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死霊殺しの少年
死霊殺しの少年①
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「本当にありがとうございました」
「これで、娘も無事に旅たてます」
ある一軒家の前で老夫婦が感謝の意をおよそ思春期すら乗り切れていない少年にこれでもかと伝えていた。
「いえいえ、こちらもこれが仕事ですから。無事にお祓いできて良かったですよ」
老夫婦にお礼を言われていた少年=ましろは見た目の若さに似合わず落ち着いた様子で対応をしていた。
ーーー人は1度死んでしまうと生霊になってしまい、世話になった人への挨拶ややり残したことをやり、最後の時間を大切な人と過ごす。ただし、死んでから1年が経つと記憶が保てなくなり、人々や生霊を襲う死霊になってしまう。ーーー
そんな生霊を死霊になる前にお祓いする仕事=死霊殺しを生業としているましろは、先程の老夫婦の家にも仕事で赴いていたのだった。
(……やっぱり、お祓いは何回やっても慣れないなぁ……)
死霊殺しは生霊術と呼ばれる技術を用いて生霊を死者の国に送り出すのだが、それは生霊と大切な人を別れさせることであり、あまり気持ちのいい仕事ではない。
ましろは気分転換に屋台でアイスを1つと花屋で花束を買い、町で一番大きな墓場に向かった。
「今日も一人お祓いをしてきた。……少しだけお前の気持ちがわかってきたよ」
ましろはある墓の前でそう言った。
その墓はましろ以外にほとんど墓参りに来ないのか砂ぼこりを被っていたので掃除をしてから花を添えてあげた。
「それじゃあ、またくるよ……」
ましろはいつもお祓いをすると墓参りをするようにしている。
(……次に来るときも誰かをお祓いした後だろう……)
そう思いましろは歩き出したのだが、後ろからドサッ!と大きな音がした。
驚いて振り返ってみると、自分がついさっきまで墓参りをしていた墓の前に女の子が倒れていた。
(……いつの間に現れたんだ?)
「おい、大丈夫かあんた!もしかして生霊なのか?」
取り敢えず、その女の子に声を掛けてみたが反応がない。もしかしたら、生霊に成り立てなのかもしれない。
生霊ならばこんなところにいるとすぐに成仏してしまうので早いとこ起こそうとすると
「う……うん?……ここどこ?」
ようやく意識を取り戻した女の子がそう言った。
「ここは、町で一番大きな墓場だよ。それより生霊になったばかりなら早く移動しないと成仏しちまうぞ」
ましろはそう言って、移動しようと思ったのだが女の子に手を掴まれて止まってしまった。
(……どうして生霊なのに実態があるんだ?)
実態の無いはずの生霊に手を掴まれて驚いていると女の子がこう言ってきた。
「わたしは生霊なんかじゃない……精霊よ」
「精霊……?」
聞きなれない言葉にましろが考えていると
「わたしは死者の国から来たの……精霊は昔からこの世界に住んでいた生き物だけど、今は住み家がないから死者の国に住んでいるの」
女の子が説明してくれた。
「そんなばかな……」
彼女の言う精霊は創世記の話であり、その精霊が現代まで生きているなんて……それも死者の国なんかで……
「あなた、死霊殺しなんでしょ?それならわたしを死者の国に連れていってくれない?」
ましろが驚いていると、女の子はそんなお願いをしてきた。
「まってくれ!俺が送れるのは生霊だけで精霊なんてムリだ……そんなことできる死霊殺しなんてこの国にも一人いるかいないかだぞ」
死霊殺しは扱う生霊術によっては精霊をお祓いすることもできるが、そんなことをできる技術なんて古代の死霊殺しくらいしかできない。
ましろは、慌てて女の子に言ったのだが……
「そんなこと知ってる。だから、わたしを死者の国まで連れていって」
女の子はそう言った。
「なあ、もしかして……」
