白銀の薔薇にキスを

秋月リア

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第1章 少女と将軍

第4話 精霊王と少女

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ーちゅん。ちゅん。

小鳥の鳴き声がする。

「・・・・ここ、どこ。」

「おはようございます。お嬢様。」 

「・・・・・おはよう、ございます?」

「メイドのミサと」

「ミカでございます。お出掛けにとても良い天気ですわ。」

「おでかけ?」

「ええ。旦那様と精霊の森へお出掛けですよ。ドレスは動きやすいものにしましょう。」

「そうね。何色がいいかしら。」

支度部屋にて双子メイドの着せ替え人形となること1時間後。

「・・・・何だか疲れた顔をしているな。大丈夫か?」

「大丈夫」

「そうか。少し眠るといい。」

「・・・・・」

寝てなるものか。と思ったが、あっさりと寝入ってしまう。

「・・・・・!」

飛び起きると、馬車は森の中で止まっていた。

「ようやくお目覚めか。」

銀色の長い髪。青い瞳。長く尖った耳。彫りの深い美しい顔。
森の香りが漂う。
そんな美丈夫な顔がすぐ近くまで迫っている。

「!!!誰っ。」

立ち上がり、慌てて馬車を降りる。

「我か?我は精霊王だ。」

微笑み、彼も降りてくる。

(うわぁぁ・・・・)

一歩後ろに下がる。

「薔薇の芳しい香りがするな。気に入った。」

髪の毛を指に絡ませ、それにキスされる。
なんと言うべきか。

「・・・・」

「名はなんと言う。」

「い・・・イヴ。みんながそう呼ぶ。」

「イヴか。素敵な名だ。我はシキ。何かあったらすぐに駆けつけようぞ。」

目の前で跪き、掴まれた手の甲にキスされる。

「ど、どうも。」

手を払う。

(状況が全く把握できない・・・・)

「思った通りだな。精霊王殿に気に入られるとは。」

森の奥から将軍が現れる。

「!ヴィンセント。今までどこにいた。こいつをなんとかして!」

いつのまにか抱き締められていて、もがきまくる。

「ヴィンセント。この娘はただの人間に非ずぞ。きっと貴様の仕事に役立てると思うぞ。」

嬉しそうに微笑む。

「・・・・精霊王殿。かわいそうですので、離してあげてください。」

「ちっ。」

舌打ちし、漸く解放する。

「変態だ・・・・・」

将軍の後ろに隠れる。

「今日は挨拶に参ったのですが、精霊王というお方があの様に簡単に契約なされるとは。」

「ふん。別に良いではないか。契約するしないはこちらの自由だ。奇特な娘よ。また森に来るといい。」

微笑み、姿を消す。

「・・・・・・・」

「さ。帰るか。」

「・・・・・ヴィンセント。あのプリなんとかというお菓子が食べたい。」

「ああ。プリッツェルね。構わないよ。」

頭を撫でられる。

〔イヴ!たいへんっ!〕

真っ青な顔をして姿を表すティルダとブルム。

「え?」

後ろを振り向くと、黒い影を纏った熊が出てきた。

「!!」

「な、何故ここに魔獣なんかっ。」

「・・・・・わたしのせい。ティルダ!ブルム!」

〔あい!〕

青い炎を纏った刀に姿を変え、手に収まる。

「ヴィンセントは下がってて。」

走り出す。

〔ぐぉおおお!!!〕

咆哮し、強風を起こす。

「っ・・・・・」

右腕が傷つく。

巨大な熊はその鋭い爪と牙を向けてくる。
それを避け、飛び上がると脳天から斬り裂いた。

〔ぐぉおおお!〕

咆哮は断末魔となり、青い炎に包まれ灰となっていく。

「!イヴ!」

「・・・・・」

地に着地する。

「大丈夫か?怪我をしているじゃないかっ。魔獣ベアなんてひとりで倒すなんて聞いたことがないぞ。」

「大丈夫。これくらい大したことない。」

強く右腕を押さえる。
血が滴り、指先から伝って地に落ちる。
草を焦がし、地を穢す。

「っ!・・・・・」

その場から離れようと飛び出す。

「イヴ!!」

叫ぶ。

◇◇◇

「旦那様!!」

屋敷に戻ると、執事が珍しく慌てた様子で出迎えてきた。

「どうした。」

「すみませんっ。とにかくこちらへ!」

執事の後を追う。

着いた先は彼女イヴに宛がった部屋だった。

「!旦那様っ。お帰りなさいませ。」

「一体何が起きた。」

部屋に散らばるガラスの破片。
まるで嵐に遭ったかのように荒れている。

「イヴ!!」

部屋の隅で膝を抱えている。

「イヴ。探したんだぞ。」

「・・・・・」

その瞳は妖しく光っている。

「イヴ?」

「す、すみません。旦那様。わたくしがお嬢様の怪我の手当てを無理にしようとしたせいでこんなことに・・・・・」

「怪我はないか。」

「はい・・・わたくしは大丈夫なのですが・・・・・」

「・・・・イヴ。」

「近寄るな。穢れる。」

まるで拾われて来た野良猫が毛を逆立て威嚇するようだ。

「何故。」

「・・・・・呪われてる。血に触れた者はいずれ穢れるんだ。」

「穢れなど怖くない。だから、手当てをさせてくれ。」

「触るな!」

差し出した手を払われる。

「っ・・・・・」

殊の外ショックなのは何故だろうか。
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