生徒会庶務のお仕事!

五月七日 外

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生徒会庶務のお仕事!

生徒会庶務のお仕事!⑩

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「ヒナのことが好き!」

 はっきりと聞こえた。

「……かも」

 自信なさげに付け足されたその言葉まで、それはもうはっきりと聞こえた。
 こればっかりは、勘違いしそうだなんてこと言えない。
 いくつもの疑問が頭に浮かぶが、これだけは聞かないとだろう。

「なんで俺?俺よりいい男なんて、この日本に1億三千万人以上もいるのに」
「日本にはそんなに男の人いないよ」
「あっ……えっと、六千万人くらいはいますよ?」
「ふふっ、そういうところかな。普段は面倒くさそうにしたり、すぐ仕事をサボろうとするくせに人が本当に真面目に話してるときは、真面目に聞いてくれるでしょ?それになんだかんだ言ってもヒナは優しいし……そういうところがたぶん好きなのかな。私もよく分からないけど」
「分からないこと多いですね」
「あはは、私もヒナに対する気持ちがなんなのかまだよく分からないの。けど、嫌な気持ちは無いから……」
「それで、好き……ですか」

 嫌いじゃないから好き。
 それはあまりにも単純な考えだが、そういう考え方もありなのだろう。まあ、和泉さんがそういう風に考えていたとは意外だが。
 最近色んなことを考えていたせいか少しだけ和泉さんが羨ましかった。

「ヒナはさ、優木先輩のこと嫌い?」

 どうしてリンコ先輩?と疑問が浮かんだが、そこには触れなかった。

「嫌いじゃないですよ」
「そっか。じゃあ優木先輩のこと好き?」
「……」

 リンコ先輩のことを好きなのか?
 そう聞かれると考えてしまう。
 嫌いなのか?と聞かれたときはそうじゃないと即答出来るのに。
 きっと、この曖昧な状態が俺とリンコ先輩があんなことになった原因の一つなのだろう。
 
「正直、分からないです」
「ほらね?私もヒナと似たような感じ。ヒナのことは嫌いじゃないけど好きなのかって聞かれるとよく分からないの。けど、好きってことにした」
「なんで、ですか?」
「笑わない?」
「まあ、絶対とは言いませんけど。たぶん笑いません」
「そこは絶対に笑わないって言って欲しかったんだけど……その、分からないよりは好きってことにした方がヒナが嬉しいかと思って……」
「それだけ?」
「うん。それだけ」

 なんというか、和泉さんらしかった。
 俺から見れば、和泉さんはけっこう人に意見を合わせるタイプだと思う。
 けれど、別に嫌々相手に合わせる訳ではない。自分がその人の意見でもいいと思ったからそっちに合わせるだけだ。
 言うなれば、和泉さんは他人を大切にしている。
 だから、相手が喜べば自分も嬉しいし、相手が悲しめば自分も悲しくなる。
 だからこそ、俺に対して名前の分からない感情に俺が喜びそうな「好き」という名前をつけた。
 それは誰かからすれば、間違えた答えなのかもしれない。けれど、和泉さんは悩みに悩んで、自分が正しいと思ったそういう答えを出したのだろう。だから、一歩前に進めた。

「和泉さんはすごいですね」
「え、急にどうしたの!?誉められてもサボりの手伝いはしないからね!」
「いやぁ、全然そんな気はなかったんですけど。単純に和泉さんは答えを出せているからすごいなぁと思ったんです」
「まあ、ついさっきだけどね。答えが出たの」

 和泉さんは、どこか恥ずかしそうに小さく笑いながらそう言った。
 それで、すぐに告白をするのだ。案外和泉さんの行動力はとんでもないのかもしれない。

「だから、ヒナもリンコ先輩のことよく考えるように」
「はい」
「それと、告白の返事はまだいいから。ヒナがこれから先私との関係が変わってもいいと思えたら……そのときに教えて。それまでは、いつも通りの先輩と後輩。それ以上でもそれ以下でもない関係のままでいいよ」

 和泉さんはそう言うが、本当はよくないはずだ。それくらいは俺でも分かる。
 けれど、そう言うのは俺が和泉さんとの関係が変わってしまうことを恐れているから。それと、俺のことを信じているからだ。

「本当、和泉さんはすごいですね」
「ありがとう。でも、私が変わったのはヒナのお陰でもあるからね」
「だとしたら、俺も頑張らないとですね」
「うん。頑張れヒナ」

 和泉さんがそう言った後だった。
 ふわりとまるで風にでも流されたかのように和泉さんが俺に近づき、一瞬だけ俺にギュッと抱きついてきた。
 
「今のは私のワガママだから気にしないでね」

 和泉さんは、まるでいたずらが成功した子のような顔をしていた。
 一瞬で俺から離れたのは男性が怖いからなのか、はたまた別の理由なのか……。
 それはよく分からないけれど、いつもの関係に戻るには少しだけ時間がかかりそうだった。
 
「……あんたは久遠さんですか」

 俺の小さなツッコミは、風に飲まれて消えていった。
 

 
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