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ひまわりの庭
旅の途中で Ⅷ
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そして、廃船のようだった船は、ゆっくりと虹の橋へと向かって、動き始めたのです。
犬は驚いて、渡し守に尋ねました。
「あのお船は、どこに行くの?」
「虹の橋のたもとの街さ」
それを聞くと、犬は、ホッと胸をなで下ろしました。
今度は、猫が、渡し守に尋ねました。
「あのお花が、降ってきたから?あのお花は、どこから降ってきたの?」
「虹の橋の『ひまわりの庭』から、降ってきたんだよ。」
「ひまわりの庭?」
「虹の橋のたもとの街にある美しい庭さ。街の住民たちが守る庭だよ。きみたちも、虹の橋に着いたら、その庭に行くといい。そうすれば、君たちの持っているひまわりも花開き、希望の種子を結ぶことができるだろうから。それに、きみたちの友だちにも、その庭で会えるだろうから」
犬と猫は、蕾のまま、枯れて萎びたひまわりを見ました。
ふたりには、このひまわりが花開くことなど想像すらできませんでしたが、渡し守に聞き返すことはしませんでした。
それより、友だちに再び会えることの方がうれしく、虹の橋に着くのが待ち遠しくなりました。
犬と猫は安堵したせいか、何だか眠くなってきて、渡し守の服の裾を掴んだまま、うとうとと、微睡始めました。
渡し守は、犬と猫に、言いました。
「ありがとう」
犬と猫は、眠くて重い瞼をどうにかあけて、渡し守を見ました。
「君たちのおかげで、あのこは、虹の橋に向かうことができた。ありがとう」
犬と猫は、不思議そうな顔をしました。
「きみたちのために、泣いてくれる人がいる。船着場への道で、きみたちの友だちだった犬に会っただろう。あのこのおうちの人が、きみたちのことを知ったんだ。それで、きみたちのことを想い、涙の虹を架けてくれた。そして、その人は、きみたち以外にも苦しみの中で人知れず、逝った命たちのことを想い、涙を流してくれた。その涙の雨がひまわりの庭に届き、あのこにも、ひまわりの庭から希望の花が届いたんだよ。きみたちが地上で味わった苦しみは、あのこの魂を救ってくれたんだ。ありがとう。苦しみは、もう、この船の中にも、虹の橋にも、どこにもない。これからは、きみたちも、あのこも、安息の地で、平穏に包まれて暮らすんだ」
犬と猫は、渡し守の言うことは、最後まで聞いてはいませんでした。
すっかり、眠ってしまっていたのです。
渡し守が、歌い始めます。
その歌は、子守唄のように、果てしのない天穹の中に流れていきました。
なみだのにじの
架からぬねこに
虹のたもとに
咲く花よ
みそかのつきが
十五の夜で
みちるよう
みちたまんげつ
十五の夜で
みそかのつきに
もどるよう
月夜のように
みちて かけても
また みちる
ここのつ ひとつ
ねこのいのちが
めぐるよう
しるべの花は
ここのつ ひとつ
ねこのいのちに
虹 架ける
虹が架かれば
さまよう ねこは
安息の虹の街へと
行き着けて
犬は驚いて、渡し守に尋ねました。
「あのお船は、どこに行くの?」
「虹の橋のたもとの街さ」
それを聞くと、犬は、ホッと胸をなで下ろしました。
今度は、猫が、渡し守に尋ねました。
「あのお花が、降ってきたから?あのお花は、どこから降ってきたの?」
「虹の橋の『ひまわりの庭』から、降ってきたんだよ。」
「ひまわりの庭?」
「虹の橋のたもとの街にある美しい庭さ。街の住民たちが守る庭だよ。きみたちも、虹の橋に着いたら、その庭に行くといい。そうすれば、君たちの持っているひまわりも花開き、希望の種子を結ぶことができるだろうから。それに、きみたちの友だちにも、その庭で会えるだろうから」
犬と猫は、蕾のまま、枯れて萎びたひまわりを見ました。
ふたりには、このひまわりが花開くことなど想像すらできませんでしたが、渡し守に聞き返すことはしませんでした。
それより、友だちに再び会えることの方がうれしく、虹の橋に着くのが待ち遠しくなりました。
犬と猫は安堵したせいか、何だか眠くなってきて、渡し守の服の裾を掴んだまま、うとうとと、微睡始めました。
渡し守は、犬と猫に、言いました。
「ありがとう」
犬と猫は、眠くて重い瞼をどうにかあけて、渡し守を見ました。
「君たちのおかげで、あのこは、虹の橋に向かうことができた。ありがとう」
犬と猫は、不思議そうな顔をしました。
「きみたちのために、泣いてくれる人がいる。船着場への道で、きみたちの友だちだった犬に会っただろう。あのこのおうちの人が、きみたちのことを知ったんだ。それで、きみたちのことを想い、涙の虹を架けてくれた。そして、その人は、きみたち以外にも苦しみの中で人知れず、逝った命たちのことを想い、涙を流してくれた。その涙の雨がひまわりの庭に届き、あのこにも、ひまわりの庭から希望の花が届いたんだよ。きみたちが地上で味わった苦しみは、あのこの魂を救ってくれたんだ。ありがとう。苦しみは、もう、この船の中にも、虹の橋にも、どこにもない。これからは、きみたちも、あのこも、安息の地で、平穏に包まれて暮らすんだ」
犬と猫は、渡し守の言うことは、最後まで聞いてはいませんでした。
すっかり、眠ってしまっていたのです。
渡し守が、歌い始めます。
その歌は、子守唄のように、果てしのない天穹の中に流れていきました。
なみだのにじの
架からぬねこに
虹のたもとに
咲く花よ
みそかのつきが
十五の夜で
みちるよう
みちたまんげつ
十五の夜で
みそかのつきに
もどるよう
月夜のように
みちて かけても
また みちる
ここのつ ひとつ
ねこのいのちが
めぐるよう
しるべの花は
ここのつ ひとつ
ねこのいのちに
虹 架ける
虹が架かれば
さまよう ねこは
安息の虹の街へと
行き着けて
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