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『裏路地に現れる狼男を退治してほしい』
第4話
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「あっあの・・・ほんとに大丈夫なんでしょうか・・・?」
「ん?なにが?」
太陽が沈んだスラムの一角。“狼男”の探索を行っているところに、気弱なシスターが声を上げた。探索のため、魔族対処組織でもある教会から派遣された二人の片割れだった
「セナ様のご友人が、夕方からいらっしゃるんですよね・・・」
聞き返せば、信徒は心配そうにつぶやく
「もしかしたら、狼男の餌食になってしまうのでは・・・」
「ないない!」
敬虔な信徒の言葉に笑いながらいう。
「あの子が狼に襲われるなんてありえないよ。」
「そ。そうですか……信頼されているのですね。」
私の言葉に、小柄な少女はまぶしそうに言った。
「う~ん、信頼って言っていいのかな?」
その言葉に訂正を入れるべきか悩んだけど、結局訂正は入れないで上げる。
「それよりあなたの方が心配だよ。戦えないんでしょ?」
「大丈夫です。」
十五を超えたほどに見える容姿を笑顔にした信徒が言った。
「私は聖句のためにお二人の後ろに控えているだけですし、お二人の事を信頼しておりますから」
「お任せください!」
それまで喋っていなかったもう片割れ、騎士然とした男が胸に手を当てて叫んだ。
「某が必ずや、貴方のことを御守りしましょう!」
「ありがとうございます、騎士さま」
宣言を聞いた少女が言った。
「でも、無理はなさらないでくださいね?」
(ラブラブしてんなぁ)
二人の会話から甘酸っぱい物を感じ取って少し離れた時。
何処かで狼の遠吠えが聞こえた。
「今のは……」
「狼……もしや狼男!」
「あっはや!」
遠吠えに素早く反応して駆け出した二人の後をワンテンポ遅れて追う。
聞こえてくる遠吠えと目の前を進む二人を頼りに寂れた街を進む。
遠吠えの間隔は一定、まるで誰かに来てほしいかのようだった。
「……!動くな!」
いくつかの路地を曲がった先で、騎士が廃墟に向けて剣を抜き放った。
「その者達を離せ!狼男!」
「ーーーー!」
その後ろでシスターが聖句をあげる
騎士の剣が魔祓いの光で淡く輝く。
「どうしたの!」
追いついた私も腰の剣を抜き、廃墟の中へと向き直る。
そこにいたのは、二足歩行の狼。
後ろ足だけで体を直立させ、本来前足であるはずの部分が人の面影を持つ。
その前足ーー両手にそれぞれ男を抱え、何かの布で背中に女の子を縛りつけたーー
「ってルルカじゃん!」
私の友達、人狼のルルカがそこにいた。
「もうヤダぁ……見えないのヤダよぅ」
「大丈夫だルルカ殿!今助ける!!」
「は……?」
ルルカが背負っていた少女が涙声で行った矢先、騎士が突撃しながら叫んだ言葉に動揺してしまった。
(判断めちゃくちゃ早い……!けどっ!!)
「違う!人狼のほうがルルカ!私の友達!」
「なんだとっ!!」
男達を抱えたままのルルカに刺突を避けられた騎士が、私の言葉に驚いた声を上げ、
さらに上段から斬り掛かった。
「なんでっ!?」
「つまりこういうことだろう……!」
その行動に思わず突っ込めば、騎士は当たり前だと言わんばかりに言い切った。
「このルルカという人狼は、セナ殿の好意につけ込んで、此度の人狼騒ぎを起こしていたっ!そういうことだろう!!」
「「違うっ!!」」
「ん?なにが?」
太陽が沈んだスラムの一角。“狼男”の探索を行っているところに、気弱なシスターが声を上げた。探索のため、魔族対処組織でもある教会から派遣された二人の片割れだった
「セナ様のご友人が、夕方からいらっしゃるんですよね・・・」
聞き返せば、信徒は心配そうにつぶやく
「もしかしたら、狼男の餌食になってしまうのでは・・・」
「ないない!」
敬虔な信徒の言葉に笑いながらいう。
「あの子が狼に襲われるなんてありえないよ。」
「そ。そうですか……信頼されているのですね。」
私の言葉に、小柄な少女はまぶしそうに言った。
「う~ん、信頼って言っていいのかな?」
その言葉に訂正を入れるべきか悩んだけど、結局訂正は入れないで上げる。
「それよりあなたの方が心配だよ。戦えないんでしょ?」
「大丈夫です。」
十五を超えたほどに見える容姿を笑顔にした信徒が言った。
「私は聖句のためにお二人の後ろに控えているだけですし、お二人の事を信頼しておりますから」
「お任せください!」
それまで喋っていなかったもう片割れ、騎士然とした男が胸に手を当てて叫んだ。
「某が必ずや、貴方のことを御守りしましょう!」
「ありがとうございます、騎士さま」
宣言を聞いた少女が言った。
「でも、無理はなさらないでくださいね?」
(ラブラブしてんなぁ)
二人の会話から甘酸っぱい物を感じ取って少し離れた時。
何処かで狼の遠吠えが聞こえた。
「今のは……」
「狼……もしや狼男!」
「あっはや!」
遠吠えに素早く反応して駆け出した二人の後をワンテンポ遅れて追う。
聞こえてくる遠吠えと目の前を進む二人を頼りに寂れた街を進む。
遠吠えの間隔は一定、まるで誰かに来てほしいかのようだった。
「……!動くな!」
いくつかの路地を曲がった先で、騎士が廃墟に向けて剣を抜き放った。
「その者達を離せ!狼男!」
「ーーーー!」
その後ろでシスターが聖句をあげる
騎士の剣が魔祓いの光で淡く輝く。
「どうしたの!」
追いついた私も腰の剣を抜き、廃墟の中へと向き直る。
そこにいたのは、二足歩行の狼。
後ろ足だけで体を直立させ、本来前足であるはずの部分が人の面影を持つ。
その前足ーー両手にそれぞれ男を抱え、何かの布で背中に女の子を縛りつけたーー
「ってルルカじゃん!」
私の友達、人狼のルルカがそこにいた。
「もうヤダぁ……見えないのヤダよぅ」
「大丈夫だルルカ殿!今助ける!!」
「は……?」
ルルカが背負っていた少女が涙声で行った矢先、騎士が突撃しながら叫んだ言葉に動揺してしまった。
(判断めちゃくちゃ早い……!けどっ!!)
「違う!人狼のほうがルルカ!私の友達!」
「なんだとっ!!」
男達を抱えたままのルルカに刺突を避けられた騎士が、私の言葉に驚いた声を上げ、
さらに上段から斬り掛かった。
「なんでっ!?」
「つまりこういうことだろう……!」
その行動に思わず突っ込めば、騎士は当たり前だと言わんばかりに言い切った。
「このルルカという人狼は、セナ殿の好意につけ込んで、此度の人狼騒ぎを起こしていたっ!そういうことだろう!!」
「「違うっ!!」」
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