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18、眠い
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「寝坊しちゃったからもう行かない」
案外何ともないといった様子で彼女は答えた。
「そうですか」
俺は返信をしてもう一度寝ることを告げると寝室へ戻った。
布団に入ると、どっと眠気に襲われる。
眠い。どうしてだろう?さっきあんなにも騒いで目は覚めていたはずなのに。
目を閉じてすぐ、布団の中に何かが入ってきて目を開けた。
勿論入ってきたのは彼女以外の何物でもないないのだけれど。
「あ、起こした?私もちょっと寝ようかなって思って」
「そうですか」
そう言いながら彼女の分のスペースを確保すべく少し端の方へと移動した。
「んふふ、ありがとう」
小声で囁くように彼女が言う。
返事をしようと思ったけれど、眠くて返事が思いつかず結局何も答えなかった。
「…さん…き…」
意識が完全に途切れる前微かに聞こえた彼女の声は上手く聴き取れなくて、そのまま俺は深い水の底に沈むように眠ってしまった。
「に…さん、おに…さんっ、もう!おりゃっ」
「ッッ!!」
突然のくすぐったさに目を見開いた。犯人は勿論他の誰でもない彼女だ。
「ちょっ、なにしてん…ですかっ」
「見てわかるっしょ!起きないからくすぐって起こしてんのっ」
意味がわからない。そもそもまだアラームは鳴っていないはずだ。
「起きてますっ、起きてますよっ!…っくそ、このっ」
起きているというのになかなか手を止めない彼女に少し仕返しをしてやった。
いつまでも黙ってやられている訳にはいかない。一応俺にだってプライドの欠片くらいはある。
「ちょちょちょちょっアハッいひひッやめやめ!まっおにーさん死ぬ死ぬ死ぬっ」
今日はこの位で許してやろう。彼女から手を離すと彼女は荒く息を吸った。
「ま、真顔でくすぐられるとは…」
「一応笑ってます」
「嘘だぁ」
そういや眠りについてからどのくらい経つのだろうか。まぁ時間を見て驚いた。まだ三十分しか経っていない。
なのに彼女は何故か俺を無理矢理起こしたらしい。
「何で起こすんですか…」
「なんとなく」
「……」
そうですか、なんとなくですか。
なんとなくで起こされたらしい俺は呆れて何も言えなかった。
「…俺はもう少し寝ます、もう起こさないで下さい。今度起こしたら寝室に鍵つけてリビングに置き去りにしますよ」
「あ、外には出さないでくれるんだ」
フフフフフと不気味な笑いを零しながら彼女は布団の中に少しだけ深く潜り込んだ。
「おにーさん」
まだ喋るのか…。
「…何ですか?」
「寝れそーですか?」
わざとらしい彼女の敬語に何とも言えない違和感を感じた。
「俺は寝れそうですよ、ていうか寝てました」
「ふふ、そうでしたね」
「…はい」
「…お出かけしませんか?」
……………は?
