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第四章/出席番号七番・神林いずみ
(六)
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入試や卒業式などのイベントと重なることから、学年末テストの結果は掲示されない。
失恋すると女は、食欲がないだの痩せただの、私傷ついてますよアピールに走るのが定例だけれど、どうやら私は逆のようだ。【二位】と書かれたテストの結果を返すときの、先生の「女って怖い」みたいな顔は、墓場まで持っていくことにする。
修了式を迎えたその日、先生は教壇に立ち、私たちに言った。
「みんな一年間よく頑張った。勉強や部活、その他さまざまな困難に全力でぶつかっていくみんなの姿を見ていたら、俺も現状に甘んじることなく、明日の自分をより高められるように、努力していかないといけないと思ったよ」
この聞いていて恥ずかしくなるくらいまっすぐな先生の言葉が、私は好きだった。
「そして日記の企画も本当によくやってくれた。俺が想像していたよりもずっと、みんなは自分の将来についてよく考えていたんだな。十年後が今から楽しみで仕方ないよ。たった一人なにも書いてない奴に関しては、まぁ残り数日で更新するだろう!」
自らに言い聞かせるように言う。残念ながら逢坂君は更新しませんよ、先生。
先生には愚直という言葉がよく似合う。先生は人を疑うということを知らない。まったくどうしてこの人が時野旅人なのだろう。ギャップにもほどがある。
先生と付き合えば、その心の影に触れられると思ったけれど、叶わなかった。十年後、先生の口から直接明かされるのを待つしかない。
この結果は悔やまれるけれど、日記がもう一度更新されて、完結という形できちんと結ばれることを切に願おう。
放課後、私と逢坂君は久々に寄り道をして帰った。
「懐かしいね、この河川敷」
ここに行きたいと言ったのは、なんと逢坂君だ。けれど言い出しっぺは特別なにをするわけでもなく、穏やかな川の流れを見つめている。私は道の脇にぽつりぽつりと咲き始めたたんぽぽを数えながら歩いた。
途中で、芝生に座って談笑しているカップルの後ろを通り過ぎた。アカ高の生徒だろう。青春という言葉がよく似合う、微笑ましい光景だった。
以前は私たちもああして、芝生に座って、何時間も本について熱く語った。あんなに距離は近くなかったし、もっと暗くて寒い秋の暮れだったけれど、私たちも周りには、青春を謳歌しているように映っていたのだろうか。
たんぽぽの隣に生える、一本のつくしを見つけた。理科の教科書で見たことはあるけれど、実際に生えているものを見たのは初めてだった。
逢坂君にちょっと待って、と言って腰を下ろし、つくしを眺める。思ったよりも小さい。きっと、これからどんどん伸びるのだろう。
「賭けるもの、なんでもいいんだな」
春の風は唐突に吹く。私は舞う髪を抑えながら、いいよ、と返す。逢坂君は私の隣に腰を下ろすと、つくしをぷちん、と引っこ抜いた。
「俺を探さないでほしい」
探さないでほしい。どうしてこんなことを言われると予想できようか。
「まるで遺言ね」
「勝手に殺すな」
「でも、そういうことでしょう?」
逢坂君はなにも言わずに立ち上がると、再び歩き出す。カップルの声が聞こえなくなって、散歩中の犬と二匹すれ違って、ようやく彼は口を開いた。
「終わりがないものなんてない。人も、縁も、いつか終わる。それは今日かもしれないし、明日かもしれない。十年後、あるいはもっと後かもしれない。そのとき俺は、誰にも俺を思い出してほしくない。俺はそもそも存在していなかったものとして、ひっそりと地球の一部になりたい」
そう言って、手の中のつくしを放り捨てた。
なんて悲しいことを言うのだろうと思った。桜の蕾は膨らみ始めているのに、眩しい春はすぐそこにあるのに、彼の目には映っていないのだろうか。たとえば彼が、豊かな愛情を受けて育っていたとしたら、死の間際を見ていなければ、こんなことは言わなかったのだろうか。
彼は、私の前からいなくなろうとしている。そう思った。なぜかと問われれば、女の勘としか言いようがない。
