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【1】
2.オレにも好みってものがある
しおりを挟むだって、オレは高瀬のことを抱きたいなんて思えない。
「高瀬となんて絶対シない」
「えー! 恭ちゃん先輩だって俺のこと好きじゃないですか!」
「好きだけどそういう好きじゃねぇ! そもそも、お前みたいなのはオレの好みじゃないんだよ!」
不服そうに眉をしかめてオレの腕を掴む高瀬。大体、高瀬なら相手に困ることなんてないだろうから、ここでオレに拘る理由もないだろ。
オレを掴む高瀬の手を剥がして、二人分のグラスを纏めてママへ返す。
「迷惑になっても悪いしコイツ連れて帰るよ」
「あら、早速お持ち帰り?」
「違うから!」
ママだってオレの嗜好はわかっているはずなのにふざけて笑うから、オレは苛立ちを隠さぬまま二人分の支払いをカウンターの上に叩き付け、高瀬の腕を掴んで立ち上がる。まだ飲みたいのにと溢す高瀬を無視して、そのまま強引に引っ張り上げた。
「ハルちゃんもまたいらっしゃいね」
「はーい。おやすみなさい」
呑気に手を振る高瀬を引き摺りながら、重たいドアを開いて店の外へと一歩踏み出せば、酒と疲れからか目の前にあった段差に気付かず一歩足を踏み外しそうになる。
「わっ、大丈夫ですか?」
「……悪い」
「結構飲みました? 階段あるし気を付けてくださいね」
すかさずオレの腰に腕を回した高瀬がそのままオレに肩を貸す形で体を支え直してきた。
流石にお礼を言うしかないオレの不満そうな顔を見ても、高瀬はニコッと笑って階段の方へと歩き出すだけだった。オレよりも少しだけ背の低い高瀬は、細身だけど若さ故か苦もなくオレを支えながら軽い足取りで階段を降りていく。
「……ゲイだってこと、恭ちゃん先輩が秘密にしてるんだったら、俺、ちゃんと守ります」
足元の階段ばかりを見ていたオレの耳に届いた高瀬の声。顔を上げたオレを見た高瀬は、オレが相当酷い顔をしていたのか少し驚いた様子で目を丸くすると、すぐに力の抜けた笑みを浮かべた。
「だから今度、俺とセックスしましょうよ」
毒気のない笑みに面食らいながらも、オレは高瀬に少し体重を預けると「やだよ」と小さく溢した。
誰かの手を借りないと歩けないほどに飲んだつもりはないけれど、自分に与えられた他人の体温が心地よくてすがりたくなる。オレの腰へと添えられた高瀬の手は厚い手のひらと細くて長い指で出来ていて、柔らかい感触の中に堅いリングが混ざっているから時折オレの腰を擽る感触がむず痒かった。
もしもこの手で触れられたら、奥の深いとこまで簡単に届いてしまうんだろうな。
高瀬の手へと向けた視線を外して、オレは小さく溜め息を吐いた。
「……オレはお前のことなんて抱かねーよ」
だって、オレは抱かれたい側だから。
隣で不満そうにぼやく高瀬の言葉を右から左へと聞き流しながら、酔った振りをして頭を高瀬の肩へと預けた。
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