俺の推しは人気がない

ルルオカ

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いい尻に女も男もない

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トイレに入ったら、個室のドアがすこし開いていた。つい覗いてしまい、ぎょっと。

なにか落としたのか。ドアに向かい突きだした尻は肌色。パンツは身につけていたが、まさかのTバック。

ドアを開けて「なんつうもん、学校にはいてきてんだよ!」と指差し冷やかす意気地はなく、むしろ俺が目撃したのを、相手にばれたときの気まずさを避けて、忍び足で外へ。ただ、Tバックの主の正体か気になったので、廊下の角に身を潜め、トイレを監視。

すこしして、でてきたのは、果たして潔癖眼鏡だった。学年一位の成績を誇る、眼鏡をかけた秀才で、男子が下ネタで騒ぐたびに「口を慎め!」とたしなめるほどの潔癖(「コカン(沽券)に関わる」でもアウト)。

下ネタアレルギーで賢しらぶっているくせに、Tバックを愛用。ともなれば、これまで下ネタで叱咤された腹いせもあり、茶化し甲斐があるが、俺はそう性格が悪くない。秘密を握って、相手を貶めたり卑しめたりするのは気が進まない。

「それより、またTバックをはいた尻、見せてくれないかなあ」と思う。トイレで目撃して、はっとさせられたのだ。いい尻に女も男もないと。

Tバックをはいていたせいか、より桃のようにたわわに見えた尻。更衣室で着替える男子のとは一味ちがうし、思えば、そのとき以外、生尻にお目にかかることがない。女子と交際経験はあるが、拝ませてもらう前に別れたし。

いくらでも尻の画像や映像はあるものの、それまでは女にしか注目せず。「なるほど、男でも男がそそられる尻をしたヤツがいるのだな」と知ってからは、男の尻も目に追いかけるように。たしかに、男でも女に美尻をしているとはいえ、映像や画像では今一、物足りない。

いざ女子と比べれば、見劣りするのかもしれない。だとしても、今のところ、交際相手がいなくては、合法的に拝ませてもらう手段がなく、もし「お尻見せて」と頼むにしろ、女より男のほうがハードルは低いだろう。

「いや、どうだろう?」とあれこれ考えつつ、指をくわえて、潔癖眼鏡を観察する日々。そうして分かったのは、トイレは必ず個室に入ること。体育の授業、身体測定などズボンを脱ぐ日には、ボクサーをはいてくること。万が一、ズボンがずれないよう、きつくベルトを締めていること。

のはずが、その日、潔癖眼鏡はズボンのウェスト部分をずっと握りしめていた。「なんだ?」とよくよく見ると、ベルトがない。

そういえば、今日は始業のチャイムが鳴る直前に、潔癖眼鏡が教室に走りこんできた。寝坊とかして、慌てるあまりベルトをし忘れたとか?でもって、体育の授業がないに、ちゃっかりTバックをはいてきた?

ベルトがなくても、ズボンはずり落ちないが、潔癖眼鏡は気が気でないのだろう。同調して俺もはらはらしつつ「悪目立ちするんじゃあ」と心配したら、案の定、不穏な人の動向があり。

潔癖眼鏡が教室の掲示板にプリントを貼ろうとしたとき。さすがに両手を使っていたところ、背後に忍び寄る変質者のような男子が。

用事があって教室を放れ、もどってきたときには、変質者まがいが跳びかかろうとしていた。そう、ヘビーな下ネタを女子に浴びせて、潔癖眼鏡にこぴっどく叱られ、恥をかかされたヤツ。「お高くとまりやがって。倍返しに屈辱を味あわせてやる」と復讐宣言をしていた。

そいつが踏みだしたのと同時に俺もヨーイドン!ズボンに手をかける直前に、そいつの肩をつかみ、反った上体の首に腕を巻きつけ締めあげた。

物音とそいつの呻きに、肩を跳ねて振りかえった潔癖眼鏡。「Tバックは俺が守る!」との思いが滲みでてしまってか、視線がかち合うと、ぎょっとしたように目を見開かれた。

どうやら、俺がズボンの下の秘密に気づいているのに気づいたらしい。すかさず顔をそらし、目を伏せ、髪の生え際から、耳の淵、首の付け根まで、声もなく赤く染め上げて。

それまで性的な関心しかなかったのが、いたいけに恥じらうさまを見て、ときめくあまりに心臓を乱打。「うぶっぶうぶぶぶうぶ!」とべつの意味で顔を真っ赤にし、泡を吹くのにかまわず、ぎりぎりと首を締め上げたものだ。


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