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Section8:キリル
54:不遇なる一等星 - 1
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広大な宇宙に広がる星々は
地球へ光を届けている
何万年、何億年という 気の遠くなる月日を経て
一等星も 六等星も
肉眼では見えない星々さえも
その輝きは 人間の魂に等しい
生きたい と願えば鮮やかに
諦めれば くすんでゆく
例え どんな天文学的な不遇に見舞われたとしても
既に輝いた光だけは 決して失われないだろう
――僕の名はキリル
キリル・トルストイ――
運命の導きに屈しても尚
光を届け続ける存在
それが 僕の価値
一等星の輝きを持って生まれた 唯一の理由
◆
――二一九九年六月。ロシア、ウラジオストク。
夏休みを控えた、基本一般教育で六年生の初夏。それは、ほんの些細な、最近のいたずら小僧なら、誰しもが一度は辿るような事件だった。
とある月曜日の、三時間目の社会の授業のことだ。一番後ろに座るフィリップが、突然机を叩いて立ち上がり、狂ったように喚きだしたのである。
何事か、と誰もが振り返った。
「オレのPCが、ウイルスにやられたあ!!」
今年で四十三歳になる担任のエゴール先生は、何も言わずにホワイトボードのペンを置き、お手本とも呼べる真っ直ぐな姿勢で、つかつかとフィリップの席へ歩いていった。
その長身が直ぐ傍を通りすぎた時、僕は関わるまいと思いながらも、興味本位で後ろを振り返ってしまった。
しかし、こちらからは画面は見えない。ド派手なドクロのシールで彩られた、ノートPCの白いフタが見えるだけだ。
先生はフィリップの画面を一目見た。野次馬となった周りの生徒達が、わざわざフィリップの席の前に集まり、驚いた声を上げる。
それから、何度かキーを叩いたり画面を直接タッチしたりと操作をしてみたが、効果はないようだ。フリーズでもしたのなら、再起動で治るかもしれないが……。
「……キリル君。こっちへ来なさい」
何故か、僕が呼ばれた。
いや、だからこそ、僕が呼ばれた、のかもしれない。
面倒だと思いつつも、心の何処かでは僕に対する評価を上げるチャンスだ、と思っていた。
……ところが、そいつは甘かったのだ。
「これを見なさい」
くるっとPCを回し、僕に見せる。
黄色い円に目と口と、手足を付けただけのキャラクターが、口から爆弾を取り出して爆発させているアニメーション。その背後には、大量のウインドウが次々と開いては閉じを繰り返し、手に負えない状況になっている。
どうやら、ウイルスというのは本当らしく、恐らく背後では、あらゆるファイルが適当な名前のテキストファイルに置き換えられたりしているのだろう。
「手遅れですね。ハードは無事だと思いますので、初期化しかありません」
端的に告げた。感染してからでは、どうにもならないのだ。
原因は決まっている。フィリップ自身が持ち込んだものだ。
教室のLANは基本的に外部のインターネットと繋がらないローカルサーバーだが、先生の許可無しでは、他の生徒とのファイルのやり取りやアクセスすら許されない。
となれば、フィリップ自身がメモリーチップに入れて持ってきた、ぐらいしか可能性が考えられないはずだ。
ところが先生は、どこからそんな斜め上の発想が生まれるのか、とんでもないことを口にしたのだった。
「キリル君。キミがやったのかね?」
僕は首を振ってハッキリと答えた。
「いいえ、違います」
視線を横に移すと、フィリップが口に手を当て、わざとらしくクスクスと笑っているのが見えた。
……アイツは、いつもそうだ。事あるごとに、自分が何かしでかすと、全て僕に擦り付けてくる。
「コイツは――」僕は、フィリップを指差した。「自分ん#家__ち__でDLしたウイルスを持ち込んでくるんです。僕には、全く関係ありません」
「だが、そんな真似が出来るのは、キミだけだろう? キリル君」
言い切った。何の根拠も無しに。
……この教師、PCの知識が上辺だけということで有名だった。だから、今どきホワイトボードだなんてアナログなものを使って授業を行っている。偉そうな事を言ってはいるが、ボロを出したくないだけなのだ。
PCでデータを作らなくちゃいけない時は、他のクラスの若い教師に任せているぐらいだ。学ぼうという姿勢もない。
そんなアナログオヤジなものだから、ちょっとしたPCトラブルがあると、直ぐ僕のせいにしたがる。近所では、コンピュータウイルスを作れる程の腕を持つ天才少年だと騒がれているからだ。
確かに、その噂は嘘ではない。実際、ウイルスを実験で作った事が何度かあった。
しかし、わざわざ学校に来てまで、人を傷つけるような真似だけは絶対にしない。それなりの理由だってある。
