22の哲学擬き

茅絃(ちづる)——長編名義:あむゆさ

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星の破壊種(2021/10/24)

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「青年よ、大志を抱け」
 こんな言葉がある。
 ああ、なんとご立派な口上だろうか――。
 響きもいい。短く、子どもでも覚えられるほど簡素にまとまった格言だ。
 さりとて、今の青少年に「大志を抱け」と投げかけられたところで、それがなにになる?
 このご時世、大きな夢を見て、それを為さんと貫ける若者は、果たしてどのくらいいるのだろうか。
 唐突に現れた未知のウイルス。被害は世界規模。人間たちは気楽に外出することすらままならない。
 学校の授業は画面越し。仕事も、画面越しが主流ときた。

 見えるものは損害から生じた結果に過ぎず、その過程や本質はなに一つ視えちゃいない。
 視えないものに、人間は惑う。ときに精神に異常をきたす。
 仮に、そんな胡乱な代物に踊らされる人間を、高みから見物しほくそ笑むような、悪趣味な■■がいたとしても……それに気付くことすら不可能だ。知性を持った生命体だと、意志を持って不幸を選べる唯一の種だと不遜に構えておきながら。その実、ひどく脆く、触れれば容易く揺れ動くほど儚い。世界のシステムに、星の意思に、宇宙の在り方に抗うには、いささか以上に弱い生き物だ。

 愚かしきかな。愚かしきかな。

 結局のところ、ヒトという生き物は、生物種としては失敗作なのだろう。
 人と人とのコミュニケーションさえも、徐々にネットワークという名の『生物ならざるモノ』――『技術』に依存し始めている。
 死を恐れ、苦痛を怖れ、未知の因子の侵攻を懼れ……逃避を第一とし、防衛手段は専門家に丸投げ。
 恐怖を覚えること――それは、生物としての生存本能。
 本能ならば、人間以外も持ち合わせている。

 では、人間にしか……ヒトにしかできないこととはなにか。

 ――『破壊と創造』くらいだろう——。

 この前後関係が大切なのだ。人間は、破壊を最も優先する生物。
 文明が栄えたから、環境が、自然が、星が破壊されたわけじゃない。
 他の種を淘汰し、星を破壊することで、人間だけが生き永らえやすい世界を生み出す。
 故に、断じて、『創造と破壊』などではない。そんな高潔なことが人間如きにできるものか。
 星が生み出してしまった失敗作。個々人が意思決定機能を持ち合わせた、唯一の破壊種。
 何億年と培われた生物の階級、食物連鎖の流れ……それらを後出しで踏みにじり、消し炭にする簒奪生物。
 社会を支配し、星の始まり、星の行く末すら把握、調律できると勘違いした神擬き。
 蓋を開ければ、闇鍋に放りこまれた豆腐のように脆弱なくせに、種のプライドが度を超えて高い。
 なんでもできると錯覚し、人間が作り出した『カテゴリー』という名の小さな海で溺れることに生き甲斐を見出す。
 残念な生き物だ――いやむしろ、そんな根本的な愚昧さに気付けもしないなんて、憐れも過ぎて滑稽だ。

 主題に戻ろう。
 ここまで読んだ君たちに問う。
 それでも大志を抱けるか、と。
 大志を抱いたところで、その先に在るものは、突き詰めれば『破壊活動の助長』、あるいは破壊され尽くした後の工程『創造への加担』だ。しかし人間とは度し難いほど愚かな生き物ゆえ、新たな創造のためなら、更なる破壊を目論むかもしれない。

 ――どうあれ、「人間」として生を受けた以上、星の破壊に手を貸すことは避けられないわけだが――

 あらかじめ釘を刺しておくが、環境保全やそれらに準ずるものに加担したところで、それに費やされるエネルギーが発生する以上、根本的な破壊活動が揺らぐことはない。

 さあ、悩め。
 今を生きること、この世に在ることはまちがいではない。だがしかし、生物種としては欠陥まみれの『人間』よ。
 根底に潜む愚鈍さを理解した上で、君は君の大志を胸に、迷いなく突き進むことができる『在り方』を、声高らかに宣ってみせたまえ。
 それができて初めて、群衆に埋もれ続ける『君たち﹅﹅』は、確立した一個の人間『あなた』に変わることができるだろう。

 これを綴っている私は、主義・主張・思想が大嫌いだ。
 同時に、嫌いであるがゆえに必要以上に調べ倒し、徹底的に矛盾点を追究する。
 ……私は、盲目的、妄信的になる人間共に対し、忌避感しか抱けないのだ。
「人は考える葦である」
 と誰かが言った。
 思考を止めれば、人の成長は容易に詰む。世のせせらぎに身を窶すだけにあきたらず、己自身の在り方を自覚することさえ放棄して、他人や環境、周囲の流れになにもかも委ねてしまう行為こそ、私が嫌悪する対象なのだ。
 とはいえ、自分は流されやすい人間なのだと自覚できている人間もいる。しかしそれは、自身のその在り方を認めているということだ。これといって恥じることはないだろうし、そういう人物は私の敬遠対象ではない。なぜなら、それも一つの在り方だからだ。
 無論、思考を止めようが止めまいが、『破壊と創造』しかできない生き物であることに、変わりはないのだが。

 いつか人間が滅ぶとすれば。今この瞬間も、星の未来に負債を押し付け続ける、人間の手によるものだろう。

 人間は未知に傅く簒奪者。
 人間は夢に揺蕩う陶酔家。
 人間は星が産んだ失敗作――唯一の『破壊種』なのだから。
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