ましろは恐る恐るそう聞いた。すると、女の子は当然のことのようにこう言った。
「そう、あなたも死者の国まで来てくれる?」
「これで、娘も無事に旅たてます」
ある一軒家の前で老夫婦が感謝の意をおよそ思春期すら乗り切れていない少年にこれでもかと伝えていた。
「いえいえ、こちらもこれが仕事ですから。無事にお祓いできて良かったですよ」
老夫婦にお礼を言われていた少年=ましろは見た目の若さに似合わず落ち着いた様子で対応をしていた。
ーーー人は1度死んでしまうと生霊になってしまい、世話になった人への挨拶ややり残したことをやり、最後の時間を大切な人と過ごす。ただし、死んでから1年が経つと記憶が保てなくなり、人々や生霊を襲う死霊になってしまう。ーーー
そんな生霊を死霊になる前にお祓いする仕事=死霊殺しを生業としているましろは、先程の老夫婦の家にも仕事で赴いていたのだった。
(……やっぱり、お祓いは何回やっても慣れないなぁ……)
死霊殺しは生霊術と呼ばれる技術を用いて生霊を死者の国に送り出すのだが、それは生霊と大切な人を別れさせることであり、あまり気持ちのいい仕事ではない。
ましろは気分転換に屋台でアイスを1つと花屋で花束を買い、町で一番大きな墓場に向かった。
「今日も一人お祓いをしてきた。……少しだけお前の気持ちがわかってきたよ」
ましろはある墓の前でそう言った。
その墓はましろ以外にほとんど墓参りに来ないのか砂ぼこりを被っていたので掃除をしてから花を添えてあげた。
「それじゃあ、またくるよ……」
ましろはいつもお祓いをすると墓参りをするようにしている。
(……次に来るときも誰かをお祓いした後だろう……)
そう思いましろは歩き出したのだが、後ろからドサッ!と大きな音がした。
驚いて振り返ってみると、自分がついさっきまで墓参りをしていた墓の前に女の子が倒れていた。
(……いつの間に現れたんだ?)
「おい、大丈夫かあんた!もしかして生霊なのか?」
取り敢えず、その女の子に声を掛けてみたが反応がない。もしかしたら、生霊に成り立てなのかもしれない。
生霊ならばこんなところにいるとすぐに成仏してしまうので早いとこ起こそうとすると
「う……うん?……ここどこ?」
ようやく意識を取り戻した女の子がそう言った。
「ここは、町で一番大きな墓場だよ。それより生霊になったばかりなら早く移動しないと成仏しちまうぞ」
ましろはそう言って、移動しようと思ったのだが女の子に手を掴まれて止まってしまった。
(……どうして生霊なのに実態があるんだ?)
実態の無いはずの生霊に手を掴まれて驚いていると女の子がこう言ってきた。
「わたしは生霊なんかじゃない……精霊よ」
「精霊……?」
聞きなれない言葉にましろが考えていると
「わたしは死者の国から来たの……精霊は昔からこの世界に住んでいた生き物だけど、今は住み家がないから死者の国に住んでいるの」
女の子が説明してくれた。
「そんなばかな……」
彼女の言う精霊は創世記の話であり、その精霊が現代まで生きているなんて……それも死者の国なんかで……
「あなた、死霊殺しなんでしょ?それならわたしを死者の国に連れていってくれない?」
ましろが驚いていると、女の子はそんなお願いをしてきた。
「まってくれ!俺が送れるのは生霊だけで精霊なんてムリだ……そんなことできる死霊殺しなんてこの国にも一人いるかいないかだぞ」
死霊殺しは扱う生霊術によっては精霊をお祓いすることもできるが、そんなことをできる技術なんて古代の死霊殺しくらいしかできない。
ましろは、慌てて女の子に言ったのだが……
「そんなこと知ってる。だから、わたしを死者の国まで連れていって」
女の子はそう言った。
「なあ、もしかして……」
ましろは恐る恐るそう聞いた。すると、女の子は当然のことのようにこう言った。
「そう、あなたも死者の国まで来てくれる?」
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