あの秘書、とうとう社長と濃厚接触したらしいよ

ルルオカ

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お願いだから「俺にはお前しかいない」なんていわないでくれ!

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森下は「俺にはお前しか友だちがいない」を口癖によく愚痴る。

俺以外に友人ができないのを、あまり可哀そうだと思わないのは、森下の初動に原因があるから。

相手と知りあってばかりの段階で、一時間おきに「今なにしている?」と聞き、自分のことを報告。

既読スルーされるか、既読がつかなければ、さらに十分おきに「俺のことキライになった?」攻撃が。

この病的なかまってちゃんぶりは、じつは一週間でおさまり、以降は割とまともに。
が、ほとんどの相手は「このまま関わればストーカーになって、果てには俺を殺すかも」と怯えて、縁を切ってしまう。

対して「またキラわれた!」と泣くだけで、しつこく追いかけず、相手を恨みもしない森下は、根がわるい人間ではない。
頭は致命的にわるいが。

そうして多くの友人候補が逃げてきたなかで、どうして俺は唯一の友人になれたのか。
優しくない正直者だったからだ。

もちろん俺も、はじめは洗礼を受けたとはいえ「傷つけないよう、どう返信するか」なんて微塵にも考えず。

「糞しているのを報告させるなボケ」と悪態を吐いたり「これ以上鬱陶しくかまったら絶交するぞ」と脅したり。
あけすけな物言いをしたから、さほどストレスなく一週間を乗りきれたわけ。

さんざん罵られたはずの森下はけろりとして、俺とのつきあいをつづけているし。
結局のところ、どんな内容だろうと返信してくれれば、よかったらしい。

「こいつ、やばいのでは?」と相手を震えあがらせておいて、いい気なもの。

なかなか食えないやつながら、ふだん、つきあう分には問題なし。
ただ、愚痴には苛だつことが多く、今日もため息を。

「自分で原因が分かってて、それでも改善できないなら、あきらめろ」

「だって、だってさあ」と涙目の森下がごねて曰く。

「俺がお前しか友だちいないの、お前、恥ずかしくないか?」

いつにない頓珍漢な発言に「はあ?」と眉をしかめるも、ぼやきつづけて。

「俺だって、一人しか友だちいないの恥ずかしいし」

とたんに頭を沸騰させ、立ちあがって机を叩いた俺は吠えてしまい。

「おまえには俺だけがいればいいんだよ!」

「ばーか!」と口にした瞬間、後悔。

いつも「友だちがほしい」と森下が愚痴るのに、ずっと堪えていた心の叫び。

「そ、そうだな」と頬を赤らめるのを見ての屈辱感たるや。

森下は救いようのない阿呆だが「俺にはお前しか友だちがいない」との言葉を真に受けて、絆された俺も大概だ。






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