そして何も言わなくなった【改稿版】

浦登みっひ

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三日目(5)

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「……え? ボートがない?」

 遊戯室に戻り、船着き場に繋留されていたはずのボートがなくなっていることを伝えると、望は驚きとも困惑ともとれる表情で言った。

「この波で流されたってこと? ええ……ロープの結びが緩かったのか……?」

 望の動揺ぶりは尋常ではなかった。
 乙軒島に来てから色々なことがあったが、錦野を含めたこの島にいる面々の中で、望はこれまで最も冷静さを保っていた人物だと言っていい。その望がここまで狼狽えるのは、乙軒島と外部との唯一の連絡手段が断たれたという事実はもちろん、あのボートを最後に使ったのが望であることが原因だろう。つまり、ボートを船着き場に繋留したのが望で、望のロープの結び方が不完全だったためにボートが流されてしまい、ボートが流されてしまったために外部との連絡、および島からの脱出のための手段を失ってしまった。望はそう考え、大きな責任を感じたのである。
 しかし、錦野はすぐさま望の言葉を否定した。

「いえ、そういうわけではありませんよ。昨日の午後、台風に備えて色々準備をした際に、私が念のためボートの方も見てきましたが、ロープはしっかり繋がれていました。波はたしかに高いですが、あのロープが解けるほどではありませんし、ロープが切れていたわけでもありません。あれは……おそらくですが、人為的に解かれたものと思われます」
「人為的に……? それって、つまり……」

 望の言葉を継いだのは霞夜だった。

「……そう。昨夜から今朝にかけて、あのボートのロープを解いた人間がいるってこと」

 霞夜のその一言によって、遊戯室は更なる緊張に包まれた。

「そんなの……誰が……何のために?」

 綸が唇を震わせながら尋ねると、霞夜は顎に手を当て、軽く俯きながら、まるで推理小説に登場する名探偵の如く、遊戯室の中をゆっくりと歩き始める。

「考えられる可能性は二つ。一つは、嬰莉を殺した犯人が逃走のために使った。もう一つは、まだ乙軒島のどこかに潜んでいる犯人が、私たちをここから逃がさないため、そして外部との連絡を断つためにボートのロープを解いた……」

 霞夜の言葉に、仄香は思わず息を呑んだ。それまでは異様な犯行と犯人の存在にただただ怯えるばかりだったが、霞夜の考察によって、犯人の具体的な行動が見え始めたからである。

「まず前者から。犯人は嬰莉を殺したあと、ボートに乗ってこの島から逃亡した。今はこんなに大時化だけど、昨日の夜の時点ではまだ波も穏やかだったから、おそらく犯人は嬰莉を殺した後すぐ、海が荒れ始める前にボートに乗って、乙軒島から姿を消すことが可能だった。犯人はもうどこまで逃げているかわからない。台風のせいできっと船も飛行機も使えないから、まだ沖縄からは出ていないかもしれないけど、私たちに外部との連絡手段がない以上、悔しいけど今は対処のしようがない。ただ、この場合、犯人はもう乙軒島にいないわけだから、これ以上犠牲が増えることはない。現状では楽観的な可能性だと思う。問題なのはむしろ後者――つまり、犯人がまだ乙軒島にいて、私たちをここに閉じ込めるためにボートのロープを解いた場合だね。わざわざ退路を断って私たちを乙軒島に押し込めたわけだから、まだ私たちを狙っていると考えるのが妥当でしょう」
「霞夜たちはずっとこの屋敷と島の中を探索してたんだよね? 犯人につながる手がかりは何も掴めなかったの?」

 綸がややヒステリックな口調で言い、霞夜と一緒に島を捜索していた仄香はやや気色ばんだが、霞夜は冷徹な表情を崩さない。

「ええ。地下室から、仄香のご両親の部屋、外のログハウスまで全部見て回ったけど、不審者の形跡はどこにもなかった」
「じゃあ、やっぱり……!」

 綸は錦野を『こいつが犯人だ』と言わんばかりに睨みつける。しかし、すぐ傍にいた望にたしなめられると、綸は不服そうに鼻を鳴らしながらも錦野から視線を逸らした。
 綸が黙ったのを見て、霞夜は再び語り始める。

「私たちは屋敷中歩き回って探していたから、もし犯人がこの屋敷の中に潜んでいたとすれば、絶対に見つけられたはず。逃げ回れば足音もしたはずだしね。犯人だってお腹も減るし、トイレもずっと我慢できるわけじゃないし、一か所に引きこもり続けることはできない。ログハウスにも人がゆったり過ごせるようなスペースはなかったし、この天気の中で外に居続けるのはほぼ無理。だから私は、今のところ、犯人は既にあのボートに乗って島を出ていったんじゃないか、と考えてる」
「それはちょっと楽観的すぎるんじゃない?」