探さないでなんて言わないで。いなくならないで。言いたいことはたくさんあった。けれどそれは全て、彼との会話には不必要な感情の要素だ。
「わかった。十年後の賭け、楽しみにしてる」
彼の前では最後まで、いい子でいたいと思った。
逢坂君が書斎を出て行くまでの残りの数日間、私たちはまるで恋人のように、あるいはきょうだいのように過ごした。
【もうすぐ帰るね。いまスーパーなんだけど、なにが食べたい?】
【なんでもいい】
【じゃあ安売りコーナーにある『納豆とするめいかの焼きそばパン』を買ってくね】
【カレーが食べたい】
カレー。子供みたいだ。それなら家に帰って作ろう、カレーなら多く作っても両親には怪しまれない。衣食住においては私が主導権を握っているので、ラリーに打ち勝つコツを段々掴んできた。
私たちは夏休みの宿題を急いで片付けるように、これまで以上に本の話に花を咲かせた。そういえばあの本の話をしてなかっただとか、あの本をまだ読んでないなら今すぐ読むべきだとか、記憶の引き出しを片っ端から開けて語り合った。
特に最後の三日間にいたっては、私も逢坂君もほとんど外に出ることなく、書斎にこもっていた。話をしていたかったのはもちろんあるけれど、私が家のどこかでスマホをなくしてしまったのも一つの理由だ。逢坂君の携帯から電話をしてもらったけれど、運悪く電源も切れてしまったようで、見つからなかった。
以前の私だったら血眼になって探していただろう。けれど時野旅人の日記は相変わらず更新されていなかったし、私自身の日記も先生と別れてから更新していない。両親やチナとはパソコンのメールでなんとか連絡が取れるし、ツイッターをチェックしなければならない人ももういない。
「そのうち出てくるだろ」
逢坂君の言葉を、そうだね、とすんなりと受け入れた自分に驚いた。私は正しさを少し失う代わりに、少しの自由を得たのかもしれない。
三月三十一日は生憎の雨になった。文学的に言えば、空が泣いていた。
逢坂君が最後のお風呂に入っている間、私は罪悪感を感じつつ、彼のボストンバッグを開ける。【また来てね】とメッセージを添えたお菓子の袋を、こっそり入れようという作戦だ。直接だと受け取ってくれるかわからなかったので、この方法しか思いつかなかった。
一番上にあった通知票を見つけた途端、悪い衝動に駆られた。ここには彼の成績の他に、学年末テストの結果、そして進路調査票のコピーが挟まっている。
彼の順位が見られて困るようなものでないことは、私でなくても知っている。進路についても、彼は私の目標を知っているのに、私は彼の目標を知らない。不公平だ。そうやって、無理やり正当な動機を作ろうとする。
彼氏のスマホを盗み見るときの心理って、こんな感じなんだろうな。どくどく鳴る心臓と闘い、私はついにそれを開いてしまった。
まず目に飛び込んできた学年末テストの結果に、目を疑う。
【一位/三五〇人】
彼は毎回、二十位前後をさまよっていたはずだ。それなのに、一年間の集大成、最後の最後で大躍進の一位。本番に弱いだなんてとんでもない。
まさか彼は、わざと順位を落としていたのだろうか。いや、そんなことしてもなんのメリットもない。そう思い直して、進路調査票をめくった。
【第一志望: 】
【第二志望: 】
【第三志望: 】
進学、就職、ともに空欄だった。
おっちょこちょいな先生が誤って、記入前の紙を挟んでしまったのだろうか。けれど氏名の欄には、確かに【逢坂綾人】と書かれているし、紙の右端には赤ペンで【親ごさんとよく話し合うように。いつでも相談に乗るぞ】と書かれている。『御』が書けていない。先生の直筆で間違いない。
進学先に迷っているのだろうか。けれど進学にすらチェックがついていない。ならば金銭的な問題だろうか。それなら就職を選ぶか、先生がとっくに奨学金をすすめているはずだ。
ダメだ。どうやったって空欄である理屈が通らない。
怖くなった私は通知票を元あった場所に戻した。そして目的のお菓子の袋を鞄の深いところに入れようとして、指先に当たった固いものに気が付く。指に馴染むその感触を、鞄から取り出した。
「なにしてんの」
書斎に戻ってきた逢坂君が、私を見下ろす。
「どうして私のスマホが、逢坂君の鞄の中にあるの?」
