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『』
終話
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「本当にごめんなさい!」
目が覚めた私が最初に見たのは親友の土下座姿だった。
あの後、“崇拝”の洗脳が解除されたセナとデヴィンとニグヘットが教会に突入し、危篤状態の私と妖狐の死体を見つけたらしい。
セナが治療しようとしてシスター服を裂いたことで聖句が切れて狼化、それと同時に病の魔が作用し始めて大事になり、方々からの説教もそこそこにセナの屋敷まで運び治療してくれた。
命があったのはもはや奇跡で、狼化と人間化が短い時間に連続して起きなかったら回復が間に合っていなかったかもしれない、と錬金術師が言うほどだったそうだ。
「セナ、もういいよ」
ベッドで上半身だけ起こしてセナに声を掛ける。
「全部妖狐が悪いんだし、その妖狐ももう倒しちゃったし。」
「いや、そうだとしてもさ……」
頭を上げたセナが顔を掻く。
「私がルルカに切りかかったのは事実だから、その……申し訳ないんだよね。」
「……んじゃあさ」
心の底から申し訳なさそうな顔をするセナから目を背けて頬杖をつく。
「なおったら屋台食べ歩きね、セナのおごりで。」
もう一度顔を向けると、セナが呆けたような顔でこっちを見た。
「……それでいいの?」
「それでいいの」
セナの声にウインク交じりにオウム返しをすれば、セナは微笑んで立ち上がった。
「分かった!いくらでもおごっちゃうよ!」
大きな声の宣言に思わず笑い、セナもつられて笑いだす。
そのまま二人でしばらく笑いあった。
「ところでさ……なんでルルカって人間の街にこだわるの?」
笑顔を少し崩したセナが言った。
「ん?美味しいものが食べたいから。」
私が正直に答える。
「……え?それだけ?」
予想外の返しだったのか少し驚いたセナに、私は続けた。
「ソレだけだよ、私は美味しいものが食べたいの。
……あの日誰かさんからもらったパン以上に、私にとって美味しかったものは無いんだよ?」
私が笑いかけると、誰かさんは頬を赤らめてそっぽを向いた。
目が覚めた私が最初に見たのは親友の土下座姿だった。
あの後、“崇拝”の洗脳が解除されたセナとデヴィンとニグヘットが教会に突入し、危篤状態の私と妖狐の死体を見つけたらしい。
セナが治療しようとしてシスター服を裂いたことで聖句が切れて狼化、それと同時に病の魔が作用し始めて大事になり、方々からの説教もそこそこにセナの屋敷まで運び治療してくれた。
命があったのはもはや奇跡で、狼化と人間化が短い時間に連続して起きなかったら回復が間に合っていなかったかもしれない、と錬金術師が言うほどだったそうだ。
「セナ、もういいよ」
ベッドで上半身だけ起こしてセナに声を掛ける。
「全部妖狐が悪いんだし、その妖狐ももう倒しちゃったし。」
「いや、そうだとしてもさ……」
頭を上げたセナが顔を掻く。
「私がルルカに切りかかったのは事実だから、その……申し訳ないんだよね。」
「……んじゃあさ」
心の底から申し訳なさそうな顔をするセナから目を背けて頬杖をつく。
「なおったら屋台食べ歩きね、セナのおごりで。」
もう一度顔を向けると、セナが呆けたような顔でこっちを見た。
「……それでいいの?」
「それでいいの」
セナの声にウインク交じりにオウム返しをすれば、セナは微笑んで立ち上がった。
「分かった!いくらでもおごっちゃうよ!」
大きな声の宣言に思わず笑い、セナもつられて笑いだす。
そのまま二人でしばらく笑いあった。
「ところでさ……なんでルルカって人間の街にこだわるの?」
笑顔を少し崩したセナが言った。
「ん?美味しいものが食べたいから。」
私が正直に答える。
「……え?それだけ?」
予想外の返しだったのか少し驚いたセナに、私は続けた。
「ソレだけだよ、私は美味しいものが食べたいの。
……あの日誰かさんからもらったパン以上に、私にとって美味しかったものは無いんだよ?」
私が笑いかけると、誰かさんは頬を赤らめてそっぽを向いた。
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