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本編
二章五話 強襲の北帝国軍。⑤ー交戦ー
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10騎の制空機竜と5騎の爆撃機竜が、編隊を組み整然と、セドラント王国の豊かな草原と森林地の上空を飛行していく。
『竜陣形』だ。隊長グアノールが操る制空機竜が『首』の位置、5騎の爆撃機竜が中央に密集して『胴体』。左に4騎、右に5騎に分かれた制空機竜が『翼』の位置で飛び、上空から見れば、まるで、一騎の超巨大機竜が飛んでいるように見えることだろう。
国境を越えてより、王国軍の抵抗らしい抵抗は一切ない。賢いことに、この機竜部隊に逆らう愚かしさを十分に理解しているのだろう。悠然と翼を広げ、まるで観兵式の演示飛行のように機竜部隊は目的の地、セドラント王国北東部を目指す。
グアノールは、指揮官としてその先頭を飛んでいた。
グアノール「……全騎、聞こえているな?此方、グアノールだ。まもなく王国北東部の都市、エルトゥーカだ。先ず、かの都市を完全に破壊。その後、エルトゥーカ周辺を、最終的にセドラント王国北東部にある全てを焼く。それだけではない、森も、草原も、村も、ちっぽけな納屋に至るまで全て破壊するのだ!」
機竜兵達『了解!』
グアノールにとっても、機竜兵たちにとっても、あまり気乗りのする任務ではない。
事の発端は、セドラント駐留軍の機竜1騎が何らかの理由で撃ち落とされたことに始まる。
日を置かずにそのことは皇帝の耳に入り、皇帝自ら、セドラント北東部を全て焼き払うよう命じたという。帝国の威厳を保つために。
全くもって、馬鹿げている。そのようなことをせずとも、帝国の、機竜がもたらす破壊と恐怖は、帝国が『庇護』下に置く全ての国が知っているだろうに。
だが、命令とあらば焼くべきところを焼き、破壊すべき所を破壊し、上前を撥ねるべきところを撥ねるのが、軍人の仕事だ。
グアノール「だが、指揮権が此方にある以上、任務のやり方は好きにやらせてもらうさ。」
命令は、『王国北東部を全て焼け』だ。機竜を以てすれば片端から焼き払ってしまえばいいようにも見えるが、事はそう簡単ではない。一方的な虐殺であっても、秩序だった行動が必要なのだ。
片っ端から破壊するのではなく、先ずは王国北東部の重要拠点から攻めていくことにする。
既に、北帝国侵入の報は、エルトゥーカに伝わっていることだろう。今のところ抵抗がない処を見ると、王国軍のお偉方は、賢いことに王国北東部を見限りさっさと逃亡したとみた。その配下の軍勢も。
もし、聖霊が彼らに味方をすれば、命の恩恵にあずかることもできるだろう。ただし、聖霊の加護を以てしても、セドラント王国には万が一にも勝機はありえないが。
と、
機竜兵『グアノール隊長。此方4番騎。王国軍の魔導艇が接近。数は小型魔導艇5、既に戦闘態勢状態です。』
グアノール「………そうこなくてはな。」
抵抗、か。だが王国北東部の迎撃、にしては規模が小さい。
だが、小細工を弄したところで魔導艇ごときが機竜に勝てる道理はない。
セドラント王国のような、機竜を持つ技術力・国力のない国は機竜の代わりに魔導艇を使う。要は、風の魔法を刻んだ帆によって空に浮かぶ王国軍小型船『レーベ』。
搭乗者はセドラント王国軍の小型船船長、航海士、そして『魔光石』を核とし魔術師の数人が船を操作を行う。
それだけではない、純粋な魔力を打ち出す大型兵器。『魔導砲』によって武装する。
だが、機動力に乏しく、砲撃発射時間が長い、魔導砲も前後に砲門がある程度で連射性能を欠き、更には機竜を倒すに十分な威力を発揮できるとは言えないため、最早、機竜の前ではただの的、餌に等しい。
ただでさえ機竜に対して脆弱な魔導艇を有効に使おうとするのならば、数だけで圧倒するしかない。この辺りの王国軍は、確か50隻近い魔導艇を有してる筈だったが。
機竜兵『如何致しますか?』
報告してきた4番騎の機竜兵が魔導通信で命令を促す。
そして、グアノールは命じた。
グアノール「4番騎。2番騎を連れて迎え撃て。事前の警告はいらん。すぐに破壊しろ」
機竜兵『了解しました。お任せを』
左翼の機竜、2番騎と4番騎が陣形から離れる。
2騎の機竜は大きく翼をはためかせて加速し、魔導火炎を撃ち放ちながら王国軍の魔導艇部隊に、牙を剥いた。
*
王国兵「騎士長っ!き、機竜が来ます!」
女騎士「ひるむなッ!全艦魔導砲、撃てぇッ!」
小型魔導艇『レーベ級』の艦長代行にして、この魔導艇部隊臨時隊長、セシリア二等騎士長は腰に下げていたサーベルを抜き放ち、迫りくる2騎の機竜に刃を向けた。
セシリアの号令に従い、5隻の魔導艇は次々と魔導砲を撃ち放つ。………だが、殆どの魔力弾は回避され、残る一発は………機竜の方が『わざと』直撃を食らうも、正面の魔力弾を打ち破る、何という防御力だ。
セシリア「……くっ!各艦機動戦闘!低空を滑空しつつ前後から挟み込め!」
王国兵「だ、ダメです騎士長!数が足りなくて………!」
セシリア「泣き言を言うな!王国を守る我々が弱音を吐いて………うおっ!?」
次の瞬間、セシリアの乗る魔導艇を凄まじい衝撃が襲った。魔導艇全体が、前に倒れこむ。
セシリア「ぐっ……!」
衝撃により吹っ飛ばされる将兵。
風の魔法を刻んだマストも、二本のうち一本が半ばからへし折れ、地上へと落ちて行った。
一通り混乱が収まった後、サーベルを床に突き刺して辛うじて立っていたセシリアは、眼前の光景に歯をかみしめるより他なかった。
悠然と、1騎の機竜が魔導艇の船首に食い込むようにして降り立っている。
そして、左に首を向けて、……凄まじい威力の魔炎を撃ち放った。
射線上に2隻の魔導艇。避ける間もなく、炎上して墜ちる。
残る味方2隻は……1隻は別の機竜の魔炎によって燃え墜ち、残る一隻は体当たりを食らい………真っ二つに折れて森へと墜落していった。
セシリアが何かを指示する間もない、一瞬の出来事だった。
セシリア「………!」
機竜の圧倒的力、恐ろしさは知っているつもりだった。北帝国は、幾度となくセドラント王国に機竜をけしかけ、王都を屈服させ続けてきたのだ。
改めて、その力を見せつけられて、思わず茫然となる。…………が。
セシリア「……馬鹿め。其処を動くなよ!乗り手を潰してやる!」
うおおおおおお!と、男勝りの雄叫びを上げてセシリアは、悠然と船首に座す機竜に向かって突っ込んでいく。
だが、機竜も、その背の中に乗る機竜兵もいささかも動じる気配がなく……刹那、甲板に食い込ませていた鉤爪を跳ね上げ、一矢報わんとしたセシリアを蹴とばした。
セシリア「……がっ! う………」
船の錨ほどの大きさの鉤爪に蹴とばされた衝撃で、剣は手元を離れ、意識も・・・・・・飛びかけたが辛うじて踏みとどまった。
が、どこか骨が折れたのか、芯から響く激痛に、セシリアは倒れ伏したまま身動きが取れなくなってしまった。
セシリア「て、敵の………本隊は、まだ……!」
偵察隊が捉えた機竜隊は15。方向から、王国北東部の拠点都市エルトゥーカを狙っているのは間違いない。
だが、最早セシリアにそれを食い止める術がないことは、たとえ彼女の心が未だ折れていないにしろ、………明らかだった。
数時間前には既に、北帝国侵入の報は地方守備軍将軍の耳に入っていた。
そして将軍は……全軍に撤退するよう命じたのだ。直ちに撤退し、王都へ帰還せよ、と。
王国軍、しかも地方守備軍では15騎もの機竜隊に勝てないのは明明白白。故に戦力だけ温存して北東部は、北帝国に明け渡してしまえ。ということだ。
信じ難い命令に聞こえるだろう。しかし、機竜とまともに戦えるのは機竜しかいない。此れは、この世界における常識であり、それを覆すことは、世界の摂理を変えるに等しい………不可能なことなのだ。機竜と戦うことは、すなわち犬死である、と。
セシリアにはそれが納得いかなかった。軍とは、国・国民をその身を張って守る組織だ。それが、武器も持たない市民の避難を待たずして、更には市民を押しのけるように我先に逃げようとすることが許せなかったのだ。
故に、さっさと撤退するよう船中にがなり立てていた下級貴族出身の艦長を船から突き落とされ……まだ離陸前だったから死ぬようなことはないと思うが、思いを同じくする者たちと共に迫りくる北帝国の機竜に歯向おうとした。
………それが、今の結果だ。僅かにも損害を与えること叶わず。徒に将兵を死傷させて、セシリアもその後を追おうとしている。
今や機竜に対抗する武器もなく、セシリアは倒れ伏したまま運命を待つより他なかった。
船首に座す機竜はセシリアに目掛け、口を大きく開き火弾を放とうとする。
セシリア「………皆、済まない。」
徒に死なせてしまった仲間達に。そして守れなかった人々に…………
その時だった。
ゴオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオ!!!
頭が割れそうになるほどの、凄まじい轟音。
セシリアは思わず耳を塞いでしまう。が、それでも轟音は容赦なくセシリアの耳を激しく打ち、それどころか更に大きくなる。
セシリア(な、何なんだ!?この五月蝿い音は!?)
セシリアは、倒れ伏した姿勢のまま、顔を上げる。
その瞬間、空を響かせるような轟音の中に、ヴァアアア!という聞きなれぬ音がしたかと思うと……………鋼鉄の機竜に、無数の弾痕が穿たれた。
機竜の背の内部にある操縦席に搭乗してる機竜兵も……腹部に大きな穴が、ぽっかりと空く。いや、腹の半分が吹き飛ばされて、首から上が無くなっていた。
セシリア「…………え?」
それは、セシリアの声か、はたまた飛んでいく機竜兵の首のものか。
ぐらり、と姿勢を崩し、そのまま空中へと身を投げ出して落下する機竜。
ゴオオオオォォォォオオオォォォォォオオオオオオオオオ!!!
耳が引き裂かれるような凄まじい轟音は、魔導艇よりさらに上空からだ。
そしてセシリアは……魔導艇の上空を裂くように急降下しながら飛ぶ一つの『青い鳥』を見た。
セシリア「………っ!」
一瞬だった。一瞬で、巨大な『青い鳥』が魔導艇の上を平常飛行して通過していったのだ。
信じられない速さだった。この魔導艇はもちろん、あの機竜でさえその半分の速さも出ないだろう。
巨大な『青い鳥』が通過したその風圧、衝撃でセシリアは後ろへと吹っ飛ばされる。だが、背を打つ痛みも忘れ、セシリアは疾風の如く大空を駆ける『青い鳥』の姿を、ただひたすらに目で追った。
『青い鳥』は、もう1騎の機竜目がけて飛び掛かり両翼から無数の弾痕が再び穿たれ、機竜の身体を貫通させる。
*
アイン「遅かったか………!」
廃基地へと帰投しシラティスを降ろして、直ぐ様再出撃をする。
だが、それでも、30分近い時間が掛かってしまった。見た処、既に北帝国の機竜と、恐らくセドラント王国のものであろう空飛ぶ船、否、駆逐艦が交戦し、……眼下の木々の間に4ヶ所、火災が起こっていた。
見える残骸から、墜ちたのはセドラント王国側の、空飛ぶ船なのだろう。残る1隻も、辛うじて浮遊してはいるが、船首に機竜が着地して至近距離から破壊されようとしている。
アイン「……上手く、当たれよ。」
アインは慎重に照準を定め、ブルーウォーターの兵装である機銃の引き金を、引いた。
ヴァアアア!という機銃が発射する際のわずかな振動。
撃ちだされた弾は、一瞬も待たずして、今にも空飛ぶ船を破壊しようとしていた機竜に着弾。その装甲と搭乗者してる機竜兵ごと穴だらけにし、さらに着弾の衝撃で船首から弾き飛ばした。
ボロボロと金属質の残骸をまき散らしながら、乗り手亡き機竜は地上へと落下していく。
ブルーウォーターは、今にも地上へと沈没してしまいそうな船の上を、一瞬で通り過ぎる。
甲板に、一人の将兵らしき人影が見えた、気がした。
アイン(挨拶もせずに通過してしまったな…。これは英国紳士としては無礼だが仕方ない。)
ちょっと………あまりに近くを通過してしまった為か、吹っ飛ばしてしまったかもしれないが。
だが、他のことを考えるのは後だ。まだ機竜はもう1騎残っている。
アイン(今は戦闘中だ。一体撃墜したがまだ敵は多くいる。)
本隊と別れてこのセドラント王国の迎撃に来たのだろう機竜は、2騎。1騎の機竜があっという間に落とされたのを間近で見た残る機竜は、わずかに困惑するように滞空していたが、すぐに大きく翼を広げて上空へと飛び出す。
ブルーウォーターは、その下をすり抜けるように飛び……機竜を遥かに超えるスピード、限界まで急加速し、一気に機竜の上空へと飛び出す。
アイン「………ぐうっ!」
そして急反転。上下逆さまになる視界。急激な機動によって襲いくる重力。
吹っ飛びかける意識を無理やり繋ぎ止め、急反転によって、アインのブルーウォーターは前方に機竜を捉えた。
アイン「目標…補足……。固定。当たれぇっ!」
アインは自身の目を頼りに操縦桿左隣のレバーにある、機関砲の引き金を左手で、引く。
すると両翼端から勢いよく機関砲が撃ち出され、機体が震える。
相打ちを防ぐためにブルーウォーターは素早く左に旋回。機竜の射線軸から離れる。
発射された機関砲の砲弾は、音速の速さで真っすぐ機竜へと直進。距離、スピード共に、機竜でもこの攻撃を回避することは不可能だろう。
しかし、次の瞬間。機関砲の先端が回避しようとしていた機竜の胴体ど真ん中に直撃しそのまま貫通する。爆炎と共に機竜の四肢はバラバラに砕け散った。
爆発の上空を、緩やかに弧を描きながらブルーウォーターが飛び去っていく。
アイン「……残りは?」
撃墜したのは2騎。あと13の機竜が、飛んでいるはずだ。
キャノピーの周囲を確認。北西45キロに複数の飛行物体あり、恐らく、機竜の別動隊だろう。
アイン(かなりの距離と角度がある為か機銃、機関砲での攻撃は届かない。……此処は雲に隠れ抜けてからの奇襲を仕掛け、近距離で機銃を撃つ。紳士としては卑怯は卑劣な行為、だが、此れは戦争だ。死んでも悪く思うなよ。)
アイン「行くぜっ!!」
アインは操縦桿を左に引く、ブルーウォーターは左旋回し大雲の中に入り込む、ブルーウォーターは雲の中にて右に大きく旋回し直ぐ、雲の中を脱出、脱出した先は機竜の別働隊の目前。
再度機関砲の引き金を左の指で引く。
両翼より機関砲の砲弾が数発放たれた。そのまま、白い軌跡を描きながらの高度、およそ約1000メートル、下に位置する機竜隊に襲いかかる。
砲弾は着弾し機竜の胴体を貫く、瞬間、凄まじい爆発がくで迸った。
*
最初の犠牲者は、竜陣形の『尾』の部分を飛ぶ爆撃機竜だった。
決定的な破壊が起こる数分前。背後から耳を劈くように響く凄まじい轟音。そして空を揺らすような衝撃に、制空機竜に乗る誰もが後ろを向いていた。
機竜兵たちの視界の中で、胴体を炎上させながら墜落していく1騎の爆撃機竜。
伏兵か!?
そして、徐々に聞こえてくる聞きなれない轟音。
機竜兵『た、隊長!あれは………』
グアノール「狼狽えるな。爆撃機竜隊はこのまま前身!制空隊は後方への警戒を厳とせよ」
今にでも耳を引き裂かれそうなほどの爆音だった。しかし、その程度で引き下がるほど、北帝国の機竜兵はヤワではない。
ゴオオオオオォォォォォオオオオオオオ……………!
シュウウゥゥゥッ!
その時、ただでさえ聞きなれない轟音の中に、グアノールはさらに何かもう一つの異音が追加されたことに気付いた。そしてそれは、徐々に近づいてくる。
それを目に捉えた時、それは、細長い筒のように見えた。後ろから火を噴いて、凄まじい速さでこちらへと………
命令を下す間もなかった。次の瞬間、ソレが一番後ろを飛ぶ爆撃機竜へと直撃。
爆撃機竜の巨体は。……内部に搭載された爆雷に引火したのか、想像を絶する大爆発と共に真っ二つに引き裂かれる。
グアノール「な、何だとっ!?」
その前方近くを飛んでいたもう1騎の爆撃機竜に、もろに破片が直撃。片翼をもぎ取られ制御を失ったその1騎は、きりもみしながら、……その背に乗る機竜兵を振り落として、森へと落ちていった。
爆撃機竜3騎喪失。原因不明の突然の事態に、グアノールは呆然とする。
しかし、惨劇はそれにとどまらなかった。
メティゼス『た、隊長!爆撃機竜が……ぎゃ!』
機竜兵『メ、メティゼス兵長ッ!………あ、あれはぐお!?』
制空機竜が2騎、立て続けに爆発の炎に包まれた。1騎はバラバラに、もう1騎は辛うじて原型を保ったものの消し炭になって、地上へと落ちていく。
グアノール「か、各騎散開しろ!このままでは敵の餌食に………!」
その間にもう1騎、片翼を爆発でもぎ取られて墜落していった。残る制空機竜はあと5騎。
各国に貢物を強要する北帝国の恐怖の対象たるあの機竜が、今や『狩る者』から『狩られる者』へと立場を転落させたのは、火を見るより明らかだった。
操縦席のグアノールは、機竜の手綱型魔力操作機を強く握り直す。
グアノール「か、各騎!後方の敵を探し、討て!………このままでは全滅だ」
機竜兵A『りょ、了解!』
機竜兵B『私は上を………ぐぎゃえ!?』
上昇しようとした機竜が、火だるまになって落ちていった。
この数分間で次々に撃ち落されていく機竜……ミセルアの時でさえこれ程の苦戦等、一度も経験したことが無かった。
そして、
ヴァアアアアアアアア!!