四年前の、二一九五年。アニマリーヴ・プロジェクトの詳細が報道され、各家庭に満遍なくダイレクトメールによる正式な通知が送られてから、一部の私立校と全ての公立校で、「準備退学」という制度が設けられた。
四年後にプルステラへの移住を行う人達には、その「出国」手続きのために大量の資金が必要になる。
そもそも、学校なんて、時間を気にしなくていいプルステラでゆっくり勉強すればいい話である。
それよりも、今、こうしている間の時間こそが大切だ。僅か四年後に、施行期間がたったの一年と限られている移住、則ち、アニマリーヴが開始されるのだ。学業に夢中になり、準備を怠ってしまったら、滅びゆく文明と運命を共にしなくてはならない。
だから、例え義務教育期間中であっても、公的に中退して準備に費やせる、と、国が定めたのである。
その期間の過ごし方は自由である。それなりの能力があるなら、働いて金を稼いだり、そうでなければ、両親を共働きにし、子供が家事を引き受けるとか、そんな形でも構わない。……或いは、人生を終わらせる準備をするというのも……。
ただし、準備退学をするための条件としては、その生徒の成績が国中の学年の平均以上、且つ、学校の出席日数が九割以上であることと、その家庭の収入が国の平均収入額を下回る場合、と定められている。
この時、成績がトップだった生徒には、別途、奨学金も与えられる。一人分のプルステラなら完全にカバー出来る程の金額だ。
そんな魅力的な条件を、僕自らが、台無しにするワケがない。
エゴール先生は、心の何処かで僕を妬んでいるように思える。
フィリップはそのことを利用して、少しでも平均に近付けるよう、僕に仕掛けてきたのだ。
「先生。証拠も無しに疑うのですか? こんなもの、闇サイトで落とせば誰だって持ち込めるじゃありませんか」
僕は苛立ちの余り、少々声を荒らげて抵抗した。
生徒の何人かは、先生の知識の無さを影で嘲笑している。
先生は、とうとう顔を真っ赤にし、子供のように喚きだした。
「だ、誰もが、キミみたいにPCを扱える、というわけじゃないんだよ!!」
「では、僕にどうしろとおっしゃるのですか。フィリップ君のPCを直せ、と言うのであれば直しますが、また別の事件が起きた時に、僕が疑われるのは気持ちのいいものではありません」
「何もしなくてよろしい! フィリップ君。そのPCは後で職員室に持っていきます。キミは視聴覚室から替わりのPCを持ってきなさい」
フィリップは元気よく立ち上がり、「はい、先生」と、普段は見せないようないい子ぶりで返事をする。
先生が背中を見せた隙に、その後ろから僕に向かって舌を出した。
「キリル君は、後で職員室に来るように!」
先生は、そんなフィリップの本性にも気付かずに僕を徹底攻撃し、肩を怒らせて教壇へ帰っていった。
……とんでもない教員だ。何もかも、自分が正しいと思っている。
結局、職員室で説教され、他の教師の前で冤罪をかけられた僕は、奨学金どころじゃ無くなったかもしれない。
或いは、他の教師が僕を庇って助けてくれるだろうか。……いや、そんな面識など、一人もない。
――八歳の頃。僕がPCに詳しい事を知った近所のおばさんが、壊れたPCを直してほしい、と僕にお願いしてきた。
あのおばさんにしてみたら、大道芸を見るような気持ちだったのだろう。子供だから、などと軽く見ていたのかもしれない。
ところが、壊れた原因がこれこれ、こういうウイルスに掛かっていて、アンチウイルスソフトでも対応出来なかったからで、まだ治せる余地もあるから、自分がワクチンをプログラミングしてその場で治してやった、と説明すると、何と、「ウイルスに対抗出来る、イコール、ウイルスを作れる」等と解釈してしまったのである。
……確かに、その程度の実力はあるが、以後、尾ひれがついて近所中に広まってしまった。
――あの子に関わるとウイルスを植えつけられるわ。
――きっと、自宅でハッキングしてるのよ。国の重要機密とか盗み出しているに違いないわ。
――怖いから、知らぬフリをしておきましょう。事件に巻き込まれたり、PCが壊されたらたまらないもの。
今では、僕を見る目が怪物でも見るかのようで、挨拶すらせずに顔を背けられる。子供とすら、思われていないのだ。
その影響は僕どころか、たった一人の肉親である、お母さんにも及んでいた。
怖がられる事には慣れている。近所のソレは、まだ我慢出来たぐらいだ。
……だけど、エゴール先生は。
僕に対し、絶対に言ってはいけない文句を言ってしまった。
「……全く。あの親にしてこの子あり、か。一体どういう教育を受けて来たんだね」
ドクン、と、胸の奥で鼓動が一つ、高鳴った。
お母さんは関係ないだろう。元はと言えばフィリップのせいだが、これは、僕だけの問題のはずだ。
もはや、理性が切れかかっていた。
……そんなに僕を怒らせたいのなら、本当の恐怖を教えてやるよ!
