3 / 22
お願いだから「俺にはお前しかいない」なんていわないでくれ!
しおりを挟む森下は「俺にはお前しか友だちがいない」を口癖によく愚痴る。
俺以外に友人ができないのを、あまり可哀そうだと思わないのは、森下の初動に原因があるから。
相手と知りあってばかりの段階で、一時間おきに「今なにしている?」と聞き、自分のことを報告。
既読スルーされるか、既読がつかなければ、さらに十分おきに「俺のことキライになった?」攻撃が。
この病的なかまってちゃんぶりは、じつは一週間でおさまり、以降は割とまともに。
が、ほとんどの相手は「このまま関わればストーカーになって、果てには俺を殺すかも」と怯えて、縁を切ってしまう。
対して「またキラわれた!」と泣くだけで、しつこく追いかけず、相手を恨みもしない森下は、根がわるい人間ではない。
頭は致命的にわるいが。
そうして多くの友人候補が逃げてきたなかで、どうして俺は唯一の友人になれたのか。
優しくない正直者だったからだ。
もちろん俺も、はじめは洗礼を受けたとはいえ「傷つけないよう、どう返信するか」なんて微塵にも考えず。
「糞しているのを報告させるなボケ」と悪態を吐いたり「これ以上鬱陶しくかまったら絶交するぞ」と脅したり。
あけすけな物言いをしたから、さほどストレスなく一週間を乗りきれたわけ。
さんざん罵られたはずの森下はけろりとして、俺とのつきあいをつづけているし。
結局のところ、どんな内容だろうと返信してくれれば、よかったらしい。
「こいつ、やばいのでは?」と相手を震えあがらせておいて、いい気なもの。
なかなか食えないやつながら、ふだん、つきあう分には問題なし。
ただ、愚痴には苛だつことが多く、今日もため息を。
「自分で原因が分かってて、それでも改善できないなら、あきらめろ」
「だって、だってさあ」と涙目の森下がごねて曰く。
「俺がお前しか友だちいないの、お前、恥ずかしくないか?」
いつにない頓珍漢な発言に「はあ?」と眉をしかめるも、ぼやきつづけて。
「俺だって、一人しか友だちいないの恥ずかしいし」
とたんに頭を沸騰させ、立ちあがって机を叩いた俺は吠えてしまい。
「おまえには俺だけがいればいいんだよ!」
「ばーか!」と口にした瞬間、後悔。
いつも「友だちがほしい」と森下が愚痴るのに、ずっと堪えていた心の叫び。
「そ、そうだな」と頬を赤らめるのを見ての屈辱感たるや。
森下は救いようのない阿呆だが「俺にはお前しか友だちがいない」との言葉を真に受けて、絆された俺も大概だ。
0
あなたにおすすめの小説
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
僕を守るのは、イケメン先輩!?
八乙女 忍
BL
僕は、なぜか男からモテる。僕は嫌なのに、しつこい男たちから、守ってくれるのは一つ上の先輩。最初怖いと思っていたが、守られているうち先輩に、惹かれていってしまう。僕は、いったいどうしちゃったんだろう?
雪色のラブレター
hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。
そばにいられればいい。
想いは口にすることなく消えるはずだった。
高校卒業まであと三か月。
幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。
そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。
そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。
翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる