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プロローグ
その2 鍵なし森
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カイの「仕事」は鉱物師というものに類していた。
依頼主の希望に添う石を採掘し報酬を得る。稀少石であればある程、その報酬も高額になるが、その分探索も難しい。
ただし、彼の場合は色々と特殊ではあった。
特定の組織に属さず依頼人と契約を結ぶ、いわゆる「不法鉱物師」。
同業者組合に未登録なのには理由があった。カイが扱う鉱物自体が、禁止法に触れるのである。当然、正規の許可証などいただける筈もない。
10数年前、この鉱物の地層を狙った盗賊が少数民族の村を侵略した。
しかし何故か、賊の輩は一人残らず鉱物を手にする事なく全滅してしまったという。
少数民族の長は、ある種の毒を生成するらしいこの鉱物を「オルトクシオス」と呼んだ。古い言葉で「正しい剣」という意を持つ。
オルトクシオスには、民族が長きにわたり語り伝える昔話があった。
何人たりともその地層に近づいたり触れたりしてはならないという厳しい禁忌の伝承である。この禁を侵せば死が降りかかる。盗賊の全滅によって伝承の信憑性が確たるものとなった。
しかしオルトクシオスは、その後も他所の地層に発見され採掘され続けた。
その度に不審死は続出し、ついにこの鉱物は{危険鉱物}に指定される事となった。
法に基づき政府の管理下に置かれ、幾人もの命を啜ったオルトクシオスもようやく永遠の眠りに着くかに思われた。
ところが近年、密偵によりスー・テラン(地下社会の意)での売買が再開されたという報告が入った。
蒐集家だけでなく研究者や医師などといった「肩書き」を持つ立場の人間までもが、その利用価値と稀少さ故に高値をつけて求める事を止めない。
しかし誰が「死」を呼ぶ鉱物を流通させているのか。
一体どんな人物が、生きてその石を持ち帰り、地下組織の大物相手に商談しているのか。
致死の鉱物に触れて落命しない者達。
どんな人物なのか、政府機関が躍起になって調査するも未だ特定は出来ていない。
そのうちの一人、カイ・フォルスは、たった今「毒」の地層の前に立っていた。
依頼主の希望に添う石を採掘し報酬を得る。稀少石であればある程、その報酬も高額になるが、その分探索も難しい。
ただし、彼の場合は色々と特殊ではあった。
特定の組織に属さず依頼人と契約を結ぶ、いわゆる「不法鉱物師」。
同業者組合に未登録なのには理由があった。カイが扱う鉱物自体が、禁止法に触れるのである。当然、正規の許可証などいただける筈もない。
10数年前、この鉱物の地層を狙った盗賊が少数民族の村を侵略した。
しかし何故か、賊の輩は一人残らず鉱物を手にする事なく全滅してしまったという。
少数民族の長は、ある種の毒を生成するらしいこの鉱物を「オルトクシオス」と呼んだ。古い言葉で「正しい剣」という意を持つ。
オルトクシオスには、民族が長きにわたり語り伝える昔話があった。
何人たりともその地層に近づいたり触れたりしてはならないという厳しい禁忌の伝承である。この禁を侵せば死が降りかかる。盗賊の全滅によって伝承の信憑性が確たるものとなった。
しかしオルトクシオスは、その後も他所の地層に発見され採掘され続けた。
その度に不審死は続出し、ついにこの鉱物は{危険鉱物}に指定される事となった。
法に基づき政府の管理下に置かれ、幾人もの命を啜ったオルトクシオスもようやく永遠の眠りに着くかに思われた。
ところが近年、密偵によりスー・テラン(地下社会の意)での売買が再開されたという報告が入った。
蒐集家だけでなく研究者や医師などといった「肩書き」を持つ立場の人間までもが、その利用価値と稀少さ故に高値をつけて求める事を止めない。
しかし誰が「死」を呼ぶ鉱物を流通させているのか。
一体どんな人物が、生きてその石を持ち帰り、地下組織の大物相手に商談しているのか。
致死の鉱物に触れて落命しない者達。
どんな人物なのか、政府機関が躍起になって調査するも未だ特定は出来ていない。
そのうちの一人、カイ・フォルスは、たった今「毒」の地層の前に立っていた。
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