魔王さんは大変なようで。

五月七日 外

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メイドさんも大変なようで。

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「はあぁ~いい湯だな~」

 俺は大きな浴槽に浸かっていた。
 魔王の城にこんな立派な風呂があるとは思わなかったが、なんでも魔王軍の前線組が人間の町に忍び込んだときに見つけて気に入ったのだとか……
 風呂場を見渡してみると、ケルベロスの石像からはお湯が出ているし、大きな浴槽が五個もある。

「それにしても、どこを見てもピカピカしててかなり綺麗だなぁ……ライラの奴本当に掃除が得意だったとわ……」
「シノさん、替えの服置いておきますね」

 脱衣場の入り口にはリイリのシルエットが浮かび上がっている。俺が一言礼を言うと、リイリのシルエットは小さくなっていった。……俺としてはリイリと一緒に風呂に入るのは大アリというか、むしろ入ってくるのが礼儀じゃない?くらいに思うのだが、現実にそんなことは起きなかった。

「ふぅ~……まあ、ラノベじゃないし女の子が一緒にお風呂に入ってくれるとか無いんだよな~」
「そうそう。かといって、入ってこられても恥ずかしいから困るんだけどね~」
「そうなんだよ~童貞の俺には刺激が強すぎるというか……って、誰!?」

 瞬間、背中に何か柔らかいものが当たる感覚がして、目の前が真っ暗になった。

「ふっふっふ!だ~れだ?」

 こんなことを俺にしてくるのは一人しかいないだろう。それにしても、この背中から伝わってくる柔らかな感触……まさか!?

「おっぱいか!!」
「そうそうおっぱい!って、違う!ライラだよ!」
「ああ、ライラか……どうした?」

 俺は動揺やら緊張やらをライラに悟られないように、平静を装おってそう答えた。……それにしても、ライラのおっぱいやばいな

「そうそう、自慢のおっぱいだからね~」
「なっ!?そんなに押し付けるな!」

 ライラはギュ~と後ろから抱きついてきていて、いたずらっぽく笑っている。

「あはは!本当は喜んでるくせに~」
「よ、喜んでないやい!」
「うそだ~さっきからおっぱいのことしか考えていないくせに」
「く~こうなったら!」
「いいのかな~?そんなことして?」

 ライラはまるで、俺が今から何をしようとしているのか分かっているようなことを言った。

「ライラ……お前、まさか」
「ワタシは悪魔だよ?人間の心を読むことくらい出来るよ~ん」
「さ、最悪だ……」

 つまりは、ライラには俺が今までおっぱいのことしか考えていないことがバレバレなばかりか、どうせなら前からライラの裸を拝んでやろうと思っていたことも知られていたようだ。

「まあ、ワタシは裸を見られてもいいんだけど……それより、もっといいものが見れるよ~」 
「ん?それって……」

 ライラがそう言うと、脱衣場の扉が勢いよく開いた。

「ライラお姉ちゃん!まだシノさんがお風呂に……」

 リイリが慌てたように風呂場へズカズカと入って来たのだが、俺たちの方をみると、その顔がどんどん真っ赤に染まっていく。……まあ、俺たち裸ですからね。

「今だシノ!」
「おう!!!」

 ライラに言われるもなく何をすればいいのか俺は分かっていた。
 目の前には、俺の服を洗濯したときに自分の服も汚したのだろう、薄着のリイリ。そして、大量のお湯。
 やることはもう決まっている。

「キャー!!!」

  俺たちが風呂のお湯をリイリにかけると、濡れて服の下から下着が透けてきた。……黒だ!なんか意外だけど黒!
 リイリは恥ずかしそうに身をよじっているが、俺たちの手は止まらない。

「どう?最高でしょ!」
「ああ!最高だライラ!」

 俺はそう言ってライラの方を見てしまった……

「あっ」
「……あ」

 俺の目の前には、ライラの一糸纏わぬあられもない姿があった。

「シノのエッチ……」

 ライラがそう呟くのと、我慢の限界だったリイリに殴られるのは一緒だった。
 俺は壁まで吹き飛び、ライラは首根っこを捕まれ引きずられるようにして、リイリに連れて行かれた。

「いてて……死ぬかと思った」

 主にライラのせいで、風呂場はとんでもないことになったが、ここの掃除は誰がするんだろうか?
 俺はそんなことを考えながら、倒れ込むようにして意識を失った。
 

 


 
 

 
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