自分でもわかるくらい、スマホを持つ手が震えていた。逢坂君は私の横に腰を下ろした。開いたままの鞄に入ったお菓子の袋を見て、鞄を閉める。
「たまたま鞄の中に落ちたんだろ」
そうだね、とは返せなかった。
私が勝手に鞄を開けたことを怒らない逢坂君が怖くて、小雨が降る中、彼が家を後にするときも、私はうまく笑えなかった。笑顔で送ろうと決めていたのに。
逢坂君のまるまった背中が、暗闇の中に溶けていく。点となって消えてもなお、私はしばらく門の前から動けなかった。寒さを感じて家に戻り、スマホの電源をつけると、充電は五十パーセント残っていた。
滞っていた着信やメッセージなどを一通り受信し終えたところで、私は『オープン・ダイアリー』を開く。今日は企画の最終日ということもあり、半数以上の人が日記を更新したようだ。時野旅人の日記は、やはり更新されていなかった。
自分の日記を更新する気は到底起きず、私は書斎に向かう。ソファに倒れ込み、すり、と鼻を寄せた。逢坂君は確かにいた、この場所に。本当に微かに、私のものではない男の人の香りがする。けれど明日にはなくなっているのだろう。消えてしまうのだろう。
今のうちにできる限り彼の記憶を焼き付けたくて、犬のように鼻を布にこすりつける。嗅覚はすぐに壊れて、彼の香りを感じることはできなくなった。
私は再度『オープン・ダイアリー』を開いた。奇跡を求めて新着記事一覧を見ていると、そこにただ一人、日記を更新していなかったハンドルネーム『傍観者』を見つけて飛び起きた。
奇跡が起きた。
私がスマホをなくしていた、いや、逢坂君が隠し持っていた三日間で、彼は日記を更新していたのだ。
私は震える指で日記を開く。彼の言葉、感情、想い、そして十年後の未来。そこには彼の感じているもの全て詰まっているはずだ。
――読み進めていくうちに、膨らんだ気持ちが萎んでいく。
率直にいって、この日記は拙い。文法は無視、だ・である調と、です・ます調も混在している。大人に憧れる幼女が口紅を塗りたくったような、上辺ばかり綺麗に繕った文章は、とてもあの逢坂君が綴ったものとは思えない。
考えがあってのことだろうかと、残りの二日分の日記を読んでみたけれど、伏線や隠されたメッセージなども見つからず、私は裏切られたような気持ちで日記を閉じた。
ふと、時計を見る。時刻は二十二時五十九分。時野旅人が日記を更新する一分前だ。
捨て鉢になりそうな心を奮い立たせて、私は最後の奇跡を待った。迎えた二十三時、私は更新ボタンを連打する。すると画面に、時野旅人の文字が浮かび上がった。
その日記を読み終えた瞬間、私は着の身着のまま家を飛び出した。
◆三月三十一日『あしたの僕をさがさないで』
木から落ちた一枚の葉が、川を下って、海に出て、いま、沈もうとしている。新しい葉が生まれたら、古い葉にはなんの価値もない。古い葉の存在は忘れられ、枯れていく。
この理不尽な世界に、全く抗おうとしなかったわけでもない。けれど希望を持つには、絶望が多すぎた。
僕は上手に世界にかえりたかった。そのために周りをよく見て、できるだけ身を縮こめて、存在を消した。僕の一部がどこにも残らないように、孤独という一番安全な場所に身を置いた。
思い出はいらない。手放すときに悲しくなるから。
温もりはいらない。求めずにはいられなくなるから。
愛されたいと嘆く君に、伝えたいことがある。
他人の目に映る君は、他人の世界の脇役だ。どれだけ着飾ろうとも主役にはなれない。当然だ。本当の君は感情的で、わがままで、少しもいい子ではないのだから。
君の目に映る世界でこそ、君は主役でいられる。好きなものはとことん愛せばいい。嫌いなものは跳ね除けてしまえばいい。他人は君の世界の脇役なのだから。
それで全てが上手くいくわけではないけれど、それでも今よりずっと、自由に生きられるはずだ。
僕の旅は終わるけれど、一つだけ後悔していることがある。一瞬でも、僕の世界に君を招いてしまったことだ。誰かの一番になりたいと思う気持ちなんて、僕は知らずにいたかった。
どうか、あしたの僕をさがさないでほしい。君がこのメッセージに気付く頃、君の世界の脇役に、僕はもういないのだから。
◆ハンドルネーム/時野旅人
パステルカラーの部屋着をどろで汚した私を見て、タクシーの運転手は家出だと思ったのだろう。家に帰ったほうがいいよ、と諭す口調が腹立たしくて、いいから早くと二度、声を荒げた。
