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アンダンテ ジャンル:ミステリ
ラッキースケベ 瞬
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二人と話しながら待っていると、しばらくして別荘の方向から、先輩と心美ちゃんがビーチバレーのセットを抱えてやってきた。
「わりぃわりぃ、これ探すのに手間取っちゃってな。おい瀬名、組み立て手伝えよ」
先輩と一緒にネットを組み立てる事になった。心美ちゃんは、青いワンピースの水着だった。腰のフリフリが可愛らしい。薄着になると、日焼け跡がチラチラと見える。本当はもっと色白なのだろうか。
「おいバカ、何見てんだよ! さっさと手伝え」
先輩にどやされて、へぇ、と生返事をして作業に入る。ネットの設置は、思ったより簡単だった。作業を終えて先輩を見ると、先輩は真紀の水着姿を見てにやけている。お互い様じゃないか。
二対二のチーム分けで、袴田兄妹チームと、俺、真紀のチームとで戦うことになった。小雨は審判だ。
開始直前に、
「パレオ……取ったら? 動きづらくないか?」
「やだ」
こんなやりとりがあった事を述べておこう。
袴田先輩はアウトドアが趣味で、釣りもサーフィンもいける。高校時代まではずっとバスケ部だったらしい。身長は180オーバー、俺より頭一つ高く、運動神経も抜群だ。心美ちゃんは中学からずっとテニスをやっているらしく、こちらも強敵だった。対する我々はというと、俺は小学校で野球部、中学でバスケ部、高校でサッカー部に入ってはみたものの、いずれもあまり長続きせず、数か月でやめてしまった。体育会系のノリというものが苦手なのだ。真紀は……昔バレエをやっていたと聞いた事があるが、運動をしている姿を見たことがなかった。
斯くしてゲームは始まった。いきなり先輩の強烈なスパイクが決まる。真紀は一歩も動けず、俺もただ見送るばかりだった。
その後も袴田兄妹チームのスパイクが面白いように決まる。やはり真紀の動きが鈍い。鈍いだけならまだしも、ボールよりも肌についた砂を払う事に熱心なように見える。俺もたまに点を取り返したものの、やはり戦力差は大きかった。最初のセットはあっさり袴田兄妹チームが先取。俺は選手交代のサインを小雨に出す。
「えっ、もう?」
小雨が不服そうな表情を浮かべながら、しぶしぶコートに入る。今度は真紀が審判だ。
小雨は俺と同じぐらい身長がある。真紀よりも戦力としては計算でき、開始早々ブロックを決めた。Tシャツにショートパンツなので、真紀よりは動きやすいだろう。これなら勝負になるかと思ったが、さっきまで手加減していたらしい心美ちゃんの本気スパイクを浴び、意気消沈。2セットを連取され、ストレート負けとなった。
「勝負になんねえな……。心美をそっちにやるから、真紀ちゃんか小雨ちゃんこっちに入ってくれよ」
真紀と小雨が顔を見合わせる。
「じゃあ真紀ちゃんおいで!」
という先輩の鶴の一声で、第2回戦は先輩・真紀チームと俺・心美ちゃんチームに分かれた。
このチーム分けが功を奏し、戦力は拮抗、序盤は互角の戦いになる。先輩と心美ちゃんのバトルが熱かった。しかし、セットポイントが近づくにつれて、俺達は真紀を集中攻撃する作戦にシフト。第1セットは俺と心美ちゃんのチームが先取した。先輩はすかさず、選手交代のサインを出す。
第2セットは真紀の代わりに小雨が入り、更なる激戦となった。セットポイントを迎えてもシーソーゲームで、なかなか決着がつかない。
俺のサーブを小雨がトスし、先輩渾身のスパイク。
俺と心美ちゃんが同時に落下地点に飛び込む。
「あっ……!」
気付いた時には、すでに心美ちゃんの顔が目の前にあった。
ドンッ
というありきたりな擬音語では表現できないぐらいの激しさでぶつかってしまった。砂が目に入り、反射的に目を瞑る。鼻が固いものに激突した。鎖骨あたりだろうか。
「おい! 大丈夫か?」
先輩の声が近づいてくる。体の上に心美ちゃんの体重を感じ、顔に何か柔らかいものが当たる。もう、天国まで辿り着いてしまったのだろうか。心美ちゃんの心臓の鼓動が聴こえた。かなり早い。残念ながら、その柔らかいものからはすぐに開放されてしまった。
「ご……ごめんなさい……大丈夫ですか?」
瞼を開くと、心美ちゃんの砂まみれの顔が近くにあった。ゆっくりと体を起こす。
「あ、鼻血……」
鼻血事件によって、ビーチバレーはそこで打ち切られた。幸い鼻血はすぐに止まり、鼻も大した怪我にはなっていないようだ。
午後に入ると突然雲行きが怪しくなってきたので、外に出るのはやめて、昼食の後は皆でトランプをしたり、人生ゲームをしたりしてのんびりと時間を潰した。こんなところまで来てする事だろうか、と思ったけれど、少なくともビーチバレーよりは楽しかった。
いつの間にか夕食の時間になっていた。高そうな肉とフォアグラのソテーが出てきたが、どうも、俺の安い舌には今一つ味がわからなかった。無性にラーメンが食べたくなったが、そんな事が言える雰囲気ではない。カップラーメンを持って来ればよかったな……などと、庶民的な後悔をした。外からはびゅうびゅう、と風の音が聞こえる。いよいよ天気が荒れ始めたのかもしれない。夕食を終えると、俺達は雨が降り始める前に離れへと戻った。
