BLUE WATERー飛空士は愛機と共に異世界の空を飛び駆ける。ー

二代目菊池寛

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本編

二章四話 強襲の北帝国軍。④ーやって来た敵ー

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陽は昇り、アルミュラの新しい一日が始まる、静かなる廃基地内に風が吹く、ブルーウォーターの両翼はあり、前輪も新しいのに取り替えられ、そして機関部内には新たな機関部とその機関部の隣には小型の機関部が搭載されていた。

燃料は基地内にあった機械油を使用、両翼の機銃、機関砲の弾も全て補充済み、後は飛行実験のみ、しかし今回はガソリンではなく未知なる機械油、飛べるかどうかはまだ分からない。

ブルーウォーターの機首のプロペラの裏にて二つの人影があった。

それはクランク棒で内熱機関部を起動させるアインとその光景を見るシラティスの姿だった。二人は朝早く起きブルーウォーターの操縦席から仕舞っていたクランク棒を出し、直ぐ様、内熱機関部にクランク棒を直結し起動するまで回していた。

アイン(………起動する気配が無い、やっぱり燃料が違うからか?)

シラティス「なあアイン!まだ動かないのか!?」

アインの後ろに立つシラティスがアインにまだ飛べるか呼び掛ける。

アイン「もう少し…!」

その時、内熱機関部から振動音が鳴り響き始める。機関部が起動したようだ。

シラティス「なあアイン!何か大きな音が鳴り始めたんだけど!?もしかして!」

アイン「ようやく動き出したか。」

そう言いながらアインはクランク棒を抜き直ぐシラティスに手渡す。シラティスはアインの右手に持つクランク棒を受け取る。
同時にアインは廃基地の大扉を開ける回転レバーを力一杯素早く回し始める。

アイン「シラティス!直ぐにブルーウォーターに乗れ、俺が扉を開け終えたら操縦桿を強く握りながら右足のペダルを押せ!俺も直ぐ飛び乗る!」

シラティス「了解!」

シラティスはブルーウォーターに乗り込み直ぐ操縦桿を両手で強く握り込む。

アイン「ぬおおおおおおおっ!!」

グググッ___と、大扉はゆっくりと上から開き終える。

アイン「よしっ、操縦桿を引け!」

シラティス「了解っ!」

シラティスは右のペダルを右足で踏む、ブルーウォーターの機関部が唸りだしゆっくりと動き出す。アインは操縦席に向かって高くジャンプし乗り込んでからシラティスと操縦を交代する。シラティスはアインの背中に抱きつく。

アイン「確り捕まってろよ…。」

シラティス「うん…。」

そう言うとアインは自身の体にシートベルトを装着し操縦桿を思いっきり押しながら右のペダルを右足で踏み込む。ブルーウォーターは馬車の様な速さで廃棄地から飛び出す。まだ飛ばない。徐々に速度が少しずつ増す。
アインは操縦席の全メーターを確認してから自分の後ろに抱きつくシラティスに注意を伝える。

アイン「行くぞ!」

そう言うとアインは操縦桿を思いっきり押す、するとブルーウォーターは宙へと浮かび出す、少しずつだが徐々に高度が上がっていく。

シラティス「うわあああああっ!」

シラティスは自分達が空を飛んでることにより驚くどころか眼に星を輝かせながら喜んでいた。

アイン「どうだお嬢さん?空を上に居る御気分は?」

シラティス「最っ高だよ!村が小さくてまるで石ころ見たいだよ!アインも見てよ!」

アイン「いや、俺は遠慮するわ、操縦に集中したいしよ。」

アインは景色を見ずブルーウォーターの操縦に集中する。

シラティスは下から見る村の光景を、高度3000フィートからキャノピー越しで見下ろしていた。この高さから見ていると、自分の住んでいるメア村が森にほとんど隠される程見えなくなっていた。わずかに中心部の建物のわずかな密集がみえるぐらいだ。

