死霊使いと精霊姫

五月七日 外

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死霊殺しの少年

死霊殺しの少年②

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「そう、あなたも死者の国 アヴァロンに来てくれる?」

 目の前の女の子は当然のことのようにそう言ってきた。

「この国の外には死霊がウジャウジャいるんだぞ……そんなところを駆け出しの俺が行ったらすぐに死んじまう!」

 ましろが住んでいるクオル大国は大きい国なのだが、他の国との距離が長く他の国に行くためには熟練の死霊殺しが最低でも一人はいないと生きて行くことすら難しい。

「それに、死者の国 アヴァロンってどこら辺なんだ?」
「ずっと北の方」
「想像はしてたけど……やっぱり北かよ……なあ、他の人に頼んだ方がいいと思うぞ」

 クオル大国は比較的南に位置し、北に行けば行くほど強力な死霊が住み着いており当然、北に行ける人物などこの世界にも数えられるほどしかいない。

「でも、あなたも死者の国 アヴァロンに行って会いたい人がいるんじゃないの?」

 女の子は先程ましろが墓参りをしていた墓を見ながらそう言った。

「それは、俺も出来れば死者の国 アヴァロンに行きたいさ……これでも死霊殺しをやってるんだ……ただ、今のレベルじゃ、この国から出ることすら厳しい」

 死霊殺しは最終的に死者の国 アヴァロンに行くことを目的にしてる者が多く、ましろもそのうちの一人ではあるが駆け出しの死霊殺しであるましろにはまだ荷が重い目的である。

「わかった……」

 どうやら女の子は諦めてくれたと思いましろはほっとしていたのだが……

「それじゃあ、どれくらい待てば死者の国 アヴァロンに行けるようになる?」

 今度はそんなことを言ってきた。

「えっと……君はそれでいいの?早く帰らないといけないんじゃないの?」

 ましろは何かおかしいと思いながらそう聞いた。

「別に急がなくてもいいの、わたしたちは長生きだから。それに、あなたはわたしが精霊なのに普通に話してくれるし、不思議な匂いがするから……あなたが立派な死霊殺しになってわたしを死者の国 アヴァロンまで送ってくれるのを待つのも悪くない気がする」

 女の子は少し微笑みながらそう言ってきた。先程までは何処か浮き世離れした雰囲気があったが、笑っている顔は年端もいかない見た目のままの可愛いらしい顔だった。(それにしても不思議な匂いって何だろう?)

「……まあ、あまり期待してくれるなよ。けど、死者の国 アヴァロンに向かえるようになるまでの間は何処で寝泊まりするんだ?」
「あなたの家に決まってるでしょ?」
「それはダメだろ……仕方ないか、俺が立派な死霊殺しになるまではうちの事務所を自由に使っていいから、そこで寝泊まりしてくれ」

 死霊殺しは大きさの違いはあれど、自分の事務所をもっておりそこで依頼を受けたり生霊術スピナリーの研究を行ったりする。
 一応ましろの持っている事務所は小さいが女の子一人が寝泊まりできるくらいのスペースはあるので、そう提案した。

 それからましろと女の子は他愛ない会話をしながら事務所に向かっていたのだが、あと数分で事務所に着くというところで一人の男に声を掛けられた。

「貴様、精霊……だな?」
「がっ!?」

 男がそう聞いた瞬間にましろたちの足元から協力な風が吹き上げてきた。ましろは突然のことに受け身をとることもできずに地面に叩きつけられてしまった。
 ましろはかろうじて意識を持ちこたえさせることができていた。女の子が無事か気になり辺りを見回してみると……

「あなたも死霊殺しね……でも、あの程度の生霊術スピナリーでは、わたしに傷1つ入れられないわよ」

 女の子は何事もなかったかのように言っているが、ましろは彼女の言葉よりも彼女の姿に驚いていた。

「その翼……貴様の生霊術スピナリーはかなりの物だな」

 ましろたちを突然襲いかかってきた男も驚いていた。精霊を名乗っていた女の子……せつなは自らの背中に四つもの翼を生やしていた。

 生霊術スピナリーは先程の男の様に風を起こしたり武器を作ることも可能だが、翼のような有機物……まして、それを自分の体と一体化させるとなると想像もつかない難易度を誇る。

「さすがは、精霊だな」

 ましろは無意識のうちにそう呟いていた。
 男とせつなの戦闘はあっけないものだった。
 男が刀を生霊術スピナリーで生成してせつなに切りかかろうとしたが、いつの間に生成したのか男の足元から軽く十は及ばない槍が突き出し、男の動きを完全に止めたのだった。男もかなりの実力者だろうが、せつなの異常な実力の前ではどうしようもなかった。

「それで、わたしたちを見逃してくれるならあなたを殺さないでいてあげるけど……どうする?」

 せつなは圧倒的優位に立ちながら男にそう聞いた。

「今回はお前の勝ちだ……だが、我々から逃げられると思うなよ」

 男はそう言って、生霊術スピナリーを発動させたのか目の前から消えていた。


「ましろもあれくらいはできるようになってほしい」

 男が姿を消した後、ましろの事務所に着いて部屋の片付けをしているとせつなが突然そんなことを言い出した。

「まあ、がんばるよ」

 (……どれのことだろう?あの男も死霊殺しとしてはかなりの実力者だったのであれくらいの生霊術スピナリーを使えるようになれという意味だと思うが、まさか自分に翼を生やせるくらいの死霊殺しになれと言うのだろうか……)

「ねえ、ましろ……あなたはシングルで死霊殺しをやっているの?」

 片付けが一段落してきたので、お茶をしているとせつながそう聞いてきた。
 一般的に死霊殺しは生霊術スピナリーを使える人間と生霊とでペアを組むことが多い。

 生霊術スピナリー残留思念 オーブと呼ばれるエネルギーの様なものを材料にして行うのだが、残留思念オーブは世界中にあるが生霊は残留思念  オーブを作ることが出来るので生霊術スピナリーを使えることが必要条件となる死霊殺しは自然と生霊とペアを組むことが多くなる。

「俺は、拘りがあるわけじゃないんだけど今はシングルだな」

 駆け出しの死霊殺しはパートナーとなる生霊を見つけることができずにシングルで仕事をすることが多い、ましろもそんな死霊殺しの一人だ。

「それならわたしがパートナーになってあげようか?その方が成長も早いでしょ?」

 せつながいいことを思い付いたようにそう言ってきた。

「まてまて!パートナーは生霊じゃないといけないんだからせつなは……」

 ここまで言ってましろは自分の失言に気づいた。

「そう、わたしは精霊だから生霊なんかより上の存在よ。パートナーとしては申し分ないでしょ?」
「……それはそうかもだけど……」
「普通の生霊とペアを組んでどれくらい技術があがるのかな?」 
「……わかったよ。俺みたいな駆け出しとは釣り合わないかもだけど、よろしく頼むよ」

 ましろはせつなに根負けしてしまい、そう言って手を差し出した。

「ましろがどれくらいわたしに追い付けるか楽しみね」

 せつなは少し意地の悪いことを言ったがきちんと手を差し出してくれた。
 

 こうして本当の目的、死者の国 アヴァロンに行くことにはほど遠いが……そのための第一歩として、人と精霊のペアという世にも珍しい死霊殺しが誕生した。
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