あの秘書、とうとう社長と濃厚接触したらしいよ

ルルオカ

文字の大きさ
8 / 22

まじでキスをする五秒まえに先輩は聞かずにいられない

しおりを挟む




日本史の先生に頼まれて、歴史準備室に資料を片づけにいったところ。

ドアを開けて、男子生徒と女子生徒が抱きあいチュッチュしているのを目撃。
目を見張り硬直しつつ「うわあ、いやだなあ」とげんなりしたもので。

これほどではないが、男女がいちゃついて通路を塞いだり、棚のまえを占拠したり、なんてことは、ままある。

で「ちょっと、すいません」と声をかけると「なに見てんだゴラあ」と睨まれたり「やだあ」と笑われたり。
すくなくとも「ああ、ごめん」「どうぞ」とまともな対応をされた覚えがない。

にがい記憶があるに、音を立てず扉を閉めたいところなれど、早く帰宅したくもある。
遠回りする、欲しい商品をあきらめるといった妥協をするのは、もう、こりごりだし。

どうせ不愉快にさせるなら、思いきったほうがいいと「資料を片づけたいんですけど!」と声を張りあげた。

悲鳴をあげた女子は「空気読みなさいよ」とばかり涙目で訴えて去っていったが、男子、上履きの色からして先輩はにやにや。

やおら近寄って「あーあ、いいところだったのに」と言葉とは裏腹に、俺の首に腕を回し、顔を接近。
お互いの鼻先がつきそうなところで止まり「おまえが、代わりに相手してくれる?」と囁いて。

ぎょっとしつつ「そんな漫画みたいな台詞、現実に口にする人いるんかい」と興味津々に見かえしてしまい。
逃げずに、突き放しもせず、このままでは唇を奪われそうだったが、寸ででとどまった先輩曰く。

「俺のこと、きらいか?」

この状況でその台詞?

「やっぱり漫画のような存在だな」と感心するような呆れるような。
危機的状況なれど肩の力がぬけて、率直な思いを口に。

「きらいじゃないですけど、鬱陶しいです」

とたんに噴きだした先輩は、俺の持つ資料を取ると「わるかったな。これ、ここでいいのか?」と資料を片づけてくれたもので。

翌日から、休み時間のたびに先輩がクラスにきて、俺にべったり。

どうも先輩は悪評が絶えない人らしく「おまえ、だいじょうぶか?」とまわは心配しきり。

耳にはいる悪評に、動揺しないでもなかったが、拒否することも逃げることもせず。

だって、先輩は棚のまえを塞いだことに逆ギレしなかったから。

たったそれだけのことでも、すこし俺は救われたし、先輩をきらいになれなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

蒼と向日葵

立樹
BL
梅雨に入ったある日。新井田千昌は雨が降る中、仕事から帰ってくると、玄関に酔っぱらって寝てしまった人がいる。その人は、高校の卒業式が終わった後、好きだという内容の文章をメッセージを送って告白した人物だった。けれど、その返信は六年経った今も返ってきていない。その人物が泥酔して玄関前にいた。その理由は……。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た

キトー
BL
【BLです】 「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」  無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。  そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。  もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。  記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。  一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。  あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。 【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】  反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。  ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。

処理中です...