機竜兵A『た、助け……ぐぎ!』
機竜兵C『う、うわああぁーっ!?』
更に聞きなれぬ音が響いたかと思うと、また2騎の機竜が地表へと落下していく。翼、胴体に無数の小さな穴を空けて。
グアノール(て、敵は一体…。ど、どんな魔法を使ってるんだ………?)
残りの制空機竜は、2騎。
耳を抑えたくなるような凄まじい轟音は一秒たりとも鳴り止まずに続く。頭が、おかしくなりそうだった。
レントラー『は、発見!敵は上空、雲の上です!』
グアノール「よくやった!俺と合流しろ! 2騎の連携で仕留めるッ!」
レントラー『はい!』
降下してくる1騎の制空機竜。機竜兵のレントラー一等機竜兵のものだ。帝都守備隊から赴任してきた新参者だったが、機竜を操る腕は良く、グアノールが目にかけていた兵士の一人だった。
レントラーの機竜と合流し、2騎の機竜は雲の上、遥か上空を目指す。
雲の中を突っ切っているうちは、敵から隠れることができるだろう。敵が雲の上を飛んでいるのなら、時折雲から顔を出しながら様子を窺って………
ズガガガガガガガガッッッ!!
レントラー『た、隊ちょ……ぎゃ!』
という腹の底から響くような至近の爆発音。
ハビダーンの機竜は、左半分が小さな穴だらけになり破壊され、残る部分も炎上しながら地上へと落ちて行った………。
グアノール「レントラー!!」
雲など、最早、敵にとっては大した障害ではなかったのだ。
グアノール「くぅっ!」
残る制空機竜は、グアノールの1騎。
グアノールの機竜は、勢いよく雲から飛び出した。そのまま大きく翼を広げ、やや速度を落としながら、敵の姿を探し求める。
グアノール「何処だ!何処にいるッ!?」
大勢の部下を失い、激昂した目で上下左右を素早く見渡す。
だが、敵の姿はどこにもない。
ゴオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオ!!
という耳障りな音が何時までも響いているだけだ。だが、先程よりも音が大きい。この近くにいることは、間違いない。
グアノールは。
グアノール「音の方角、敵は、上か!!」
グアノールは目線を上に向けると、上空から『青い鳥』が急降下飛行する、鳥はグアノールの制空機竜に向けて両翼の機銃が放たれる。
グアノール「うおおおおおっ!!」
グアノールは操作機を思いっきり左に引かせ、制空機竜は降り掛かる機銃の雨から着弾する前に左へと素早く回避する。
急降下するブルーウォーター、それに搭乗するアインはグアノールの制空機竜の回避行動を見て察した。
アイン「攻撃を避けた!?」
ブルーウォーターは右へと大きく旋回しながら制空機竜の周囲を飛び回る。
グアノールは周囲を回り飛ぶブルーウォーターを見て驚きを隠さずにいた。
グアノール(何だ?俺の周りを飛び回る物体は!?『鳥』の様だが、まさか……。まさか、あれが、我等機竜隊を全滅寸前まで追い込ませるとは、セドラントが機密に造られた機竜に対抗する『新型兵器』か!?おのれぇ。)
グアノール「このガファサ・グアノール!!王国軍の新型兵器相手に落ちてたまるかぁ!!」
グアノールの制空機竜は大きく口を開き、飛び回るブルーウォーター目掛け、身を回しながら火弾を連続に放ちだす、ブルーウォーターは機竜の周りを旋回しながら機竜の放つ火弾を避け続ける。
しかし、搭乗者であるアインは焦り始めながら、グアノールの制空機竜の火弾を次々と避け続ける。
アイン「ぐううっ!次から次へと火の弾撃ち続きやがって!!」
グアノール「どうした!?王国軍の新型兵器!!この俺を相手にその程度か!?」
アイン「!」
アインは操縦桿を上に上げる、ブルーウォーターは制空機竜の火弾の回避と同時に上へと旋回、そのまま上昇する、高度、1000。2000へと更に高度を増しだす。
グアノール「逃さん、全速飛行!!」
グアノールも負けず操作機を引っ張り、上へと上昇、全速飛行でブルーウォーターを追い掛ける。
だが、飛行速度の差はブルーウォーターが有利、制空機竜の全速飛行でもブルーウォーターの差は広がってしまう。
グアノール「馬鹿な、機竜の全速力でも追いつけないだと!?こんな筈じゃあ…!!」
気が付けば、ブルーウォーターは何処かに消えてしまった。
そのまま大きく翼を広げ、やや速度を落としながら、敵の姿を探し求める。
グアノール「何処だ!何処にいるッ!?」
大勢の部下を失い、激昂した目でグアノールは上下左右を素早く見渡す、周囲の空は『雲』で囲っていた。グアノールは気付かなった。自分自身が敵の『罠』に掛かったことを。
それでも、敵の姿は何処にもない。
ゴオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオ!!
という耳障りな音が何時までも響いているだけだ。だが、先ほどよりも音が大きい。この近くにいることは、間違いない。
ヴァアアアアアアアアアアア!!
