全ステFの異世界無双、禁忌スキル【分身】でこの世界を頂きます!

アセチルサリチルさん

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第11話 またヒャッハーな奴らが押し寄せてきた(困惑)

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 ドラゴンを撃墜してから、数日が経った。

 グラウエルの地は、日に日に賑やかになっている。


「お頭ァ!壁の補修、終わりやした!」

「屋根も完成っす!」

 ダリオたち元盗賊が、朝から晩まで働いている。

 ……なんだろう、この光景。
 つい先日までヒャッハーしてた連中が、今や立派な労働者だ。

 温泉の力、恐るべし。


「ユーヤ様ぁ~!教会の内装、見てくださぁい!」

 リーシャが手を振っている。

 漆黒の教会は、ほぼ完成していた。

 1階の温泉も俺の採掘スキルを活かして、ただ石を並べただけじゃない、"ちゃんとした"石造の浴槽に改修したし、大浴場の他に男女別々の風呂も追加した。

2階は主に居住スペースだ。調理場らしきものも出来てたな。

そして大浴場の中央には——

「祭壇、作っちゃいました~!」

「……俺の像があるんだけど」

「はい~!ユーヤ様をお祀りする祭壇です~!」

「本当にやめて?!」

「細かいことは気にしないでください~」

 リーシャがにこにこ笑っている。

 像は木彫りで、なかなかの出来だった。使徒の仕業だな。あいつら妙に器用だ。温泉の蒸気でカビてしまえばいいのに…

 ていうかこれ、完全に邪教の本殿じゃねえか。


「グルル~」

 足元で、ヴォル吉くんが擦り寄ってきた。

 子犬サイズに縮んだドラゴン。つぶらな瞳で俺を見上げている。

「お、どうした?腹減ったか?」

「グル!」

 尻尾をぶんぶん振っている。かわいい。

 あのドラゴン戦が嘘のようだ。
 鱗を剥がしまくって、粉塵爆発で焼きまくって——

 ……ごめんな、ヴォル吉くん。


「そういえば、オルファは?」

「女湯です~。朝風呂だって~」

 リーシャが少し不満そうな顔をした。

「私より先にユーヤ様の温泉を堪能するなんて……」

「俺の温泉じゃないからね?」



————————————————————



 湯上がりの、オルファが座っていた。

「おはよう、オルファ」

「……ん、おはよ」

 珍しく、ぼんやりした返事だ。

「どうした?」

「ギルドのこと、考えてたの」

「ギルド?」

「私、一応ギルドからの依頼でこの辺の調査に来てたでしょ?マルクスに報告は持たせてあるけど…もう何日も帰ってないし……」

「戻るのか?」

「……それがね」

 オルファが髪をかき上げた。

「正直、ここの方が面白いのよ」

「は?」

「だって考えてみなさいよ。禁忌持ち、邪教、元盗賊、ドラゴン、黒い教会、温泉……こんなカオスな場所、他にある?」

「褒めてるのか貶してるのか」

「褒めてるのよ」

 オルファが肩をすくめた。

「ギルドに戻っても、またゴブリン退治とか薬草採集とか……飽きてたのよね」

「……で?」

「だから、もうちょっとここにいる。ギルドには改めて適当に手紙でも送っておくわ」

「雑すぎない?」

「冒険者なんてそんなものよ。いつ命を落とすか分からない代わりに自由なの」

「まあ、いてくれると助かる」

「……そう」

 オルファが少し嬉しそうな——気のせいだな。うん。


————————————————————



 その日の午後。

 リーシャが、何やら怪しげな集会を開いていた。


「「「「「我らは影に生きる者……」」」」」

 ダリオたち元盗賊が、揃って跪いている。

「皆さん~!ヤルダヴォート教の教義について、改めてお伝えしますね~!」

「「「「「はい!!」」」」」

「まず第一!禁忌は悪ではありません!」

「「「「「禁忌は悪ではない!!」」」」」

「第二!六属性で人を裁くな!」

「「「「「六属性で人を裁くな!!」」」」」

「第三!ファルミス教は邪教です!」

「「「「「ファルミス教は邪教!!」」」」」


 ……布教活動が本格化してきたな。

 まあ、あいつらも元々ファルミス教には恨みがあるわけだし、仕方ないか。


「ユーヤ、あんたまた何かやってんの?」

 オルファが呆れた顔で俺を見ている。

「いや、俺は何もやってない。あいつらが勝手に盛り上がってるだけで——」

「止めなさいよ」

「止められると思うか?」

 俺たちは、狂信的な目をしたダリオたちを見た。

「……無理ね」

「だろ?」



————————————————————



 そんな、平和(?)な日常を過ごしていた時のことだ。


「お頭ァ!!大変っす!!」

 ダリオが血相を変えて走ってきた。

「どうした?」

「あっちから……人が来てやす!!」

「人?魔物じゃなくて?」

「人っす!しかも——」


 ——ヒャッハァァァァ!!