 霞夜の意見に異を唱えたのは望だった。

「この屋敷の中だって、霞夜たちの動きを見ながら隠れ場所を移動することは全く不可能というわけじゃないだろうし、そもそも、犯人がどうやってこの島に来たのかだってわからないじゃない? 乙軒島から脱出するのにボートを使ったってことはまあわかるとして、じゃあ来る時は? 近くの島からここまでは、遠泳の選手でもなければ泳いで渡れるような距離じゃないよ」
「視認できない夜中のうちに手漕ぎの小舟か何かで渡って来て、乙軒島に着いた時点でその小舟を捨て、ボートで帰ったのかもしれない。ここに来る途中で立ち寄った島でたまたま嬰莉のことを見初めて、私たちが乙軒島に来ると聞いて追ってきたのかも。その可能性はゼロじゃない」
「霞夜、自分が無茶苦茶なことを言ってるって自覚はある? 確かにそういう可能性はゼロじゃないけど、でも、ほぼゼロと言っていいぐらい低い可能性だよね。それを真面目に考えるなんて、あんまり霞夜らしくないと思うよ」
「じゃあ、望はこのメンバーの中に犯人がいる、と言いたいわけ?」

 霞夜はそう言うと、鋭い目つきで望を見据える。

「い、いや……そういうわけじゃ……」

 ここまで強く出られるとは思っていなかったのか、霞夜の剣幕に押された望は少し面食らった様子で錦野をちらりと見た。
 しかし、望の言ったことは決して間違っていない。現状を説明するだけならば霞夜の推理で何ら問題はないのだが、それが外部犯の存在を前提とするものである以上、その犯人がどこからどうやって乙軒島にやってきたのか、という望の反論は的を射たものだった。
 だが、外部犯の可能性を否定すると、必然的に今ここにいるメンバーの中に嬰莉を殺した犯人がいることになり、それは即ち、望からは犯人が錦野だと名指しするに等しい行為になる。
 とは言うものの、錦野犯人説は憶測の域を出ないものだし、状況証拠と呼べるようなものすら存在しない。望自身も錦野に対してそれほど悪い感情は抱いていないようだし、現状で錦野を犯人と決めつけるのが得策ではないということに気付いているようだった。特に、綸は昨日の件もあって錦野が犯人だとほぼ断定している様子。ここで錦野にこれ以上強い疑いをかけると、ただでさえ平静さを失っている綸がどんな行動に出るかわからないのだ。

 霞夜も当然それを懸念していたらしく、ちらと綸を見てから、それとなく望に目顔で訴えかける。霞夜の意図を察した望は、やや気まずそうな表情で口を噤んだ。
 望からそれ以上の反論が出てこないことを確認して、霞夜は続ける。

「……でも、望の不安は尤もだよ。常に最悪の可能性を考えておくべきだと私も思う。だから……錦野さん」
「……は、はい」

 部屋の片隅で縮こまっていた錦野は、霞夜に声をかけられて、飛び上がるような勢いでその場に起立した。自分に疑いの目が向けられていることは錦野も重々承知しており、霞夜たちの意向に逆らって心証を悪くするつもりはないようだ。

「こういう状況ですし、疑心暗鬼には陥りたくない。錦野さんも無用な疑いをかけられるのは本意ではないはずです。そこで提案なのですが、今夜以降、錦野さんには部屋から一歩も出ないでいただきたいんです」
「部屋から、一歩も……ですか」
「はい。今日錦野さんの部屋を拝見したところ、錦野さんの部屋も、私たちの客室と同様バスとトイレが完備されていますね」
「はあ……たしかに、そうですが」
「つまり、私たちが食事を部屋に運ぶようにすれば、錦野さんはご自身の部屋の中だけで生活できる。だから、申し訳ありませんが、外部と連絡が取れるまで錦野さんにはずっとご自分の部屋に篭もっていただき、尚且つ、部屋の前にバリケードになるものを置かせてもらいたいと考えているのです。錦野さんに対して、これが大変失礼な申し出であることは理解しているつもりですが……了承していただけますか?」

