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三人目の探偵、桃貫元警部
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『十五分が経過し、残念ながら二人目の犠牲者が出た。既に三人目の探偵がこちらへ向かっているところだ。建物内の探索を続けるもよし、三人目の探偵を出迎えるもよし、ひとまず自由に過ごしていてくれたまえ』
ボイスチェンジャーを通したゲームマスターの冷淡な声が二人目の生贄の死を告げ、私と樺川先生は互いに顔を見合わせた。
ついに二人目の犠牲者が出てしまった。一人目の犠牲者を告げられた際にはまだ実感が湧いておらず、何が何だか訳が分からないという感じだったけれど、実際に死体を目にした今、その言葉が持つ重みは全く異なっている。埃と蜘蛛の巣に塗れたこの廃墟のどこかで、一人の人間の人生があっけなく終わってしまった。もしかしたら私の力で止めることができたかもしれない殺人。
私の内心での混乱を悟ったのか、樺川先生は、この建物で知り合って以来最も優しい声色で言った。
樺川「君が落ち込むことはないよ、西野園君。残念だが、僕達だけではどうしようもなかった」
西野園「樺川先生……」
樺川「それよりも、これからどうするべきかを考えよう。もうすぐ仲間が一人増える。我々はその仲間を出迎えるか、このまま探索を続けるか、選ぶことができるわけだ。まずはそれを考えなくちゃいけない」
西野園「そう……ですね。すみません。ありがとうございます……」
樺川「いや、礼には及ばないよ。僕だって早く帰りたいからね」
樺川先生はそう言うと、再びゆっくりと廊下を歩き出す。その背中を眺めながら、私は彼の冷静さに心の内で感謝した。
そう、さっきの私は何も考えずにエントランスに向かい樺川先生を出迎えることを選択したけれど、建物内の探索にこれだけ時間がかかるのなら、出迎えには行かず、次の探偵が来るまで探索を続けたほうが得策かもしれない。樺川先生が来たときのことを考えると、殺人ゲームの説明はゲームマスターが行うらしいし、必ずしも私たちが出迎えに行く必要はない。が、そうなると一つ問題が生じる恐れがある。
私は樺川先生に尋ねた。
西野園「時間の効率を考えれば、このまま建物内の探索を続けた方がいいように思われますけれど、でも、新しい仲間がどういう人物なのか確認しておかないと、いざという時に困るんじゃないでしょうか?」
樺川「ふむ……困る、というと?」
西野園「まず、一人目、そして二人目を殺した犯人がこの建物内にいると仮定して、犯人がどういう風体の人物なのか、我々には全く情報がありません。玄関前にいた黒づくめの男たちのようにわかりやすい服装をしていればいいのですが、必ずしもそうとは限らない。となると、怖いのは、次の探偵を敵と誤認してしまうケースです」
『逃走中』のハンターを連想させる、黒いスーツの男たち。もし犯人がハンター並みの走力を持っていたら、生贄が逃げ切ることはできないだろうし、正直、私たちでは捕まえることも不可能だと思う。
それはそれとして、ゲームマスター側の人間が門番たちのようにわかりやすいユニフォームを着ていればいいが、そうでない場合、こちらの仲間の探偵が誰なのか、きちんと確認しておく必要が生じるだろう。
樺川「……なるほど。たしかに、その可能性は考えられるね。特に、次の探偵がヤクザみたいな強面だった場合、突然鉢合わせたら、僕たちも驚いて逃げ出してしまうかもしれない」
樺川先生は冗談めかした口調で言いながら肩を竦めた。
……いや、さすがに今のは冗談だよね?
私と樺川先生がエントランスに戻ると、そこには既に三人目の探偵と思しき人物が立っていた。
「やあ、老人会の集まりと聞いてやってきたのですが……どこなんだ、ここは。皆さんはもうお着きなのかな。そこの若いお二方、何かご存じありませんかね」
老人会、という単語から連想される姿そのままに、三人目の探偵は壮年を過ぎ、明らかに老境に差し掛かっている人物だった。撫でつけられた髪はロマンスグレーと呼ぶには白すぎ、グレーのスーツもややだぶついて見える。表情だけは溌剌としているが、細かい皺の刻まれた肌や嗄れ気味の声からはどことなく窶れたような印象を受け、探偵らしい気迫のようなものはほとんど感じられなかった(まあ、それは私にも樺川先生にもほとんどないんだけど)。
どう見ても穏やかな老人である。この人が、三人目の探偵――?