その聞きなれぬ音が、グアノールの運命を決定づけたことを理解するのに、さして時間はかからなかった。グアノールは真上を見上げた。
真上の雲の中からブルーウォーターが飛び出て来る、気付いた瞬間、グアノールの運命を決定づけたことを理解するのに、さして時間はかからなかった。
アイン「落ちろぉぉ!!」
ブルーウォーターの両翼から機銃の雨が放たれ
、グアノールの機竜の胴体と翼を撃ち抜いて破壊し、搭乗席内のグアノールは急ぎ操作機の右隣にある脱出装置のレバーを引こうとした瞬間………右腕が吹き飛んだ。機竜の核が破壊されたことにより機竜全ての機能が破壊されたのだ。当然、操作機も破壊される。
グアノール「ぐ……………ああああああぁぁぁぁぁ!」
迸る血。しかし、それに構う間もなく、翼と、動力部のある胴体を蜂の巣にされた機竜が浮力を失って落下する。
機竜の翼は根元から完全に失われ、もはや墜落するより他の術は無い。
意識を完全に失う寸前。グアノールは、頭上を飛び去る巨大な『青い鳥』を見た。
グアノール「カクタス……メティゼス……レントラー……。皆、す、すまな…い……。」
自分の部下の名前を呼び、自身の命の灯火を散らすグアノール、制空機竜は地に墜落した瞬間、爆発四散をした。
『竜陣形』だ。隊長グアノールが操る制空機竜が『首』の位置、5騎の爆撃機竜が中央に密集して『胴体』。左に4騎、右に5騎に分かれた制空機竜が『翼』の位置で飛び、上空から見れば、まるで、一騎の超巨大機竜が飛んでいるように見えることだろう。
国境を越えてより、王国軍の抵抗らしい抵抗は一切ない。賢いことに、この機竜部隊に逆らう愚かしさを十分に理解しているのだろう。悠然と翼を広げ、まるで観兵式の演示飛行のように機竜部隊は目的の地、セドラント王国北東部を目指す。
グアノールは、指揮官としてその先頭を飛んでいた。
グアノール「……全騎、聞こえているな?此方、グアノールだ。まもなく王国北東部の都市、エルトゥーカだ。先ず、かの都市を完全に破壊。その後、エルトゥーカ周辺を、最終的にセドラント王国北東部にある全てを焼く。それだけではない、森も、草原も、村も、ちっぽけな納屋に至るまで全て破壊するのだ!」
機竜兵達『了解!』
グアノールにとっても、機竜兵たちにとっても、あまり気乗りのする任務ではない。
事の発端は、セドラント駐留軍の機竜1騎が何らかの理由で撃ち落とされたことに始まる。
日を置かずにそのことは皇帝の耳に入り、皇帝自ら、セドラント北東部を全て焼き払うよう命じたという。帝国の威厳を保つために。
全くもって、馬鹿げている。そのようなことをせずとも、帝国の、機竜がもたらす破壊と恐怖は、帝国が『庇護』下に置く全ての国が知っているだろうに。
だが、命令とあらば焼くべきところを焼き、破壊すべき所を破壊し、上前を撥ねるべきところを撥ねるのが、軍人の仕事だ。
グアノール「だが、指揮権が此方にある以上、任務のやり方は好きにやらせてもらうさ。」
命令は、『王国北東部を全て焼け』だ。機竜を以てすれば片端から焼き払ってしまえばいいようにも見えるが、事はそう簡単ではない。一方的な虐殺であっても、秩序だった行動が必要なのだ。
片っ端から破壊するのではなく、先ずは王国北東部の重要拠点から攻めていくことにする。
既に、北帝国侵入の報は、エルトゥーカに伝わっていることだろう。今のところ抵抗がない処を見ると、王国軍のお偉方は、賢いことに王国北東部を見限りさっさと逃亡したとみた。その配下の軍勢も。
もし、聖霊が彼らに味方をすれば、命の恩恵にあずかることもできるだろう。ただし、聖霊の加護を以てしても、セドラント王国には万が一にも勝機はありえないが。
と、
機竜兵『グアノール隊長。此方4番騎。王国軍の魔導艇が接近。数は小型魔導艇5、既に戦闘態勢状態です。』
グアノール「………そうこなくてはな。」
抵抗、か。だが王国北東部の迎撃、にしては規模が小さい。
だが、小細工を弄したところで魔導艇ごときが機竜に勝てる道理はない。
セドラント王国のような、機竜を持つ技術力・国力のない国は機竜の代わりに魔導艇を使う。要は、風の魔法を刻んだ帆によって空に浮かぶ王国軍小型船『レーベ』。
搭乗者はセドラント王国軍の小型船船長、航海士、そして『魔光石』を核とし魔術師の数人が船を操作を行う。
それだけではない、純粋な魔力を打ち出す大型兵器。『魔導砲』によって武装する。
だが、機動力に乏しく、砲撃発射時間が長い、魔導砲も前後に砲門がある程度で連射性能を欠き、更には機竜を倒すに十分な威力を発揮できるとは言えないため、最早、機竜の前ではただの的、餌に等しい。
ただでさえ機竜に対して脆弱な魔導艇を有効に使おうとするのならば、数だけで圧倒するしかない。この辺りの王国軍は、確か50隻近い魔導艇を有してる筈だったが。
機竜兵『如何致しますか?』
報告してきた4番騎の機竜兵が魔導通信で命令を促す。
そして、グアノールは命じた。
グアノール「4番騎。2番騎を連れて迎え撃て。事前の警告はいらん。すぐに破壊しろ」
機竜兵『了解しました。お任せを』
左翼の機竜、2番騎と4番騎が陣形から離れる。
2騎の機竜は大きく翼をはためかせて加速し、魔導火炎を撃ち放ちながら王国軍の魔導艇部隊に、牙を剥いた。
*
王国兵「騎士長っ!き、機竜が来ます!」
女騎士「ひるむなッ!全艦魔導砲、撃てぇッ!」
小型魔導艇『レーベ級』の艦長代行にして、この魔導艇部隊臨時隊長、セシリア二等騎士長は腰に下げていたサーベルを抜き放ち、迫りくる2騎の機竜に刃を向けた。
セシリアの号令に従い、5隻の魔導艇は次々と魔導砲を撃ち放つ。………だが、殆どの魔力弾は回避され、残る一発は………機竜の方が『わざと』直撃を食らうも、正面の魔力弾を打ち破る、何という防御力だ。
セシリア「……くっ!各艦機動戦闘!低空を滑空しつつ前後から挟み込め!」
王国兵「だ、ダメです騎士長!数が足りなくて………!」
セシリア「泣き言を言うな!王国を守る我々が弱音を吐いて………うおっ!?」
