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 ……楽しいが、つらい。

 なんで、って? 男性諸君ならわかってくれると思う。
 キャンプ場入口で半勃はんだちしていたものを大人として何とか抑えて今に至るが実はずっとそわそわしていたのだ。自分が興奮している事を悟られないために、普段通り落ち着いてお茶の解説しちゃったりして平静を装っている。
 本当は、客室に通され仲居の姿が見えなくなった途端にヴィフレアとヤリ始めたかったと思っていたなんて、ヴィフレアも気付いてないだろう。

 ……ヴィフレアはヤリ…たくないのかな?

 そうっと彼を覗き見る。股間は膨らんでいるようには見えない。

 ……性的興奮より知的好奇心のほうがまさっているのかもしれない。

「そっちは何だ?」と声をかけられる。

 ヴィフレアが目線で指している方を向く。広縁こうえんの中央には椅子とテーブルが置かれているが、そのそば……客室の角の位置する辺りには格子窓の付いた木製の引き戸がある。

半露天風呂はんろてんぶろの出入り口だよ」
「半露天風呂?」

 キラキラオーラがだだ漏れてしまうヴィフレアに向けられる視線を気にせず温泉を味わってもらおうと半露天風呂が付いた客室を予約していた。部屋にあるほうがいつでも、より温泉を身近に感じられると考えた。

「半露天風呂というのは野外にある露天風呂の上に屋根があったり壁があったり雨とかの日でも露天風呂に入りながら景色を眺められる、そんな露天風呂のことだよ」

 ……旅館を予約する時に調べた知識を、これまた披露する。

「露天風呂と温泉は同じなのか?」
「違うよ。露天風呂は人工物で温泉は自然によって作られた物だよ」
「じゃあ、この部屋には温泉はないのか?」
「ああ、そうか。ゴメン。僕の説明が悪かったね…」

 これまで何も考えず温泉の話をしていたと気付く。僕は『温泉はこういうもの』という日本人由来の固定概念で説明をしてしまった節があると反省した。人によって共通認識は違う。ましてや亜人族であれば、なお更だろう。

「前に、『温泉は温かいいずみ』って話したと思うけど簡単に言えば、この部屋には、その温泉からお湯だけを引いて手軽に入れるようにした風呂が設置されているってことだよ」
「ふむ。では、私はこの部屋で『温泉』に入れるのだな?」
「うん」
「それは良かった。では、入ろう」
「え?」
「ん? どうした?」
「や……っ」

 ……夕食が運ばれてくるんだけど。まあ、チェックインの時に『遅めに』と言って『二十時頃』という話になったから…それまでには間に合うか。

 ヴィフレアを促す。

「……ううん、大丈夫。入ろう」
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