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本編

第7話

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「旅の客人・・私はこの街の兵隊の副隊長を務めるオギストと申します。この度は部下が大変失礼をしました。
この者は前科があるようなので急ぎ調べてしっかり処分致します。
改めて、身分証の確認をさせていただいてもよろしいか?」

素早い対応に感心したレイズ。快く身分証を提示する。

「・・こちらとしてはしっかり処分してもらえれば結構だ。はい・・身分証」

レイズが提示した身分証を確認するや否や副隊長が凍りつく・・・

(だよなぁ~)

「・・・副隊長?」

動かない副隊長に部下が心配になり声をかける。

それを転機と捉えたのか先ほどの兵士ドルートが声をあげた。

「・・・ふ・副隊長!!私は何もしていません!やはりその者はお尋ね者なのでしょう??ですから早く拘束を「黙れっ」っっっ!!!」

意気揚々と話すドルートを副隊長がバキッと殴り、レイズに向かって先ほどよりも深く頭を下げた。

「ジール卿!!誠に・・誠に申し訳ございません!!先ほどの私の対応も重ねてお詫びを!!如何なる処分も甘んじてお受けします。」

その発言を聞いた兵士たちはピシッと硬直し、だんだん青ざめて行く・・・ドルートも然り。

【アストラス】ではいくら辺境の地でもジール大公爵家を知らぬ恥知らずはいない。
意図としたわけでは無いがジール夫妻がレイズを探し回っていた時、各地に【シルバー・ストーン商会】支店を出していたため、辺境の地では生活になくてはならない存在になっていたのだった。

因みにそれまでは倍の金額を払って他商人から購入していた。

それに今回は完全にドルートの過失が確定しているため最悪死刑・・上司もただでは済まされない・・

「あぁ・・・気にしなくていい。今回は一応お忍びで来ているから、あまり大事にはしたくない」

(まぁ・・・貴族は基本1人で出歩かないしね・・)

「・・・感謝いたします」

(ただなぁ・・・どの道ドルートは処分しなくてはならないか・・・2人も知ったら大激怒するだろうし、それに貴族の務めもある・・)


「ただ、そこのホッとしている男は処分する・・・これは決定事項だ。前科を調べ次第報告を。」

「はっ!かしこまりました。」

「当分は街にいるから・・・犯した罪を聞いてから処分の内容を決める」

青ざめるドルートを横目に副隊長に命令する。

(こういうのは貴族の責務だとしてもやっぱりなれないなぁ~・・・)

「もう中に入っていいか?・・・旅で疲れているんだ・・」

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