フィリップのやったことが如何に幼稚か、これで判るはずだ!
◆
翌日。起きるべき事件は起こってしまった。
教材と思ってファイルをDLした生徒のPCが、九時きっかりにビービーとビープ音を鳴らし始めたのである。
音は次第に伝染し、学校中で大きな騒ぎに発展した。
先生達が慌てて原因を調べたものの、行き着く先は、やはり僕だった。
ガラリと教室の戸が力強く開け放たれ、数名の教師達がずかずかと列を成して入り込んできた。
先頭に立つエゴール先生は、迷わずに僕の席まで早歩きで移動し、バン、と強く両の掌でテーブルを叩いた。
「キミの仕業かね、キリル・トルストイ君!?」
他の教師は黙って様子を伺っている。表情からして、半信半疑だが、八割ぐらいは僕を疑っているだろう。
僕を疑いだしたのは、やはり、エゴール先生で間違いなさそうだった。
「……ええ、そうですよ。『今度は』僕です」
僕は素直に認めた。
教室中にどよめきが上がる。
「みんなが、ありもしない罪で僕を疑うので、今度は僕だと、正直に話しました」
「言い訳は無用! 職員室に来なさい!! 今すぐに!!」
……実際に職員室へ行って分かった事は、一部の教師は僕を疑っていなかった、ということだ。
それも、今回の事件で帳消しにされてしまったが、僕の言葉の意味を考えてくれている教師も何名かいた。
エゴール先生に説得させられる教師もいた。最後まで僕を庇う教師もいた。
だが、退学、という二文字は変えられる事は無く、その日の内に決定が下された。
僕は、いつもより早い通学路を一人で歩いて帰り、普通に帰宅した。
お母さんは、誰かと電話していたらしく、受話器を切った後、上の階へ上がろうとする僕を呼び止めた。
「今、学校から電話が掛かってきたわよ、キリル。随分暴れたそうじゃないの。お母さん、驚いちゃったわ」
お母さんは、怒るどころか、呆れたような目を向けていた。
「お昼、まだでしょ? 二人分、作っておくわね」
「……いい! 要らない!」
耐えられなくなった。
僕は残りの階段を急いで駆け上がり、自分の部屋に飛びこんだ。
荒々しくドアを閉め、鍵をかけ、そのまま、ドアを押さえつけるように背中で寄り掛かる。
「うっ……ううっ……!」
僕が持つ、知能という武器は、大人ですら危ういと感じるものだった。
だから、常に冷静になろうと努めていたのに……。
最後に箍を外したのは、結局、僕の中にいる、子供らしさという側面だったのだ。
……もう、何もかもが水の泡だ。
奨学金なんて貰えず、学校へ行く価値すらも無いと判断された。
苦労して積み上げてきたこの五年間(※後書きにて解説)は、最悪の結末を迎えてしまった。
出来れば、普通の子供として生まれたかった。
頭が良くたって、何の役にも立たないじゃないか。
いっそのこと、ゲームの仮想世界でずっと生きていたい。僕じゃない、誰かになって、生きていたい。
「キリル……」
心配したお母さんが、ドア越しに声をかけてきた。
僕は、しゃくっていた声を必死に留め、涙を拭った。
これ以上、お母さんに弱みを見せたくなかった。……この家では、僕だけが、唯一の男だから。
「なんで……?」
「え?」
「なんで、僕を叱ってくれないのさ!」
お母さんは、ドアの向こうで小さく笑った。
「お前が、自分から悪いことをする子じゃないって、分かっているからよ。何か事情があったんでしょう?」
「…………」
そう、その通りだ。
だけど、ここで認めてしまったら……僕が言い訳をしたら、何だか負けた気になる。男として、最低だ。
「ううん。何も言わないでいいわよ。キリルは、正しいことが何か、自分で考えられるんだから」
僕は、途端に恥ずかしくなった。
お母さんに嘘をついているようで、自分が許せなくなった。
「でもさ、こんなことになって……。僕、普通の子供でいたかったよ……」
そんな弱音を吐いた僕に、母さんは――
「……ねえ、少し話をしましょう、キリル。入っていいかしら」
拒む理由も無くなっていた。
何もかも、ボロボロだった。僕はもう一度顔を拭ってから、鍵を開け、お母さんを中に入れた。
お母さんは、僕のベッドに腰掛け、僕もその横に座った。
