28 / 34
『』
第3話
しおりを挟む
スラム、その中でも特に奥まった場所。
そこらへんにあった布をあてがって脇腹の止血を済ませた後、いくつかの廃墟を通って姿をくらませ、ここの住人も寄り付かないような廃墟群の一つで私は大の字に倒れた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ゲホッ」
朝日に炙られるように私の身体が人間になっていく。
それに合わせるように脇腹の傷も小さくなる。
人狼の持つ再生力は、肉体が変化するときに大きく作用する。
脇腹の痛みが引いて、かろうじて動けるほどに体力が回復しても、私の身体はうごかなかった。
着込む余裕もなくて、そこらで拾った止血用の布を除けば寝間着そのものだ。
それでも、羞恥心を感じる余裕すらなかった。
ニグヘットが馬車を引き連れた。
デヴィンが銃で撃ち抜いた。
セナが剣を向けてきた。
「ヒグ……グスッ……」
蹲る私の目からとめどなく涙が溢れる。
みんなと仲良くなれたのに
何年もかけて、悪い奴じゃないって思ってもらえたのに。
それが、たった一夜でぶち壊されたような気分だった。
「……フゥ……フゥ」
それでも、泣いても、泣き喚くことはしない、しても意味がないこと知っているから。
「……絶対に許さない」
手の甲を擦りつけて涙を落とす。口から出た恨みはあの三人以外に向けられていた。
セナはあの人に殺せと言われたと言っていた。それがおかしい。
そもそも、セナが剣を向けることがおかしい。アイツは、私を殺せと言われても、私を逃がすことに全力を出す。セナはそういう子だ。
「絶対に許さないよ……!」
裏に、そういう風にさせたやつがいる。そいつを徹底的に潰す。
立ち止まることはしない、したら死んでしまうと知っているから。
そこらへんにあった布をあてがって脇腹の止血を済ませた後、いくつかの廃墟を通って姿をくらませ、ここの住人も寄り付かないような廃墟群の一つで私は大の字に倒れた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ゲホッ」
朝日に炙られるように私の身体が人間になっていく。
それに合わせるように脇腹の傷も小さくなる。
人狼の持つ再生力は、肉体が変化するときに大きく作用する。
脇腹の痛みが引いて、かろうじて動けるほどに体力が回復しても、私の身体はうごかなかった。
着込む余裕もなくて、そこらで拾った止血用の布を除けば寝間着そのものだ。
それでも、羞恥心を感じる余裕すらなかった。
ニグヘットが馬車を引き連れた。
デヴィンが銃で撃ち抜いた。
セナが剣を向けてきた。
「ヒグ……グスッ……」
蹲る私の目からとめどなく涙が溢れる。
みんなと仲良くなれたのに
何年もかけて、悪い奴じゃないって思ってもらえたのに。
それが、たった一夜でぶち壊されたような気分だった。
「……フゥ……フゥ」
それでも、泣いても、泣き喚くことはしない、しても意味がないこと知っているから。
「……絶対に許さない」
手の甲を擦りつけて涙を落とす。口から出た恨みはあの三人以外に向けられていた。
セナはあの人に殺せと言われたと言っていた。それがおかしい。
そもそも、セナが剣を向けることがおかしい。アイツは、私を殺せと言われても、私を逃がすことに全力を出す。セナはそういう子だ。
「絶対に許さないよ……!」
裏に、そういう風にさせたやつがいる。そいつを徹底的に潰す。
立ち止まることはしない、したら死んでしまうと知っているから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる