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~第二章~ 足跡の無い道
第七話
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計八十人。
それがこの大会への参加者の人数だった。
最初のポーカーは五人で行うもので親はカードで決め、その後は時計回りにワンゲーム毎で回す。
また、それ以外のルールについては基本的に変化は無くゲーム参加チップは一枚。
その後、コール(賭け金を出す事)はワンゲームにつき五枚までレイズは一人一回と大体そんな感じでより強い役を作った人の勝利、一人だった全員からその者が賭け金を回収。
誰も役がなかった場合もしくは全員ドロップ(勝負から降りる事)した場合は引き分けとし賭け金のプラマイはゼロとなる。
しかし、ドロップしたゲームに勝者がいた場合は参加チップのみが回収される。
因みにスタート時のチップは一人、十五枚持っていて十ゲームやった時点で一番チップの多かったものが勝利。
また、それまでにゲーム参加のチップを払えなくなったものは失格らしい。
「まぁいつも店でやってるのと変わんないか」
それが長ったらしいルール説明を聞いて思った素直な感想だった。
僕のテーブルは比較的戦闘を得意としている人が固まっていたらしく、このポーカーについても愚痴を零していた。
「あんたもそう思わねぇか?」
いかにもゴロツキらしい格好をした男が僕にも話を振ってくる。
「だからよ、こんな昔の騎士団がやってたみたいな方法じゃなくてよ!最初から戦わせろって言うんだよ」
かなりイラついてんな、賭け事は苦手なのかな。
「まあまあ、怪我人を少しでも減らす為じゃないですか?」
「けっそれが湿気てるっていうんだよ」
そんなこと無いとは思ったが意外と彼の意見と同じような考えが多いらしく、周りからもチラホラと同様の話し声が聞こえていた。
しかし、今更喚いた所で変更なんて事は無く、大会は彼等を黙らせる様な開始の合図とそれと同時にテーブルの監視に来た兵士の鋭い視線によってスムーズに進行されて行った。
「あっ僕フラッシュなんで一人勝ちですね」
そんな言葉に残りの面々から「またかよ」とか「運よすぎ」なんて言葉が聞こえてくる。
僕はこの日運が良かった……なんて事は無かった。
当然のようにイカサマを重ねている決まっている、逆になんで皆がやんないのかが僕にとっては不思議だった。
正直、店でやっている時はもっとやってるし当然やり返されることもある。
ただ、この舞台に置いては兵士の監視の目もあるし何より周りに人が多いと言う変わった点はありやりにくくはあったけど。
「次の親は僕ですね」
しかし、ここで運任せにして負けてしまっては元も子もない事だし覚悟してやってみた結果が現状。
二位との差は五枚で二位から下はそんなに差はない状態、言うところの独走みたいになっていた。
「あっまた僕の勝ちですね」
その後もゲームは滞りなく進んでいく、僕は危なげなくゲームを勝ち、結果的にはこのポーカーによる予選を見事に通過していた。
ふぅ、やっと終わった。
途中から可哀想ではあったが戦闘においては強そうな人達ばかりだったし、勝てて良かった。
「シーデ……」
そんな安心感に浸っていた僕に微かな呼び声が届く。
「どこで誰が?」
あたりを見渡すが特に誰もいない。
おかしいな、誰かに呼ばれたと思ったんだけどな。
トントンと肩を叩かれる。
僕は逃がさないようにできる限り素早く振り向くとそこにあったのはフードでほとんど見えない顔だった。
「うわ!」
「きゃ!……」
驚いた僕だったがすぐに聞こえたその聞き覚えのありすぎる声に冷静さを取り戻す。
「何してるんですか?」
驚いた為かうずくまるその少女に僕は手を差し伸べる。
「あれ?バレちゃった?」
そんなわざとらしくとぼけようとする彼女。