そして、僕の頭を横から抱え、額にキスをしてくれた。
「……お前が、普通と違う子供として生まれたことで悩んでいたのは、ずっと前から知っているわ。現実から逃げたくて、ゲームばっかり遊んでいたのも、ね」
「…………」
図星だった。
そもそも、デバイスギアと、密かに欲しがっていたVAHのパッケージを買ってくれたのは、お母さんだったのだ。その時の僕の心情を察していたから、買ってくれたのだろう。
……そう。一番嫌な時期に、仮想世界へと逃げ込めるように。
「でもね。キリルが他人とは違う、優れた力を持って生まれてきたのは、きっと、天からの授かり物だと思うの。活かすも殺すも、お前次第。
それだけ頭がいいんだもの。お前は自分で物事を解決する力だって持ち合わせているはずよ。……だから、逃げずに現実と向き合ってみなさい」
現実と、向き合う?
そんなことが出来るだろうか。
そもそも、どうやって向き合えばいいのだろう。
アイツを受け入れるってこと? それとも、退学の結果を良しとして、そのまま働けってこと?
……などと考えていると、お母さんは突然、考えてもいなかったことを口にした。
「そうだ! 休みの日に、二人だけで旅行をしに行きましょう」
「え?」
意外な提案に、僕は、あれこれ考えるのを中断してしまった。
「お母さん、忙しくてキリルの面倒を見られなかったんですもの。その、せめてものお詫びよ」
「そんな……お母さんのせいじゃ……」
「ううん。いいの。お母さんのせいにさせて。……本当に、今まで苦労をかけてごめんなさいね、キリル」
そう言って、お母さんは僕を抱き締めた。
僕は、どうしたらいいか分からず、されるがままになった。
「今は大変だけど、プルステラへ行ったら、二人で一からやり直しましょう。……ね?」
「うん……」
……やり直す。
その言葉の意味を一日中考えたが、僕には理解出来なかった。
むしろ、やり直したいのは、お母さんの方じゃないか、とも思った。
人生、人間関係……血縁関係。
全てやり直して、新しく生まれ変わるとでも言うのか。
きっと、お母さんはそうしたいだろう。
僕を産まずにやり直したい。
「あの男」と出会わずに、やり直したい。
……普通の子供を産んで、やり直したい。
そこまで考えて、僕は……堪えきれなくなった。
言葉が、勝手に口を突いて出た。
「ねえ、お母さん。……やり直したいの?」
その問いかけだけで、お母さんは全てを理解した。
さすが、僕のお母さんだった。
「…………この子ったら……本当に、頭がいいんだから」
「お母さん……」
「ううん、心配しなくてもいいのよ。……本当に、ごめんなさい、キリル。いくらやり直せるからって、私はお前の親で良かったと思ってるわ。……だから、キリルさえ赦してくれるなら、これからもずっと、お前の傍にいさせてちょうだい」
……バカなことを訊いてしまった。
僕は、本当に、親不孝者だ。
「……もちろんだよ。……ごめんね、お母さん」
たった一つの約束。
僕らは、今度こそ幸せになる、はずだった――。
地球へ光を届けている
何万年、何億年という 気の遠くなる月日を経て
一等星も 六等星も
肉眼では見えない星々さえも
その輝きは 人間の魂に等しい
生きたい と願えば鮮やかに
諦めれば くすんでゆく
例え どんな天文学的な不遇に見舞われたとしても
既に輝いた光だけは 決して失われないだろう
――僕の名はキリル
キリル・トルストイ――
運命の導きに屈しても尚
光を届け続ける存在
それが 僕の価値
一等星の輝きを持って生まれた 唯一の理由
◆
――二一九九年六月。ロシア、ウラジオストク。
夏休みを控えた、基本一般教育で六年生の初夏。それは、ほんの些細な、最近のいたずら小僧なら、誰しもが一度は辿るような事件だった。
とある月曜日の、三時間目の社会の授業のことだ。一番後ろに座るフィリップが、突然机を叩いて立ち上がり、狂ったように喚きだしたのである。
何事か、と誰もが振り返った。
「オレのPCが、ウイルスにやられたあ!!」
今年で四十三歳になる担任のエゴール先生は、何も言わずにホワイトボードのペンを置き、お手本とも呼べる真っ直ぐな姿勢で、つかつかとフィリップの席へ歩いていった。