数日前までは確かに穏やかだった川は、増水して地上との境目が曖昧になっている。こんな暗いところに沈まれたら絶対に見つからない。
タクシーを降りて私は走った。ローファーの先に水がたまって、地に着く度にちゃぷちゃぷと波打つ。
車内でもう一度日記を見ようとしたら、時野旅人のアカウントはすでに消去されていた。遺書すら残してくれないなんて、彼はどこまでも私をあまやかしてはくれない。
思い返せば彼は、先生が時野旅人であるとも、自分が時野旅人でないとも、一度も明言したことはなかった。言葉巧みに私を誘導して、思い込みを事実にさせた。私はずっと、彼の手のひらの上で踊らされていたのだ。打ち合いなんてそもそもしていなかった。彼はボールを手で投げて、私ががむしゃらに打ち返すさまを見て楽しんでいたのだ。
彼には勝てない。悔しい。とても悔しい。
だから、好き。どうしようもなく好き。
橋の手前で、もぞりと動く影を見た。私は土手を駆け下りる。瞬間、どぷん、と水面が波打った。
「逢坂君!」
半身まで水に浸かった彼は、こちらを振り向いた。表情こそ見えなかったけれど、彼は逃げるように川の中央に向かっていく。流れに押されて、その身がぐらぐらと傾いている。
スマホと財布を放り投げて、私は川に飛び込んだ。けれどすぐに流れに足が取られて、川に飲み込まれる。
もがいた。そこまで深くないはずなのに、足が地に付かない。泥臭い水が鼻を刺す。目が開けられない。右も左もわからない。黒しかない。死ぬ、死ぬ、死ぬ。そればかりが頭に浮かんだ。
振り回した腕がなにかに当たった。怖くて振り払った。もう一度当たって、今度はそれに引き寄せられた。強い力が、私の身体を川縁まで引きずり上げる。四つん這いになった手足がコンクリートを捉えて、私はようやく咳き込むことができた。
「ふざけんなよ! お前、なんでッ……」
私の肩を掴んで、逢坂君は声を詰まらせる。怒りに満ちたその表情を見て、私は。
「ふざけんなは、こっちのセリフだよ!」
彼の首のしがみついた。壊れたロボットのように腕が震えて、歯の根が合わない。
「死ぬかと思った! 怖かった! 入水自殺とか、太宰治が好きにも程があるでしょ! バカじゃないの、本当に、バカじゃないの!」
「お前がこんなに早くここに着くだなんて思わなかったんだよ! お前に見つかるだなんてとんだ計算違いだ! 迷惑この上ない!」
逢坂君は私を引き剥がそうとする。私はなけなしの力を腕に込める。
「ならどうして私に遺書なんか見せたの? 数日前にここに下見に来て、あんなわかりやすい伏線張って、見つけてほしくなかっただなんて言わせない! 文章が、助けてほしい、僕はここだよって叫んでた!」
「違う!」
雨と、川と、私たちの喧嘩と、ぐちゃぐちゃに入り混じった音が橋のコンクリートに反響して、ぐわんぐわんと響く。
「大体、まだ賭けは終わってないんだから、さがさないでなんて聞くわけないでしょう! それにあんなかっこつけた告白しといて、言い逃げなんて許さない!」
「誰がッ、告白なんて!」
「してるじゃない! 一言一句覚えてる! 誰かの一番になりたいと思う気持ちなんて、僕は知らずに――」
「暗唱するな!」
逢坂君の腕が、ついに私を抱きしめた。震えている。私の右耳に、くそ恥ずかしいんだよ、とすり潰したような呟きを吐く。
緊張の糸が、ぷつりと切れた。
それまで泣いていなかったのが嘘のように、涙が溢れて止まらなかった。
四月になりたての夜風は冷たくて、彼と触れている部分だけが熱くて、暖を求める本能のままにすりよると、そのまま二人でコンクリートの上に倒れ込んだ。
生きている。
それを確かめるように、私たちは強く、強く抱き合う。
「こんな温もり教えやがって。責任取れよ」
「こんなに好きにさせといて、そっちこそ責任取ってよ」
「お前が好きなのは時野旅人だろ。あれは俺じゃない」
「時野旅人は、主役に、ヒーローなりたかった逢坂君の本音でしょう。私はもう時野旅人なしじゃ生きていけない。時野旅人の日記を出版するまでは絶対に死ねない」
「残念だったな。データは全部消した」
「残念でした。データは全部とってある」
「……」
