俺の推しは人気がない

ルルオカ

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タピオカは彼の愛なのか

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高校の近くにはタピオカのお店がある。立地からして学生の集客を狙ってのことだから、値段はお手ごろ。

なので、たまに昼休みにも買いにいったり。友人らとジャンケンして、負けたヤツが代表してお使いにいくという。

その日の俺は勝者。甘いのは得意でないなので、シンプルなジャスミンティーを頼み、ほかの勝者たちと談笑。

俺が話しおわって、一息ついていたときに、ちょうどパシリが帰還。「ほれ、お前、ジャスミンだろ」と渡してくれたのを「おお、サンキュ」と受けとり、早速ストローを咥えて、タピオカをごっくんごっくん。

ほかのヤツらは話に興じて「あんがと」「テンキュー」と受けとりつつ、なかなかストローを咥えず。俺だけがタピオカを吸って、友人らがわあわあきゃっきゃするのを眺め、ふとパシリのヤツが手ぶらなのに気づいた。

「なに、自分の買い忘れたの」と聞けば、ぼんやりした顔つきで、やおらふり向き、ジャスミンティーを指差して曰く「それ、俺の卵なんだよ」と。喉を引きつらせ、ストローを遠ざける俺。一斉に声を飲んで、見開いた目をパシリに向ける友人ら。

「俺、本当は宇宙人なんだ。俺の故郷の星が住めなくなって、宇宙船で脱出して、高校入学する一年前に地球に辿りついた。

運よく、この星の人らと見分けがつかない姿形をしていたし、環境にも、ある程度は適合できた。『ある程度は』な。適合しきれない部分は、毎日、注射を打って補っている。

俺たちの世代はいいとして、次の世代からは、注射なく生きられるようにしたい。となれば、手っ取り早く、この星の人間と子供をつくればいい。

が、俺たちは性交しないで、卵を産む。男も女も。

どうやったら性交しないでも、人間の性質を子供に受け継がせることができるか。いろいろと考えた末、いろいろと試してみることにした。

これは、そのお試しの一つだ。産まれてくる、すこし前の卵を摘出。人間の体内に入れて、そこで孵化したら、どうなるかっていう」

パシリが説明しおわっても、俺らは「ナウローディング中」とばかり、彼を見上げたまま、ぽかーん。教室で誰かが机にぶつかり、倒れたような、けたたましい物音に我に返ったとたん「エイリアンか!キモイわ!」「悪い冗談すぎるだろ!」「もうタピオカ飲めねえっつうの!」「賠償は求めんから、お前、タピオカ捨てておけよ!」と非難轟轟。

頭に血が上っているようで、パシリが「なんちゃって」とテヘペロせず、いまだ真顔でいるのに肝を冷やし、また悪寒がするような不快感を覚えてだろう。もうすぐでチャイムが鳴るというに「仕返しに今度、俺の(ピー)と飲ませてやる!」と負け犬の遠吠えをして、教室からとんずら。

一人、取りのこされた俺は、まさに「友人の卵」を腹に収めてしまったものだから、もっと生理的嫌悪に悩まされたが、パシリへの恐怖心はなく、ため息を吐いて頭をかいた。先に高校入学一年前に地球にきたとか云っていたが、俺とパシリは小学生からのつきあい。

なので、ほかの友人より、パシリの性分を把握している。もっともらしく真顔で、荒唐無稽なホラを吹くのは、たいてい怒っているとき。

「どうしたんだよ」とあらためて問えば「お前こそ、あんな冗談口にするなよ」とぎろり。どうやら俺に原因があるらしく。

「ゴムをつけないで、やったなんて」

前に俺の彼女について語り、友人らがやんややんやするのに調子に乗って、大口を叩いたのだ。たしかに褒められた行為でないとはいえ「男子のノリなんて、そんなもんだろお?」と眉をしかめれば、そっぽを向いて眉間の皺を深める。

「結局、なにに怒ってんだ?」と考えることしばし、はっとして「まさか、お前・・・!」と。

「俺の彼女、スキなのか!」

勢いよくふり向いたパシリは、ジャスミンティーをつかみ、もう片手で俺の顎をつかみ「俺の卵を飲め!」とストローを口に突っこみ、ぐりぐり。

「笑えない冗談云われた彼女の思いを、身を持って知れ!」

図星をつかれたような暴走ぶりだが、真意はちがうだろう。ストロー攻撃してくる直前、ふり向いた顔は泣きそうに、ひしゃげていたから。




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