騙されてることに気付かず、いつの間にやら最強になってました

猫男爵

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第26話 密談

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「うがぁあああああああっ、くそがぁあああああああああっ‼」

 今日も今日とて、酒場にチャモアの怒声が轟いていた。

 午前中の、それもまだ早い時間にもかかわらず重剣の一撃ヘヴィ・ブロウのメンバーは相も変わらず連日、酒場で管を巻いていて。

 リック・リパートンを追放してから今日で10日……。その間、彼らだけで倒した魔物モンスターはというと――。

 ゴブリンのみであった。それも、たったの12匹……。あまりにも少ない……。

 そんな情けない事実がチャモアの怒りを加速させていたの間違いではなかったが、理由はそれだけではなかった。

「おい、クローゼッ‼」

 と、それまで涼しい顔で安酒をチビチビと飲んでいたクローゼへとチャモアの怒りの矛先が飛び火しかけるも、

「……何よ? 言っておきますけどね、魔石の取り出しに失敗したのはアンタの方が断然に多いんだからね? そのことだけは忘れないでほしいわね」
「右に同じぃ……」
「ぐっ、て、テメーら……‼」

 だが、事実なだけに何も言い返すことができないチャモア。

 今までもこういった一切合切の雑務は全てリックに押し付けてきていた為、メンバーの誰しもが魔物モンスターを解体し魔石を取り出すということ自体が初めての経験で勝手がわからないことも相まって……。
 魔石を深く傷つけるのはまだマシな方で、チャモアに至っては貴重な魔石をバラバラに破壊してしまい換金すら儘ならない状態へしてしまうことも屡々しばしばあった。

 そういった事実が枷となってソレ以上の言動を封じざるを得ない状況も。クローゼたちに当たることも出来ない鬱憤をまるで椅子にでもぶつけるかのように、荒々しくも、ドカッと椅子に腰を下ろしていく。

 そんな中、チャモアの耳に飛び込んできたのは、

「なぁおい、さっき聞いたんだけどよ、例の坊やだけどよぉ~、今度は一人でオークを倒したらしいぜ!?」
「ふぇ~、マジかよ? この前の件といい、このところの坊やの活躍は目を見張るものがあるなぁ……」
「全くだ、どっかの誰かさんとはえらい違いだぜ、なぁ~~~?」

 時折これ見よがしに聞こえてくるのは、かつてのチームメイトの活躍ぶり……。
 大きく水をあけられる形となったこの状況がチャモアの怒りと焦りを更に加速させていった。

「くっ……‼ う――うがぁあああああああっ、クソがぁああああっ‼ どいつもこいつもあんなクソガキのことばかりはやしやがってっ‼」
「ちょっと、チャモア、落ち着きなさいよね! 仕方ないでしょ、実際問題、オークとかを倒してるってのもホントのことみたいなんだから‼」
「仕方がないもクソもあるかっ‼ テメーらは変だとは思わねーのかよ? あのガキはついこの間まで剣すら持ってなかったんだぞ!? それが――」

 そう言いかけた直後、ハッとしたようにチャモアの脳裏にある考えが過った……。

「剣? そ――そうだよ、剣だよ……。何だ簡単なことじゃねーか、アハハハハハハハハハッ‼」

 怒りから一転、突然笑い始めるチャモア。

「ち、ちょっと、チャモア? ど、どうしちゃったのよっ!?」
「ついに、狂ったぁ?」
「うるせー、ボケ、誰が狂うか。まぁ、いいさ。よく聞けオメーら。あまりにもムカついててすっかり失念してたが、この間、アイツを街中で見かけたときのこと覚えてるか?」
「この間ぁ~? マルカ、覚えてる?」
「全然~」
「チッ、まぁいいさ。そん時、俺はみたんだよ。野郎がぼろっちぃ鎧はともかく、見たこともねえ大層立派そうな剣をぶら下げてやがったのをな……」
「へ~~、細かいところまでよく見てるわねぇ~。流石コソ泥♪」
「うっせぇなぁ、ほっとけっ‼」
「そんときゃあ大して気にもしてなかったんだが……。今にして思えばあの頃くらいからだ、あのガキの評判が良くなってきたのは……。ま、大方どっかから盗んできやがたかしたんだろうがな……」
「なるほどねぇ~……。でもさ~、あの子に限って盗んできたってのはないんじゃない?」
「あ? じゃあ何か? テメーはあのガキが自腹切ってあの剣を買ったとでも言うつもりかよ? あんな銭もろくすっぽ持ってねーようなガキが!?」
「そうかなぁ~、あの子、グランべリーここに来る以前から結構倹約してたりしてそうな気がするけどなぁ~。それこそ結構な額、貯め込んでそうな気がするけどなぁ~」
「右に同じぃ」
「ケッ、アイツが持ってる銭なんてたかがしれてらぁ、精々900……。良くても1,200くらいなもんさ」

 自信たっぷりにそう決めつけるチャモアに対し

「アンタに何でそんなことが分かんのよ?」
「ガキの頃から何某かの理由をつけちゃああのガキの身ぐるみ一切合切を剥いでやってたからなぁ……。それ以来、いつごろまでにはこのくらい貯め込んでるだろうってのがわかるようになったのさ……」
「うっわぁ~、最低ぇ~、アンタってろくでもないヤツだとは思ってたけど、やっぱり子供の頃から根性がねじ曲がってたのねぇ~」
「右に同じぃ」
「うっせぇなぁ~、テメーらだって人のこととやかく言えた義理かよ?」

 そう言ってクローゼたちを睨みつける。

「な、何よ、何が言いたいのよぉ……」
「み、右に同じぃ……」
「俺が何も知らねーと思ってたのか? 知ってんだぜ、テメーらが適当な理由つけちゃあアイツから何度か金をせびってたことはなぁ……」
「「――――⁉」」

「ともかくだ、あの剣だ、あの剣を奪ってやる‼ そうさ、あの剣さえあれば俺だって……」
「で、でも、どうやって奪うつもりよ? あの子、今じゃあオークまで倒せるくらいの腕前になってるって話じゃない? いくら三人がかりとはいえ、ゴブリン一匹にすら手こずってる私たちじゃあ返り討ちに遭うのは目に見えてるわよ?」
「右に同じぃ」

 自信なさげな表情を浮かべる二人に対し、チャモアが事もなげに言い放った。

「ケッ、バァ~~~~カ、魔物モンスター相手ならいざ知らず、あのガキ相手に剣なんて必要ねぇ~~んだよっと♪」

 自信たっぷりにそういうとチャモアは自らの持ち物の中からペンと見るからにボロボロなパピルスらしき物を取り出した。

 そして二人が見つめる中、ソレに一気にペンを走らせていったかと思えば、

「――……よぉ~~~~~っし、これで完成だっ♪」
「「………………?」」

 完成した文を読み誰の目にも困惑した表情を浮かべる二人とは対照的に、自信に満ちた表情のチャモアがそこにはいた――。
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