「バカな女を見くびらないで。あ、でもさすがにさっきの投稿は保存してないから、あとで書き直しね」
逢坂君は、うんざり、を形にしたようなため息をついた。
失恋すると女は、食欲がないだの痩せただの、私傷ついてますよアピールに走るのが定例だけれど、どうやら私は逆のようだ。【二位】と書かれたテストの結果を返すときの、先生の「女って怖い」みたいな顔は、墓場まで持っていくことにする。
修了式を迎えたその日、先生は教壇に立ち、私たちに言った。
「みんな一年間よく頑張った。勉強や部活、その他さまざまな困難に全力でぶつかっていくみんなの姿を見ていたら、俺も現状に甘んじることなく、明日の自分をより高められるように、努力していかないといけないと思ったよ」
この聞いていて恥ずかしくなるくらいまっすぐな先生の言葉が、私は好きだった。
「そして日記の企画も本当によくやってくれた。俺が想像していたよりもずっと、みんなは自分の将来についてよく考えていたんだな。十年後が今から楽しみで仕方ないよ。たった一人なにも書いてない奴に関しては、まぁ残り数日で更新するだろう!」
自らに言い聞かせるように言う。残念ながら逢坂君は更新しませんよ、先生。
先生には愚直という言葉がよく似合う。先生は人を疑うということを知らない。まったくどうしてこの人が時野旅人なのだろう。ギャップにもほどがある。
先生と付き合えば、その心の影に触れられると思ったけれど、叶わなかった。十年後、先生の口から直接明かされるのを待つしかない。
この結果は悔やまれるけれど、日記がもう一度更新されて、完結という形できちんと結ばれることを切に願おう。
放課後、私と逢坂君は久々に寄り道をして帰った。
「懐かしいね、この河川敷」
ここに行きたいと言ったのは、なんと逢坂君だ。けれど言い出しっぺは特別なにをするわけでもなく、穏やかな川の流れを見つめている。私は道の脇にぽつりぽつりと咲き始めたたんぽぽを数えながら歩いた。
途中で、芝生に座って談笑しているカップルの後ろを通り過ぎた。アカ高の生徒だろう。青春という言葉がよく似合う、微笑ましい光景だった。
以前は私たちもああして、芝生に座って、何時間も本について熱く語った。あんなに距離は近くなかったし、もっと暗くて寒い秋の暮れだったけれど、私たちも周りには、青春を謳歌しているように映っていたのだろうか。
たんぽぽの隣に生える、一本のつくしを見つけた。理科の教科書で見たことはあるけれど、実際に生えているものを見たのは初めてだった。
逢坂君にちょっと待って、と言って腰を下ろし、つくしを眺める。思ったよりも小さい。きっと、これからどんどん伸びるのだろう。
「賭けるもの、なんでもいいんだな」
春の風は唐突に吹く。私は舞う髪を抑えながら、いいよ、と返す。逢坂君は私の隣に腰を下ろすと、つくしをぷちん、と引っこ抜いた。
「俺を探さないでほしい」
探さないでほしい。どうしてこんなことを言われると予想できようか。
「まるで遺言ね」
「勝手に殺すな」
「でも、そういうことでしょう?」
逢坂君はなにも言わずに立ち上がると、再び歩き出す。カップルの声が聞こえなくなって、散歩中の犬と二匹すれ違って、ようやく彼は口を開いた。
「終わりがないものなんてない。人も、縁も、いつか終わる。それは今日かもしれないし、明日かもしれない。十年後、あるいはもっと後かもしれない。そのとき俺は、誰にも俺を思い出してほしくない。俺はそもそも存在していなかったものとして、ひっそりと地球の一部になりたい」
そう言って、手の中のつくしを放り捨てた。
なんて悲しいことを言うのだろうと思った。桜の蕾は膨らみ始めているのに、眩しい春はすぐそこにあるのに、彼の目には映っていないのだろうか。たとえば彼が、豊かな愛情を受けて育っていたとしたら、死の間際を見ていなければ、こんなことは言わなかったのだろうか。
彼は、私の前からいなくなろうとしている。そう思った。なぜかと問われれば、女の勘としか言いようがない。
探さないでなんて言わないで。いなくならないで。言いたいことはたくさんあった。けれどそれは全て、彼との会話には不必要な感情の要素だ。
「わかった。十年後の賭け、楽しみにしてる」
彼の前では最後まで、いい子でいたいと思った。