「それは分かりますよ、エマ様の声ぐらい」
そう言うと同時にエマ様は僕の手を取り立ち上がる。
「ほんと!?……えへへっ」
顔を少し赤らめて照れるような笑みを浮かべるエマ様。
「……っこっちも照れる」
その様子を見て思わず呟いてしまう。
「なんか言った?」
「いえ、何も!」
危ない、聞こえてなくてよかった。
「そう?じゃあ、行こ!」
「えっ!?どこに?」
しかし、そんな質問はそっちのけで僕の手を引いてまだ盛り上がりが収まらない人混みの中に走って行く。
「約束したでしょ!」
「えっ?」
「一緒に回るって」
そうだ、約束してた。
でも、大会に出るからなしになってしまったとばかり思ってた。
「あそこ行こ!」
そう言って指さしたのは様々な具材を串に刺し焼いたものが売っている屋台だった。
「これ一つください」
「おっシーデじゃないか!予選通過おめでとう!」
「ありがとうございます」
「そっちの子は何だ?女か?」
まるでいたずらを仕掛けた人の様にそう声をかけてくる店の男。
「まぁそんな感じです」
その返答に店の男は大きな声で笑い、エマ様は何故か僕の袖をキュッと引っ張るとさらに深くフードを被ってしまった。
「ほら、俺からの奢りだ!明日も頑張れよ!」
彼はそんなことを言うと僕からお金を受け取らずに串焼きだけを渡すと、次の客の接客を開始した。
「ありがとうございます!」
できる限り大きな声でそう感謝を伝えておいて僕とエマ様はまた歩き出した。
「はい、エマ様どうぞ」
「あ、ありがとう」
「どうしました?」
「えっ!?ううん何でもないよ」
しかし、そう言った彼女の顔は明らかに何か笑いのようなものを耐えている様子だった。
「なんですか?気になります!」
「教え無いもんねー」
彼女はどんな明かりにも負けないようなその笑顔を見せる。
「次!あれみたい!」
そんな太陽の擬人化みたいに明るく元気なエマ様は、そんな事を僕に言ってさっきまで袖を掴んでいた手で僕の手を握る。
その時のエマ様の顔は輝いているようでそれでいて頬は真っ赤だった。
「もうすぐです」
あれからもう少し出店を回っていたのだが、エマ様が慣れない場所というのもあってか少し疲れているようだったのである場所へと僕は案内していた。
木々の間隔が開け、先に目を閉じてしまいそうになる程を光が差す。
「ほら、そこです!」
そんな僕の声を聞いてか、眩しそうに目を細めながらも駆け足でその光を追う。
「わぁ……凄い」
それがエマ様の感想だった。
「はい、そうですね」
そこは少し前まで僕がよく昼食をとっていた場所だった。
景色がいいのは知っていたが夕暮れ時の景色がここまでとは知りもしなかった。
「「……」」
二人揃って無言になる。
僕らが住んでいた街が、城が地平線と言うベッドに寝そべろうとする夕日によって赤く色づく。
そしてそれを装飾する様に街の至る所にある灯りがキラキラとその存在を主張していて、上では薄く黒のかかった空を街の灯りに負けじ星が装飾していた。
しかし、太陽は沈むもの。
その姿をベッドへと完全に沈めて隠した時にその景色は夜のものへといれ変わっていった。
それは魔法が解けたようにも感じるようなそんな感覚だった。
「凄かったね……」
「はい」
未だに言葉数が少ない僕ら。
しかし、さっきの時間が終わったようにこの時間にも終わりはある。
何となく、エマ様の方を見るとその目線が重なり合う。
どちらからでもない、ただそれを当然の事とする様にそうなる事を知っていたかのように僕はエマ様と抱き合っていた。
「……好きだよ」
埋めていた顔を上げるとそう言ってエマは僕を見つめる。
「当たり前です」
そう返答して、その潤んだ瞳に優しくそれでも確信を持つ目で見つめ返す。
視線が重なったその直後、僕とエマはお互いの唇と唇を重ねていた。
優しくて夢のようで、だけど確かなキスを僕は彼女と交わしていた。
長い間、何度も何度も自分達の気持ちを相手に渡すように受け取るように。
