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アレクシアとはパーティーの後に数度か顔を合わせる機会があったが、初めて会った日ほど性急に距離を詰める様子は見られず、彼女もまた様子を窺っているようであった。
ウルが言うには陛下から正式な婚約者とは認められていないことが噂話となって社交界には回っているらしい。本当に、オレの耳には全然入ってこないのにどこからそういう話を仕入れてくるのか。
昨日までアレクシアはその父である伯爵と共に城に滞在していたようだが、彼女とオレは顔も合わせてはいなかった。
伯爵とは一言二言会話をしたくらい。向こうも婚約の話ではなく領内の軍備についての話しかしなかったため、彼がアレクシアの父親であることはあとになって気が付いたくらいだ。
このまま何事もなく、婚約の話もなかったことになっていけばいいのだけれど。
それが問題の先送りでしかないことに気付きながらも、そう願わずにはいられなかった。
「……はぁ。考えないといけないことは他にもあるってのに」
自分のことだけを考えていれば良い立場ではない。そうしたいのは山々だが、国内でなにか問題が起きれば対応に追われることになる。
幸い、今は国内の情勢は安定しているが、隣国との戦がついこの間あったように国境の警戒は依然として変わりはない。少しでも隙を見せてしまえば攻め込んでくるだろう国はいくつかあった。
ある地方からは凶作の申し出が。またある地方からは領地を治める貴族の不正についての告発が。
それらにどう対処していくか、対策を纏め案を提出するようにと陛下からは命じられている。
血が繋がってるとはいえ、赤の他人として生きてきた同士。今さら、父親として家族になれるとは思えない。
それでも、何の後ろ盾もないオレがここで生きていくためには陛下からの評価は必要で、与えられた命には成果を見せていかねばならない。
「まず避けたいのは国民からの反発が強まること……だからといって何でも要望が通るを思わせたくもないってとこか……」
それくらいであれば、言われなくてもわかるようにはなってきてしまった。民が困っているんだから助けてやればいいとオレは思うけど、そう簡単な話でもないらしい。
考えれば考えるほど、頭が痛くなっていく。
「朝からもう三十回目のため息ですよ」
背中に掛けられた声で振り返れば、寝台の上に寝そべったままのウルが責めるような眼差しをオレに向けていた。
服を着ないままシーツにくるまり、軽々と寝台を降りたウルは後ろからオレに抱き付いた。
「今日はずーっと暗い顔ばっかり。少し散歩でも行きませんか?」
「散歩っていっても、城の中歩いてたら息が詰まるばっかだろ」
溜め息を吐いたオレに、ウルはにっこりと笑ってみせる。
「それなら、こっそりお城を抜け出しちゃえばいいんですよ」
そんなこと出来るわけないだろ。目を丸くしているオレの手を取り、ウルはしっかりと頷いてみせた。
ウルが言うには陛下から正式な婚約者とは認められていないことが噂話となって社交界には回っているらしい。本当に、オレの耳には全然入ってこないのにどこからそういう話を仕入れてくるのか。
昨日までアレクシアはその父である伯爵と共に城に滞在していたようだが、彼女とオレは顔も合わせてはいなかった。
伯爵とは一言二言会話をしたくらい。向こうも婚約の話ではなく領内の軍備についての話しかしなかったため、彼がアレクシアの父親であることはあとになって気が付いたくらいだ。
このまま何事もなく、婚約の話もなかったことになっていけばいいのだけれど。
それが問題の先送りでしかないことに気付きながらも、そう願わずにはいられなかった。
「……はぁ。考えないといけないことは他にもあるってのに」
自分のことだけを考えていれば良い立場ではない。そうしたいのは山々だが、国内でなにか問題が起きれば対応に追われることになる。
幸い、今は国内の情勢は安定しているが、隣国との戦がついこの間あったように国境の警戒は依然として変わりはない。少しでも隙を見せてしまえば攻め込んでくるだろう国はいくつかあった。
ある地方からは凶作の申し出が。またある地方からは領地を治める貴族の不正についての告発が。
それらにどう対処していくか、対策を纏め案を提出するようにと陛下からは命じられている。
血が繋がってるとはいえ、赤の他人として生きてきた同士。今さら、父親として家族になれるとは思えない。
それでも、何の後ろ盾もないオレがここで生きていくためには陛下からの評価は必要で、与えられた命には成果を見せていかねばならない。
「まず避けたいのは国民からの反発が強まること……だからといって何でも要望が通るを思わせたくもないってとこか……」
それくらいであれば、言われなくてもわかるようにはなってきてしまった。民が困っているんだから助けてやればいいとオレは思うけど、そう簡単な話でもないらしい。
考えれば考えるほど、頭が痛くなっていく。
「朝からもう三十回目のため息ですよ」
背中に掛けられた声で振り返れば、寝台の上に寝そべったままのウルが責めるような眼差しをオレに向けていた。
服を着ないままシーツにくるまり、軽々と寝台を降りたウルは後ろからオレに抱き付いた。
「今日はずーっと暗い顔ばっかり。少し散歩でも行きませんか?」
「散歩っていっても、城の中歩いてたら息が詰まるばっかだろ」
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