その長身が直ぐ傍を通りすぎた時、僕は関わるまいと思いながらも、興味本位で後ろを振り返ってしまった。
しかし、こちらからは画面は見えない。ド派手なドクロのシールで彩られた、ノートPCの白いフタが見えるだけだ。
先生はフィリップの画面を一目見た。野次馬となった周りの生徒達が、わざわざフィリップの席の前に集まり、驚いた声を上げる。
それから、何度かキーを叩いたり画面を直接タッチしたりと操作をしてみたが、効果はないようだ。フリーズでもしたのなら、再起動で治るかもしれないが……。
「……キリル君。こっちへ来なさい」
何故か、僕が呼ばれた。
いや、だからこそ、僕が呼ばれた、のかもしれない。
面倒だと思いつつも、心の何処かでは僕に対する評価を上げるチャンスだ、と思っていた。
……ところが、そいつは甘かったのだ。
「これを見なさい」
くるっとPCを回し、僕に見せる。
黄色い円に目と口と、手足を付けただけのキャラクターが、口から爆弾を取り出して爆発させているアニメーション。その背後には、大量のウインドウが次々と開いては閉じを繰り返し、手に負えない状況になっている。
どうやら、ウイルスというのは本当らしく、恐らく背後では、あらゆるファイルが適当な名前のテキストファイルに置き換えられたりしているのだろう。
「手遅れですね。ハードは無事だと思いますので、初期化しかありません」
端的に告げた。感染してからでは、どうにもならないのだ。
原因は決まっている。フィリップ自身が持ち込んだものだ。
教室のLANは基本的に外部のインターネットと繋がらないローカルサーバーだが、先生の許可無しでは、他の生徒とのファイルのやり取りやアクセスすら許されない。
となれば、フィリップ自身がメモリーチップに入れて持ってきた、ぐらいしか可能性が考えられないはずだ。
ところが先生は、どこからそんな斜め上の発想が生まれるのか、とんでもないことを口にしたのだった。
「キリル君。キミがやったのかね?」
僕は首を振ってハッキリと答えた。
「いいえ、違います」
視線を横に移すと、フィリップが口に手を当て、わざとらしくクスクスと笑っているのが見えた。
……アイツは、いつもそうだ。事あるごとに、自分が何かしでかすと、全て僕に擦り付けてくる。
「コイツは――」僕は、フィリップを指差した。「自分ん#家__ち__でDLしたウイルスを持ち込んでくるんです。僕には、全く関係ありません」
「だが、そんな真似が出来るのは、キミだけだろう? キリル君」
言い切った。何の根拠も無しに。
……この教師、PCの知識が上辺だけということで有名だった。だから、今どきホワイトボードだなんてアナログなものを使って授業を行っている。偉そうな事を言ってはいるが、ボロを出したくないだけなのだ。
PCでデータを作らなくちゃいけない時は、他のクラスの若い教師に任せているぐらいだ。学ぼうという姿勢もない。
そんなアナログオヤジなものだから、ちょっとしたPCトラブルがあると、直ぐ僕のせいにしたがる。近所では、コンピュータウイルスを作れる程の腕を持つ天才少年だと騒がれているからだ。
確かに、その噂は嘘ではない。実際、ウイルスを実験で作った事が何度かあった。
しかし、わざわざ学校に来てまで、人を傷つけるような真似だけは絶対にしない。それなりの理由だってある。
四年前の、二一九五年。アニマリーヴ・プロジェクトの詳細が報道され、各家庭に満遍なくダイレクトメールによる正式な通知が送られてから、一部の私立校と全ての公立校で、「準備退学」という制度が設けられた。
四年後にプルステラへの移住を行う人達には、その「出国」手続きのために大量の資金が必要になる。
そもそも、学校なんて、時間を気にしなくていいプルステラでゆっくり勉強すればいい話である。
それよりも、今、こうしている間の時間こそが大切だ。僅か四年後に、施行期間がたったの一年と限られている移住、則ち、アニマリーヴが開始されるのだ。学業に夢中になり、準備を怠ってしまったら、滅びゆく文明と運命を共にしなくてはならない。
