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有実さんの上にあるミカン ジャンル:一応童話(笑)
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それは、二人がいつものように、コンビニにあそびに行った日のことでした。
「こんにちは~」
「こんにちは」
二人があいさつをすると、有実さんはいつものように笑ってへんじをしました。
「小雨ちゃん、瞬くん、こんにちは」
有実さんはいっけん、ふだんとかわらないようすに見えましたが、小雨の目には、なんとなく、元気がなさそうに映りました。
その日もいつものように、二人は肉まんを食べながら有実さんのたのしいお話を聞いて、たのしい時間をすごしました。それから、やはりいつものように、有実さんはみかんの汁をつかって、絵を描きはじめました。
「ねえ、今日は私がごちそうしてあげるから、また肉まんを食べてくれない? あなたたちが肉まんを食べている姿を描きたいの」
二人は、また肉まんが食べられるので、うれしくて、ふたつへんじでうなずきました。
ほかほかの肉まんを、ゆっくりと笑顔でほおばる二人を、有実さんはもくもくと描きつづけました。いつもは絵を描きながらたのしいお話をしてくれる有実さんですが、この日はずっとうかない表情で、何も話をしてくれません。
やっぱり、今日の有実さんは元気がない……そう感じた小雨は、おもいきってたずねてみました。
「有実さん、今日は元気ないね」
すると有実さんは、おどろいたように顔を上げて、とりつくろったように笑いました。
「え? ……ううん、そんなことないよ」
有実さんはそう答えましたが、それからもずっと、お面のように無表情で、お話もしてくれません。
いったい、どうしたんだろう……と、小雨は有実さんの顔をみつめていました。すると、のっぺらぼうのように無表情だった有実さんの顔が、どうしたことか、しだいにくしゃくしゃになっていくのです。
口がへの字にまがり、うつむき加減の目には、うっすらと涙がにじんでいます。そしてついに、有実さんは大粒の涙をこぼして泣き出してしまいました。
何か、私たちが有実さんを泣かせるようなことをしてしまったのかしら?
しんぱいになった小雨は、いそいで有実さんにかけよりました。
「有実さん、どうしたの? わたしたち、何かわるい事した?」
有実さんは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ひしゃげたようにほほえみました。
「ううん、ちがうの、小雨ちゃんたちは何もわるくないのよ」
そう言うと、小雨と瞬の頭をやさしくなでてくれました。
「ああ……やばいなあ。楽しいよぅ……」
そして、『上を向いて歩こう』の歌詞のように、涙をこらえて天井を見ています。
「子供……ほしかったよぅ……」
有実さんは、そうつぶやくと、さめざめと泣き出してしまったのです。
有実さんのこんな姿をみたことがなかった小雨は、どうしていいかわからず、とっさに、すわっている有実さんの頭をなでてあげました。すると有実さんは、そのまま床にひざをついて、小雨のむねに顔をうずめて、なおも泣きつづけました。
小雨には、そんな有実さんのあたまを抱いて、なでてあげることしかできません。
「有実さん、こどもがほしいの? わたしと瞬で、こども作ってあげられる?」
「ふふっ……だめよ、こどもがそんなこと言っちゃ」
「じゃあ、わたしが有実さんのこどもになる!」
「だめ。ご両親がしんぱいするわよ」
「うちには弟もいるから、わたしが有実さんの子供になったって大丈夫」
「……ありがとう。でもそういうわけにはいかないのよ」
有実さんは、小雨のむねから顔を上げて、まなじりを決した表情で言いました。
「わたしね、旦那さんとりこんすることになったの。それで、わたしは、明日、みかんの国にかえらなくちゃいけないのよ」
りこんってなんだろう? 有実さんが、かえっちゃう?