次の瞬間、セシリアの乗る魔導艇を凄まじい衝撃が襲った。魔導艇全体が、前に倒れこむ。
セシリア「ぐっ……!」
衝撃により吹っ飛ばされる将兵。
風の魔法を刻んだマストも、二本のうち一本が半ばからへし折れ、地上へと落ちて行った。
一通り混乱が収まった後、サーベルを床に突き刺して辛うじて立っていたセシリアは、眼前の光景に歯をかみしめるより他なかった。
悠然と、1騎の機竜が魔導艇の船首に食い込むようにして降り立っている。
そして、左に首を向けて、……凄まじい威力の魔炎を撃ち放った。
射線上に2隻の魔導艇。避ける間もなく、炎上して墜ちる。
残る味方2隻は……1隻は別の機竜の魔炎によって燃え墜ち、残る一隻は体当たりを食らい………真っ二つに折れて森へと墜落していった。
セシリアが何かを指示する間もない、一瞬の出来事だった。
セシリア「………!」
機竜の圧倒的力、恐ろしさは知っているつもりだった。北帝国は、幾度となくセドラント王国に機竜をけしかけ、王都を屈服させ続けてきたのだ。
改めて、その力を見せつけられて、思わず茫然となる。…………が。
セシリア「……馬鹿め。其処を動くなよ!乗り手を潰してやる!」
うおおおおおお!と、男勝りの雄叫びを上げてセシリアは、悠然と船首に座す機竜に向かって突っ込んでいく。
だが、機竜も、その背の中に乗る機竜兵もいささかも動じる気配がなく……刹那、甲板に食い込ませていた鉤爪を跳ね上げ、一矢報わんとしたセシリアを蹴とばした。
セシリア「……がっ! う………」
船の錨ほどの大きさの鉤爪に蹴とばされた衝撃で、剣は手元を離れ、意識も・・・・・・飛びかけたが辛うじて踏みとどまった。
が、どこか骨が折れたのか、芯から響く激痛に、セシリアは倒れ伏したまま身動きが取れなくなってしまった。
セシリア「て、敵の………本隊は、まだ……!」
偵察隊が捉えた機竜隊は15。方向から、王国北東部の拠点都市エルトゥーカを狙っているのは間違いない。
だが、最早セシリアにそれを食い止める術がないことは、たとえ彼女の心が未だ折れていないにしろ、………明らかだった。
数時間前には既に、北帝国侵入の報は地方守備軍将軍の耳に入っていた。
そして将軍は……全軍に撤退するよう命じたのだ。直ちに撤退し、王都へ帰還せよ、と。
王国軍、しかも地方守備軍では15騎もの機竜隊に勝てないのは明明白白。故に戦力だけ温存して北東部は、北帝国に明け渡してしまえ。ということだ。
信じ難い命令に聞こえるだろう。しかし、機竜とまともに戦えるのは機竜しかいない。此れは、この世界における常識であり、それを覆すことは、世界の摂理を変えるに等しい………不可能なことなのだ。機竜と戦うことは、すなわち犬死である、と。
セシリアにはそれが納得いかなかった。軍とは、国・国民をその身を張って守る組織だ。それが、武器も持たない市民の避難を待たずして、更には市民を押しのけるように我先に逃げようとすることが許せなかったのだ。
故に、さっさと撤退するよう船中にがなり立てていた下級貴族出身の艦長を船から突き落とされ……まだ離陸前だったから死ぬようなことはないと思うが、思いを同じくする者たちと共に迫りくる北帝国の機竜に歯向おうとした。
………それが、今の結果だ。僅かにも損害を与えること叶わず。徒に将兵を死傷させて、セシリアもその後を追おうとしている。
今や機竜に対抗する武器もなく、セシリアは倒れ伏したまま運命を待つより他なかった。
船首に座す機竜はセシリアに目掛け、口を大きく開き火弾を放とうとする。
セシリア「………皆、済まない。」
徒に死なせてしまった仲間達に。そして守れなかった人々に…………
その時だった。
ゴオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオ!!!
頭が割れそうになるほどの、凄まじい轟音。
セシリアは思わず耳を塞いでしまう。が、それでも轟音は容赦なくセシリアの耳を激しく打ち、それどころか更に大きくなる。
セシリア(な、何なんだ!?この五月蝿い音は!?)
セシリアは、倒れ伏した姿勢のまま、顔を上げる。
その瞬間、空を響かせるような轟音の中に、ヴァアアア!という聞きなれぬ音がしたかと思うと……………鋼鉄の機竜に、無数の弾痕が穿たれた。
機竜の背の内部にある操縦席に搭乗してる機竜兵も……腹部に大きな穴が、ぽっかりと空く。いや、腹の半分が吹き飛ばされて、首から上が無くなっていた。
セシリア「…………え?」
それは、セシリアの声か、はたまた飛んでいく機竜兵の首のものか。
ぐらり、と姿勢を崩し、そのまま空中へと身を投げ出して落下する機竜。
ゴオオオオォォォォオオオォォォォォオオオオオオオオオ!!!
耳が引き裂かれるような凄まじい轟音は、魔導艇よりさらに上空からだ。
そしてセシリアは……魔導艇の上空を裂くように急降下しながら飛ぶ一つの『青い鳥』を見た。
セシリア「………っ!」
一瞬だった。一瞬で、巨大な『青い鳥』が魔導艇の上を平常飛行して通過していったのだ。
信じられない速さだった。この魔導艇はもちろん、あの機竜でさえその半分の速さも出ないだろう。
巨大な『青い鳥』が通過したその風圧、衝撃でセシリアは後ろへと吹っ飛ばされる。だが、背を打つ痛みも忘れ、セシリアは疾風の如く大空を駆ける『青い鳥』の姿を、ただひたすらに目で追った。
『青い鳥』は、もう1騎の機竜目がけて飛び掛かり両翼から無数の弾痕が再び穿たれ、機竜の身体を貫通させる。
*
アイン「遅かったか………!」
廃基地へと帰投しシラティスを降ろして、直ぐ様再出撃をする。
だが、それでも、30分近い時間が掛かってしまった。見た処、既に北帝国の機竜と、恐らくセドラント王国のものであろう空飛ぶ船、否、駆逐艦が交戦し、……眼下の木々の間に4ヶ所、火災が起こっていた。
見える残骸から、墜ちたのはセドラント王国側の、空飛ぶ船なのだろう。残る1隻も、辛うじて浮遊してはいるが、船首に機竜が着地して至近距離から破壊されようとしている。
アイン「……上手く、当たれよ。」