「わりぃわりぃ、これ探すのに手間取っちゃってな。おい瀬名、組み立て手伝えよ」
先輩と一緒にネットを組み立てる事になった。心美ちゃんは、青いワンピースの水着だった。腰のフリフリが可愛らしい。薄着になると、日焼け跡がチラチラと見える。本当はもっと色白なのだろうか。
「おいバカ、何見てんだよ! さっさと手伝え」
先輩にどやされて、へぇ、と生返事をして作業に入る。ネットの設置は、思ったより簡単だった。作業を終えて先輩を見ると、先輩は真紀の水着姿を見てにやけている。お互い様じゃないか。
二対二のチーム分けで、袴田兄妹チームと、俺、真紀のチームとで戦うことになった。小雨は審判だ。
開始直前に、
「パレオ……取ったら? 動きづらくないか?」
「やだ」
こんなやりとりがあった事を述べておこう。
袴田先輩はアウトドアが趣味で、釣りもサーフィンもいける。高校時代まではずっとバスケ部だったらしい。身長は180オーバー、俺より頭一つ高く、運動神経も抜群だ。心美ちゃんは中学からずっとテニスをやっているらしく、こちらも強敵だった。対する我々はというと、俺は小学校で野球部、中学でバスケ部、高校でサッカー部に入ってはみたものの、いずれもあまり長続きせず、数か月でやめてしまった。体育会系のノリというものが苦手なのだ。真紀は……昔バレエをやっていたと聞いた事があるが、運動をしている姿を見たことがなかった。
斯くしてゲームは始まった。いきなり先輩の強烈なスパイクが決まる。真紀は一歩も動けず、俺もただ見送るばかりだった。
その後も袴田兄妹チームのスパイクが面白いように決まる。やはり真紀の動きが鈍い。鈍いだけならまだしも、ボールよりも肌についた砂を払う事に熱心なように見える。俺もたまに点を取り返したものの、やはり戦力差は大きかった。最初のセットはあっさり袴田兄妹チームが先取。俺は選手交代のサインを小雨に出す。
「えっ、もう?」
小雨が不服そうな表情を浮かべながら、しぶしぶコートに入る。今度は真紀が審判だ。
小雨は俺と同じぐらい身長がある。真紀よりも戦力としては計算でき、開始早々ブロックを決めた。Tシャツにショートパンツなので、真紀よりは動きやすいだろう。これなら勝負になるかと思ったが、さっきまで手加減していたらしい心美ちゃんの本気スパイクを浴び、意気消沈。2セットを連取され、ストレート負けとなった。
「勝負になんねえな……。心美をそっちにやるから、真紀ちゃんか小雨ちゃんこっちに入ってくれよ」
真紀と小雨が顔を見合わせる。
「じゃあ真紀ちゃんおいで!」
という先輩の鶴の一声で、第2回戦は先輩・真紀チームと俺・心美ちゃんチームに分かれた。
このチーム分けが功を奏し、戦力は拮抗、序盤は互角の戦いになる。先輩と心美ちゃんのバトルが熱かった。しかし、セットポイントが近づくにつれて、俺達は真紀を集中攻撃する作戦にシフト。第1セットは俺と心美ちゃんのチームが先取した。先輩はすかさず、選手交代のサインを出す。
第2セットは真紀の代わりに小雨が入り、更なる激戦となった。セットポイントを迎えてもシーソーゲームで、なかなか決着がつかない。
俺のサーブを小雨がトスし、先輩渾身のスパイク。
俺と心美ちゃんが同時に落下地点に飛び込む。
「あっ……!」
気付いた時には、すでに心美ちゃんの顔が目の前にあった。
ドンッ
というありきたりな擬音語では表現できないぐらいの激しさでぶつかってしまった。砂が目に入り、反射的に目を瞑る。鼻が固いものに激突した。鎖骨あたりだろうか。
「おい! 大丈夫か?」
先輩の声が近づいてくる。体の上に心美ちゃんの体重を感じ、顔に何か柔らかいものが当たる。もう、天国まで辿り着いてしまったのだろうか。心美ちゃんの心臓の鼓動が聴こえた。かなり早い。残念ながら、その柔らかいものからはすぐに開放されてしまった。
「ご……ごめんなさい……大丈夫ですか?」
瞼を開くと、心美ちゃんの砂まみれの顔が近くにあった。ゆっくりと体を起こす。
「あ、鼻血……」
鼻血事件によって、ビーチバレーはそこで打ち切られた。幸い鼻血はすぐに止まり、鼻も大した怪我にはなっていないようだ。
午後に入ると突然雲行きが怪しくなってきたので、外に出るのはやめて、昼食の後は皆でトランプをしたり、人生ゲームをしたりしてのんびりと時間を潰した。こんなところまで来てする事だろうか、と思ったけれど、少なくともビーチバレーよりは楽しかった。
いつの間にか夕食の時間になっていた。高そうな肉とフォアグラのソテーが出てきたが、どうも、俺の安い舌には今一つ味がわからなかった。無性にラーメンが食べたくなったが、そんな事が言える雰囲気ではない。カップラーメンを持って来ればよかったな……などと、庶民的な後悔をした。外からはびゅうびゅう、と風の音が聞こえる。いよいよ天気が荒れ始めたのかもしれない。夕食を終えると、俺達は雨が降り始める前に離れへと戻った。
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