お前は俺を愛さないが、俺はお前の息子を愛している

ルルオカ

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お前は俺を愛さないが、俺はお前の息子を愛している

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探偵事務所にきた女性は失踪した夫を探してほしいとのこと。
夫はオカルト専門のフリーライター、ペンネーム「オカルター」で一般人の相談や依頼によって、その人が体験した超常現象や怪奇現象などの調査をし、詳細を探りだしたり、真偽やからくりを解明するらしい。

失踪する前に調べていていたのは、相談者の姉の失踪にまつわる不可解な事案。
相談者姉は事故で夫を亡くし、通夜や葬式をせず、遺体を持ちだして行方をくらましたのだとか。
一年後、もどってきたなら「遺体はもう焼いた」と告げて、腕に抱く赤ん坊を見せた。
姉曰く、夫が亡くなった直後に妊娠に気づき、不幸とおめでたが同時に起こった、そのことで精神が錯乱「だれにも夫も子供も奪われてなるものか!」と思いつめて逃避行したとのこと。
なにがあったにしろ、適切に遺体の処理をしたらしいし、姉の安否が確認できたのだから、しかも亡き夫の置き土産のような子供をつれて帰ってきたのなら、それでよしとしたいところ、相談者は今一、歓迎できず。
赤ん坊が似ているのレベルを越えて亡き夫にそっくりで「生まれ変わったのか?」とぞっとするほどだったから。

胸騒ぎを覚えた理由はほかにもあり、相談者は姉と似たような経験をした人の話を聞いたことがあったらしい。
兄を亡くした妹がやはり、遺体を持って消えてしまい、一年後に帰ってきて赤ん坊を抱いていたという。
そう、その赤ん坊にも亡き兄の生まれ変わりのような面影が。
相談者の姉の場合は、夫の遺伝子が受け継がれているのだから瓜二つでもまだ納得できるが、まさか妹が兄と子供をもうけたというのか。
そう懸念した両親が遺伝子検査をさせたところ、九十九パーセント兄の子でありつつ、妹の血は混じってらず。
妹に問いただしたところで「兄さんと密かにつきあっていた女の人から預かった」とかなんとか、詳しくは教えてくれず、明らかにするのが恐ろしいようで、まわりも問いただせず、有耶無耶のまま。

このことだけでも十分に奇っ怪なところ、関連があるのかないのか、妹が失踪してから三日後、近くに住む男が忽然と消えたらしい。
近隣でつづけざま、二人も行方不明になったのだから話題になったのだが、消えた男と消えた遺体とその比較をして、まわりは眉をひそめたという。
彼らは同い年であり、見た目や体格、性格、社会的立場などの類似点も多かったのだ。
「だからどうした」の説明はつけられず、いまだに男の行方は知れないままで、謎が謎を呼んだこの一件は、今では都市伝説のように語られているとか。

友人から聞いた、この話を思いだした相談者が、警察の公表する行方不明者のリストにアクセスしたところ、姉が失踪して三日後、亡き夫と近い年ごろ、容姿や雰囲気が似た男を見つけだした。
自分の実体験と友人の話と、偶然とは思えない、この一致が気になってしかたなく、オカルターに連絡をしたわけだ。

興味を引かれたオカルターは、相談者のような体験をした人が他にいないか、また人が死亡し、すこしして似た人間が行方不明になるという事案が全国で起こっていないかと、コネとネットを使って調査。
思ったより、酷似した事例が見つかり、亡くなったのも、似た失踪者も男しかいないと判明。
ただし、遺体をつれて失踪した本人はもちろん、関係者に話を聞こうとしても、ことごとく拒絶されてしまい、だからこそ余計にきな臭いと考えて調査を続行。

起承転結や教訓があるでもない、とらえどころがなく不気味な内容のテイストは、古来の怪談に通じるものがあったに、過去を遡って探ることに。
もしかして昔にも同じことが起こっており、それが現代でも続行しているのではないかと考えたよう。
関係者が口を揃えて「死んだ人間が赤ん坊として生まれ変わった?」と疑うのからして、生まれ変わりに関する伝承がないかと古い文献を読み漁ったところビンゴ。

ある地方に伝わる、仲むつまじい双子の闘神の話だ。
幼いころに親を亡くしたこともあり、兄は目にいれても痛くないとばかり弟を溺愛し、弟は兄を父親代わりに慕い、双子は固い絆を結んでいた。
が、弟と結ばれた女の神に、兄が手をだして子を成してしまう。
怒り狂った弟が襲いかかって、止めようとした兄は逆に刺殺を。
闘神ならではの避けようがない事故的な不幸だったとはいえ、兄はそう割りきれずに遺体を抱きしめて、死と生を司る女神のもとへ。
彼女は死者を、赤ん坊に生まれ変わらせることができるのだが「そもそも不義を働いたお主がわるかろう」とにべもなく突っぱねた。
ぐうの音もでないところ、なりふりかまわず「自分の命を捧げてもいいから、どうか弟を!」と大泣きして土下座すると「じゃあ、わたしと同じ力をそなたに授けよう」と思いがけない申し渡し。

「とはいえ、女は無から有を生みだせるが、男は無から有を生みだせぬ。
故に有から有を生みださねばならぬのだ。
自然の摂理に反すること故、筆舌に尽くしがたい辛苦を味わうことになるが、それを罪の償いとして受けいれることが、そなたにできるか?」

厳粛な女の神の問いかけに、兄の神が、血が滲むほど額に地面に擦りつづけたことで力の授与が行われた。
蹴鞠ほどの真っ白な繭が、かすかに蠢くこと十ヶ月ほど、内側から裂けたなら、玉のような赤ん坊が。
生まれたの皺だらけの顔に、面影がありありと反映されているのを目にして、兄は泣きじゃくって赤ん坊を抱きしめたという。

ここまでの内容なら「生まれ変わり」との共通点があるだけで、依頼主の件とのつながりは遠すぎるように思えるが、注目すべきはこのあと。
殺した弟を、赤ん坊という形で生き返らせることができ、めでたしめでたしで終わらず、禁忌を犯したとして双子の神は地上に追放された。
というのは表向きで、決して死から免れられない人間を哀れんだ女の神が、ささやかな救済措置を設けようとしてしての画策だったらしい。
山奥のある村に舞いおりた双子の神は、兄が生まれ変わりの儀式を行い、赤ん坊の弟は成長してから村の女と交わって子供をつくり、力を受け継がせた。
ほんらい、力を保有する兄が子づくりすべきところ、儀式によって体も魂も汚れてしまうため、その血を受け継がせるのは危険とあり、双子の弟と役割分担をさせたという。

弟がもうけた子供はもちろん、以降の子孫も必ず二人の男児、双子の兄弟が生まれた。
兄は人の生まれ変わりを成せる力を持ちつづけ、弟はその能力を受け継がせる力を持ちつづけ、秘境にある村は、死を受けいれられない人々の、この世では許されざる邪な願いを叶えているとのことだ。



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