こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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2学期スタート!

2学期スタート!②

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「それで、相談って何なんだ?」

 栞に人生相談をしたいと言われて、俺と栞は、何かとお世話になっているいつものファミレスに来ていた。ここのところお世話になりすぎて、バイトの人に顔を覚えられていそうなまである。きっと今頃厨房で

「あいつらまた来たんだけど~www」
「しかも、今日もまたハンバーグ頼んでるよ(笑)」
「まじかよ~www」

 ……なんて会話が繰り広げられているに違いない。ちょっと待ってくれよ!ハンバーグ美味しいだろ?しかもセットを頼めば、スープバーが付くんだぜ。お得じゃん!
 まあ、そんなことはどうでもいいというか、厨房でそんな会話が繰り広げられているはずがない。……たぶん
 とにもかくにも、栞が人生相談したいというので、ファミレスにやって来たのだが肝心の栞が中々話を始めないのだ。普段の奇行っぷりからは想像もつかない真面目な顔をして、ウ~ンウ~ンと唸っている。この様子を見るに、栞は本当に何か悩みを抱えているようだ。しかも中々言い出せないということは、かなり大きな悩みなのかもしれない。
……変態も悩むことがあるんだなぁ……俺は、少しだけ感心しながら、栞が話始めるのを待っていた。
 そして、決心がついたのかようやく栞が口を開いた。

「実は、わたし……文化委員長に推薦されちゃったんですけど、どうしたらいいと思います?」
「文化委員長って、文化祭のリーダー的なあれか?確か文化祭実行委員長みたいな名前だったか」
「確か、そんな感じでしたね~」

 なぜ変態が推薦されるんだ?と一瞬思ったが、案外栞は推薦されてもおかしくないのかもしれない。
 栞は、変態の中のキングみたいなレベルなので(俺の勝手な予想)中身がどうしようもないほど残念なのだが、その代わりというか見た目がとにかく可愛い(俺の勝手な判断)。それに、栞は図書館でよく本を読むので、つまるところそういう姿を誰かに目撃されたのだろう。俺も何度か栞と図書館で会ったのだが、読書をしている姿は、それはもう絵になるというか、お前はもう喋らないほうがいいぞ?と言いたくなるほどだ。
 まあ、栞が変態ということを知らない人からすれば、文化委員長にうってつけなのかもしれない。一応、栞はまだ一年生だから実際にやるということは無いと思うけど……

「それで、どうしたらいいかって……立候補するかどうかってことか?」
「そうなんですよ~!わたしは、あまり人前に立つの好きじゃないというか、苦手なんで立候補なんてしたくないんですけど……何故か、わたしが文化委員長に立候補するみたいな噂が広がってて、皆が似合ってるとか、頑張ってねって言って応援してくるから、どんどん断りにくい状況になってて……」
「なるほどなぁ」
「本当、どうしよう……」

 これは、案外栞が立候補したら本当に文化委員長になってしまうかもしれない。一年で噂になっているということは、すぐに、2、3年生まで噂は広がるだろう。そうなると、他に立候補する人も減るかもしれないし、変態ということを除けば、栞はかなり文化委員長っぽい気もするので不信任なんてことも無いだろう。つまり、文化委員長に立候補するかどうかで文化委員長になるかならないかが決まると言っても過言ではない。

「なあ、栞は文化委員長やる気はないのか?その、他の奴がどうこう言ってるのは関係なく」
「う~ん……分かんないかも。飛翔さんは、わたしが文化委員長するとしたらどう思います?」
「ん?俺か?……俺は、栞が文化委員長したら楽しい文化祭になりそうだからちょっといいかもって思うな。ほら、プチ夏祭りの時も昴が言い出したらしいけど、ほとんどの計画を進めたのって栞だろ?だからちゃんとした文化祭が出来そうだし、栞は変態だからちょっと変わった文化祭になるかなぁってさ、あと変態だから妙に決断力というか行動力があるし……まあ、俺的にはけっこう栞が文化委員長になるの賛成かも」

 栞が大きく深呼吸を二回したかと思うと、突然前のめりに立ち上がってきて、危うく顔面がぶつかるところだった。栞の顔が近づいてきたのでドキリとしたことは、何とかバレなかったっぽい。

「参考になりました!わたし……文化委員長に立候補してみます!」
「おいおい、俺が言うのもなんだが、そんな急に決めていいのか?もう少し考えた方が……」
「まあ、その~……飛翔さんがそこまで言ってくれるなら頑張ってもいいかなぁと思いまして、あっ!あと、わたしは変態じゃないですから!」
「いや、お前はどこからどう見ても立派な変態だろ」
「違います!こうなったら絶対に文化委員長になって、飛翔さんには二度とわたしが変態だなんて言えないようにしてやりますから!」

 栞はグッと拳を握り、気合い十分なようだ。……これは本当に、文化祭はかなり面白いものになるかもな……
 俺がそんな風に考えていると、栞が少しだけ真面目な顔になり……

「だから……わたしが頑張るところ、ちゃんと見てて下さいね?」

 栞はそう言うと、冗談目かして笑いながら指切りをしてくるが、俺の方はというと、今の栞の、普段見ないような表情を見てしまったせいで、直接、栞の顔を見れなくなっていた。……ちょっと待ってくれ、栞ってこんなに可愛かったか?いや、見た目はいいけど変態だし。けど、今のはちょっと反則だろ……

「飛翔さん?」

 栞が心配そうに顔を下から覗かせてくる。今そんな上目遣いで見られたらおかしくなりそうだ。俺は、慌てて目をそらしながら何とか栞と指切りをした。

「いやいや、何もないから。約束な」
「はい!わたし頑張りますよ~!ちゃんと頑張ったらご褒美下さいね~」
「まあ、それくらいはいいけどな……」
「やりましたね~!これで、飛翔さん家に嫁げます!」
「何で嫁ぐことになってんだよ!!!やっぱり今の無し!」
「え~!男に二言は無いんじゃないんですか~?」
「いやいや、さっきの俺は、栞が考える褒美のヤバさを考えれてなかったからな。そんなのチャラチャラ!」
「もう~!」

 少しくらいは、こいつが頑張るところ見てやるつもりだったが何だか悩む。本当に、栞が頑張ったらご褒美として、何を要求されるか分かったもんじゃない。
 
「わかったよ……ご褒美はやるから。けど何をやるかは俺が考えるからな~」
「そ、そんな~」
 
 栞は、本当に残念がってるのかよく分からないがそう言って、机に突っ伏している。やっぱり栞は、変態だと思う。


 このあとは、栞の相談も終わったしやることもないので、由依のリア道の進みかたがヤバいことや、昴が最近起こした珍騒動のことなどを話して解散した。
 ちなみに、あのときの栞の表情を思い出してしまい、ハンバーグを喉に詰まらせたり帰り道で栞に「顔赤いですよ~?かぜですか~?」とか言われてしまったが何とか誤魔化せたのでよしとしよう。
 


 
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