だから、例え義務教育期間中であっても、公的に中退して準備に費やせる、と、国が定めたのである。
その期間の過ごし方は自由である。それなりの能力があるなら、働いて金を稼いだり、そうでなければ、両親を共働きにし、子供が家事を引き受けるとか、そんな形でも構わない。……或いは、人生を終わらせる準備をするというのも……。
ただし、準備退学をするための条件としては、その生徒の成績が国中の学年の平均以上、且つ、学校の出席日数が九割以上であることと、その家庭の収入が国の平均収入額を下回る場合、と定められている。
この時、成績がトップだった生徒には、別途、奨学金も与えられる。一人分のプルステラなら完全にカバー出来る程の金額だ。
そんな魅力的な条件を、僕自らが、台無しにするワケがない。
エゴール先生は、心の何処かで僕を妬んでいるように思える。
フィリップはそのことを利用して、少しでも平均に近付けるよう、僕に仕掛けてきたのだ。
「先生。証拠も無しに疑うのですか? こんなもの、闇サイトで落とせば誰だって持ち込めるじゃありませんか」
僕は苛立ちの余り、少々声を荒らげて抵抗した。
生徒の何人かは、先生の知識の無さを影で嘲笑している。
先生は、とうとう顔を真っ赤にし、子供のように喚きだした。
「だ、誰もが、キミみたいにPCを扱える、というわけじゃないんだよ!!」
「では、僕にどうしろとおっしゃるのですか。フィリップ君のPCを直せ、と言うのであれば直しますが、また別の事件が起きた時に、僕が疑われるのは気持ちのいいものではありません」
「何もしなくてよろしい! フィリップ君。そのPCは後で職員室に持っていきます。キミは視聴覚室から替わりのPCを持ってきなさい」
フィリップは元気よく立ち上がり、「はい、先生」と、普段は見せないようないい子ぶりで返事をする。
先生が背中を見せた隙に、その後ろから僕に向かって舌を出した。
「キリル君は、後で職員室に来るように!」
先生は、そんなフィリップの本性にも気付かずに僕を徹底攻撃し、肩を怒らせて教壇へ帰っていった。
……とんでもない教員だ。何もかも、自分が正しいと思っている。
結局、職員室で説教され、他の教師の前で冤罪をかけられた僕は、奨学金どころじゃ無くなったかもしれない。
或いは、他の教師が僕を庇って助けてくれるだろうか。……いや、そんな面識など、一人もない。
――八歳の頃。僕がPCに詳しい事を知った近所のおばさんが、壊れたPCを直してほしい、と僕にお願いしてきた。
あのおばさんにしてみたら、大道芸を見るような気持ちだったのだろう。子供だから、などと軽く見ていたのかもしれない。
ところが、壊れた原因がこれこれ、こういうウイルスに掛かっていて、アンチウイルスソフトでも対応出来なかったからで、まだ治せる余地もあるから、自分がワクチンをプログラミングしてその場で治してやった、と説明すると、何と、「ウイルスに対抗出来る、イコール、ウイルスを作れる」等と解釈してしまったのである。
……確かに、その程度の実力はあるが、以後、尾ひれがついて近所中に広まってしまった。
――あの子に関わるとウイルスを植えつけられるわ。
――きっと、自宅でハッキングしてるのよ。国の重要機密とか盗み出しているに違いないわ。
――怖いから、知らぬフリをしておきましょう。事件に巻き込まれたり、PCが壊されたらたまらないもの。
今では、僕を見る目が怪物でも見るかのようで、挨拶すらせずに顔を背けられる。子供とすら、思われていないのだ。
その影響は僕どころか、たった一人の肉親である、お母さんにも及んでいた。
怖がられる事には慣れている。近所のソレは、まだ我慢出来たぐらいだ。
……だけど、エゴール先生は。
僕に対し、絶対に言ってはいけない文句を言ってしまった。
「……全く。あの親にしてこの子あり、か。一体どういう教育を受けて来たんだね」
ドクン、と、胸の奥で鼓動が一つ、高鳴った。
お母さんは関係ないだろう。元はと言えばフィリップのせいだが、これは、僕だけの問題のはずだ。
もはや、理性が切れかかっていた。
……そんなに僕を怒らせたいのなら、本当の恐怖を教えてやるよ!
