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第-壱-章「頭部奪還作戦」
第3話「死霊使いの娘」
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「首無騎士現当主!エリス・ミネア!推して参る!」
「ガァァァァァァ!」
女はエリスに飛びかかろうとするが、それを彼女はすんでのところで避け腹部に蹴りを入れる。
「生前の貴方ならもう少し品のある戦いを望んだのだろうが、今の私にそんな余裕はないのでな」
「痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い痛い痛い痛い痛い!」
そう悲痛な叫びを上げる死霊に向けてエリスは再度強烈な蹴りを何度も放ち、そして体を砕く。
「出来ればこんなことしたくはなかった」
「痛い・・・痛い・・・お前ば・・・殺ず!」
「私の前から去れ。心が生きているなら貴方の父親は魂を呼び戻すくらいできるだろう?」
彼女はそう言ってその場を立ち去ろうとした。
「ハハハ!喰う!お前を!喰ってやる!」
その瞬間。女は手足の力を全て使い、エリスに噛み付こうとした。
「・・・心まで死霊に成り果てたか。分かった。貴方を殺し、そうさせたのは私だ。私が貴方を死に導こう」
エリスはそう呟きながら、何かを持っているかのように構えた。
「ガァァァァァァ!」
「これこそは!我が身に宿る騎士の鎌!」
彼女がそう叫ぶと握っていた手の中に黒い鎌が現れた。
そしてそれを思い切り振りかざした。
「死を司る一族の責務」
その鎌が女の魂を引き裂くと、醜かった女の体は少しずつ崩れていった。
「ありが、とう・・・」
「せめてお嬢が天国に行けるように祈っています」
エリスは女の手を握った。
「・・・ふふ。何だ・・・首無騎士・・・本当は優しいじゃないの・・・またお父様に騙されちゃったのね」
「私は優しくなどありませんよ。お嬢」
「・・・いいえ優しいわ。あの時私の魂を抜いたのは、この未来が見えていたから、なのよね・・・」
女は笑いながら声を絞り出すかのように言った。
「いえ自分が逃げるために、お嬢の魂を・・・抜きました」
「・・・私、知ってるのよ。首無騎士は死が見えるって・・・」
「・・・えぇあのまま帰れば貴方は父親に殺されていた。だから私は悪役を演じたまま魂を抜き殺した。だが結果的に貴方は死霊になった!」
「・・・そんな事、いいのよ。騙されていた私が、悪かったんだもの・・・ぐっ・・・」
口から血を流しながらも女は泣いていた。
「お嬢・・・」
「お嬢は、やめて・・・ソニア。ソニアって呼んで・・・」
彼女はそう言うと顔に巻かれていた包帯を外した。
エメラルドの瞳に銀色の髪。その姿は死霊であろうが美しいとしか言いようがなかった。
「ソニア・・・私は・・・」
「・・・エリス。貴方は泣いてはいけないのよ。私と貴方はここで戦った敵同士なのだから・・・この私に勝ったことを誇りなさい」
「・・・分かりました。お嬢・・・いやソニア」
「・・・よろしい・・・馬鹿な人生だったけど最後に貴方の味方になれて良かったわ・・・これを、受け取って」
そう言うとソニアは金の鍵を手渡した。
「私の部屋の鍵よ。手助けにならないけど・・・これを持っている限り私は、貴方の、味方、よ・・・」
彼女は最後にそう残し、灰と化した。
「ソニア。どうか安らかに・・・」
※※※
───城内。
エリスが死霊となったソニアと相対していた頃。ベルディアとアラクネは魔虫しか残っていない血溜まりのエントランスを走り抜けていた。
「アラクネ。ちゃんと数人は生かしてるんだろうな?」
「ベルの言う通り。虫さん達のお腹の中で生きてるよ」
彼女は腹部を手で摩った。
「ならいい。そのまま親玉を潰しに行くぞ・・・ウルフ。奴までの道案内を任せたぞ」
「「任せな!・・・なるほど。そこの階段を上った先にある大広間にでっかく構えてるね。罠も複数仕掛けてあるし、あの様子だと余程自信があるのか、それとも」」
「逃げる策がある。か?」
「「その通り」」
「ならその方法も上からねじ伏せるまでだ。行くぞ」
※※※
───城内二階大広間。
「来やがれ!弱っちい魔族の残党共が!雑魚をプチプチ潰した程度でいい気になるなよ!」
ダーリック・ヴァーミリアンス。死霊使いの男。
かつて街を滅ぼした勇者の一人。
「アーハッハッハ!勇者に負けたゴミが!女がいれば命乞い次第では俺の奴隷にでもしてやるか!」