私と樺川先生は再び顔を見合わせた。樺川先生の表情には微かに落胆の色が見られたし、もしかしたら私もそうだったかもしれない。いや、老人だからといって差別するつもりは全くないのだけれど、でも、率直に言って、この老人を戦力として計算するのはあまりにも酷であるように思えた。見たところ、車で私をここまで送ってきたあの偽老刑事より更に年上だし、ことによっては彼が三人目の死者になることさえ……。
戸惑う私たちを見て、老紳士はさらに困惑した表情を浮かべる。
老紳士「はて、運転手が行き先を間違えたんだろうか。こんなところじゃ肝試しぐらいしかできそうにないが、私らぐらいの年になると、若者より幽霊の方がずっと身近な存在ですからな。驚かされたらその場でポックリお化けの仲間入りをしかねない。はっはっは」
ユーモアのつもりだったのか、老紳士は快活に笑うが、実際にその可能性を危惧していたこともあり、笑うに笑えない。
微妙な空気が流れたところで、またしてもオーケストラの音量が絞られ、ゲームマスターの声が響き渡る。この声が助け舟になる状況があろうとは――。
「我が殺人ゲームへようこそ、三人目の探偵、桃貫元警部」
警部? このおじいちゃんが?
まさか、と見ると、桃貫元警部と呼ばれた老紳士は、先程までとはうってかわって鋭い眼光を周囲に走らせていた。ゲームマスターの声に耳を澄ませながら虚空を睨むその姿は、たしかに往年の名刑事ぶりを窺わせる。
私たちと同様に殺人ゲームの説明を受けた桃貫警部は、反応に困る自虐ネタで哄笑していた老紳士とはまるで別人のように深刻な表情を作って言った。
桃貫「……要するに、ここでは現在殺人ゲームなるものが行われていて、十五分以内に殺人を止めなければ、我々はここから出ることができないということですな……」
西野園「はい、どうやらそのようです」
桃貫「何とけしからん。殺人ゲームだか何だか知らんが、いったい人の命を何だと思っているんだ、彼奴は!」
と、桃貫警部は声を荒げる。その剣幕に私は、驚くと同時に、これが正義感に溢れる探偵の普通の反応なのか、と感心せずにはいられなかった。殺人ゲームに関する説明を受けた際、私は状況が飲み込めず困惑するばかりだったし、樺川先生は(少なくとも見た目には)ボーッとしていただけだったのだ。
それなのに桃貫警部は、素早く状況を理解しただけでなく、殺人を食い止めこのゲームを終わらせようと強い意欲を見せている。桃貫『元警部』と呼ばれたからには、彼はきっと定年退職した元刑事なのだろう。私や樺川先生のように成り行きで探偵役になってしまったわけではなく、犯罪を防ぎ、犯人を逮捕して市民を守る、それを職業として選んでいた人間。その気迫を見せつけられた気がして、彼の姿を見るなり戦力外と思ってしまった自分の判断を、私は内心で強く恥じた。
桃貫警部は射貫くような眼差しで私たちを見る。
桃貫「ということは、つまり、あなたがたもこのくだらんゲームに招かれた探偵、ということですかな?」
西野園「ええ、はい、あの……自己紹介が遅れました。私は西野園といいます。たまたま何度か事件に巻き込まれたことがあるだけで、探偵なんて名乗るのもおこがましいのですけれど」
樺川「私はN大で准教授をしている樺川です。私も西野園君と同様、自分では探偵だなんて思ったこともないんですけどね」
桃貫「なるほど。私こそ、自己紹介がまだでしたな。私は桃貫と申します。警視庁の捜査一課で長年凶悪犯罪に立ち向かって参りましたが、定年退職した今は、単なるしがない老人の身。お若いお二方にはご迷惑をおかけするかもしれませんが、犯人逮捕のため、共に力を尽くしましょう」
そう言うと、桃貫警部は短く、しかし深く頭を下げた。
警視庁の捜査一課といったら、里見刑事や伊達刑事とは比較にならないエリート刑事のはず。それだけの立場にいた人なのに、こんなに腰が低いなんて。世の中には老害と呼ばれる類の高齢者がごまんといるけれど、桃貫警部には無縁な言葉だと思えた。
樺川「いえ、こちらこそ、プロの刑事の方に仲間に加わって頂けて心強いです。率直に言って、僕たちも何をどうしたらいいのか途方に暮れていたところなんですよ」
