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死神はじめました。
死神はじめました。①
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「お母さん僕、怖いよ」
「大丈夫よ。絶対に警察が助けに来てくれるからね」
私の隣に座っている女の人は、怖がっている男の子を抱き締めている。
……どうして、こんなことになったのかなぁ……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今から一時間ほど前……
パァン!
私が銀行でお金を引き出していると物凄い音が鳴り響いた。
「俺は、銀行強盗だ!ここにいるやつ全員大人しく俺の言うことを聞け!さもないと銃で打つからな!」
どうやら先程の音は、銃声だったようだ。受付の前に立っている男が銃を天井に向けながら叫んでいる。
その後、強盗犯は、中にいた人全員を人質にとり、係員の女性にお金を鞄の中に積めさせている。
私も人質として捕まり部屋の隅っこに他の人と一緒に座らせられてしまった。
……昨日は、死神に出会っちゃうし今日は、銀行強盗に会っちゃうし運が悪すぎる……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
場面は再び冒頭に戻り……
「おい!これだけしか金がないわけ無いだろ!なにしてるんだ」
「申し訳ないですけどここには、これだけしかお金はありません」
「クソッ!ならATMの中から金を出せ!」
「そう仰られても業者の人じゃないとATMは、開けられなくて……」
「ごちゃごちゃ言ってないで開けろ!死にたいのか?」
女性の係員は、慌てて鍵を取りだしATMを開けようとしているが、手元が震えているのか中々開けられずにいた。
強盗犯は、かなりイライラしているらしく乱暴に椅子を蹴っている。
その音にまた男の子が怯えている。
「大丈夫だよ、お姉ちゃんが止めてくるから」
私は、男の子を安心させるように頭を撫でる。
「そんなことしたらダメよ!あなた見た限り普通の女の子なんだから殺されちゃうわよ……」
男の子のお母さんが、私のことを心配して止めようとしてくるが私なら大丈夫だ。何故なら……
「大丈夫。だって私はまだ死なないから!」
「え?」
そう。私の寿命は残り一年なのだ。つまり、それまでの間に死ぬことは無い……はず。だから、ここで強盗犯に殺される訳がない。
それに、今は強盗犯もATMの方に意識を向けていて背中もガラ空きだから何とか銃を奪えるはず。
私は、そう思い強盗犯にそっと近づいていく。
あと一歩で銃を奪えるというところで、強盗犯がこちらを振り向いた。
「な!?このヤロ!」
「うわあぁ~~!!!」
私は、叫びながら強盗犯に飛び付く。すると、強盗犯と一緒に地面に倒れて、銃を奪い合う。慌てて他の人も走ってこっちに向かってくる。
「クソッ!離せ!」
「あなたこそ、離しなさいよ~!」
揉みくちゃになりながら、銃を奪い合っていた時だった。
パァン!
手元で銃声が鳴り響いた。
「え?」
どちらがそう声を漏らしたかわからないが、私のお腹の辺りが血で真っ赤に染まっていく。
あれ?もしかして射たれたの?でも、まだ死なないはずだから大丈夫……
「捕まえたぞ!」
「おい!早く救急車を呼べ!」
私の周りでは慌ただしくみんなが叫んでいる。
……よかった、ちゃんと強盗犯を捕まえられたんだ。ちょっと目の前がボヤ~ってしてきたなぁ……
「お姉ちゃん!お姉ちゃんが死んじゃう!」
さっきの男の子が私の前で泣いている。
「……だ、大丈夫……私はまだ死なないよ……」
私は、何とか腕を挙げて男の子の頭を撫でてあげる。
そこで、私の意識は途切れた。
「おい、起きろ!」
「……ん?……ここは?」
私が目を覚ますと、どこまでも真っ暗なのだが近くに椅子と机が置かれていることは、ハッキリと見える不思議な場所にいた。
「ここは、審判を下す場所だ」
「あっ!死神」
「俺には、きちんと名前が……って、まあいい。それよりお前に聞くことがあるのだが……」
「待って待って!もしかして私、死んじゃったの?」
病院で目覚めるはずが、審判を下す場所なんて変なところで目を覚ましてしまったということは、もしかしなくても私は、死んだのだろうか?それに、死神も目の前にいるし……
「単刀直入に言うと、お前は死んだ」
「嘘つき~!私は、来年死ぬっていったくせに、今日死んじゃってるじゃん!」