因みにシラティスの住むメア村は、およそ100人ほどの人間種ヒューマンが暮らす小さな村だ。

村長の屋敷やエネルギー供給管理施設、村役場等重要な建物のある区画を中心として、住宅がポツポツと同心円状に建てられており、オルバ爺やシラティスの家はその最外縁にある。

村人のほとんどは農業を営んでいるらしく、村外れに、木々に隠れる形ではあるが立派な畑が見えた。基本的に、耳長族など異種族に見咎められないようひっそりと暮らしているらしいが、時には交易を行うこともあるとか。

メア村、シラティスの家にお世話になって早くも二日が経過している。

シラティス「すごい!こんなに高く飛べるなんて!其れもアタシの直した飛行機械が!」

シラティスが、後席ではしゃいでいる。

メア村、異世界アルミュラに来てから早くも二日が経過している。

因みにブルーウォーターには元々後部座席は無く、シラティスがアインの許可を得てブルーウォーターの修理序でに操縦席内の拡張をしたのだ。

アインとシラティスは今、あの廃棄地にあった地球で使われる戦闘機用の燃料の代わりに揮発性液体プラズマという未知なる液体を燃料タンクに充填して、今、上空を高々と飛ぶことに成功していた。

通常、対地・対艦攻撃を得意とするドイツ軍のスカーツに比べて、さすが自慢の相棒だ、とアインは歯をニヤリと大きく微笑みながら。笑い出す、すると、ブルーウォーターの反応が早くなった。

暫くしてブルーウォーターは、悠々と薄い雲を突き破って上昇した。

アイン「もっと高くまで飛べるぞシラティス。」

シラティス「ええ!?ど、どこまで?」

アイン「確か最大は、えっと…そうだなあ、改良に改良を重ねたから今はまだ5000辺りかな……。限界まで飛んだこと何て一度も無いし、興味も無いからな。」

シラティス「そっか、そ、それにしても…………。信じられないよ。機竜でさえこんな高い空では飛行は無理な筈なのに。仮にもしもそんな事をしたらバラバラになって木っ端微塵になるよ」

シラティスは驚いた表情でアインに話し掛ける。

此処まで来ると、メア村は森林や薄い雲に隠れた点でしかない。寧ろ、遠くにある基地の方が目立って見えるぐらいだ。

シラティス「……まるで、聖霊様がいらっしゃる世界みたいだ。」

キャノピーの外の光景を見ながら、シラティスがぽつりと呟かす。

雲を足元に、高度を保ちつつブルーウォーターがゆっくりと滑空し左斜めにゆっくりと上昇する。

シラティス「うわぁ。凄い!」

シラティスにとっては神秘的に光景だった。景色なんて普通の窓からよく見えるものなのだが、ほぼ180度全てが透明なブルーウォーターのキャノピーから見る光景は、全くの別物だ。まさしく、まるで自分が鳥になったかのような感覚すら覚えていく。

シラティス「凄いなこのブルーウォーターって!こんな素晴らしい飛行機械。『飛行機』って言ったっけ?アインの暮らす世界『地球』、故郷は確か…イギリス?だったっけ。アインのブルーウォーター以外の飛行機っては他にもあるの?」

アイン「ある。……ってほどでもないけどな俺の知る限り先ずは製造国のアメリカ、およそ千、いや、千二百近くの戦闘機が造られている。次はフランス、ドイツ、サウジアラビア、イスラエル、そして俺の故郷のイギリス、あとはそうだな……。一番製造が遅れてる国は確か日本だったな。まあ、要するに数えきれない程の飛行機が沢山、空を飛びながらドンパチってわけだ。」