桃貫「私で力になれることなら、何でも言ってください――む、この殺人ゲームには制限時間があるのでしたな。のんびり立ち話をしている余裕はない。歩きながら、現状を説明して頂けませんかな」
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ついに二人目の犠牲者が出てしまった。一人目の犠牲者を告げられた際にはまだ実感が湧いておらず、何が何だか訳が分からないという感じだったけれど、実際に死体を目にした今、その言葉が持つ重みは全く異なっている。埃と蜘蛛の巣に塗れたこの廃墟のどこかで、一人の人間の人生があっけなく終わってしまった。もしかしたら私の力で止めることができたかもしれない殺人。
私の内心での混乱を悟ったのか、樺川先生は、この建物で知り合って以来最も優しい声色で言った。
樺川「君が落ち込むことはないよ、西野園君。残念だが、僕達だけではどうしようもなかった」
西野園「樺川先生……」
樺川「それよりも、これからどうするべきかを考えよう。もうすぐ仲間が一人増える。我々はその仲間を出迎えるか、このまま探索を続けるか、選ぶことができるわけだ。まずはそれを考えなくちゃいけない」
西野園「そう……ですね。すみません。ありがとうございます……」
樺川「いや、礼には及ばないよ。僕だって早く帰りたいからね」
樺川先生はそう言うと、再びゆっくりと廊下を歩き出す。その背中を眺めながら、私は彼の冷静さに心の内で感謝した。
そう、さっきの私は何も考えずにエントランスに向かい樺川先生を出迎えることを選択したけれど、建物内の探索にこれだけ時間がかかるのなら、出迎えには行かず、次の探偵が来るまで探索を続けたほうが得策かもしれない。樺川先生が来たときのことを考えると、殺人ゲームの説明はゲームマスターが行うらしいし、必ずしも私たちが出迎えに行く必要はない。が、そうなると一つ問題が生じる恐れがある。
私は樺川先生に尋ねた。
西野園「時間の効率を考えれば、このまま建物内の探索を続けた方がいいように思われますけれど、でも、新しい仲間がどういう人物なのか確認しておかないと、いざという時に困るんじゃないでしょうか?」
樺川「ふむ……困る、というと?」
西野園「まず、一人目、そして二人目を殺した犯人がこの建物内にいると仮定して、犯人がどういう風体の人物なのか、我々には全く情報がありません。玄関前にいた黒づくめの男たちのようにわかりやすい服装をしていればいいのですが、必ずしもそうとは限らない。となると、怖いのは、次の探偵を敵と誤認してしまうケースです」
『逃走中』のハンターを連想させる、黒いスーツの男たち。もし犯人がハンター並みの走力を持っていたら、生贄が逃げ切ることはできないだろうし、正直、私たちでは捕まえることも不可能だと思う。
それはそれとして、ゲームマスター側の人間が門番たちのようにわかりやすいユニフォームを着ていればいいが、そうでない場合、こちらの仲間の探偵が誰なのか、きちんと確認しておく必要が生じるだろう。
樺川「……なるほど。たしかに、その可能性は考えられるね。特に、次の探偵がヤクザみたいな強面だった場合、突然鉢合わせたら、僕たちも驚いて逃げ出してしまうかもしれない」
樺川先生は冗談めかした口調で言いながら肩を竦めた。
……いや、さすがに今のは冗談だよね?
私と樺川先生がエントランスに戻ると、そこには既に三人目の探偵と思しき人物が立っていた。
「やあ、老人会の集まりと聞いてやってきたのですが……どこなんだ、ここは。皆さんはもうお着きなのかな。そこの若いお二方、何かご存じありませんかね」
老人会、という単語から連想される姿そのままに、三人目の探偵は壮年を過ぎ、明らかに老境に差し掛かっている人物だった。撫でつけられた髪はロマンスグレーと呼ぶには白すぎ、グレーのスーツもややだぶついて見える。表情だけは溌剌としているが、細かい皺の刻まれた肌や嗄れ気味の声からはどことなく窶れたような印象を受け、探偵らしい気迫のようなものはほとんど感じられなかった(まあ、それは私にも樺川先生にもほとんどないんだけど)。
どう見ても穏やかな老人である。この人が、三人目の探偵――?