私は、死神を掴もうとするがヒラリとかわされてしまう。
「続きがあるから話を聞けよ!文句を言うのは、それからにしてくれ」
「……わかった」
「はぁ……本来ならお前の寿命は、あと一年あったのだが、お前が無茶をしたせいで予定よりも早く死んでしまった。一応、俺が死なないように管理するべきなのだが、まさか自殺紛いのことをするとは思わなくてな。そこで、お前に選択肢を与える。一つは、このまま死んで幽霊になること。契約上、俺が貰う〈時間〉は来年からの分だからそれまでの間、幽霊として生きて〈時間〉を使わないといけない。もう一つは、〈時間〉が一年分余っているから死神として生きることだな。こっちは、〈時間〉が無くならない限り生きていられる。まあ、何もしなければ、一年で死ぬことになるが〈時間〉を集めればその分だけ生きることもできる。……それで、どっちを選ぶ?」
「幽霊って大変?」
「大変じゃないが、フワフワ漂うことしかできないからご飯を食べたりできないってのがネックだな」
幽霊は、ちょっと嫌かなぁ。そもそも幽霊が苦手なのに幽霊になるとかあり得ないかも。
「死神はどうなの?」
「仕事することと〈時間〉を集めないといけないだけで、特に人間と変わらないな。ご飯も食べるし、買い物にも行く、ただ人間と違って成長することは、無いがな」
なるほど……案外、死神としていきることも悪くないかも。
「うん。私、死神になる!」
「即決だな……それじゃあ、行くか」
「行くって、何処に?」
「もちろん、死神の世界にさ」
死神が、そう言うと、さっきまで気がつかなかったが近くにあった扉が開いた。
死神が扉の向こうに行ってしまったので、私も慌てて扉の中に入る。
こうして、私は死神として第2の人生を歩むことになった。
「大丈夫よ。絶対に警察が助けに来てくれるからね」
私の隣に座っている女の人は、怖がっている男の子を抱き締めている。
……どうして、こんなことになったのかなぁ……
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今から一時間ほど前……
パァン!
私が銀行でお金を引き出していると物凄い音が鳴り響いた。
「俺は、銀行強盗だ!ここにいるやつ全員大人しく俺の言うことを聞け!さもないと銃で打つからな!」
どうやら先程の音は、銃声だったようだ。受付の前に立っている男が銃を天井に向けながら叫んでいる。
その後、強盗犯は、中にいた人全員を人質にとり、係員の女性にお金を鞄の中に積めさせている。
私も人質として捕まり部屋の隅っこに他の人と一緒に座らせられてしまった。
……昨日は、死神に出会っちゃうし今日は、銀行強盗に会っちゃうし運が悪すぎる……
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場面は再び冒頭に戻り……
「おい!これだけしか金がないわけ無いだろ!なにしてるんだ」
「申し訳ないですけどここには、これだけしかお金はありません」
「クソッ!ならATMの中から金を出せ!」
「そう仰られても業者の人じゃないとATMは、開けられなくて……」
「ごちゃごちゃ言ってないで開けろ!死にたいのか?」
女性の係員は、慌てて鍵を取りだしATMを開けようとしているが、手元が震えているのか中々開けられずにいた。
強盗犯は、かなりイライラしているらしく乱暴に椅子を蹴っている。
その音にまた男の子が怯えている。
「大丈夫だよ、お姉ちゃんが止めてくるから」
私は、男の子を安心させるように頭を撫でる。
「そんなことしたらダメよ!あなた見た限り普通の女の子なんだから殺されちゃうわよ……」
男の子のお母さんが、私のことを心配して止めようとしてくるが私なら大丈夫だ。何故なら……
「大丈夫。だって私はまだ死なないから!」
「え?」
そう。私の寿命は残り一年なのだ。つまり、それまでの間に死ぬことは無い……はず。だから、ここで強盗犯に殺される訳がない。
それに、今は強盗犯もATMの方に意識を向けていて背中もガラ空きだから何とか銃を奪えるはず。
私は、そう思い強盗犯にそっと近づいていく。
あと一歩で銃を奪えるというところで、強盗犯がこちらを振り向いた。
「な!?このヤロ!」
「うわあぁ~~!!!」
私は、叫びながら強盗犯に飛び付く。すると、強盗犯と一緒に地面に倒れて、銃を奪い合う。慌てて他の人も走ってこっちに向かってくる。
「クソッ!離せ!」
「あなたこそ、離しなさいよ~!」
揉みくちゃになりながら、銃を奪い合っていた時だった。
パァン!