 錦野を部屋に閉じ込め、出られないようにする。つまり、事実上の軟禁である。確かにそれは、現時点で最も疑わしい人物である錦野の行動を制限し、また錦野が無実であった場合に無意味な疑いをかけることを避ける意味で、悪い提案ではない。
 ただし、この提案を持ち掛けられた錦野の自尊心が傷つくことは避けられない。昨日綸に目撃された件を除けば、管理人としての錦野の働きには何ら落ち度はない。が、彼がここまで強く疑われる原因の一つには、お世辞にも整っているとは言えない彼の容姿と、昨日の一件が挙げられることは否めないだろう。
 錦野は横目でちらりと望を見てから、力なく答えた。

「……止むを得ない、のでしょうな……わかりました。それで私にかけられた疑いが晴れるのでしたら、仰せの通りにいたしましょう」

 その後、錦野を含めた全員で一階へ降り、物置でバリケードになりそうな棚や金具を見繕って、錦野の部屋の前まで運び出した。自分を部屋に閉じ込めるための道具を選ばされる錦野の心境は如何ばかりか。大人しく霞夜たちの指示に従う錦野を見て、綸の態度もやや軟化したようだった。
 部屋の扉はバリケードで塞ぐとして、窓はどうするべきか、という問題が持ち上がったが、これは窓のクレセント錠を接着剤で固めて対処することになった。それでも窓ガラスを割れば脱出は可能なのだが、強化ガラス製の窓を割ることは容易ではないし、それでも窓を割ったとすれば、割れたガラスが何よりの証拠になる。行動を制限する目的ならばそれで十分だろう、と霞夜は考えたようだ。

「では、後のことは全て皆様にお任せ致します。屋敷内のことで何かわからないことがありましたら、何なりとお言いつけください。では……」
「あ、待ってください」

 窓の処置が終わり、そのまますぐ部屋に入ろうとした錦野を、霞夜が呼び止めた。

「あの、外と連絡がとれるようになるには、何日ぐらいかかると思われますか?」

 霞夜が尋ねると、錦野は眉根を寄せる。

「う~~む、まずはこの台風が過ぎてからでなければ何とも言えませんが、しかし、普段は二、三日に一度は最寄りの島へ買い出しに行っておりますし、向こうには何人か顔馴染みもおりますから、何日も顔を出さないでいれば、さすがに心配して来てくれるはずです。乙軒島の事情については周りの島の皆様も知っていて、先代の管理人の頃から、数日姿を見せなくなったら様子を見に来てくれる手筈になっているようですからね」
「……なるほど。では……心苦しいですが、それまでの間、錦野さんはこの部屋でお過ごしください。何か不自由な点がありましたら、できる限りのことは致しますので」
「はは……何だか、立場が逆転してしまったようですな……それでは、私はこれで失礼いたします。皆様も、くれぐれも、お気をつけて」

 錦野はそう言って部屋に入り、静かに扉を閉めた。その大きな背中はどこか寂しげで、リストラされ、家族もなく、若者には煙たがられる、一人の中年男の悲哀が漂っていた。嬰莉の命を奪い、死体を凌辱した凶悪な犯人という雰囲気は微塵も感じられなかったが、しかし、だからといってこの状況で彼を信用するわけにもいかない。
 そこにいた全員、あれほど錦野を毛嫌いしていたはずの綸までもが、気まずい表情を浮かべながら、しばらく無言で立ち尽くしていた。本当にこれでよかったのだろうか――誰も言葉にはしなかったが、同じ疑念が心の底に渦巻いているようだった。
 望が長い沈黙を破り、廊下に並べた棚や金具に手をかけながら促す。

「さあ、いつまでもここでぼんやりしてるわけにもいかない。これを動かそう」

 望がスチール棚を持ち上げて錦野の部屋の扉に立てかけ、中に重さのある物を入れて重石がわりにし、さらにスチール棚の周囲にも椅子や土の入った袋などを置いて、容易には動かせないことを確認してから、仄香たちは錦野の部屋の前を離れた。
 リビングへ移動して柔らかいソファに身を沈めると、途端に凄まじい疲労感が押し寄せてくる。口を開く者は誰もいなかった。ムードメーカーとなっていた嬰莉の不在が、重苦しい空気の中では特に大きく感じられる。
 皆しばらく無言のままぐったりしていたが、

「……ご、ごめん……」

 と、腹の虫を鳴らしてしまった仄香が苦笑しながら腹を押さえる。ふと時計を見ると、時刻は既に午後三時を回っていた。

「……そういえば、お昼食べてなかったね……なんかあたしもお腹空いてきちゃった」
「それどころじゃなかったからね……錦野さんは霞夜たちと一緒に行動してたし」

 綸と望も空腹を思い出したらしく、気まずそうに顔を見合わせる。そんな三人の様子を見て、霞夜が徐に立ち上がった。

「じゃあ、ちょっと中途半端な時間だけど、作ろうか、ご飯」
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