アインは慎重に照準を定め、ブルーウォーターの兵装である機銃の引き金を、引いた。
ヴァアアア!という機銃が発射する際のわずかな振動。
撃ちだされた弾は、一瞬も待たずして、今にも空飛ぶ船を破壊しようとしていた機竜に着弾。その装甲と搭乗者してる機竜兵ごと穴だらけにし、さらに着弾の衝撃で船首から弾き飛ばした。
ボロボロと金属質の残骸をまき散らしながら、乗り手亡き機竜は地上へと落下していく。
ブルーウォーターは、今にも地上へと沈没してしまいそうな船の上を、一瞬で通り過ぎる。
甲板に、一人の将兵らしき人影が見えた、気がした。
アイン(挨拶もせずに通過してしまったな…。これは英国紳士としては無礼だが仕方ない。)
ちょっと………あまりに近くを通過してしまった為か、吹っ飛ばしてしまったかもしれないが。
だが、他のことを考えるのは後だ。まだ機竜はもう1騎残っている。
アイン(今は戦闘中だ。一体撃墜したがまだ敵は多くいる。)
本隊と別れてこのセドラント王国の迎撃に来たのだろう機竜は、2騎。1騎の機竜があっという間に落とされたのを間近で見た残る機竜は、わずかに困惑するように滞空していたが、すぐに大きく翼を広げて上空へと飛び出す。
ブルーウォーターは、その下をすり抜けるように飛び……機竜を遥かに超えるスピード、限界まで急加速し、一気に機竜の上空へと飛び出す。
アイン「………ぐうっ!」
そして急反転。上下逆さまになる視界。急激な機動によって襲いくる重力。
吹っ飛びかける意識を無理やり繋ぎ止め、急反転によって、アインのブルーウォーターは前方に機竜を捉えた。
アイン「目標…補足……。固定。当たれぇっ!」
アインは自身の目を頼りに操縦桿左隣のレバーにある、機関砲の引き金を左手で、引く。
すると両翼端から勢いよく機関砲が撃ち出され、機体が震える。
相打ちを防ぐためにブルーウォーターは素早く左に旋回。機竜の射線軸から離れる。
発射された機関砲の砲弾は、音速の速さで真っすぐ機竜へと直進。距離、スピード共に、機竜でもこの攻撃を回避することは不可能だろう。
しかし、次の瞬間。機関砲の先端が回避しようとしていた機竜の胴体ど真ん中に直撃しそのまま貫通する。爆炎と共に機竜の四肢はバラバラに砕け散った。
爆発の上空を、緩やかに弧を描きながらブルーウォーターが飛び去っていく。
アイン「……残りは?」
撃墜したのは2騎。あと13の機竜が、飛んでいるはずだ。
キャノピーの周囲を確認。北西45キロに複数の飛行物体あり、恐らく、機竜の別動隊だろう。
アイン(かなりの距離と角度がある為か機銃、機関砲での攻撃は届かない。……此処は雲に隠れ抜けてからの奇襲を仕掛け、近距離で機銃を撃つ。紳士としては卑怯は卑劣な行為、だが、此れは戦争だ。死んでも悪く思うなよ。)
アイン「行くぜっ!!」
アインは操縦桿を左に引く、ブルーウォーターは左旋回し大雲の中に入り込む、ブルーウォーターは雲の中にて右に大きく旋回し直ぐ、雲の中を脱出、脱出した先は機竜の別働隊の目前。
再度機関砲の引き金を左の指で引く。
両翼より機関砲の砲弾が数発放たれた。そのまま、白い軌跡を描きながらの高度、およそ約1000メートル、下に位置する機竜隊に襲いかかる。
砲弾は着弾し機竜の胴体を貫く、瞬間、凄まじい爆発がくで迸った。
*
最初の犠牲者は、竜陣形の『尾』の部分を飛ぶ爆撃機竜だった。
決定的な破壊が起こる数分前。背後から耳を劈くように響く凄まじい轟音。そして空を揺らすような衝撃に、制空機竜に乗る誰もが後ろを向いていた。
機竜兵たちの視界の中で、胴体を炎上させながら墜落していく1騎の爆撃機竜。
伏兵か!?
そして、徐々に聞こえてくる聞きなれない轟音。
機竜兵『た、隊長!あれは………』
グアノール「狼狽えるな。爆撃機竜隊はこのまま前身!制空隊は後方への警戒を厳とせよ」
今にでも耳を引き裂かれそうなほどの爆音だった。しかし、その程度で引き下がるほど、北帝国の機竜兵はヤワではない。
ゴオオオオオォォォォォオオオオオオオ……………!
シュウウゥゥゥッ!
その時、ただでさえ聞きなれない轟音の中に、グアノールはさらに何かもう一つの異音が追加されたことに気付いた。そしてそれは、徐々に近づいてくる。
それを目に捉えた時、それは、細長い筒のように見えた。後ろから火を噴いて、凄まじい速さでこちらへと………
命令を下す間もなかった。次の瞬間、ソレが一番後ろを飛ぶ爆撃機竜へと直撃。
爆撃機竜の巨体は。……内部に搭載された爆雷に引火したのか、想像を絶する大爆発と共に真っ二つに引き裂かれる。
グアノール「な、何だとっ!?」
その前方近くを飛んでいたもう1騎の爆撃機竜に、もろに破片が直撃。片翼をもぎ取られ制御を失ったその1騎は、きりもみしながら、……その背に乗る機竜兵を振り落として、森へと落ちていった。
爆撃機竜3騎喪失。原因不明の突然の事態に、グアノールは呆然とする。
しかし、惨劇はそれにとどまらなかった。
メティゼス『た、隊長!爆撃機竜が……ぎゃ!』
機竜兵『メ、メティゼス兵長ッ!………あ、あれはぐお!?』
制空機竜が2騎、立て続けに爆発の炎に包まれた。1騎はバラバラに、もう1騎は辛うじて原型を保ったものの消し炭になって、地上へと落ちていく。
グアノール「か、各騎散開しろ!このままでは敵の餌食に………!」
その間にもう1騎、片翼を爆発でもぎ取られて墜落していった。残る制空機竜はあと5騎。
各国に貢物を強要する北帝国の恐怖の対象たるあの機竜が、今や『狩る者』から『狩られる者』へと立場を転落させたのは、火を見るより明らかだった。
操縦席のグアノールは、機竜の手綱型魔力操作機を強く握り直す。
グアノール「か、各騎!後方の敵を探し、討て!………このままでは全滅だ」
機竜兵A『りょ、了解!』
機竜兵B『私は上を………ぐぎゃえ!?』
上昇しようとした機竜が、火だるまになって落ちていった。
この数分間で次々に撃ち落されていく機竜……ミセルアの時でさえこれ程の苦戦等、一度も経験したことが無かった。
そして、
ヴァアアアアアアアア!!