「…」
「何で黙る!ねーいこーよー、いーこーおーっ!」
「……分かりましたよ」
うるさい、きっとどうせ彼女のことだ。俺が頷くまで意地でも黙らないつもりだろう。
こういうのは早めにおれたほうが後が楽だ。
この後、彼女の準備の速さには驚いた。彼女は物事をする時無駄な事をしない。そのせいか彼女は男の俺よりも支度が早く、なにかと後ろから急かしてくる。
「ねーまだー?」
「はいはい、もう出来ました」
玄関で待機する彼女にそうつげると、一足先に彼女は外に出た。
遅れて俺も外へ出る。
「ッーー」
あっつい。一気に身体中から汗が滲んだ。
やはり俺は外に出るのは嫌いらしい。今すぐに部屋に戻れたらどれだけいいだろう。
そんな俺とは裏腹に彼女は外を愛しているらしい。
リズミカルに歩道の白線の上を歩きながら彼女は色々な所をまわった。
本屋に小さな小物を取り扱う雑貨店。他にも小さな服屋や文房具専門店にもいった。
彼女の行く店は俺の知らない店ばかりで、よく友達と行くのだという。
小物店なんか入るのさえ躊躇うほどに可愛いものばかりで、正直なところ付き添いでも恥ずかしかった。
案外何ともないといった様子で彼女は答えた。
「そうですか」
俺は返信をしてもう一度寝ることを告げると寝室へ戻った。
布団に入ると、どっと眠気に襲われる。
眠い。どうしてだろう?さっきあんなにも騒いで目は覚めていたはずなのに。
目を閉じてすぐ、布団の中に何かが入ってきて目を開けた。
勿論入ってきたのは彼女以外の何物でもないないのだけれど。
「あ、起こした?私もちょっと寝ようかなって思って」
「そうですか」
そう言いながら彼女の分のスペースを確保すべく少し端の方へと移動した。
「んふふ、ありがとう」
小声で囁くように彼女が言う。
返事をしようと思ったけれど、眠くて返事が思いつかず結局何も答えなかった。
「…さん…き…」
意識が完全に途切れる前微かに聞こえた彼女の声は上手く聴き取れなくて、そのまま俺は深い水の底に沈むように眠ってしまった。
「に…さん、おに…さんっ、もう!おりゃっ」
「ッッ!!」
突然のくすぐったさに目を見開いた。犯人は勿論他の誰でもない彼女だ。
「ちょっ、なにしてん…ですかっ」
「見てわかるっしょ!起きないからくすぐって起こしてんのっ」
意味がわからない。そもそもまだアラームは鳴っていないはずだ。
「起きてますっ、起きてますよっ!…っくそ、このっ」
起きているというのになかなか手を止めない彼女に少し仕返しをしてやった。
いつまでも黙ってやられている訳にはいかない。一応俺にだってプライドの欠片くらいはある。
「ちょちょちょちょっアハッいひひッやめやめ!まっおにーさん死ぬ死ぬ死ぬっ」
今日はこの位で許してやろう。彼女から手を離すと彼女は荒く息を吸った。
「ま、真顔でくすぐられるとは…」
「一応笑ってます」
「嘘だぁ」
そういや眠りについてからどのくらい経つのだろうか。まぁ時間を見て驚いた。まだ三十分しか経っていない。
なのに彼女は何故か俺を無理矢理起こしたらしい。
「何で起こすんですか…」
「なんとなく」
「……」
そうですか、なんとなくですか。
なんとなくで起こされたらしい俺は呆れて何も言えなかった。
「…俺はもう少し寝ます、もう起こさないで下さい。今度起こしたら寝室に鍵つけてリビングに置き去りにしますよ」
「あ、外には出さないでくれるんだ」
フフフフフと不気味な笑いを零しながら彼女は布団の中に少しだけ深く潜り込んだ。
「おにーさん」
まだ喋るのか…。
「…何ですか?」
「寝れそーですか?」
わざとらしい彼女の敬語に何とも言えない違和感を感じた。
「俺は寝れそうですよ、ていうか寝てました」
「ふふ、そうでしたね」
「…はい」
「…お出かけしませんか?」
……………は?
「…」
「何で黙る!ねーいこーよー、いーこーおーっ!」
「……分かりましたよ」
うるさい、きっとどうせ彼女のことだ。俺が頷くまで意地でも黙らないつもりだろう。
こういうのは早めにおれたほうが後が楽だ。
この後、彼女の準備の速さには驚いた。彼女は物事をする時無駄な事をしない。そのせいか彼女は男の俺よりも支度が早く、なにかと後ろから急かしてくる。
「ねーまだー?」
「はいはい、もう出来ました」
玄関で待機する彼女にそうつげると、一足先に彼女は外に出た。
遅れて俺も外へ出る。
「ッーー」
あっつい。一気に身体中から汗が滲んだ。
やはり俺は外に出るのは嫌いらしい。今すぐに部屋に戻れたらどれだけいいだろう。
そんな俺とは裏腹に彼女は外を愛しているらしい。
リズミカルに歩道の白線の上を歩きながら彼女は色々な所をまわった。
本屋に小さな小物を取り扱う雑貨店。他にも小さな服屋や文房具専門店にもいった。
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