鉄筋青春ロマンス

ルルオカ

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鉄筋青春バカップル

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仕事で疲れ、息も絶え絶えに帰宅したときのこと。
一休みして、寝支度しようと、ソファにもたれて、テレビを流し見した。

流れていたのは、沈む夕日をバックに海岸を走る男女。
男が腕を掴めば、女はころんで、共に砂浜に倒れる。

ちょうど男が押し倒す形になり、見つめあうことしばし、口付けをする。

ど定番な馬鹿ップルの戯れを目にして勃つどころか、ひどい眠気を覚えて、そのまま意識を落としてしまった。

眠りきる前に「こいつら、結婚したら、すぐ離婚するだろうな」と身も蓋もない感想を抱いたように思う。
そんな俺が、まさか・・・。


※  ※  ※


義巳の叔父が営むボクシングジムを改装をすることになり、俺が勤める建築会社がその工事を請け負った。
ジムは自転車操業と聞いていたが、市から助成金をもらったらしい。

先日、金森の父親である市長が、ジムに乗り込んできたというからに、そのことと関連があるのだろう。
それ以外、俺が勤める建築会社に、義巳の叔父が依頼をしたり、改装チームに俺が配属されたのは、たまたまが重なってのことだった。

一応、挨拶をして、平手打ちの洗礼も受けたとはいえ、甥っ子馬鹿で「義巳命」と顔に書いてあるような彼にとって、俺は招かざる客だ。
が、工事から、俺を外すよう、注文をつけてはこなかった。

気に食わないとはいっても、感情的になって干渉をしないように気をつけているのかもしれない。
いつの間にか、懇ろになった金森にかまってばかりいて、改装の従業員の相手を、ほぼ義巳にさせていた。

お茶や軽食などの差し入れをしたり、従業員に呼ばれて対応したりする義巳とは、よく顔を合わせた。
他の従業員には、義巳と顔見知りなのを伝えておいたので、「お前、どこで、こんなクールなイケメンと!」「料理上手で、気配り上手。いいお嫁さん見つけたな!」と囃したてられ、からかわれたが、満更でなかったし、照れてはにかむ義巳が拝めて、何よりだ。

義巳は高校生、俺は勤め人、しかも駆け出しとあって、会える日や時間は少ない。
だから、仕事しつつ、ちょくちょく顔を見られるのは、うれしい。わけでもなかった。

本人は自覚していないが、意識的に見ると、義巳はエロい。
ジムを手伝いながら、自らもトレーニングしているとあって、色白でしなやかな体を薄く染め、汗で艶めかせているのが、視覚的にひどい。

細めた目を、やや潤ませ、上気した頬に汗を滴らせ、血色のいい口から、湿った息を切らすのは、勘弁してほしい。

いや、俺がよこしまに見るせいもあるのだろう。
いやいや、俺だって、仕事に全神経を注ぎたいが、元々の悩みに関わることだから、しかたがない。

俺と義巳は深い口付け止まりで、それ以上、事を進められていないのだ。
情けないことに、俺は尻込みをしている。

なにせ、義巳は精通もしていないというし。
曰く「母親が性的なことを嫌悪して、その影響を強く受けた」というし。

重量級プロレスラーのような体つきに、「棟梁」があだ名の、渋い顔つきをしながらも、俺も経験が浅く、なんなら、思春期に戻ったようだし。

ただでさえ、悩みがあって、もやもやとしていたのが、玉のような汗を光らせる義巳を見かけるたびに、むらむらする。
これまで、気が知れなかった、強姦魔の心持が分からないでもない。

と、思いかけて、「そう納得したら、おしまいだ」と死に物狂いで理性にしがみついて、仕事に打ちこんだ。

で、五日間、鬱屈を溜めに溜めこみながら、仕事のほうを問題なくこなし、鉄筋を敷いて、鉄骨の骨組みで、全体を形作るところまで、しあげた。
理性を保つのに、労力を割いている分、ふだんのニ割り増しに疲弊していたが、他の従業員を見送り、俺は残っていた。

すこしもしないで、夕日を背にして、水筒を持った義巳が小走りにくる。
年甲斐もなく思春期真っ盛りに、心をかき乱されながらも、なんだかんだ、二人きりになって、向き合えば、安堵するし、胸が弾む。

笑いかけてから、建物のほうに向き直る。
肩を並べて、同じように骨組みに向いた義巳は「なんだか、ビルの骨組みを思い出す」と呟いた。

振り向いたなら、微かに手が当たって、とたんに肩を跳ね、義巳も振り向く。

夕日に染まって、薄く口を開けたまま、無垢な顔つきをしている。
何かと溜めこんだ身とあって、上目遣いが股間にきたが、「これキス待ち?」「いやどうだろう」とおもっくそ思春期的というか、糞童貞的心理に陥って、おろおろしてしまう。