シラティス「ドンパチって?」

アイン「戦争だよ、互いの国の利権を賭けてのな・・・。」

シラティス「戦争か・・・。アタシは嫌いだな。」

アイン「そうか。…………処で、此方はどうなんだ?」

アインは逆にシラティスに聞いてみた。

シラティス「?こっちはどうって?」

アイン「此処には機竜っていう機械の竜がいるんだろ?強さとか早さとか、何処からやって来たのかとな。」

ふと、シラティスは暗い表情になった。

シラティス「そうだな………。機竜は、多分この世界で最強の武器、いや、兵器だよ。剣や弓矢の届かない空から放つ魔炎まえん、魔法で生み出された炎で何もかも焼き払うんだ。何もかも、幾つもの国や村が北帝国の機竜に滅ぼされたよ。」

アイン「対空火器の類は通用するのか?」

あの村の科学水準、特に機械工学や精密機器関係はおそらく地球の技術力を超えるものに間違いない。もし、その気になれば、現代的な防空システムがあっても可笑しくはない筈だ。

しかし、その問いに、きょとんとした表情になるシラティス。

シラティス「………たいくうかき、って何?」

は?

アイン「対空火器って言ったら、まあ機関砲とか対空戦車砲とか。」

シラティス「…………きかんほう?何それ?」

アイン「機関砲って言ったら、要するにアレだ。銃を大きくしたヤツ。」

シラティス「……………じゅう、って?」

アイン「・・・・・・・・・。」

アイン(まさかコイツ、いや、この世界の人間は銃火器類のことを知らないのか!?)

アインは試しに、恐る恐るシラティスに聞いてみる。

アイン「シラティス。人間って基本どんな武器を使っているんだ?できれば全部教えてくれ。」

人間種が、魔法を使えないのは知っている。魔法を使えないが故に、人間種は劣等種として蔑まれているのだとか何とか。

ただ、高い科学技術を持っているのは、さっきの村と家を訪れてみて分かっている。それならば………。

シラティス「そうだねー。剣と槍と斧と、あと弓かな。」

間違いない、この世界の人間の技術速度はかなり遅れている、まるで原始人が槍一本だけでマンモスの大群と戦うようなものだとアインは唖然とする。

アイン「……お前の村にロボット見たいな機械があったよな?あれ、カリアーって言うんだっけ?」

シラティス「うん。そうだけどどうかした?」

アイン「いや、ロボット作る技術があるんだったらミサイルも………。」

シラティス「みさいる?」

首をかしげるシラティス。ミサイルが何なのか分かってないのは、火を見るより明らかだった。

因みにミサイルとは、要は推進装置によって飛翔し、誘導装置によって目標に向かって攻撃する兵器の事である。弾頭に爆薬を装填することによって、目標に直撃後、爆薬によるエネルギーによって目標を破壊する。

確か、開発したのはソ連らしい、実物も見た事も無い為、実際アインもよく知らない。

アインは仕方なく。…………ミサイルの説明をしてみた。

シラティスは、目を輝かせて。

シラティス「凄い!そんな凄い武器が地球世界にはあるんだ!それがあれば機竜にも十分対抗できる。地球って、この世界よりずっと進んでるんだ……!」

アイン「いや、技術力で言えばアルミュラの方が上だ。地球じゃまだロボットはまだ一般には普及してなくてな、今じゃ小説の物語の中の存在だ。」

シラティス「え?そうなの?」

アイン「あの機械、カリアーは一体どういう仕組みになってるんだ?」

シラティスの瞳が、再度キランと眼を輝かせていた気がした。

シラティス「そうだね。まずカリアー、地球世界じゃロボットって言うのかな?あれはそもそも有機カルカタニア系情報回路で制御されていて各箇所の駆動部分に接続設定システムネットワークでリンクさせることによって………。」

アイン(なる程な、とにかく分かったのは、部分的に見れば人間種が明らかに地球以上のテクノロジーを有している、ということか。)