逢坂君が書斎を出て行くまでの残りの数日間、私たちはまるで恋人のように、あるいはきょうだいのように過ごした。
【もうすぐ帰るね。いまスーパーなんだけど、なにが食べたい?】
【なんでもいい】
【じゃあ安売りコーナーにある『納豆とするめいかの焼きそばパン』を買ってくね】
【カレーが食べたい】
カレー。子供みたいだ。それなら家に帰って作ろう、カレーなら多く作っても両親には怪しまれない。衣食住においては私が主導権を握っているので、ラリーに打ち勝つコツを段々掴んできた。
私たちは夏休みの宿題を急いで片付けるように、これまで以上に本の話に花を咲かせた。そういえばあの本の話をしてなかっただとか、あの本をまだ読んでないなら今すぐ読むべきだとか、記憶の引き出しを片っ端から開けて語り合った。
特に最後の三日間にいたっては、私も逢坂君もほとんど外に出ることなく、書斎にこもっていた。話をしていたかったのはもちろんあるけれど、私が家のどこかでスマホをなくしてしまったのも一つの理由だ。逢坂君の携帯から電話をしてもらったけれど、運悪く電源も切れてしまったようで、見つからなかった。
以前の私だったら血眼になって探していただろう。けれど時野旅人の日記は相変わらず更新されていなかったし、私自身の日記も先生と別れてから更新していない。両親やチナとはパソコンのメールでなんとか連絡が取れるし、ツイッターをチェックしなければならない人ももういない。
「そのうち出てくるだろ」
逢坂君の言葉を、そうだね、とすんなりと受け入れた自分に驚いた。私は正しさを少し失う代わりに、少しの自由を得たのかもしれない。
三月三十一日は生憎の雨になった。文学的に言えば、空が泣いていた。
逢坂君が最後のお風呂に入っている間、私は罪悪感を感じつつ、彼のボストンバッグを開ける。【また来てね】とメッセージを添えたお菓子の袋を、こっそり入れようという作戦だ。直接だと受け取ってくれるかわからなかったので、この方法しか思いつかなかった。
一番上にあった通知票を見つけた途端、悪い衝動に駆られた。ここには彼の成績の他に、学年末テストの結果、そして進路調査票のコピーが挟まっている。
彼の順位が見られて困るようなものでないことは、私でなくても知っている。進路についても、彼は私の目標を知っているのに、私は彼の目標を知らない。不公平だ。そうやって、無理やり正当な動機を作ろうとする。
彼氏のスマホを盗み見るときの心理って、こんな感じなんだろうな。どくどく鳴る心臓と闘い、私はついにそれを開いてしまった。
まず目に飛び込んできた学年末テストの結果に、目を疑う。
【一位/三五〇人】
彼は毎回、二十位前後をさまよっていたはずだ。それなのに、一年間の集大成、最後の最後で大躍進の一位。本番に弱いだなんてとんでもない。
まさか彼は、わざと順位を落としていたのだろうか。いや、そんなことしてもなんのメリットもない。そう思い直して、進路調査票をめくった。
【第一志望: 】
【第二志望: 】
【第三志望: 】
進学、就職、ともに空欄だった。
おっちょこちょいな先生が誤って、記入前の紙を挟んでしまったのだろうか。けれど氏名の欄には、確かに【逢坂綾人】と書かれているし、紙の右端には赤ペンで【親ごさんとよく話し合うように。いつでも相談に乗るぞ】と書かれている。『御』が書けていない。先生の直筆で間違いない。
進学先に迷っているのだろうか。けれど進学にすらチェックがついていない。ならば金銭的な問題だろうか。それなら就職を選ぶか、先生がとっくに奨学金をすすめているはずだ。
ダメだ。どうやったって空欄である理屈が通らない。
怖くなった私は通知票を元あった場所に戻した。そして目的のお菓子の袋を鞄の深いところに入れようとして、指先に当たった固いものに気が付く。指に馴染むその感触を、鞄から取り出した。
「なにしてんの」
書斎に戻ってきた逢坂君が、私を見下ろす。
「どうして私のスマホが、逢坂君の鞄の中にあるの?」
自分でもわかるくらい、スマホを持つ手が震えていた。逢坂君は私の横に腰を下ろした。開いたままの鞄に入ったお菓子の袋を見て、鞄を閉める。
「たまたま鞄の中に落ちたんだろ」
そうだね、とは返せなかった。
私が勝手に鞄を開けたことを怒らない逢坂君が怖くて、小雨が降る中、彼が家を後にするときも、私はうまく笑えなかった。笑顔で送ろうと決めていたのに。