フィリップのやったことが如何に幼稚か、これで判るはずだ!
◆
翌日。起きるべき事件は起こってしまった。
教材と思ってファイルをDLした生徒のPCが、九時きっかりにビービーとビープ音を鳴らし始めたのである。
音は次第に伝染し、学校中で大きな騒ぎに発展した。
先生達が慌てて原因を調べたものの、行き着く先は、やはり僕だった。
ガラリと教室の戸が力強く開け放たれ、数名の教師達がずかずかと列を成して入り込んできた。
先頭に立つエゴール先生は、迷わずに僕の席まで早歩きで移動し、バン、と強く両の掌でテーブルを叩いた。
「キミの仕業かね、キリル・トルストイ君!?」
他の教師は黙って様子を伺っている。表情からして、半信半疑だが、八割ぐらいは僕を疑っているだろう。
僕を疑いだしたのは、やはり、エゴール先生で間違いなさそうだった。
「……ええ、そうですよ。『今度は』僕です」
僕は素直に認めた。
教室中にどよめきが上がる。
「みんなが、ありもしない罪で僕を疑うので、今度は僕だと、正直に話しました」
「言い訳は無用! 職員室に来なさい!! 今すぐに!!」
……実際に職員室へ行って分かった事は、一部の教師は僕を疑っていなかった、ということだ。
それも、今回の事件で帳消しにされてしまったが、僕の言葉の意味を考えてくれている教師も何名かいた。
エゴール先生に説得させられる教師もいた。最後まで僕を庇う教師もいた。
だが、退学、という二文字は変えられる事は無く、その日の内に決定が下された。
僕は、いつもより早い通学路を一人で歩いて帰り、普通に帰宅した。
お母さんは、誰かと電話していたらしく、受話器を切った後、上の階へ上がろうとする僕を呼び止めた。
「今、学校から電話が掛かってきたわよ、キリル。随分暴れたそうじゃないの。お母さん、驚いちゃったわ」
お母さんは、怒るどころか、呆れたような目を向けていた。
「お昼、まだでしょ? 二人分、作っておくわね」
「……いい! 要らない!」
耐えられなくなった。
僕は残りの階段を急いで駆け上がり、自分の部屋に飛びこんだ。
荒々しくドアを閉め、鍵をかけ、そのまま、ドアを押さえつけるように背中で寄り掛かる。
「うっ……ううっ……!」
僕が持つ、知能という武器は、大人ですら危ういと感じるものだった。
だから、常に冷静になろうと努めていたのに……。
最後に箍を外したのは、結局、僕の中にいる、子供らしさという側面だったのだ。
……もう、何もかもが水の泡だ。
奨学金なんて貰えず、学校へ行く価値すらも無いと判断された。
苦労して積み上げてきたこの五年間(※後書きにて解説)は、最悪の結末を迎えてしまった。
出来れば、普通の子供として生まれたかった。
頭が良くたって、何の役にも立たないじゃないか。
いっそのこと、ゲームの仮想世界でずっと生きていたい。僕じゃない、誰かになって、生きていたい。
「キリル……」
心配したお母さんが、ドア越しに声をかけてきた。
僕は、しゃくっていた声を必死に留め、涙を拭った。
これ以上、お母さんに弱みを見せたくなかった。……この家では、僕だけが、唯一の男だから。
「なんで……?」
「え?」
「なんで、僕を叱ってくれないのさ!」
お母さんは、ドアの向こうで小さく笑った。
「お前が、自分から悪いことをする子じゃないって、分かっているからよ。何か事情があったんでしょう?」
「…………」
そう、その通りだ。
だけど、ここで認めてしまったら……僕が言い訳をしたら、何だか負けた気になる。男として、最低だ。
「ううん。何も言わないでいいわよ。キリルは、正しいことが何か、自分で考えられるんだから」