高笑いと共に彼の周りから黒い煙が吹き出す。
「さぁ行ってこい!死霊共!・・・ここからが本当の開戦だ!」
「ガァァァァァァ!」
女はエリスに飛びかかろうとするが、それを彼女はすんでのところで避け腹部に蹴りを入れる。
「生前の貴方ならもう少し品のある戦いを望んだのだろうが、今の私にそんな余裕はないのでな」
「痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い痛い痛い痛い痛い!」
そう悲痛な叫びを上げる死霊に向けてエリスは再度強烈な蹴りを何度も放ち、そして体を砕く。
「出来ればこんなことしたくはなかった」
「痛い・・・痛い・・・お前ば・・・殺ず!」
「私の前から去れ。心が生きているなら貴方の父親は魂を呼び戻すくらいできるだろう?」
彼女はそう言ってその場を立ち去ろうとした。
「ハハハ!喰う!お前を!喰ってやる!」
その瞬間。女は手足の力を全て使い、エリスに噛み付こうとした。
「・・・心まで死霊に成り果てたか。分かった。貴方を殺し、そうさせたのは私だ。私が貴方を死に導こう」
エリスはそう呟きながら、何かを持っているかのように構えた。
「ガァァァァァァ!」
「これこそは!我が身に宿る騎士の鎌!」
彼女がそう叫ぶと握っていた手の中に黒い鎌が現れた。
そしてそれを思い切り振りかざした。
「死を司る一族の責務」
その鎌が女の魂を引き裂くと、醜かった女の体は少しずつ崩れていった。
「ありが、とう・・・」
「せめてお嬢が天国に行けるように祈っています」
エリスは女の手を握った。
「・・・ふふ。何だ・・・首無騎士・・・本当は優しいじゃないの・・・またお父様に騙されちゃったのね」
「私は優しくなどありませんよ。お嬢」
「・・・いいえ優しいわ。あの時私の魂を抜いたのは、この未来が見えていたから、なのよね・・・」
女は笑いながら声を絞り出すかのように言った。
「いえ自分が逃げるために、お嬢の魂を・・・抜きました」
「・・・私、知ってるのよ。首無騎士は死が見えるって・・・」
「・・・えぇあのまま帰れば貴方は父親に殺されていた。だから私は悪役を演じたまま魂を抜き殺した。だが結果的に貴方は死霊になった!」
「・・・そんな事、いいのよ。騙されていた私が、悪かったんだもの・・・ぐっ・・・」
口から血を流しながらも女は泣いていた。
「お嬢・・・」
「お嬢は、やめて・・・ソニア。ソニアって呼んで・・・」
彼女はそう言うと顔に巻かれていた包帯を外した。
エメラルドの瞳に銀色の髪。その姿は死霊であろうが美しいとしか言いようがなかった。
「ソニア・・・私は・・・」
「・・・エリス。貴方は泣いてはいけないのよ。私と貴方はここで戦った敵同士なのだから・・・この私に勝ったことを誇りなさい」
「・・・分かりました。お嬢・・・いやソニア」
「・・・よろしい・・・馬鹿な人生だったけど最後に貴方の味方になれて良かったわ・・・これを、受け取って」
そう言うとソニアは金の鍵を手渡した。
「私の部屋の鍵よ。手助けにならないけど・・・これを持っている限り私は、貴方の、味方、よ・・・」
彼女は最後にそう残し、灰と化した。
「ソニア。どうか安らかに・・・」
※※※
───城内。
エリスが死霊となったソニアと相対していた頃。ベルディアとアラクネは魔虫しか残っていない血溜まりのエントランスを走り抜けていた。
「アラクネ。ちゃんと数人は生かしてるんだろうな?」
「ベルの言う通り。虫さん達のお腹の中で生きてるよ」
彼女は腹部を手で摩った。
「ならいい。そのまま親玉を潰しに行くぞ・・・ウルフ。奴までの道案内を任せたぞ」
「「任せな!・・・なるほど。そこの階段を上った先にある大広間にでっかく構えてるね。罠も複数仕掛けてあるし、あの様子だと余程自信があるのか、それとも」」
「逃げる策がある。か?」
「「その通り」」
「ならその方法も上からねじ伏せるまでだ。行くぞ」
※※※
───城内二階大広間。
「来やがれ!弱っちい魔族の残党共が!雑魚をプチプチ潰した程度でいい気になるなよ!」
ダーリック・ヴァーミリアンス。死霊使いの男。
かつて街を滅ぼした勇者の一人。
「アーハッハッハ!勇者に負けたゴミが!女がいれば命乞い次第では俺の奴隷にでもしてやるか!」
高笑いと共に彼の周りから黒い煙が吹き出す。
「さぁ行ってこい!死霊共!・・・ここからが本当の開戦だ!」
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