全ステFの異世界無双、禁忌スキル【分身】でこの世界を頂きます!

アセチルサリチルさん

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第6話 ファンタジーといえば…そう!ドラゴンでしょ!(歓喜)

 翌朝。
 俺たちは教会の建設を続けていた。

 盗賊たち——もとい、ダリオの部下たちが木を切り、使徒たちが運び、リーシャが指示を出す。
 
俺は分身を出して、湯船の周りを綺麗に整備する。もちろん温泉のさらなる発展のためだ。

「いい感じだな……」
 温泉教会としての風格が出てきた。
 これで柵をつけて、洗い場や脱衣所を作れば——

 ふっと、視界が暗くなった。

「……ん?」
 曇ったか?さっきまで晴れてたのに。
 空を見上げる。

 太陽が——何かに遮られていた。
 巨大な影が、ゆっくりと空を横切っていく。

「なん……だ……?」
 影が通り過ぎ、太陽の光が戻る。

 そして——ようやく、その正体が見えた。

 翼。鱗。長い尾。
 そして、山のような巨体。

 前にも見た気がする。遠くの空を何か飛んでたような——あの時はよく見えなかったが…

「ド……ドラゴンだァァァァァァ!!」
 ダリオの絶叫が響いた。

 ——やっぱりそうだったか!

 俺の心に、不思議と恐怖はなかった。むしろ、高揚すらしていた。
 ドラゴン。ラノベやアニメで何百回も見てきた、ファンタジーの象徴。

 ついにこの時が来た。

「——フッ。ようやくお出ましか」
 俺は不敵に笑ってみせる。

「こんな時に何言ってんすかお頭ァ!!」
「に、逃げろォォォ!!」
「もうグラウエルこの地は終わりだぁぁあ!」

 盗賊たちが一斉に走り出す。どこに逃げていいか分からないのか、あっちへ行ったりこっちへ来たり、完全にパニック状態だ。

「落ち着きなさい!!」
 オルファが叫んだ。だが、その顔は——珍しく青ざめていた。

「ドラゴンなんかが、なんでこの辺りに……!どうりで……この辺り、思ったより魔物が少なかったわけだわ……」
 オルファが唇を噛む。

「どういうことっすか!?」
 ダリオが叫ぶ。腰が抜けたのか、地面に座り込んでいた。

「温泉を見つけた時の調査でも、少し気にはなっていたんだけど……ようやく合点がいったわ!……ここはドラゴンの縄張りだったのよ……!他の魔物は怖がって近づかない……!」

 使徒たちも動揺している。

「あれは…本当に危険ですね~…ユーヤ様!早く森の中に……」
 
 どうしたんだこいつら、逃げることしか考えていないぞ…?
 あのリーシャでさえ、いつものテンションじゃない。

「待て待て待て待てェい!!!」
 俺は叫んだ。

 全員の視線が集まる。

グラウエルここから逃げる…?!バカ言うな!!」
「お、お頭……?」

「ドラゴンだぞ!?こんな異世界の定番イベント、見逃せるわけないだろ!!」
 俺は空を指差した。悠然と飛ぶドラゴンの姿。
 その威容に、俺の心は燃え上がっていた。

「あいつを——倒そう!!」

「「「「「ええええええええ!?」」」」」
 
 全員の声が重なった。

「しょ、正気っすか!?相手はドラゴンっすよ!?」
「Sランクが複数いても苦戦する相手なのよ!?」
「だからこそだ!」
 俺は拳を握りしめた。

「それに…せっかく作った俺たちの聖地温泉を壊されてたまるか!!」

 あの温泉だけは——絶対に守る。
 苦労して源泉見つけて、何度も熱湯にやられて、やっと完成させたんだ。
 あんな羽トカゲ野郎に台無しにされるわけには断じていかん。

 こっちにはゴーレムを倒した使徒たちもいるし、ヒャッハーな盗賊たちもいる————
「なんとかなるだろ!」
「ならないと思うんだけど……」
 オルファが呆れた声を出す。