僕は、途端に恥ずかしくなった。
お母さんに嘘をついているようで、自分が許せなくなった。
「でもさ、こんなことになって……。僕、普通の子供でいたかったよ……」
そんな弱音を吐いた僕に、母さんは――
「……ねえ、少し話をしましょう、キリル。入っていいかしら」
拒む理由も無くなっていた。
何もかも、ボロボロだった。僕はもう一度顔を拭ってから、鍵を開け、お母さんを中に入れた。
お母さんは、僕のベッドに腰掛け、僕もその横に座った。
そして、僕の頭を横から抱え、額にキスをしてくれた。
「……お前が、普通と違う子供として生まれたことで悩んでいたのは、ずっと前から知っているわ。現実から逃げたくて、ゲームばっかり遊んでいたのも、ね」
「…………」
図星だった。
そもそも、デバイスギアと、密かに欲しがっていたVAHのパッケージを買ってくれたのは、お母さんだったのだ。その時の僕の心情を察していたから、買ってくれたのだろう。
……そう。一番嫌な時期に、仮想世界へと逃げ込めるように。
「でもね。キリルが他人とは違う、優れた力を持って生まれてきたのは、きっと、天からの授かり物だと思うの。活かすも殺すも、お前次第。
それだけ頭がいいんだもの。お前は自分で物事を解決する力だって持ち合わせているはずよ。……だから、逃げずに現実と向き合ってみなさい」
現実と、向き合う?
そんなことが出来るだろうか。
そもそも、どうやって向き合えばいいのだろう。
アイツを受け入れるってこと? それとも、退学の結果を良しとして、そのまま働けってこと?
……などと考えていると、お母さんは突然、考えてもいなかったことを口にした。
「そうだ! 休みの日に、二人だけで旅行をしに行きましょう」
「え?」
意外な提案に、僕は、あれこれ考えるのを中断してしまった。
「お母さん、忙しくてキリルの面倒を見られなかったんですもの。その、せめてものお詫びよ」
「そんな……お母さんのせいじゃ……」
「ううん。いいの。お母さんのせいにさせて。……本当に、今まで苦労をかけてごめんなさいね、キリル」
そう言って、お母さんは僕を抱き締めた。
僕は、どうしたらいいか分からず、されるがままになった。
「今は大変だけど、プルステラへ行ったら、二人で一からやり直しましょう。……ね?」
「うん……」
……やり直す。
その言葉の意味を一日中考えたが、僕には理解出来なかった。
むしろ、やり直したいのは、お母さんの方じゃないか、とも思った。
人生、人間関係……血縁関係。
全てやり直して、新しく生まれ変わるとでも言うのか。
きっと、お母さんはそうしたいだろう。
僕を産まずにやり直したい。
「あの男」と出会わずに、やり直したい。
……普通の子供を産んで、やり直したい。
そこまで考えて、僕は……堪えきれなくなった。
言葉が、勝手に口を突いて出た。
「ねえ、お母さん。……やり直したいの?」
その問いかけだけで、お母さんは全てを理解した。
さすが、僕のお母さんだった。
「…………この子ったら……本当に、頭がいいんだから」
「お母さん……」
「ううん、心配しなくてもいいのよ。……本当に、ごめんなさい、キリル。いくらやり直せるからって、私はお前の親で良かったと思ってるわ。……だから、キリルさえ赦してくれるなら、これからもずっと、お前の傍にいさせてちょうだい」
……バカなことを訊いてしまった。
僕は、本当に、親不孝者だ。
「……もちろんだよ。……ごめんね、お母さん」
たった一つの約束。
僕らは、今度こそ幸せになる、はずだった――。
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