私と樺川先生は再び顔を見合わせた。樺川先生の表情には微かに落胆の色が見られたし、もしかしたら私もそうだったかもしれない。いや、老人だからといって差別するつもりは全くないのだけれど、でも、率直に言って、この老人を戦力として計算するのはあまりにも酷であるように思えた。見たところ、車で私をここまで送ってきたあの偽老刑事より更に年上だし、ことによっては彼が三人目の死者になることさえ……。
戸惑う私たちを見て、老紳士はさらに困惑した表情を浮かべる。
老紳士「はて、運転手が行き先を間違えたんだろうか。こんなところじゃ肝試しぐらいしかできそうにないが、私らぐらいの年になると、若者より幽霊の方がずっと身近な存在ですからな。驚かされたらその場でポックリお化けの仲間入りをしかねない。はっはっは」
ユーモアのつもりだったのか、老紳士は快活に笑うが、実際にその可能性を危惧していたこともあり、笑うに笑えない。
微妙な空気が流れたところで、またしてもオーケストラの音量が絞られ、ゲームマスターの声が響き渡る。この声が助け舟になる状況があろうとは――。
「我が殺人ゲームへようこそ、三人目の探偵、桃貫元警部」
警部? このおじいちゃんが?
まさか、と見ると、桃貫元警部と呼ばれた老紳士は、先程までとはうってかわって鋭い眼光を周囲に走らせていた。ゲームマスターの声に耳を澄ませながら虚空を睨むその姿は、たしかに往年の名刑事ぶりを窺わせる。
私たちと同様に殺人ゲームの説明を受けた桃貫警部は、反応に困る自虐ネタで哄笑していた老紳士とはまるで別人のように深刻な表情を作って言った。
桃貫「……要するに、ここでは現在殺人ゲームなるものが行われていて、十五分以内に殺人を止めなければ、我々はここから出ることができないということですな……」
西野園「はい、どうやらそのようです」
桃貫「何とけしからん。殺人ゲームだか何だか知らんが、いったい人の命を何だと思っているんだ、彼奴は!」
と、桃貫警部は声を荒げる。その剣幕に私は、驚くと同時に、これが正義感に溢れる探偵の普通の反応なのか、と感心せずにはいられなかった。殺人ゲームに関する説明を受けた際、私は状況が飲み込めず困惑するばかりだったし、樺川先生は(少なくとも見た目には)ボーッとしていただけだったのだ。
それなのに桃貫警部は、素早く状況を理解しただけでなく、殺人を食い止めこのゲームを終わらせようと強い意欲を見せている。桃貫『元警部』と呼ばれたからには、彼はきっと定年退職した元刑事なのだろう。私や樺川先生のように成り行きで探偵役になってしまったわけではなく、犯罪を防ぎ、犯人を逮捕して市民を守る、それを職業として選んでいた人間。その気迫を見せつけられた気がして、彼の姿を見るなり戦力外と思ってしまった自分の判断を、私は内心で強く恥じた。
桃貫警部は射貫くような眼差しで私たちを見る。
桃貫「ということは、つまり、あなたがたもこのくだらんゲームに招かれた探偵、ということですかな?」
西野園「ええ、はい、あの……自己紹介が遅れました。私は西野園といいます。たまたま何度か事件に巻き込まれたことがあるだけで、探偵なんて名乗るのもおこがましいのですけれど」
樺川「私はN大で准教授をしている樺川です。私も西野園君と同様、自分では探偵だなんて思ったこともないんですけどね」
桃貫「なるほど。私こそ、自己紹介がまだでしたな。私は桃貫と申します。警視庁の捜査一課で長年凶悪犯罪に立ち向かって参りましたが、定年退職した今は、単なるしがない老人の身。お若いお二方にはご迷惑をおかけするかもしれませんが、犯人逮捕のため、共に力を尽くしましょう」
そう言うと、桃貫警部は短く、しかし深く頭を下げた。
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樺川「いえ、こちらこそ、プロの刑事の方に仲間に加わって頂けて心強いです。率直に言って、僕たちも何をどうしたらいいのか途方に暮れていたところなんですよ」
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