白銀の薔薇にキスを

秋月リア

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第2章 魔法と剣と少女【過去編】

prologue 2 悪役の暗躍と姫の闇

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-コツコツコツ。

わざと足音を立てるようにして薄暗い廊下を歩く。

態とらしくしなくともとうに人間であることは捨てたのだが。

ートントン。

扉を叩く。

「・・・・失礼致します。」

蝋燭の灯りのみの薄暗い部屋に入る。
中には大量の書類に囲まれた男がいて、ようやくこちらに気がついたのか、書類の山から顔を出した。

「あ、ああ。イムカ殿か。」

「どうされました。次期国王陛下殿。」

ね。お前も知っているだろう?現国王陛下の孫が現れたと。」

ふ。と笑みを浮かべる。
皮肉も含めたと言うのにまんざらでもなさそうだ。

「ええ。社交界では専らその話しで持ちきりですね。」

「本物なれば、次は私ではなくなってしまう。邪魔なものは阻止せねばならない。貴殿から何か案がないかと思ってね。」

「まだその者が国王陛下の孫と決まったわけではありません。探りを入れてみましょう。」

「ああ。頼む。」

「失礼致します。」

深く頭を下げ、部屋を出る。

漸く好機が訪れた。

〔主。何か御用ですか。〕

褐色の肌に黒髪黒眼の精霊が姿を現わす。

「・・・・あれの様子はどうだ。」

〔変わりなく。〕

「ふん。引き続き見張っておけ。いいな。」

〔御意に。〕

姿を消す。

神の愛し子として産まれた兄の娘。
その類稀なる力を我が物にする日も近い。

「ふっ。」

窓の外の月を見上げ、笑う。

「・・・・イヴ。私の可愛い姪よ。早く私の元に戻ってこい。」

呟き、闇に溶け込むように転移する。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「姫?」

大樹の下で読書しているところに精霊王シキから声を掛けられる。

「シキ。」

「?マナー本か?」

「うん。先生が次の授業までに読んでくるようにって。こんなに分厚いのよ。何故こうも人間ってルールが好きなの。」

マナー本を彼に投げる。

完全なる八つ当たりだ。

「好きというか、それが人間だからだ。それがことわりというものだ。精霊にもあるぞ?だいぶ気まぐれと言われているがな。姫はそのままでいてくれ。で。」

「・・・・・・」

なぜそこを強調するんだか。

「それと姫。我はこの森から出られぬ。だから、我の代わりに彼を連れて行け。」

右の腕を伸ばすと、その腕に一羽の大きな鳥が留まった。
どこか神々しい感じがする。

「鷹のオーディンだ。名を呼べば、どこからでも現れる。我の力を通してあるから、そばにいさせるといい。」

〔よろしく。我が姫。〕

地面に降り立ち、頭を下げる。

「・・・・・よろしくお願いします。オーディン。」

〔ようやく鬼畜から解放されるかと思うと楽だ。〕

足で頭を掻く。

「ちょっ。オーディン!?」

なんだか慌てるシキ。

〔神々に愛されし我が姫。私のことは都合の良いペットとでも思ってくれてよい。〕

「ペット・・・・いや。そんなっ。」

〔ならばそこらへんの獣でもよい。偶に餌をくれれば良い。〕

「エサって・・・」

〔一番の好物は主の魔力であるが、鶏肉も好物だ。〕

と言いながら頬ずりをする鷹。

かわいいったらありゃしない。

「・・・・・・・・よろしく。オーディン。」

頭を優しく撫でる。
犬や猫とは違う毛並みに夢中になって撫でまわす。
気持ち良さそうに目を細めてるし。

「イヴ。可愛いは正義なんだよ!それにもふもふ最高なんだから!!」

というような事を兄上が言っていたような気がする。
きっと兄上がオーディンに会ったらめちゃくちゃに撫でまわすんだろうなぁ。

「気に入ったようだな。」

気に入らないわけがない。

オーディンは最高にかっこよく、もふもふだ。

「!!?」

突然背中に悪寒が走る。

「姫?大丈夫か?」

「・・・・・・・おじうえ・・・・・・・」

「?」

「いやだっ。あそこには戻りたくないっっ!」

あの暗いなにも見えない狭いところには戻りたくない。
狭いところに閉じ込められて、人や獣の生き血が食事だったあの頃には戻りたくない。

わたしはばけものなんかじゃない。
わたしはにんげんだよ。
みんなとおなじだよ。
ひとりにしないで。
ははうえ。ちちうえ。ここからだして。
イヴはいいこにしているから。
もうこんなところにいたくないよ。

「姫!!」

とおくでおとこのひとのこえがする。

ここからだしてくれるならだれだっていい。

おじうえはこわいの。
イヴをいじめるの。

ちゃんといけにえのちをのまないとおこられるの。

ちをのみたくない。
じゅーすがのみたい。

おじうえからにげなきゃ。
ここからでなきゃ。
だれかイヴをだしてっ。

ちちうえ。ははうえ。

だれかたすけて。
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