こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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2学期スタート!

2学期スタート!③

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「やっぱりパーっとした方がいいよね。……って飛翔?ねえ飛翔聞いてる?」
「ああ、ごめん……何の話だっけ?」
「だから、栞が文化委員長になったからお祝いのパーティーしようって話!」
「まあ、やったらいいんじゃないか?」
「もう~!今は会場をどこにするかって話でしょう?飛翔君は何だかいつにもましてボーっとしてるし……」
「わりいわりい。ちょっと考え事をな……」

 栞の人生相談みたいなものから、はや一週間。あれから文化委員長の選挙があったのだが、栞以外に立候補者がいなかったこともあり、本当に栞が文化委員長になった。
 そこで昴が栞のお祝いパーティーをしよう!と言い出し、いつものファミレスに集まった俺と昴と由依の三人(栞にはサプライズでしたいらしく、今日は呼んでいない)なのだが、俺は少し気になることがあってあまり話に集中できていなかった。

「ふ~ん、飛翔君が考え事を……何を考えてたの?」

 由依は、少し心配そうに俺に聞いてきた。由依は案外勘が鋭いから俺の考え事があまりいいことじゃないことに気づいているようだ。最近、大魔王とのラブラブエピソードしか喋らなかった由依とは別人のようである。……本当、誰得なんでしょうね?大魔王が優しかったとか、美味しいスイーツを食べに行ったとか……何か思い出しただけで、腹痛くなってきた……
 それはそうと、考え事の他にもう一つ気になることがある。それは、俺の目の前に座ってる人物なのだが。

「俺の考え事の前に、昴はさっきから何してるんだ?」
「ん?これ?これは、栞から教えてもらったジュースを作ってるんだよ。確か……ピリッと辛くて、ほんの少し甘い青春ジュース」

 ……栞のやつは、昴に何を教えてるんだ?というか、本当にこれジュースなのか?人が口に入れていいような色をしてないし、何かグラスのそこの方にブニョブニョ沈殿物が溜まってるんだけど……

「まあ、何でもいいけど食べ物で遊ぶなよ」
「遊んでないよ。ちゃんと美味しいんだから……もしかして、飛翔も飲みたいの?」
「絶対に飲みたくない!」
「美味しいのに……ゆいゆいは飲む?」
「わ、わたしも遠慮しとく……す、すばるんも止めといた方が」

 俺と由依が立て続けに断ると、由依のありがたい忠告も無視して昴はジュースを一息で飲み干した。

「だ、大丈夫か……?」
「ふん!ちゃんとおいし……ゲフッ!」
「「あっ!」」

 昴が何か言いかけていたが、顔を真っ青にして机に突っ伏したかと思うとそのまま動かなくなった。

「し、死んだのか?」
「いや、いくらすばるんでも流石にジュース飲んだくらいで死なないでしょ?た、たぶん」

 一応、昴の体を揺すってみると反応は無いが息もしていたし、何なら寝てるんじゃね?みたいな感じになったので、昴は放っておいて話を進めることにした。

「それで、何の話してたっけ?」
「えっと、飛翔君の考え事?」
「あっ、それだ!……それで、俺が考えてたことなんだが、最近栞の様子が変じゃないか?」
「変?変態じゃなくて?」

 ……由依にまで変態扱いされているとは、流石は栞だな。

「いや、栞が変態なのは世界不変の真実なんだが……って、そうじゃなくて何か栞の様子が変だったというか……」
「そうなの?わたしはいつも通りに見えたけど……」
「う~ん、俺の考えすぎかな」
「ちょっと文化祭の準備で疲れてるのかな?けっこう忙しそうだし。けど、もし何かあっても栞なら私たちに相談してくれるよ」
「まあ、そうだよな」

 そこで、栞に関する話は終わったのだが、俺の中ではまだモヤモヤしていた。というのも、ついこの間……


『おっ、飛翔!いいとこにいたぜ!』
『うん?ああ、山ピーじゃねえか。どうしたんだ?』
『飛翔にはまだ結果教えてなかったよな。はいこれ!』
『おっ、おお。ってなんだこれ?』
  
 山ピーからよく分からん紙をもらったのだが、結果って何の結果だろうか?

『あれだよ。夏休み前の可愛い子アンケートの結果!飛翔に教えるのすっかり忘れてたからさ~!あと、くれぐれも女子にはバレないようにな!じゃあな~』
『おいちょっとまてよ!……って、全然聞いてくれないなぁ』

 山ピーは、忙しいのか物凄いスピードで何処かへいってしまった。まあ、完全に忘れていたが、アンケートの結果も気になるので紙を開いて見てみた。
 予想外というかなんというか、堂々の一位には栞の名があった……


 ……なんてこともあり、俺は何だかモヤモヤしていたのだ。確かに栞は、見た目(だけ)はいいのだがアンケートをみる限り、みんな栞の中身までみていないというか、見た目だけで勝手に栞に対してイメージを押し付けているというか、文化委員長の噂についても今にして思えば、周りのやつの勝手なイメージの押し付けに思えてしかたがない。……栞は、変態だけど、本当は恥ずかしがり屋で、けど、一生懸命で、友達思いな奴で……
 たぶん、由依も昴も栞の中身まで好きで友達なのだ。けど、他のやつらは栞の見てくれだけで判断しているというか……いや、考えすぎか。
 廊下で栞とすれ違ったときに、あいつが疲れているように見えたからちょっと、心配してるだけだろう。
 それに由依の言うとおり、栞ならもし、何かあっても俺たちに相談するだろうしな……
 今度こそ、俺の中でも栞に関することはけりがついたので、きちんとパーティーについて考える。

「なあ、パーティーなら俺の家でやらないか?」
「いいかも」
「賛成!」

 
 まだ、文化祭が始まったわけでもないのに、俺達三人は、栞の文化委員長就任記念パーティーについて楽しく計画をたてていた。


    
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