手元で銃声が鳴り響いた。
「え?」
どちらがそう声を漏らしたかわからないが、私のお腹の辺りが血で真っ赤に染まっていく。
あれ?もしかして射たれたの?でも、まだ死なないはずだから大丈夫……
「捕まえたぞ!」
「おい!早く救急車を呼べ!」
私の周りでは慌ただしくみんなが叫んでいる。
……よかった、ちゃんと強盗犯を捕まえられたんだ。ちょっと目の前がボヤ~ってしてきたなぁ……
「お姉ちゃん!お姉ちゃんが死んじゃう!」
さっきの男の子が私の前で泣いている。
「……だ、大丈夫……私はまだ死なないよ……」
私は、何とか腕を挙げて男の子の頭を撫でてあげる。
そこで、私の意識は途切れた。
「おい、起きろ!」
「……ん?……ここは?」
私が目を覚ますと、どこまでも真っ暗なのだが近くに椅子と机が置かれていることは、ハッキリと見える不思議な場所にいた。
「ここは、審判を下す場所だ」
「あっ!死神」
「俺には、きちんと名前が……って、まあいい。それよりお前に聞くことがあるのだが……」
「待って待って!もしかして私、死んじゃったの?」
病院で目覚めるはずが、審判を下す場所なんて変なところで目を覚ましてしまったということは、もしかしなくても私は、死んだのだろうか?それに、死神も目の前にいるし……
「単刀直入に言うと、お前は死んだ」
「嘘つき~!私は、来年死ぬっていったくせに、今日死んじゃってるじゃん!」
私は、死神を掴もうとするがヒラリとかわされてしまう。
「続きがあるから話を聞けよ!文句を言うのは、それからにしてくれ」
「……わかった」
「はぁ……本来ならお前の寿命は、あと一年あったのだが、お前が無茶をしたせいで予定よりも早く死んでしまった。一応、俺が死なないように管理するべきなのだが、まさか自殺紛いのことをするとは思わなくてな。そこで、お前に選択肢を与える。一つは、このまま死んで幽霊になること。契約上、俺が貰う〈時間〉は来年からの分だからそれまでの間、幽霊として生きて〈時間〉を使わないといけない。もう一つは、〈時間〉が一年分余っているから死神として生きることだな。こっちは、〈時間〉が無くならない限り生きていられる。まあ、何もしなければ、一年で死ぬことになるが〈時間〉を集めればその分だけ生きることもできる。……それで、どっちを選ぶ?」
「幽霊って大変?」
「大変じゃないが、フワフワ漂うことしかできないからご飯を食べたりできないってのがネックだな」
幽霊は、ちょっと嫌かなぁ。そもそも幽霊が苦手なのに幽霊になるとかあり得ないかも。
「死神はどうなの?」
「仕事することと〈時間〉を集めないといけないだけで、特に人間と変わらないな。ご飯も食べるし、買い物にも行く、ただ人間と違って成長することは、無いがな」
なるほど……案外、死神としていきることも悪くないかも。
「うん。私、死神になる!」
「即決だな……それじゃあ、行くか」
「行くって、何処に?」
「もちろん、死神の世界にさ」
死神が、そう言うと、さっきまで気がつかなかったが近くにあった扉が開いた。
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こうして、私は死神として第2の人生を歩むことになった。
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