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ひまわりの庭
旅の途中で Ⅳ
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ねこのいのちは
ここのつ ひとつ
月夜のように
みちて かけても
また みちる
ねこのいのちは
ここのつ ひとつ
渡し守が、歌っています。
犬と猫は、その歌声で、我に返りました。
船は、静かに、廃船の横に寄り添うように、停まっています。
犬と猫はホッとしながらも、悲しさと恐ろしさで、震えが止まりませんでした。
渡し守は歌い終わると、犬と猫に言いました。
「あのこはね、地上に誰も泣いてくれる人がいないんだよ。涙の雨が降らないと、虹が、架からない。涙の虹が架からないと、虹の橋には行き着けない。だから、あの子は、いつまでも、船に乗ったままなんだ」
犬と猫は驚いて、渡し守を見上げました。
渡し守は、続けました。
「いろいろな悲しいことが重なりあって死んだ子が、地上で誰にも顧みられず、誰にも涙を流してもらえなかったとしたら、あのこみたいに、二度死ぬ事になるんだよ」
二度死ぬーーなんと、恐ろしい言葉でしょう。
犬と猫は恐怖のあまり、それはどういうことなのか、渡し守に尋ねることさえ、できませんでした。
「どこにも行き着けない船は、いずれは、私たちも消えてしまうんだ。そして、渡し守のいない船は、廃船となって、この果てしない宇宙を、永遠に流離い、彷徨い続けることになるのさ」
犬と猫は、自分たちも廃船の底のあの子と同じになるんだと、思いました。
彼らも、飼い主に山の中に捨てられて、命を落としたのです。
それまで、飼い犬飼い猫だったふたりには、山の中で生きていく術などあるはずもなく、いつか飼い主だった人間が迎えに来てくれることだけを信じ、待ち続けることしかできませんでした。
でも、その望みは、儚く消えて、ふたりは、捨てられた山の中で、誰にも顧みられず、地上の生を終えたのです。
このこたちの飼い主は、自分がしたことのために涙を流すことはあっても、このこたちのために流す涙は持ち合わせていないかもしれません。
だから、ふたりだって、この古びた廃船に乗る子と同じ。
この船の渡し守も、虹の橋に行き着く前に消えてしまうかもしれないのです。
さっきこの子を見た時に感じた例えようのない絶望は、過去から来たのではなく、これから起こることだったのです。
きっと、二度目の死は地上の一度目の死より、さらに深く恐ろしい闇なのです。
地上の死なら、安息の虹の橋へ向かうこともできます。
でも、二度目の死は、どこにも行き着けず、永遠に、闇の中を彷徨い続けなければならないのです。
犬と猫は、自分たちの船の渡し守が、今にも消えてしまう気がしました。
ふたりは、無我夢中で、渡し守の服の裾を、しっかりと掴みました。
ここのつ ひとつ
月夜のように
みちて かけても
また みちる
ねこのいのちは
ここのつ ひとつ
渡し守が、歌っています。
犬と猫は、その歌声で、我に返りました。
船は、静かに、廃船の横に寄り添うように、停まっています。
犬と猫はホッとしながらも、悲しさと恐ろしさで、震えが止まりませんでした。
渡し守は歌い終わると、犬と猫に言いました。
「あのこはね、地上に誰も泣いてくれる人がいないんだよ。涙の雨が降らないと、虹が、架からない。涙の虹が架からないと、虹の橋には行き着けない。だから、あの子は、いつまでも、船に乗ったままなんだ」
犬と猫は驚いて、渡し守を見上げました。
渡し守は、続けました。
「いろいろな悲しいことが重なりあって死んだ子が、地上で誰にも顧みられず、誰にも涙を流してもらえなかったとしたら、あのこみたいに、二度死ぬ事になるんだよ」
二度死ぬーーなんと、恐ろしい言葉でしょう。
犬と猫は恐怖のあまり、それはどういうことなのか、渡し守に尋ねることさえ、できませんでした。
「どこにも行き着けない船は、いずれは、私たちも消えてしまうんだ。そして、渡し守のいない船は、廃船となって、この果てしない宇宙を、永遠に流離い、彷徨い続けることになるのさ」
犬と猫は、自分たちも廃船の底のあの子と同じになるんだと、思いました。
彼らも、飼い主に山の中に捨てられて、命を落としたのです。
それまで、飼い犬飼い猫だったふたりには、山の中で生きていく術などあるはずもなく、いつか飼い主だった人間が迎えに来てくれることだけを信じ、待ち続けることしかできませんでした。
でも、その望みは、儚く消えて、ふたりは、捨てられた山の中で、誰にも顧みられず、地上の生を終えたのです。
このこたちの飼い主は、自分がしたことのために涙を流すことはあっても、このこたちのために流す涙は持ち合わせていないかもしれません。
だから、ふたりだって、この古びた廃船に乗る子と同じ。
この船の渡し守も、虹の橋に行き着く前に消えてしまうかもしれないのです。
さっきこの子を見た時に感じた例えようのない絶望は、過去から来たのではなく、これから起こることだったのです。
きっと、二度目の死は地上の一度目の死より、さらに深く恐ろしい闇なのです。
地上の死なら、安息の虹の橋へ向かうこともできます。
でも、二度目の死は、どこにも行き着けず、永遠に、闇の中を彷徨い続けなければならないのです。
犬と猫は、自分たちの船の渡し守が、今にも消えてしまう気がしました。
ふたりは、無我夢中で、渡し守の服の裾を、しっかりと掴みました。
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