アンダンテ

浦登みっひ

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監獄島の惨劇 ジャンル:ホラー

エピローグ 真紀

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 長い夢を見ていた気がする。

 その夢の中で、私は真紀ちゃん……もう一人の私に会った。
 彼女の感触が、手のひらにまだ残っているような気がする。でも、それ以外の事は全く思い出せない。

 鮫太郎くんとの会話の後、私は猛烈な頭痛に襲われた。これは、真紀ちゃんからの交代のサイン。その後、福田先輩の声を聞いたような気がしたが、私の意識はそこで途切れている。再び目覚めたのは、私が住んでいるマンションの、自分の部屋の、化粧台の前だった。

 警察が島に到着してから、私達は厳しい取り調べを受けたが、凶器となった手斧、ノコギリ、チェーンソーに付着していた指紋と三人の女性陣の遺体に残された体液から、犯人は菅山直哉と断定された。

 そのあまりに猟奇的な事件はマスコミの格好のネタとなり、それから数日間、テレビで先輩達の顔写真を見ない日はなかった。どこから調べたのか、私達の家やマンションの周り、そして大学にもマスコミが押し寄せ、ちょっとしたパニックとなったのだが、それもあまり長くは続かなかった。

 事件の後、瞬が所属していたサークルは自然消滅のような形で解散した。
 噂によれば、監獄島の再開発計画も白紙になったそうだ。

 そして私は、いつものように、瞬と小雨と三人で、大学近くの喫茶店で珈琲を啜っている。
 私はブラックで。小雨はミルクとスティックシュガーを一本。甘党の瞬は、ミルクと二本のスティックシュガーを珈琲に溶かした。
 何も変わらない、平穏な日常。あの収容所での血みどろの惨劇が、まるで遠い遠い過去のように感じられる。

 事件の後、あの島への立ち入りは厳しく制限されたらしく、最近では廃墟マニアでも近寄れなくなったとのこと。口にするのも悍ましくなったのか、幽霊の噂話も全く聞かなくなった。

 今、あの収容所がどうなっているのか。そして、本当に幽霊が出るのかどうかは、誰も知らない。
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