有実さんは、もう泣いていませんでしたが、こんどは小雨が泣くばんでした。
「やだよ……有実さんいなくなっちゃうの?」
「そうよ」
「いやだ……つまんない」
小雨の両目から、水晶のような、大粒のなみだがぽろぽろとこぼれはじめました。それにつられて、瞬も泣き出してしまいました。
「ああ……本当は、だまってお別れしようと思ってたのに……ごめんね、二人とも」
有実さんは、二人を抱きよせて、やさしく頭をなでてくれました。小雨は、有実さんのうでの中で、おいおいと声を上げて泣きました。
「また、あそびに来るから……いつかまたきっと会えるから、ね」
二人をやさしくなぐさめる有実さんは、天女さまのようにやさしくて、きれいに見えました。
「これが、わたしからの最後のプレゼント。今日は、おうちに帰ったら、お母さんといっしょにあぶり出しをやってみて」
そう言って、有実さんはいつものように、あぶり出しの絵を二人にてわたしてくれました。
二人が店をでる時の有実さんは、いつものように、あかるくて元気な笑顔で、大きく手をふってくれました。それがあまりに見なれた光景だったので、小雨には、もう会えなくなってしまうということが、信じられませんでした。
家についた小雨は、お母さんといっしょに、さっそくコンロであぶり出しをやってみました。
そこには、おいしそうに肉まんをほおばる二人の姿が描かれていました。そして、その下に、初めてひとことそえてあったのです。
「今までありがとう。二人があそびに来てくれるの、わたしはとってもうれしかったよ。これからも、お父さんお母さんのいうことをきいて、二人なかよく、いい子でいてください。 有実」
「こんにちは~」
「こんにちは」
二人があいさつをすると、有実さんはいつものように笑ってへんじをしました。
「小雨ちゃん、瞬くん、こんにちは」
有実さんはいっけん、ふだんとかわらないようすに見えましたが、小雨の目には、なんとなく、元気がなさそうに映りました。
その日もいつものように、二人は肉まんを食べながら有実さんのたのしいお話を聞いて、たのしい時間をすごしました。それから、やはりいつものように、有実さんはみかんの汁をつかって、絵を描きはじめました。
「ねえ、今日は私がごちそうしてあげるから、また肉まんを食べてくれない? あなたたちが肉まんを食べている姿を描きたいの」
二人は、また肉まんが食べられるので、うれしくて、ふたつへんじでうなずきました。
ほかほかの肉まんを、ゆっくりと笑顔でほおばる二人を、有実さんはもくもくと描きつづけました。いつもは絵を描きながらたのしいお話をしてくれる有実さんですが、この日はずっとうかない表情で、何も話をしてくれません。
やっぱり、今日の有実さんは元気がない……そう感じた小雨は、おもいきってたずねてみました。
「有実さん、今日は元気ないね」
すると有実さんは、おどろいたように顔を上げて、とりつくろったように笑いました。
「え? ……ううん、そんなことないよ」
有実さんはそう答えましたが、それからもずっと、お面のように無表情で、お話もしてくれません。
いったい、どうしたんだろう……と、小雨は有実さんの顔をみつめていました。すると、のっぺらぼうのように無表情だった有実さんの顔が、どうしたことか、しだいにくしゃくしゃになっていくのです。
口がへの字にまがり、うつむき加減の目には、うっすらと涙がにじんでいます。そしてついに、有実さんは大粒の涙をこぼして泣き出してしまいました。
何か、私たちが有実さんを泣かせるようなことをしてしまったのかしら?
しんぱいになった小雨は、いそいで有実さんにかけよりました。
「有実さん、どうしたの? わたしたち、何かわるい事した?」
有実さんは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ひしゃげたようにほほえみました。
「ううん、ちがうの、小雨ちゃんたちは何もわるくないのよ」
そう言うと、小雨と瞬の頭をやさしくなでてくれました。
「ああ……やばいなあ。楽しいよぅ……」
そして、『上を向いて歩こう』の歌詞のように、涙をこらえて天井を見ています。
「子供……ほしかったよぅ……」
有実さんは、そうつぶやくと、さめざめと泣き出してしまったのです。
有実さんのこんな姿をみたことがなかった小雨は、どうしていいかわからず、とっさに、すわっている有実さんの頭をなでてあげました。すると有実さんは、そのまま床にひざをついて、小雨のむねに顔をうずめて、なおも泣きつづけました。
小雨には、そんな有実さんのあたまを抱いて、なでてあげることしかできません。
「有実さん、こどもがほしいの? わたしと瞬で、こども作ってあげられる?」
「ふふっ……だめよ、こどもがそんなこと言っちゃ」
「じゃあ、わたしが有実さんのこどもになる!」
「だめ。ご両親がしんぱいするわよ」
「うちには弟もいるから、わたしが有実さんの子供になったって大丈夫」
「……ありがとう。でもそういうわけにはいかないのよ」
有実さんは、小雨のむねから顔を上げて、まなじりを決した表情で言いました。
「わたしね、旦那さんとりこんすることになったの。それで、わたしは、明日、みかんの国にかえらなくちゃいけないのよ」
りこんってなんだろう? 有実さんが、かえっちゃう?
有実さんは、もう泣いていませんでしたが、こんどは小雨が泣くばんでした。
「やだよ……有実さんいなくなっちゃうの?」
「そうよ」
「いやだ……つまんない」
小雨の両目から、水晶のような、大粒のなみだがぽろぽろとこぼれはじめました。それにつられて、瞬も泣き出してしまいました。
「ああ……本当は、だまってお別れしようと思ってたのに……ごめんね、二人とも」
有実さんは、二人を抱きよせて、やさしく頭をなでてくれました。小雨は、有実さんのうでの中で、おいおいと声を上げて泣きました。
「また、あそびに来るから……いつかまたきっと会えるから、ね」
二人をやさしくなぐさめる有実さんは、天女さまのようにやさしくて、きれいに見えました。
「これが、わたしからの最後のプレゼント。今日は、おうちに帰ったら、お母さんといっしょにあぶり出しをやってみて」
そう言って、有実さんはいつものように、あぶり出しの絵を二人にてわたしてくれました。
二人が店をでる時の有実さんは、いつものように、あかるくて元気な笑顔で、大きく手をふってくれました。それがあまりに見なれた光景だったので、小雨には、もう会えなくなってしまうということが、信じられませんでした。
家についた小雨は、お母さんといっしょに、さっそくコンロであぶり出しをやってみました。
そこには、おいしそうに肉まんをほおばる二人の姿が描かれていました。そして、その下に、初めてひとことそえてあったのです。
「今までありがとう。二人があそびに来てくれるの、わたしはとってもうれしかったよ。これからも、お父さんお母さんのいうことをきいて、二人なかよく、いい子でいてください。 有実」
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