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2学期スタート!

2学期スタート!①

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 2学期……学校生活の中でも最高と呼び名の高い、夏休みの後にやってくる悪魔。
 そんなことはないだって?確かに、人によっては「文化祭や体育祭があるから楽しみ」という風に思うかもしれないが、あれはリア充たちのイベントである。残念ながら俺には出番がない……
 まあ、大きな学校行事なので俺も楽しみにしているが、大きな問題は文化祭と体育祭が終わった後である。2学期は長いのだ……イベントが終わった後に待っている日頃の授業のキツさといったらない。
 とにもかくにも、2学期は悪魔だ!ここは譲らないぞ!!!
 などと、俺が考えながら机に突っ伏していると、誰かが俺の肩をとんとんと叩いてきた。

「夏休みはまだ終わってないんだ……話なら後にしてくれ~」
「何言ってるんだよ飛翔、今日から2学期だぜ!待ちに待った2学期だぜ!」

 俺の肩を叩いていたのは、野球部の練習だろう、すっかり肌が黒くなってしまった山なんとか君こと山ピーだった。

「いや、2学期は悪魔だ」
「なんだそりゃ?」
「たぶん飛翔君はまだ寝起きだから、機嫌が悪いんだよ~」

 俺と山ピーが話していると、近くで俺たちの話を聞いていたのか由依が入ってきた。由依と言えば、夏休みに大魔王と付き合って以来、最強のリア充への道……リア道をまっしぐらに進んでいる。

「べ、別に寝起きじゃないから」
「でも、さっきのホームルームの時間爆睡してなかった?」
「確かに!飛翔完全に死んでたもんな!」

 山ピーと由依がアハハと笑っている。確かに、さっきのホームルームは爆睡していたというか、あったことすら覚えていないほど寝ていた気もするが、夏休み明けだしそんなにおかしいことか?と二人に視線で問うと

「いくらなんでも寝過ぎでしょ!」
「飛翔は生活リズムを改めたほうがいいね」
「くっ、そんなはずは……」

 俺以外にも、夏休みのダメ生活が足を引っ張ている人がいるはずと、辺りを見回してみるが……誰も俺みたいにだらけているやつなんていなかった。てか、なんか皆元気だな。

「こんなにうちのクラスってうるさかったっけ?」
「みんな夏休み色々あっただろうからね~。たぶん思い出話とかしてるんだよ~」
「由依の言うとおりだな~。それに、みんな文化祭が近いからテンションが高いんだと思うぜ~」

 言われてみると、そうかもしれない。その証拠に、夏休みの間に何があったか知らないがかなり見た目が変わった人も何人かいる。俺も少しくらいイメチェンすればよかった……
 ちなみに、うちの高校は「暑いときに運動なんてしたくない」なんていうことを思った人物が生徒会にいたらしく、その人の努力によって去年から体育祭は、涼しい11月に行われるようになり、先に文化祭をすることになっている。人間、本気を出せばなんでも出来るなぁって思うよ。

「お~い、全員席につけ~帰りの会始めるぞ~」

 すると、担任の太田が教室に入ってきた。
 太田の声で、みんな自分の席につく。太田を見るのは今日2度目だが、やはりすごい。何がすごいって、太田が一番日焼けしている。……野球部の山ピーよりも黒いって、どんだけ遊んだんだよこの教師?……


 俺が、太田の日焼けの原因を色々と考察しているとあっという間に帰りの会も終わり、放課後になった。
 由依と昴は、一緒に買い物に行くらしく先に帰ってしまい、山ピーは部活に行ってしまった。
 俺の方はというと、特段やることもないので家に帰って、昨日買ったマンガを読むことにした。
 鞄に荷物を詰め、いざ帰らん!と教室の扉を開けると、丁度教室に入ろうとした人がいたらしく、軽くぶつかってしまった。

「おっと、ごめん。ちゃんと前見てなかったわ」
「いえいえ、こちらこそ急いでいてすみま……って飛翔さんじゃないですか~」

 意外なことにぶつかってしまった人物は、栞だった。意外なというのも栞は大体図書館か自分の教室にいるので、なかなか学校で逢うことはない。……栞がうちのクラスに来るなんて珍しいな。由依か昴に用でもあるのかな?……

「悪いな栞、由依と昴は買い物に行くとか言ってもう帰ったぞ」

 俺は空気を読んで栞にそう教えてあげたのだが、何故か栞は首を傾げている。もしかしたら、別の人に用があるのかもしれない。

「う~ん、うちのクラスのやつらほとんど帰ったから、栞が用事あるやつも帰ってるかもなぁ。急ぎじゃないんだったら明日にした方がいいんじゃないか?」
「(飛翔さんは、私の考えを読んでるようで全然読んでないですね)」
「えっと、私は飛翔さんに用があるんですけど……」
「そうなのか?まあいいや。で、何の用なんだ?」

 俺の悪口を呟かれたような気もするが、栞はただの変態さんだから多分悪口なんて言ってないだろう。それにしても、俺に用があるなら始めからそう言ってくれればよかったのに。 
 そして、栞は珍しく真顔になると、静かに薄い桜色をした唇を動かした。



「飛翔さん、私も人生相談してもらっていいですか?」

  
 


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