機竜兵A『た、助け……ぐぎ!』
機竜兵C『う、うわああぁーっ!?』
更に聞きなれぬ音が響いたかと思うと、また2騎の機竜が地表へと落下していく。翼、胴体に無数の小さな穴を空けて。
グアノール(て、敵は一体…。ど、どんな魔法を使ってるんだ………?)
残りの制空機竜は、2騎。
耳を抑えたくなるような凄まじい轟音は一秒たりとも鳴り止まずに続く。頭が、おかしくなりそうだった。
レントラー『は、発見!敵は上空、雲の上です!』
グアノール「よくやった!俺と合流しろ! 2騎の連携で仕留めるッ!」
レントラー『はい!』
降下してくる1騎の制空機竜。機竜兵のレントラー一等機竜兵のものだ。帝都守備隊から赴任してきた新参者だったが、機竜を操る腕は良く、グアノールが目にかけていた兵士の一人だった。
レントラーの機竜と合流し、2騎の機竜は雲の上、遥か上空を目指す。
雲の中を突っ切っているうちは、敵から隠れることができるだろう。敵が雲の上を飛んでいるのなら、時折雲から顔を出しながら様子を窺って………
ズガガガガガガガガッッッ!!
レントラー『た、隊ちょ……ぎゃ!』
という腹の底から響くような至近の爆発音。
ハビダーンの機竜は、左半分が小さな穴だらけになり破壊され、残る部分も炎上しながら地上へと落ちて行った………。
グアノール「レントラー!!」
雲など、最早、敵にとっては大した障害ではなかったのだ。
グアノール「くぅっ!」
残る制空機竜は、グアノールの1騎。
グアノールの機竜は、勢いよく雲から飛び出した。そのまま大きく翼を広げ、やや速度を落としながら、敵の姿を探し求める。
グアノール「何処だ!何処にいるッ!?」
大勢の部下を失い、激昂した目で上下左右を素早く見渡す。
だが、敵の姿はどこにもない。
ゴオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオ!!
という耳障りな音が何時までも響いているだけだ。だが、先程よりも音が大きい。この近くにいることは、間違いない。
グアノールは。
グアノール「音の方角、敵は、上か!!」
グアノールは目線を上に向けると、上空から『青い鳥』が急降下飛行する、鳥はグアノールの制空機竜に向けて両翼の機銃が放たれる。
グアノール「うおおおおおっ!!」
グアノールは操作機を思いっきり左に引かせ、制空機竜は降り掛かる機銃の雨から着弾する前に左へと素早く回避する。
急降下するブルーウォーター、それに搭乗するアインはグアノールの制空機竜の回避行動を見て察した。
アイン「攻撃を避けた!?」
ブルーウォーターは右へと大きく旋回しながら制空機竜の周囲を飛び回る。
グアノールは周囲を回り飛ぶブルーウォーターを見て驚きを隠さずにいた。
グアノール(何だ?俺の周りを飛び回る物体は!?『鳥』の様だが、まさか……。まさか、あれが、我等機竜隊を全滅寸前まで追い込ませるとは、セドラントが機密に造られた機竜に対抗する『新型兵器』か!?おのれぇ。)
グアノール「このガファサ・グアノール!!王国軍の新型兵器相手に落ちてたまるかぁ!!」
グアノールの制空機竜は大きく口を開き、飛び回るブルーウォーター目掛け、身を回しながら火弾を連続に放ちだす、ブルーウォーターは機竜の周りを旋回しながら機竜の放つ火弾を避け続ける。
しかし、搭乗者であるアインは焦り始めながら、グアノールの制空機竜の火弾を次々と避け続ける。
アイン「ぐううっ!次から次へと火の弾撃ち続きやがって!!」
グアノール「どうした!?王国軍の新型兵器!!この俺を相手にその程度か!?」
アイン「!」
アインは操縦桿を上に上げる、ブルーウォーターは制空機竜の火弾の回避と同時に上へと旋回、そのまま上昇する、高度、1000。2000へと更に高度を増しだす。
グアノール「逃さん、全速飛行!!」
グアノールも負けず操作機を引っ張り、上へと上昇、全速飛行でブルーウォーターを追い掛ける。
だが、飛行速度の差はブルーウォーターが有利、制空機竜の全速飛行でもブルーウォーターの差は広がってしまう。
グアノール「馬鹿な、機竜の全速力でも追いつけないだと!?こんな筈じゃあ…!!」
気が付けば、ブルーウォーターは何処かに消えてしまった。
そのまま大きく翼を広げ、やや速度を落としながら、敵の姿を探し求める。
グアノール「何処だ!何処にいるッ!?」
大勢の部下を失い、激昂した目でグアノールは上下左右を素早く見渡す、周囲の空は『雲』で囲っていた。グアノールは気付かなった。自分自身が敵の『罠』に掛かったことを。
それでも、敵の姿は何処にもない。
ゴオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオ!!
という耳障りな音が何時までも響いているだけだ。だが、先ほどよりも音が大きい。この近くにいることは、間違いない。
ヴァアアアアアアアアアアア!!
その聞きなれぬ音が、グアノールの運命を決定づけたことを理解するのに、さして時間はかからなかった。グアノールは真上を見上げた。
真上の雲の中からブルーウォーターが飛び出て来る、気付いた瞬間、グアノールの運命を決定づけたことを理解するのに、さして時間はかからなかった。
アイン「落ちろぉぉ!!」
ブルーウォーターの両翼から機銃の雨が放たれ
、グアノールの機竜の胴体と翼を撃ち抜いて破壊し、搭乗席内のグアノールは急ぎ操作機の右隣にある脱出装置のレバーを引こうとした瞬間………右腕が吹き飛んだ。機竜の核が破壊されたことにより機竜全ての機能が破壊されたのだ。当然、操作機も破壊される。
グアノール「ぐ……………ああああああぁぁぁぁぁ!」
迸る血。しかし、それに構う間もなく、翼と、動力部のある胴体を蜂の巣にされた機竜が浮力を失って落下する。
機竜の翼は根元から完全に失われ、もはや墜落するより他の術は無い。
意識を完全に失う寸前。グアノールは、頭上を飛び去る巨大な『青い鳥』を見た。
グアノール「カクタス……メティゼス……レントラー……。皆、す、すまな…い……。」
自分の部下の名前を呼び、自身の命の灯火を散らすグアノール、制空機竜は地に墜落した瞬間、爆発四散をした。
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