ただ、武器の開発には熱心ではないらしい。平和主義なのか、そもそも科学技術を兵器開発に繋げる発想がなかったのか。全く武器の進歩がないのは、驚異的だ。

…………まあ、ライト兄弟の初飛行からそれ以降このブルーウォーターを作った地球人類がごく一般的な基準になるのかと言われると、なかなか首肯出来ないものがあるが。

シラティス「……あ。でもさ、つまりそういうことなら、アタシたちの技術でもあの飛行機械を作れるってことだよね?」

アイン「廃基地で集めた飛行機の残骸や部品を整備したのはお前なんだろ?整備したり交換部品を作る技術があるならば……。もしかしたら、開発出来るかもしれないな。」

もしも、そうなったら、機竜は空の王者じゃなくなるかもな。

しかし、そもそも戦闘機を製造するには高度で清潔な生産設備を持った何十もの企業が何年、何ヶ月もかけてノウハウを掛かってしまう。

そう、アインは考えていたその時だった。

アイン「ん?」

シラティス「どうしたの?アイン?」

前方の方から、複数の物体が宙に浮かんでいた。数は1、2、3、5…いや、どんどんと増えてくる。

アインは、飛空士としての能力が指示するがまま反射的に動いた。

アイン「遠目だからよく分からないが、此処から北東に飛行物体あり。数はおよそ約15。」

シラティス「!!………アイン。」

アイン「ん?」

心なしか、シラティスの声音は震えているように聞こえた。

ふと、アインは一度振り返ってみると、………シラティスの表情は真っ青になってしまっていた。

アイン「シラティス!?」

シラティス「アイン。ここから北東にあるのは、……北帝国だよ」

北帝国。いつぞやに撃ち落とした、機竜を持つ国か。

シラティス「まさか………機竜を落とされた仕返し、とかだったり。」

もしかして、行方知れずになった仲間の捜索……にしては大がかりが過ぎる。それなら編隊を組む必要もないだろう。

シラティス「…………北帝国は、反抗するものは誰であろうと容赦なく、殲滅する国なんだ。」

アイン「………殲滅する国か、だったら。」

素早く、判断しなければならない。

アインはこの後のことを想像する、もし、想像通りの未来が訪れればシラティスの住むメア村にも被害に合う可能性は高い、そしてアインは覚悟を決めガッと操縦桿を横に倒して、引いた。

ブルーウォーターは急激に右へと旋回する。

シラティス「うわあっ!?」

アイン「悪いシラティス!一度、廃基地に帰投する、もしお前の言う通りに北帝国とかいう連中の仕返しなら、此方でも迎え撃たなければならない。いいかシラティス!直ぐ村に戻って皆この事を伝えろ!恐らく。村も被害に合う可能性が高い、何処か安全な場所に避難した方がいい。」

飛び立つ前にすでに確認したのだが、アインら改めてこのブルーウォーターの火器残弾数を再確認する。

機銃。機関砲の弾薬数は共に廃基地にて全弾装填完了済み。燃料はまだ九割近くはある。一度廃基地にてシラティスを降ろし燃料を全快まで補給してから直ぐに再出撃をさせる。

シラティス「も、もしかしてアイン。戦う気なのか!?」

アイン「……それしかないだろ。」

何にせよ、北帝国の機竜を撃ち落としたのはアインだ。だが、アインの存在を知る由もない北帝国は、それを『セドラント王国の攻撃』として処理していることだろう。

放っておけばどんなことになるか。最悪の場合、シラティスの村もただでは済まない。

アイン「とにかくシラティスは、すぐ村に戻ってこのことを伝えてくれ。たぶん、どこか安全な場所に避難した方がいいな。」

15対1。決して分のいい勝負ではない、無謀なる勝ち目の低い戦いだ。それに機竜には、まだまだ分からない部分が多い。あの時の戦闘は運良く機関砲で口内目掛け内部部分を破壊し撃墜させたのだ。ブルーウォーターの火器が機竜の外部分に通じるかわからない。

徐々に高度を下げながら、アインは基地滑走路へ理想的なアプローチを取るため緩やかに操縦桿を操った。
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