前に、口元のご飯粒を取り、その流れで口付けを自然にできたことがあるはずなのだが。

そもそも、俺に思春期はあったのだろうかと、ふと思いかけたとき、呆けたようなまま、義巳がおもむろに手を伸ばしてきた。
頬を撫でられ、いよいよ身を固くすれば、顔をほころばせて「間抜けな顔」と頬肉をつまみ、伸ばした。

いつもの俺なら、苦笑を返すか、むっとしつつも、少々ふてくされるくらいだ。
が、どうやら、弟の件があったりと、すっ飛ばしたらしい思春期の全盛を、今になって迎えた俺は、かっと頭に血を上らせた。

頬をつまむ手を捕まえようとして、避けられ、くつくつと笑われる。
こちとら、発情した荒ぶる獣と化しているというに、義巳は、いちゃつきの延長ととらえたらしい。

迫る魔の手を、かろやかなステップで、わざと、ぎりぎりでかわしながら、くすぐったそうに笑いを漏らす。

「今の俺を煽るな!馬鹿たれ!」とさらに、頭を沸騰させては、むしろ動きが鈍くなり、尚のこと、義巳に弄ばれた。
いちゃつくにしては、肉食獣の狩りのような迫真の追いかけっこを、長々として、仮設のジムのプレハブ小屋に入り、リングに上がったところで、ようやく手首を掴んだ。

端のほうにいたので、引っ張るのではなく、ロープに押しつけて、つめ寄る。
ロープに背中をもたれたところで、両腕を回し、抱きしめた。

こけにするように、逃げ回っていた獲物を、やっと手中におさめたとなれば、気が昂ぶりに昂ぶっていた。
とはいえ、興奮も過ぎれば、頭が眩んで、案外、すぐには獲物に食いつけない。

というか、義巳のやや汗ばんだ匂いを吸うだけで、扱いているかのような、快感が体に走る。

運動をしてのと、性的なのと、動悸を早めるやり方は違っても、興奮は興奮と、錯覚してしまうのか。
理屈は分からなかったが、とにかく、密着するだけで、鼻血を垂らしそうな、首に顔を埋めて、鼻をひくつかせるだけで、完勃ちして漏らしそうに、ドーパミンが大量放出される。

散々、もやもやとむらむらを溜めこんで、どうしようもない飢餓感に苛まれていたからに、そりゃあ、無我夢中に抱きついて、首の匂いを吸ったもので。
我ながら変態じみていて(相手は三歳しか違わなくても未成年だし)、いつの間にか、笑わなくなった義巳にしろ、ようやく身の危険を覚えてくれたらしく。

と思いきや、「はっ、だ、め・・・」と俺に劣らず、切羽詰ったように、熱っぽい息を漏らした。
扱いてもいないのに、挿入され揺すられているように、「ん、あ、そん、な、匂、い、は、あっ、ん」と絶えずに、身をよじって喘ぐ。

「どうして、精通していないのに、こんなにエロい!?」といよいよ頭がのぼせあがって、もっと鼻息荒くし、首に滴る汗をしきりに舐めたら、「あ、や、ああ、あ!」と甲高く鳴いて、ロープを一段としならせた。

達したような反応を見せつつ、密着させた体のそこは、固くなっていなかったし、濡れてもいない。
「まさか、精通もしないで空イキした?」と頭を混乱させながらも、相手が未開発でいたいけな体をしているのを、改めて意識したなら、なんとも堪らなくなり、「く・・・!」と俺も、脳内フィーバーして達しってしまった。

本当に射精したように、体力が削られ、腰のだるさを覚えたが、まだまだ興奮を持て余し、呼吸困難になりながら、火照った体をすり寄せる。
義巳のほうが、未知の感覚に目を回しているかと思えば、そうでもないようで、息を切らしつつ、「結、局、精通、まだだ」と笑いをこぼして。

いちゃついて追いかけっこをしなければ、俺も義巳も踏ん切りがつかなかったかもしれない(義巳は振りきれてて、少々、心配だが)。
そりゃあ、いつぞやテレビで見かけた、砂浜で戯れるバカっプルを、痛々しく思ったのを、謝りたくなったもので。

「結婚したら即離婚とか思って悪かったよ」と。

めでたく、お互いしか目にない世界観に酔いしれても、まだまだ、これから。義巳を精通させたり、遅れた思春期に翻弄されたり、余裕なく二人して手探りで、段階を踏んでいくのは、大いに悪くなかった。



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