だった。お前が笑ったのだよ。ふいに見せたその笑顔に私は惹かれたのは確かだ」
そ、そんな所を見られていたなんて――恥ずかしい。
「『理由もなく好き』というのはありえるとは思うが。敢えて理由を挙げるならそれが惹かれたきっかけだろう。ただそれはきっかけだ。今は……そうだな、例えば私は晴れた日の暖かい風が好きだ。心地良いからだ。たぶんそんな感じだろう。私は風芽といると心地良いのだ。それではダメだろうか?」
「……ダメ、じゃない」
ヴィフレアの淡々とした口調に拍子抜けした。
……十歳代なら自分はきっとこんな質問をしなかっただろう。『理由もなく好き』と素直に自分を捉え認めていた気がする。人間は大人になればなるほどつい理由を求めてしまう。
「私は風芽が好きなのだ。それでいいではないか。それよりも二人の将来の方がたいせつだ。そうであろう?」
綺麗な低温ボイスで応えながらアイスグリーン色の瞳を細め、とびきりの微笑を向けてくる。どうやら僕は超絶美形の笑顔に弱いらしい。気付けば「……そうだね」と頷いていた。
そうして、僕とヴィフレアはめでたくラブラブ生活を送る事になった。
【一章 結】
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