逢坂君のまるまった背中が、暗闇の中に溶けていく。点となって消えてもなお、私はしばらく門の前から動けなかった。寒さを感じて家に戻り、スマホの電源をつけると、充電は五十パーセント残っていた。
滞っていた着信やメッセージなどを一通り受信し終えたところで、私は『オープン・ダイアリー』を開く。今日は企画の最終日ということもあり、半数以上の人が日記を更新したようだ。時野旅人の日記は、やはり更新されていなかった。
自分の日記を更新する気は到底起きず、私は書斎に向かう。ソファに倒れ込み、すり、と鼻を寄せた。逢坂君は確かにいた、この場所に。本当に微かに、私のものではない男の人の香りがする。けれど明日にはなくなっているのだろう。消えてしまうのだろう。
今のうちにできる限り彼の記憶を焼き付けたくて、犬のように鼻を布にこすりつける。嗅覚はすぐに壊れて、彼の香りを感じることはできなくなった。
私は再度『オープン・ダイアリー』を開いた。奇跡を求めて新着記事一覧を見ていると、そこにただ一人、日記を更新していなかったハンドルネーム『傍観者』を見つけて飛び起きた。
奇跡が起きた。
私がスマホをなくしていた、いや、逢坂君が隠し持っていた三日間で、彼は日記を更新していたのだ。
私は震える指で日記を開く。彼の言葉、感情、想い、そして十年後の未来。そこには彼の感じているもの全て詰まっているはずだ。
――読み進めていくうちに、膨らんだ気持ちが萎んでいく。
率直にいって、この日記は拙い。文法は無視、だ・である調と、です・ます調も混在している。大人に憧れる幼女が口紅を塗りたくったような、上辺ばかり綺麗に繕った文章は、とてもあの逢坂君が綴ったものとは思えない。
考えがあってのことだろうかと、残りの二日分の日記を読んでみたけれど、伏線や隠されたメッセージなども見つからず、私は裏切られたような気持ちで日記を閉じた。
ふと、時計を見る。時刻は二十二時五十九分。時野旅人が日記を更新する一分前だ。
捨て鉢になりそうな心を奮い立たせて、私は最後の奇跡を待った。迎えた二十三時、私は更新ボタンを連打する。すると画面に、時野旅人の文字が浮かび上がった。
その日記を読み終えた瞬間、私は着の身着のまま家を飛び出した。
◆三月三十一日『あしたの僕をさがさないで』
木から落ちた一枚の葉が、川を下って、海に出て、いま、沈もうとしている。新しい葉が生まれたら、古い葉にはなんの価値もない。古い葉の存在は忘れられ、枯れていく。
この理不尽な世界に、全く抗おうとしなかったわけでもない。けれど希望を持つには、絶望が多すぎた。
僕は上手に世界にかえりたかった。そのために周りをよく見て、できるだけ身を縮こめて、存在を消した。僕の一部がどこにも残らないように、孤独という一番安全な場所に身を置いた。
思い出はいらない。手放すときに悲しくなるから。
温もりはいらない。求めずにはいられなくなるから。
愛されたいと嘆く君に、伝えたいことがある。
他人の目に映る君は、他人の世界の脇役だ。どれだけ着飾ろうとも主役にはなれない。当然だ。本当の君は感情的で、わがままで、少しもいい子ではないのだから。
君の目に映る世界でこそ、君は主役でいられる。好きなものはとことん愛せばいい。嫌いなものは跳ね除けてしまえばいい。他人は君の世界の脇役なのだから。
それで全てが上手くいくわけではないけれど、それでも今よりずっと、自由に生きられるはずだ。
僕の旅は終わるけれど、一つだけ後悔していることがある。一瞬でも、僕の世界に君を招いてしまったことだ。誰かの一番になりたいと思う気持ちなんて、僕は知らずにいたかった。
どうか、あしたの僕をさがさないでほしい。君がこのメッセージに気付く頃、君の世界の脇役に、僕はもういないのだから。
◆ハンドルネーム/時野旅人
パステルカラーの部屋着をどろで汚した私を見て、タクシーの運転手は家出だと思ったのだろう。家に帰ったほうがいいよ、と諭す口調が腹立たしくて、いいから早くと二度、声を荒げた。
数日前までは確かに穏やかだった川は、増水して地上との境目が曖昧になっている。こんな暗いところに沈まれたら絶対に見つからない。