空の月は徐々にその明るさを増し始めていた。
それがこの大会への参加者の人数だった。
最初のポーカーは五人で行うもので親はカードで決め、その後は時計回りにワンゲーム毎で回す。
また、それ以外のルールについては基本的に変化は無くゲーム参加チップは一枚。
その後、コール(賭け金を出す事)はワンゲームにつき五枚までレイズは一人一回と大体そんな感じでより強い役を作った人の勝利、一人だった全員からその者が賭け金を回収。
誰も役がなかった場合もしくは全員ドロップ(勝負から降りる事)した場合は引き分けとし賭け金のプラマイはゼロとなる。
しかし、ドロップしたゲームに勝者がいた場合は参加チップのみが回収される。
因みにスタート時のチップは一人、十五枚持っていて十ゲームやった時点で一番チップの多かったものが勝利。
また、それまでにゲーム参加のチップを払えなくなったものは失格らしい。
「まぁいつも店でやってるのと変わんないか」
それが長ったらしいルール説明を聞いて思った素直な感想だった。
僕のテーブルは比較的戦闘を得意としている人が固まっていたらしく、このポーカーについても愚痴を零していた。
「あんたもそう思わねぇか?」
いかにもゴロツキらしい格好をした男が僕にも話を振ってくる。
「だからよ、こんな昔の騎士団がやってたみたいな方法じゃなくてよ!最初から戦わせろって言うんだよ」
かなりイラついてんな、賭け事は苦手なのかな。
「まあまあ、怪我人を少しでも減らす為じゃないですか?」
「けっそれが湿気てるっていうんだよ」
そんなこと無いとは思ったが意外と彼の意見と同じような考えが多いらしく、周りからもチラホラと同様の話し声が聞こえていた。
しかし、今更喚いた所で変更なんて事は無く、大会は彼等を黙らせる様な開始の合図とそれと同時にテーブルの監視に来た兵士の鋭い視線によってスムーズに進行されて行った。
「あっ僕フラッシュなんで一人勝ちですね」
そんな言葉に残りの面々から「またかよ」とか「運よすぎ」なんて言葉が聞こえてくる。
僕はこの日運が良かった……なんて事は無かった。
当然のようにイカサマを重ねている決まっている、逆になんで皆がやんないのかが僕にとっては不思議だった。
正直、店でやっている時はもっとやってるし当然やり返されることもある。
ただ、この舞台に置いては兵士の監視の目もあるし何より周りに人が多いと言う変わった点はありやりにくくはあったけど。
「次の親は僕ですね」
しかし、ここで運任せにして負けてしまっては元も子もない事だし覚悟してやってみた結果が現状。
二位との差は五枚で二位から下はそんなに差はない状態、言うところの独走みたいになっていた。
「あっまた僕の勝ちですね」
その後もゲームは滞りなく進んでいく、僕は危なげなくゲームを勝ち、結果的にはこのポーカーによる予選を見事に通過していた。
ふぅ、やっと終わった。
途中から可哀想ではあったが戦闘においては強そうな人達ばかりだったし、勝てて良かった。
「シーデ……」
そんな安心感に浸っていた僕に微かな呼び声が届く。
「どこで誰が?」
あたりを見渡すが特に誰もいない。
おかしいな、誰かに呼ばれたと思ったんだけどな。
トントンと肩を叩かれる。
僕は逃がさないようにできる限り素早く振り向くとそこにあったのはフードでほとんど見えない顔だった。
「うわ!」
「きゃ!……」
驚いた僕だったがすぐに聞こえたその聞き覚えのありすぎる声に冷静さを取り戻す。
「何してるんですか?」
驚いた為かうずくまるその少女に僕は手を差し伸べる。
「あれ?バレちゃった?」
そんなわざとらしくとぼけようとする彼女。
「それは分かりますよ、エマ様の声ぐらい」
そう言うと同時にエマ様は僕の手を取り立ち上がる。
「ほんと!?……えへへっ」
顔を少し赤らめて照れるような笑みを浮かべるエマ様。
「……っこっちも照れる」
