生徒会庶務のお仕事!

五月七日 外

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生徒会のお仕事Ⅴ

生徒会のお仕事Ⅴ②

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 その日の帰り道。俺は実行委員長なんていう面倒な仕事をしなければいけないことになり、トボトボと歩いていた。

「あはは……やっぱり嫌だった?」

 苦笑いを浮かべながらそんなことを聞いてきたのは久遠さんだった。俺が古海先生から実行委員長の説明を受けているときにも久遠さんは「私も推薦しちゃったし」なんて言って待っていてくれたらしく、一緒に帰っている。
 ちなみに他の生徒会メンバーは遅くなりそうだからという理由で先に帰ってもらっている。

「嫌に決まってるじゃないですか。仕事したくないのに実行委員長って……というか、俺なんかに実行委員長なんてさせてもいいんですか?」
「う~ん、古海先生がヒナに任せたってことは大丈夫なんだと思うよ」

 久遠さんはそう言うが、俺にはどうも古海先生が信用できない。俺が古海先生について知っていることは今のところ、映画を見たくらいでアフリカに行ったり初対面の人間に実行委員長をさせたりと、コイツダメじゃね?というようなことしかない。
 俺は少し気になったので久遠さんに古海先生はどんな人なのか聞いてみた。

「えっと~、生徒のことをよく見てる先生かな?」 
「そう言えば、和泉さんもそんなこと言ってましたね」

 久遠さんと和泉さんが言っていたとなると、古海先生はよく生徒のことを見ているということになるのだが、俺だけ先生の視界には入っていなかったのだろうか。どう考えても俺は実行委員長なんてやっていい人間じゃないと思うんですけどね。……どちらかと言うとしたっぱが似合うとおもうんだよな。つまりは、雑用係くらいが丁度いい。……もしかして、庶務って俺にとって丁度いいんじゃね?
  
「ヒナはさ……いや、やっぱりいいや。古海先生はあんな風だけどしっかりしてるから、ヒナが困ったときは助けてくれるよ」 
「あの、古海先生のせいで俺は今困ってるんですけど?」
「そうなの?私には結構楽しんでるように見えるけど?」
  
 久遠さんはそう言って俺の顔を覗きこんでくる。……楽しむまではないけど、実行委員長ってことは体育祭のルールを変えれるのではないかと考えている。例えば、体育祭を昼からスタートにするとか。…… 
  
「まあ、楽しむまではないですけど、楽をする方法が色々と思い浮かびそうなので考えているところですかね」
「悪いけど体育祭を午後からスタートとか言い出してもダメだからね」

 なぜわかった!?……俺がまさに今考えていたことを言われたので、ズッコケそうになってしまった。

「アハハ、ソンナワケナイジャナイデスカ」
「これ以上ないってくらいカタコトたんだけど?」
「まあ、流石にそこまで考えていないですよ。せめて、全員参加の競技を無くそうと思ってるくらいですよ」

 体育祭には全員参加の競技と選択競技があり、選択競技は希望性で全員出られないのだ。つまり、全員参加の競技さえ無くせば、一つも競技に出なくてすむという無敵のプログラムをつくることができる。

「もう、それもダメだからね!」
「冗談ですよ」
「怪しいなぁ」

 そんなこんなで久遠さんと話していると、久遠さんの家まで着いた。

「相変わらず大きい家ですね」
「確かに大きいんだよね……掃除が大変で」

 そう言う久遠さんの顔はゲンナリしている。家が大きくてもいいことばかりではなさそうだ。

「掃除のときだけ誰か呼べばいいんじゃないですか?そしたら、楽ですよ」
「あはは……呼ばれた人からするとかなり迷惑だけどね。呼ぶとしてもヒナだけにしとくよ」

 久遠さんはそう言ってイタズラっぽく笑う。

「それだけは遠慮しときます」
「冗談だよ!……たぶん」

 最後の一言が怪しかったが、なんとなく久遠さんが誰かを家に呼ぶことは無い気がした。

「それじゃあ、俺は帰りますね」
「送ってくれてありがと。バイバイ」
「はい、それじゃあああ!?」

 急に久遠さんが抱きついてきたものだから、変に声が出てしまった。

「お礼のつもりだったけどヒナには逆効果だったかな?」
「流石に急に抱きつかれると……それよりは、いつものキャラメルの方が好きですよ」

 俺がそう言うと、ようやく久遠さんが離れてくれた。瞬間、フワリと甘い香りがしてドキッとしてしまった。

「はい、キャラメルね……ヒナ大丈夫?顔赤いよ?」
「だ、大丈夫ですよ!それじゃあ」
「あっ、バイバイ」  

 俺はなんだか恥ずかしくなってきたので走って家に帰った。





「はあ~、久遠さんは相変わらず俺の予想の斜め上の行動をしてくる」
  
 疲れたので、家に帰るとすぐにベッドの上で横になった。
 久遠さんは二学期に入ってから俺に変な攻撃をすることが多くなった気がする。……もしや久遠さんは二学期デビューをしたのか!……
 すると、携帯に着信が入った。久遠さんが何か仕掛けてきたのかと思ったが画面を見ると、相手は友達からだった。……そう言えば、今日は試合とか言ってたなぁ……

「はいもしもし?」

 どうせ、優勝した自慢だと思っていたのだが俺の予想に反して携帯から聞こえてくる声はトーンが低かった。

「もしかして、準優勝だったとかですか?」
「それもあるんだけどね……ケガしちゃった」
「え?……えっと、擦り傷とかじゃないですよね」
「うん、ちょっとドジしちゃって……骨折と筋が切れちゃった」
「大ケガじゃないですか!入院ですか?」
「ううん、片足だから松葉杖でって感じだね」

 そして、俺の友人は続けてこう言った。

「体育祭には出られないみたいだから……あーくんには悪いんだけど、私の代わりのブロック長を探してくれないかな」
「え?あれだけやりたがってたのにいいのかよ?」
「仕方ないよ。出られない人がやるよりは出られる人がした方がいいでしょ?」  
「それは……」

 俺には「ブロック長くらいなら出来るよ」なんて無責任なこと言えなかった。体育祭に参加できない人がリーダーだと、どうしても反感を買ってしまう。例えるなら、サッカー経験のない顧問の先生が色々教えても生徒からすれば「やったことないくせに」という風に思われるのと似ている。
 それよりは他の人がリーダーをした方がいい。
 
「よろしくね……」

 そうして、友人との電話は終わった。
 俺の頭のなかでは夏祭りの夜、楽しそうに体育祭のことを話していたリンコ先輩の姿が浮かんでいた。
 
  

 

 




 
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