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いちばんすきなはこ

きらいなこと

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 でもね。
 別の形の生き物がみっつ来てね、あたし、ひとりで箱に入れられて、そこのおうちに連れて行かれちゃった。
 そこで、あたし「ルーシー」になった。

 ここはね、あんまり、楽しくなかった。
 このおうちの生き物は、いろんな大きさがいた。
 ここには、あたしと同じ形はいなかった。
 だから、あたしね、ずっと、ママを呼んで鳴いていたの。
 ごはんも、あんまり、食べなかった。
 おなかは、すいたんだけど。

 そこではね、おひさまがお空に昇ったり沈んだりを3回くらいしたのかな。
 そしたらね、あたし、また、箱に入れられたの。箱の中には、あたしの食べなかったごはんがいっぱい散らばっていた。

 あたし、この箱、だいきらい。
 いちばん、きらい。

 あたしは、だいきらいな箱といっしょに、お外に持って行かれた。
 遠いところにあるお外。

 あたしは、この箱の中で「ルーシー」から「すてねこ」になった。

 お外に持って行かれる時、箱がゆれて、食べなかったごはんがあたしの体に、たくさん当たった。
 すごく、いやだった。頭から、ふってくることもあった。ものすごく、いやだった。

 遠いところまで行くと、箱とあたしと食べなかったごはんは、道の端にすてられた。

 お外は、こわかった。ものすごく、こわかった。
 あたし、ママを呼んでありったけの声を出して鳴いた。

 そしたら、大きな鳥さんがお空を飛んでるのが見えた。
 なんか、その鳥さんは、あたしの方に向かってきそうだったから、あたし、こわくなって、ママを呼ぶのをやめた。

 いくら鳴いても、ママは助けに来てくれないって、あたし、「ルーシー」でいたときに、もうわかっていたんだ。
「すてねこ」になって、もひとつ、わかった。ママの代わりに、あの鳥さんみたいに、こわいことがやってくるって。
 あたし、箱のすみっこで、じっとしていることにした。
 体がブルブルしてきて、心がキュッとなった。
 それでも、あたしは黙って、じっとしていた。

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