タクシーを降りて私は走った。ローファーの先に水がたまって、地に着く度にちゃぷちゃぷと波打つ。
車内でもう一度日記を見ようとしたら、時野旅人のアカウントはすでに消去されていた。遺書すら残してくれないなんて、彼はどこまでも私をあまやかしてはくれない。
思い返せば彼は、先生が時野旅人であるとも、自分が時野旅人でないとも、一度も明言したことはなかった。言葉巧みに私を誘導して、思い込みを事実にさせた。私はずっと、彼の手のひらの上で踊らされていたのだ。打ち合いなんてそもそもしていなかった。彼はボールを手で投げて、私ががむしゃらに打ち返すさまを見て楽しんでいたのだ。
彼には勝てない。悔しい。とても悔しい。
だから、好き。どうしようもなく好き。
橋の手前で、もぞりと動く影を見た。私は土手を駆け下りる。瞬間、どぷん、と水面が波打った。
「逢坂君!」
半身まで水に浸かった彼は、こちらを振り向いた。表情こそ見えなかったけれど、彼は逃げるように川の中央に向かっていく。流れに押されて、その身がぐらぐらと傾いている。
スマホと財布を放り投げて、私は川に飛び込んだ。けれどすぐに流れに足が取られて、川に飲み込まれる。
もがいた。そこまで深くないはずなのに、足が地に付かない。泥臭い水が鼻を刺す。目が開けられない。右も左もわからない。黒しかない。死ぬ、死ぬ、死ぬ。そればかりが頭に浮かんだ。
振り回した腕がなにかに当たった。怖くて振り払った。もう一度当たって、今度はそれに引き寄せられた。強い力が、私の身体を川縁まで引きずり上げる。四つん這いになった手足がコンクリートを捉えて、私はようやく咳き込むことができた。
「ふざけんなよ! お前、なんでッ……」
私の肩を掴んで、逢坂君は声を詰まらせる。怒りに満ちたその表情を見て、私は。
「ふざけんなは、こっちのセリフだよ!」
彼の首のしがみついた。壊れたロボットのように腕が震えて、歯の根が合わない。
「死ぬかと思った! 怖かった! 入水自殺とか、太宰治が好きにも程があるでしょ! バカじゃないの、本当に、バカじゃないの!」
「お前がこんなに早くここに着くだなんて思わなかったんだよ! お前に見つかるだなんてとんだ計算違いだ! 迷惑この上ない!」
逢坂君は私を引き剥がそうとする。私はなけなしの力を腕に込める。
「ならどうして私に遺書なんか見せたの? 数日前にここに下見に来て、あんなわかりやすい伏線張って、見つけてほしくなかっただなんて言わせない! 文章が、助けてほしい、僕はここだよって叫んでた!」
「違う!」
雨と、川と、私たちの喧嘩と、ぐちゃぐちゃに入り混じった音が橋のコンクリートに反響して、ぐわんぐわんと響く。
「大体、まだ賭けは終わってないんだから、さがさないでなんて聞くわけないでしょう! それにあんなかっこつけた告白しといて、言い逃げなんて許さない!」
「誰がッ、告白なんて!」
「してるじゃない! 一言一句覚えてる! 誰かの一番になりたいと思う気持ちなんて、僕は知らずに――」
「暗唱するな!」
逢坂君の腕が、ついに私を抱きしめた。震えている。私の右耳に、くそ恥ずかしいんだよ、とすり潰したような呟きを吐く。
緊張の糸が、ぷつりと切れた。
それまで泣いていなかったのが嘘のように、涙が溢れて止まらなかった。
四月になりたての夜風は冷たくて、彼と触れている部分だけが熱くて、暖を求める本能のままにすりよると、そのまま二人でコンクリートの上に倒れ込んだ。
生きている。
それを確かめるように、私たちは強く、強く抱き合う。
「こんな温もり教えやがって。責任取れよ」
「こんなに好きにさせといて、そっちこそ責任取ってよ」
「お前が好きなのは時野旅人だろ。あれは俺じゃない」
「時野旅人は、主役に、ヒーローなりたかった逢坂君の本音でしょう。私はもう時野旅人なしじゃ生きていけない。時野旅人の日記を出版するまでは絶対に死ねない」
「残念だったな。データは全部消した」
「残念でした。データは全部とってある」
「……」
「バカな女を見くびらないで。あ、でもさすがにさっきの投稿は保存してないから、あとで書き直しね」
逢坂君は、うんざり、を形にしたようなため息をついた。
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