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プロローグ
1話 神(自称)との出逢い。異世界への招待。
しおりを挟む前略、お父さんお母さん。俺、巫拓斗、17才は、本日をもってこの世から卒業します。
両親であるあなた達を置いて先立つ不孝をお許しください。
そして妹よ。強く生きるんだぞ。
……え? ああ。いいえ、自殺じゃないです。
というかもうすでに死んでます。
ええ、そうです。何か文句があれば、今、俺の目の前にいるこの自称『神』に言ってください。
……こいつが、俺を殺した張本人ですから。
「ごっめ~ん! つい、うっかりね! 許してちょ♪」
「てへぺろっ」と、クソむかつく効果音が聞こえてきそうなノリで、舌を出した自称『神』。正直、こんないい加減な神に地球が管理されていただなんて、とてもじゃないけど信じられない。
……ああ、そうか。
「ニーチェさん。あなたは正しかったようだ。……神は死んだ」
「ちょ、いきなり酷いこと言うなぁ! ぼく、これでも神様だよ? ……もうっ! 減点ね!」
減点ってなんだよ、おい。
「今度ぼくを悪く言ったら許さないんだからねっ」
悪魔か。さては悪魔だなこいつ。
ってか許さないって、それは俺のセリフだ。勝手に殺しやがって。
「……はぁ。で、どうするんだよ。元通りとは行かないんだろ?」
この悪魔によると、一度死んでしまえば絶対に生き返ってはならないのが原則だそうだ。
まあ、当たり前と言えばそうだが、うっかり殺したんならそこは例外でいいじゃんか。
「だからぁ~、ダメなんだってそれは~」
「おい、貴様。勝手に考えてること読み取るのは辞めてもらおうか」
「だってぼく、神様だもの」
……だ、だめだ、こいつといると精神まで衰弱死しそうな気がする。
……このクソ悪魔め。
「あ、またぼくの悪口言ったね! 減点!」
「言ってねーよこのアホ神!」
「あー! また言ったぁ! ふふふ~、またまた減点だよ!」
うぜぇし、うるせぇ。なにが減点だよ。 こっちは死んでるんだよ。
「あのなぁ、減点減点言ってないで、これからどうなんのかさっさと言ってくれよ」
いい加減イライラしてきた俺がそう言うと、悪魔がニヤリと笑って口を開いた。
「あ~あ、残念! キミが大人しく紳士な対応をしてくれれば、元に戻してあげようと思ってたのになー、残念だなー。うんうん」
「おい、棒読み過ぎるぞお前。何が言いたい」
「えーとぉ、減点につぐ減点によって、キミには罰が与えられまーす!」
「……はぁ?」
急に何言い出しやがったこいつ?
「罰として、今からキミを異世界へ転生させます!」
……ん?
「その先で、キミには最弱ダンジョンの管理人をしてもらいます! ……オーケー?」
何言ってんだこいつ。
「ノー。……つか、なんだって? ダンジョン?」
「そう、ダンジョン! 異世界ダンジョン! キミがよく読んでた小説にも出てきたようなやつだよ♪ ただし最弱ダンジョンだけど」
……マジかよ。
ってことは小説とか漫画であったようなアレコレが本当に体験できるのか……?
……ふむ。
「……それが罰だぁ? 勝手に俺のこと殺しておいて。また随分と勝手に決めてくれるじゃないか」
おい、楽しそうじゃないかこの野郎! なんかワクワクしてきたっ!
「お、落ち着いて? 言ってることと思ってることが一致してないよ?」
「うるせっ! 黙ってろ!」
……ふむ。異世界のダンジョン管理、か。
このまま元の地球に帰るより、断然楽しそうじゃないか。
どうせ友達も恋人もいないぼっちだったし、別にいいか。
「でしょでしょ?」
「ああ。……ってかお前、最初から俺にやらせるつもりだったろ」
「え、ええななんのことかなななっ!?」
「……ヲイ」
「フュ~ヒュヒュひ~♪(口笛のつもり)」
「…………」
「…………」
「言え」
「はい」
……やっぱそうじゃねーか、こいつ。
ーーこの自称神が語る(言い訳する)には、とある異世界の、とある最強ダンジョンが攻略されたらしい。そのダンジョンを管理していた管理人はそのまま死んでしまい、残ったダンジョンは瞬く間に、その世界最弱のダンジョンに成り果ててしまったんだとか。
どうやらスライムしか湧かないから、最弱ダンジョンの名をつけられてしまったらしい。
そして、その世界では、ダンジョンが全ての生き物にとって生活の要であり、ダンジョンが一つでも欠けてしまうと、たちまち付近国家の経済が破綻してしまうんだそうだ。
そこで、急遽新しい管理人を探したところ、ちょうど異世界について知識がある男が死んだというではないか。
……まあ、俺のことだが。
そういうことで、俺に白羽の矢が立ったわけらしい。
……それにしても、
「んな回りくどいことしなくても、最初から説明してくれりゃ良かったのに」
「だって、キミ、すっごい怒ってたんだもの。絶対反対すると思って」
「神のくせに、そこらへんはわかんないんだな」
「もーー! 馬鹿にしないで! ……えー、あ、あの、キミを殺しちゃったのは本当に謝るからさ、行ってくれないかな?」
「……わかったよ。実際楽しそうだしな。行ってやる」
「えっ、ホント!? ありがとう! じゃ、今すぐ行ってもらうね! もう経済破綻が目に見えてきてちゃってるから!」
「そんなやばいのかよっ!?」
「そんなにやばいの! ささ、今転生させるから!」
神がなにやら慌ただしく動き始めた。
「それでね、カンナギ・タクトくん。キミのことなんだけど」
……ん?
「向こうに行く際に、キミの新しい身体にいわゆるチート能力を付与しておくから、ぼくのせめてもの償いとして受け取っておいてね」
「お、おお。そうこなくっちゃ」
チート能力。異世界物の定番じゃないか。俄然やる気が出てきたぞ!
「ちなみに、ダンジョンの管理人である限りは不老不死だからね」
「マジか!?」
「うん、そうだよ。……あ。じゃ、もうそろそろ行くよ! ぼくはいつでもキミを見てるからね!」
「わかった」
「じゃ、またどこかで! 近いうちに!」
神が両手を広げた途端、俺はまばゆい光に包まれた。
……ん? 近いうちに? それはどういう……。
そして、どんどん遠のく意識のなか、最後に聞こえてきた神の声に、俺は耳を疑った。
「あ、あと、冒険者にダンジョンを完全攻略されたら、管理権剥奪されて死んじゃうから気をつけてね!」
………な、なんだとぉぉぉぉ!
こ、こいつやっぱり悪魔じゃねぇぇかぁぁぁぁ!
そんな魂の絶叫とともに、俺の意識は途切れた。
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