セーラー服を着させないで

ルルオカ

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十四

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頬を殴られ、はっとして顔を上げた。

いつの間にか、見覚えのないロッカー室にいて、狭い室内には、道着姿の逞しい男どもが、暑苦しそうにたむろしている。

床に両手と膝をつく、俺のうなじを掴んでいるのも、筋肉隆々なお仲間の一人なのだろう。
うなじを掴む握力と、上からかかる圧力に、一応、野球部の俺がほんの身じろぎもできない。

鍛えた肉体の、質の差もあるのだろうが、剣道部なら、野球部より体術に長けているのかもしれない。

「やめて!着るから!セーラー服を着るから!」

殴られたばかりで、ぼやけていた視界が、その叫びでクリアになる。

焦点を合わせて見やれば、道着姿の男どもの中心に、義男がいた。

取り囲む奴らに見劣りしない背丈と体格をしながらも、いじらしく何かを両腕で抱きしめて、肩を震わせている。

抱いているのがセーラー服と気づき、拘束されているものの、できるだけ首を伸ばして「やめろ!」と声を張りあげた。

「義男にセーラー服を着させ・・・!」

訴えきる前に、頭を叩かれた。

掌だったから、先のパンチより、威力はなかったとはいえ、「お願い!やめてったら!ほら、俺、セーラー服着るから!」と悲痛な叫びがあがる。

俺はいくら殴られていい。
だから・・・!

と訴えようと、顔を上げたところで、道着姿の一人が前に立ちはだかり、しゃがんだと思ったら、俺の顔下半分を手で鷲掴みにして、口を塞いだ。

相変わらず、うなじを掴む手に制されていて、せめて、口だけでも抗おうと「うー!うー!」と唸る。
顎を砕かんばかりの、手の締めつけが、怖くありつつ、顔を振って唸りつづけるも、スカートをはく義男が覗けて、「く・・・!」と瞼を閉じた。

取り囲む奴らは、囃し立てたりしないで、粛々と着替えを見ているらしく、布擦れの音が、やけに耳につく。

音をかき消すように、ひたすら唸ったとはいえ、想像力が掻き立てられるのはどうしようもない。

これまで、そういった類の映像や画像を目にするのを、避けてきたといっても、複数の男に注視されての着替えに、よこしまな印象を持たないでいられなかった。

性の成熟の危機を覚えてから、努力と根性で食い止めてきた精通を、こんな最悪な形で迎えてしまうのか。

腰が熱く疼くのに歯止めが利きそうになく、諦めかけたとき、布擦れの音がやんで「ほら、着たよ」とやや怒ったように告げたのが、聞こえた。

「着たから、もういいだろ。ヒロちゃんを」

俺を人質に脅してまで、義男にセーラー服を着せたかった。
だけでは、もちろん、ない。

自分がセーラー服に袖を通せば、茶番もしまいと見こんでいた義男は、俺の身ばかり案じて、舌なめずりをする男に包囲されている危うさに、気づけなかったらしい。

「って、何、先輩・・・!」と慌てだした間もなく「やめて、そんなところ・・・あ、ああ!」と甲高く鳴きだした。

しまった、精通の心配している場合ではなかった。
と、目を見開けば、前と後ろに男に挟まれて、義男が開脚をしていた。

背後の男は耳をしゃぶりながら、セーラー服の裾から、両手をもぐりこませて胸をまさぐり、向かい合う男は、太ももを掴んで持ち上げつつ、うつ伏せになって、スカートに顔を突っこんでいる。

布越しだったり、スカートに埋める頭に遮られて、肝心なところが見えなかったが、その分、しゃぶる水音や、布擦れの音、荒い息遣いが耳について、卑猥さが際立っているようだった。

義男もまた「う、ん、っ、ぅん・・・!」と目を瞑って唇を噛み、反応しまいとするほど、囲む男らを煽っているように見える。

淫猥な空気に当てられ、囲う男らのように、しばし俺も目を血走らせたものだが、義男が涙を一粒こぼしたのに胸を突かれ、「うー!うー!」とまた顔を振り、唸りだす。

顔への手の絞めつけは緩んでいなかったものを、諦めないで抗っていたら、ため息を吐かれて、口元が解放された。
とたんに、垂れっぱなしの涎を散らして、「やめろ!」と怒声を張りあげる。

「お前ら、一体、何を考えているんだ!」

無視できない声量のはずが、囲う男らは応戦してくるどころか、見向きもせず「ヒロちゃ・・・!」と振りむいた義男にしろ、すぐに漏れそうになった喘ぎを噛み、目を伏せる。

くそと、思いつつ、もっと声を張ろうと、息を吸ったところで「何を考えている?」と目の前にしゃがむ男が鼻で笑った。



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