お前はオレの好みじゃない!

河合青

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番外編 電話しながら……

①★

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 職場の飲み会で三次会まで付き合わされ、タクシーで部屋に帰った頃にはもう日付けを跨いでしまっていた。
 ふらつく足元でベッドに飛び込み、身に付けていた衣服を全て緩めていく。飲み過ぎてしまった体が、熱い。
 金曜の夜。いつもなら高瀬と過ごしているこの時間。時計に目をやり、ぼんやりとした視界の中でゆっくりと息を吐き出した。
「ん……?」
 ポケットの中でスマホが着信を知らせていた。
 こんな時間に誰だろう。のんびりとスマホをポケットから出してもコールは止むことなく、画面へと目を向ければそこには高瀬の名前が表示されていた。
「もしもし」
『あ、恭ちゃん? 今家ですか?』
 耳元で聞こえる高瀬の声は電波のせいか少し掠れていた。
 それがなんだか、行為の最中の余裕の無さを思い出させ、背筋がぞくぞくと震えてしまった。
『メッセージ既読付かなかったから心配になっちゃって……でも帰れたなら良かったです』
「ん……」
『あはは、随分酔ってるんですね。飲み会楽しかったですか?』
「別に、仕事の延長だしな……つまらなくは、ないけど……」
 とろとろと口から落ちていく言葉が、上手く高瀬に伝わっているかはわからない。
 頭の中もふわふわとしているから、耳元で聞こえる高瀬の相槌の心地よさに寝落ちてしまいそうだ。
「高瀬と飲むほうが、楽しいな……」
 今日だって、ほんとは高瀬に会いたかったのに。
 高瀬の呼吸の音まで聞こえてくる。セックスをしてるときの、耳元で聞こえる余裕のない息遣いと同じ音。
「高瀬……」
 触りたい。触ってほしい。
 先週会った時は、高瀬が土曜日早いからとシていない。
 溜まっている、かも。
「は、ぁ……」
 ヘソの辺りまでボタンを外したシャツの中に手を差し込むのは簡単だった。
 空いていた手で、柔らかな胸の先端に触れる。高瀬の指を思い出して、指の腹でぐにぐにと押し潰した。
「んっ……はぁ……」
『恭ちゃん?』
「ぁっ……たか、せ……」
『もしかして今、一人でシてます?』
「し、てる……んん……」
 少しずつ固くなっていく乳首を、ギュッと摘んで指先で擦る。高瀬はもっと、優しく触ってくれた。
『恭ちゃんのすけべ。俺までその気になっちゃうじゃないですか』
「ごめ……ん、ぁ……」
『謝らなくていいです。……今、どこ触ってるんですか?』
「ち、くび……ぐりぐりって……」
『最近乳首も気持ちよさそうですもんね。指でぎゅーってして……俺がそこにいたら舐めてあげるのに』
 高瀬の舌の感触を思い出す。ざらついた舌が温かい唾液でぬるぬると滑りながら敏感な乳首を舐め回す。
 不思議なことに、高瀬は指よりも舌のほうが器用にオレの乳首の形をなぞっていくんだ。
「舐めてほしいっ……あぁっ……」
 こりこりと固くなった乳首を自分の指で転がせば、もっと欲しいと口からは欲望が溢れ出た。
「高瀬っ、触って……ん、あ、もっと……」
『恭ちゃん、かわいい。もっと声、聞かせて下さい』
 恥ずかしい。男の喘ぎ声なんて聞いたって、高瀬が萎えてしまうかもしれない。
 いつもはそんなふうに思っているのに、ふわふわとした思考と電話越しの高瀬の声がオレの判断力を鈍らせていく。
「ぅあ……たか、せ……あっ、あぁ……乳首、気持ちいぃっ……!」
『こんなの聞かされたら俺も勃ってきちゃいましたよ』
「勃つ……?」
 高瀬も興奮してるんだろうか。オレが感じてる声だけで。
 そう思うと心臓がドキドキして、オレは胸を弄っていた手を下へ下へと移動させる。
 柔らかな性器に触れてみる。ぐにぐにと揉んでみたけど、触れられてるもどかしさしさにその先を求めて腰が揺れた。
『下触ってます?』
「ん、触ってる……」
『勃ちますか? 恭ちゃん、酔ってる時って勃ちにくいですよね』
「たたない……」
 高瀬の手で触られるのとは全然違う。自分の手で触ってみても、物足りないばかりだ。
「んん……たかせぇ……ぅあ、やだ……」
『後ろ、自分で触ってみて下さい。その方が気持ちよくなれますよ』
「高瀬のが、いい……」
 物足りなさから情けない声が零れ落ちる。
 セックスなんて、そんなに好きじゃなかったのに。
 気持ちいいことなんて、大して知らないはずだったのに。
 いつのまにオレの体は高瀬を求めて止まらなくなってしまったんだろう。
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