その様子を見て思わず呟いてしまう。
「なんか言った?」
「いえ、何も!」
危ない、聞こえてなくてよかった。
「そう?じゃあ、行こ!」
「えっ!?どこに?」
しかし、そんな質問はそっちのけで僕の手を引いてまだ盛り上がりが収まらない人混みの中に走って行く。
「約束したでしょ!」
「えっ?」
「一緒に回るって」
そうだ、約束してた。
でも、大会に出るからなしになってしまったとばかり思ってた。
「あそこ行こ!」
そう言って指さしたのは様々な具材を串に刺し焼いたものが売っている屋台だった。
「これ一つください」
「おっシーデじゃないか!予選通過おめでとう!」
「ありがとうございます」
「そっちの子は何だ?女か?」
まるでいたずらを仕掛けた人の様にそう声をかけてくる店の男。
「まぁそんな感じです」
その返答に店の男は大きな声で笑い、エマ様は何故か僕の袖をキュッと引っ張るとさらに深くフードを被ってしまった。
「ほら、俺からの奢りだ!明日も頑張れよ!」
彼はそんなことを言うと僕からお金を受け取らずに串焼きだけを渡すと、次の客の接客を開始した。
「ありがとうございます!」
できる限り大きな声でそう感謝を伝えておいて僕とエマ様はまた歩き出した。
「はい、エマ様どうぞ」
「あ、ありがとう」
「どうしました?」
「えっ!?ううん何でもないよ」
しかし、そう言った彼女の顔は明らかに何か笑いのようなものを耐えている様子だった。
「なんですか?気になります!」
「教え無いもんねー」
彼女はどんな明かりにも負けないようなその笑顔を見せる。
「次!あれみたい!」
そんな太陽の擬人化みたいに明るく元気なエマ様は、そんな事を僕に言ってさっきまで袖を掴んでいた手で僕の手を握る。
その時のエマ様の顔は輝いているようでそれでいて頬は真っ赤だった。
「もうすぐです」
あれからもう少し出店を回っていたのだが、エマ様が慣れない場所というのもあってか少し疲れているようだったのである場所へと僕は案内していた。
木々の間隔が開け、先に目を閉じてしまいそうになる程を光が差す。
「ほら、そこです!」
そんな僕の声を聞いてか、眩しそうに目を細めながらも駆け足でその光を追う。
「わぁ……凄い」
それがエマ様の感想だった。
「はい、そうですね」
そこは少し前まで僕がよく昼食をとっていた場所だった。
景色がいいのは知っていたが夕暮れ時の景色がここまでとは知りもしなかった。
「「……」」
二人揃って無言になる。
僕らが住んでいた街が、城が地平線と言うベッドに寝そべろうとする夕日によって赤く色づく。
そしてそれを装飾する様に街の至る所にある灯りがキラキラとその存在を主張していて、上では薄く黒のかかった空を街の灯りに負けじ星が装飾していた。
しかし、太陽は沈むもの。
その姿をベッドへと完全に沈めて隠した時にその景色は夜のものへといれ変わっていった。
それは魔法が解けたようにも感じるようなそんな感覚だった。
「凄かったね……」
「はい」
未だに言葉数が少ない僕ら。
しかし、さっきの時間が終わったようにこの時間にも終わりはある。
何となく、エマ様の方を見るとその目線が重なり合う。
どちらからでもない、ただそれを当然の事とする様にそうなる事を知っていたかのように僕はエマ様と抱き合っていた。
「……好きだよ」
埋めていた顔を上げるとそう言ってエマは僕を見つめる。
「当たり前です」
そう返答して、その潤んだ瞳に優しくそれでも確信を持つ目で見つめ返す。
視線が重なったその直後、僕とエマはお互いの唇と唇を重ねていた。
優しくて夢のようで、だけど確かなキスを僕は彼女と交わしていた。
長い間、何度も何度も自分達の気持ちを相手に渡すように受け取るように。
空の月は徐々にその明るさを増し始めていた。
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