「はぁぁぁああ!さすがユーヤ様ぁぁああ~!!」
 リーシャの目に、いつもの輝きが戻った。

「私たちの聖地教会を守るため、ドラゴンに挑まれるんですね……!!」
 リーシャが両手を広げた。

「なんて崇高な使命……!!これぞまさに、神のご意志!! 使徒たち、救世主様がこの聖地教会を守ると仰っています!!我らも続くしかありません!!!」

「「「「「おおおおお!!」」」」」
 使徒たちの目にも、火が灯った。

「「「「「我らが聖地を守護せよ!!」」」」」
 さっきまでのパニックはどこへやら。
 リーシャの煽動力、恐るべし。

「お、お頭……!」
 ダリオが立ち上がった。まだ足は震えているが、目には光が戻っていた。

「お頭がやるってんなら、俺らもやるっす!」
「お頭についていくっす!!」
「ドラゴン退治だァ!!ヒャッハァァァ!!」
「「「「「ヒャッハァァァ!!」」」」」
 ダリオたちが拳を振り上げた。

「やれやれ、世紀末ノリがすぎるぞ、おまえらっ」
 正直、このテンションは嫌いじゃない。


「……はぁ」
 オルファが深くため息をついた。

「止めても無駄みたいね」
「おっ、協力してくれるのか?さっすがオルファさん!」

「煽らないで!…今逃げたって、この場にいる限りいつか鉢合わせるだけよ。どうせ死ぬなら、戦って死んだ方がマシだわ」
「お、おま、縁起でもないこと言うなよ!」

「現実を見なさいって言ってるの。……でもまあ、付き合ってあげる」
 オルファが髪をかき上げた。

「バカに付き合うのは慣れてるから」
 
 ……ずいぶん辛辣な気がするが、ツンデレか? かわいいね。


「よし!そうと決まれば作戦会議だ!」



————————————————————


 その日の夜、俺は皆を温泉に集めた。

「一つ、重大な問題がある」
 俺は床に枝で絵を描いた。丸い胴体に翼。ドラゴンのつもりだ。

「あいつ……空飛んでんじゃん?」
「……そうね」

「オルファの矢って届くのか?」
「届きはするけど……鱗が硬くて大したダメージにならないと思うわ」

「じゃあどうする?」
「知らないわよ!あんたが「倒す!」とか言い出したんでしょ」
 
 くそぅ!ぐうの音もでない。
 

「…分身があるし。まぁ数で押せばいけるか」
 オルファが呆れた顔をした。

「飛んでる相手にどうやって数で押すのよ」
「うーん……飛ばす?俺を」
「は?」
「分身を空に投げるんだ。パチンコとかカタパルトみたいなので!」

 半分冗談で言ったんだが、オルファの目が光った。

「……それ、意外といけるかも」
「マジで?」

「アンタの分身、数を無理に増やすと小さくなるのよね?それなら射出するもの現実的だし、なにより事故っても消えるだけ。何度でもやり直せるじゃない!」

 ふむ…確かに。

「面白そうですね~!!禁忌スキル持ちのユーヤ様にしかできない神がかった作戦です~!!」
 リーシャが嬉しそうに手を叩いた。

「御身をパチンコで飛ばすなんて……!!これぞ救世主の御業!!」
「お頭ァ……あんたの下につけて、俺たちゃぁ幸せ者だ……」
 使徒やダリオたちが感極まっている。
 
 少し大袈裟すぎやしないかだろうか…


「次は、ダメージの与え方だな~」
 地面に描いたドラゴンをペチペチと叩く。

「ドラゴンの鱗は相当硬いんだろ?ダメージなんて与えられるのか…自慢じゃないが俺は全ステ「F」だぞ?」

「ピッケル…しかないわね」
 オルファが言った。

「採掘用の道具よ。岩を削るのに使うやつ。あれなら、上手くいけば鱗を剥がせるかもしれない」
「…地道な作業になりそうだな」

「でも、ピッケルなんてそんなにありませんよ~?使徒たち!」
「「「「は。2本なら積荷にあったかと」」」」」
 
 こいつら、普通に話せたのか…!

「充分だ!最近気づいたんだが、分身と同じで、持ってる物も一緒に増えるみたいだ。まあ分身が消えたら持ち物も消えるがな。着てる服もそうだろ?」
「あ、確かにそうでしたね~」

「てことで、鱗はこれでOK…と」

「はい!はい!私もアイデアあります!」
 リーシャが手を挙げた。

「どうぞ」

「粉塵爆発です~!」

「……粉塵爆発?」

 リーシャが嬉しそうに説明を始めた。
「小麦粉とか、細かい粉を空中にバラまいて火をつけると、ものすごぉおく爆発するんですよ~」

 あー…確か、某取り立て系TV局の実験番組で見たことあるな。粉塵が一定濃度になると引火爆発するってやつ…だったか?

「つまり、分身に小麦粉を持たせて——ドラゴンに突撃ぃ! で、周りでバラまいて火をつける! あとは…ドカーンです!」

「それ分身は巻き添え確定なんだが…」
「いいじゃないですか~。どうせ消えるんですし~」

 ……まぁそうなんだけど、なんていうかこう、手心ってもんが…


 オルファが腕を組んだ。
「確かに威力はありそうだけど、制御が難しいわね」

「まぁ…それも多分大丈夫だ。分身なら何人か失敗してもトライアンドエラーでなんとかなるだろう」

 …マジでめちゃくちゃ痛いってことだけは伝えときたい。


「残る問題は…ブレスだな~」
 俺は地面の絵に炎を描き足す。

「ドラゴンっていったら、火を吐くのが相場だろ? 地上に吐かれたらそれこそ終わりだ。せっかく作った俺たちの聖地温泉も消し飛んじまうぞ!」
 
「それは絶対に許せませんね~…」
「対策はあるの?」

「………」
 
 みんな黙り込む。


「ロープで口を縛ればいいと思いま~す!」
 リーシャが声高らかに言った。

 ……それはさすがに、安直すぎやしないだろうか。


「まぁ、それくらいしかないわね」
 オルファ?!お前まで賛成するのか!・

「お頭、お願いしますッ!」
 ダリオたちからも期待の眼差しが向けられる。
 そんな目をされちゃあ、断れないじゃないかっ!

「ふっ…仕方ないなァお前ら!! その代わり…とびきり頑丈な縄を用意してくれよ?」

「「「「「おおおおお!!」」」」」


「そういえば、小麦粉への点火はどうする?獣でも狩って油を用意するか?」

「私、火の魔法使えますよ~?」
「俺も少しなら出せますぜ!」
「私も火の属性矢が使えるわね」

 え、そうなの? 俺が火適性もFだから微塵も使えないだけ? なんだよ! みんな魔法使えたのかよ……いいなぁ、ファンタジーっぽくて。

「じゃあ点火はオルファの属性矢で問題なさそうだな?」
「ええ。任せて。ドラゴン相手にダメージは期待できないけど、小麦粉への点火は楽勝よ!」

 ん~! 頼りになるね! さすが狩人!


「それとリーシャ——」
「はい~」
「君には回復係を頼みたい。分身が消えるたびに、俺の頭にえげつない衝撃が返ってくるんだ。あれは本当に酷い…‥別にチキってるわけじゃないぞ?……作戦遂行のためだ!  回復魔法で俺を支えてくれ」

「任せてください~!! ユーヤ様専用の回復魔法で、ばっちり薬漬けにして差し上げますぅぅう!!」
 なんか目がぎらついてて怖いんだが……見なかったことにしよう。


「あらためて作戦をまとめるぞ」

 第1段階:分身をパチンコで射出。ドラゴンに取り付く。
 第2段階:ピッケルで鱗をガシガシ剥がす。
 第3段階:小麦粉を持った分身で特攻、オルファの属性矢で粉塵爆発。状況に応じてなるべく早めに口を縛ってブレス封じ。
 最終段階:撃墜したドラゴンを縛って袋叩き。

 「これでいいな?」 

 「「「「「おおおおおおおお!」」」」」」
 歓声が上がる。士気は充分高まったようだな。


「それじゃ、俺は練習してくるから!」 
「練習、ですか~?」

「ドラゴンの鱗を剥がすんだ。今のままじゃ到底無理だろ? だから、俺はこれより山に籠る。お前らが道具を用意してくれてる間、ひたすら岩盤を削りまくって少しでも「採掘」の経験を積んでおこうと思ってな!」 

「さすがユーヤ様ぁぁ!!私もお手伝いしますぅ!」
 リーシャがぴょこぴょことついて来た。

「今回は大丈夫だ。採掘の経験に苦痛はないはずだからな…でも、ありがとうリーシャ」
「えへへ~」

「では皆の衆!ドラゴン作戦の準備、頼んだぞ?!」

 歓声を背に、俺はピッケルを担いで山に向かった。
 

 
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