 森の向こうから、聞き覚えのある絶叫が聞こえてきた。


「……また盗賊か?」

「みたいっすね……」

 ダリオが遠い目をしている。


 しばらくすると、人影がはっきり見えてきた。

 薄汚れた装備。武器を振り回しながら走ってくる男女。

 先頭の大男が叫んだ。

「おらァ!!金目のもん全部出せやァ!!」

「食いもんでもいい!!」

「命だけは見逃してやるぜェ!!」


 ……再放送かな?


「ゲルツ領はこんなヤツらしかいないのか?!」

「みんな飢えてやすからね……」

 ダリオが深くため息をついた。


「しょうがないなァ…分身!」

 ボボボボボボボンッ!!

 ミニ分身が大量に出現。盗賊たちの顔に貼りつく。

「うわっ!!なんだこれ!!」

「前が見えねえ!!」

 視界を奪われた盗賊たちがパニックになる。

 その隙に——

「お前ら!あとは任せたっ!!」

「「「「「了解!!」」」」」

 ダリオたちが盗賊を担ぎ上げ、大浴場にぶち込みまくる。


 ドボン!ドボン!ドボン!


「うわああ!!」

「あっつ……いや、気持ちいい……?」

「な、なんだこれ……」

 温泉に落とされた盗賊たちが、困惑している。ダリオたちとの出会いを思い出しちゃうネ。


「体が……ほぐれる……」

「あったけえ……」

「生きててよかった……」


 完全無力化。温泉パワー、やっぱりすげえな。


「——って、あれ?」

 ダリオが盗賊の一人をじっと見ている。

「お前……もしかして、ガルドか?!」

「あ?……ダ、ダリオ?!お前、生きてたのか!!」

「お前こそ!!」

 二人が抱き合った。なんだこの絵面、むさ苦しい。

「知り合いなのか?」

「はい!元々同じ村の出身で……ゲルツ領で一緒に働いてたんすよ!」

「ほう」


 話を聞くと、どうやらこいつらもダリオたちと同じ経緯らしい。

 ゲルツ男爵の暴政に耐えかねて、盗賊になるしかなかった連中だ。


「グラウエルに逃げれば何とかなるって噂を聞いてよ……」

「それで俺らを襲おうとしたのか?」

「いや、だって金も食いもんもなくて……すまねえ……」

 ガルドが頭を下げた。


「……ダリオ、こいつらどうする?」

「お頭にお任せしやす!」

「いや、お前の知り合いだろ。お前が決めろよ」

「え、俺っすか?!」

「俺は別にいいぞ。受け入れても」

「お頭ァ……!!」

 ダリオが感動している。

「じゃあ……ガルド!お頭の元で働け!ここは働けば飯が食えるぞ!」

「おおおおお!」



 ——というわけで、また人が増えた。

 男女合わせて20人くらいか。

 人口、ほぼ倍だな……


「ユーヤ様ぁ~」

 リーシャがにこにこしながら近づいてきた。

「どうした?」

「新しい方たち、全員入信してくれましたよ~」

「えっ?いつの間に?」

「さっき~。『ここに住むなら入信してね~』って言ったら、みんな喜んで~」

「それ強制じゃん」

「強制じゃないですよ~?選択肢はあったんですから~」

「選択肢って……」

「入信するか、出ていくか、ですけど~」

「それを強制って言うんだよ!」

「えへへ~」


 ……まあいいか。どうせあいつらもファルミス教に恨みがあるだろうし丁度いい。

 ゲルツ男爵は熱心なファルミス信者らしいからな。

 六属性至上主義で、魔法適性が低い領民をカス扱いしてるって話だ。

 そんな奴に「神の名のもとに税を納めろ」とか言われたら、そりゃ盗賊にもなるわ。



————————————————————



 その夜。

 俺たちは緊急会議を開いていた。


「人が増えたのはいいけど、食料どうする?」

「狩りを増やすしかないっすね……」

「あと畑だな。そろそろ本格的に作らないと」

「畑って言っても、この辺の土、固いしほとんど死んでるっすよ……。固いだけなら、お頭のピッケルで余裕でしょうけど、これだと何植えても育たねえと思いやす」

「土が死んでる?」

「はい。土に栄養がねえっつうか……元々魔物の巣窟だった土地だからっすかね…?」

「そうかもな~。まあ当面は狩で凌ぐとしよう!ドラゴンの鱗でも売って足りない分は買えばいいさ!」

「そっすね!俺らも狩の腕、磨いときやす!」

 向上心があっていいね!ダリオくん。


「ユーヤ様~」

 リーシャが手を挙げた。

「なんだね?」

「住居の問題なんですけど~、教会の周囲に家を建てましょう~!城下町みたいでカッコよくないですか~?!」

「非常~によろしい!!だてに一番長い付き合いじゃないな!リーシャ!」

「えへへ~」

 そう笑うと、リーシャは嬉々として使徒たちに指示を出し始めた。


 なんだかんだで、人が増えるのは悪くない。

 労働力が増えれば、開拓も進む。

 温泉街も大きくなる。

 俺の異世界ライフ、思ってたのとは全然違うが、なかなか順調なんじゃないか?



「……にしても」

 オルファが呆れた顔で言った。

「あんた、また盗賊受け入れたわね」

「まあ、追い返すのも面倒だしなぁ」

「相変わらず甘いわね」

「甘いか?」

「甘いわ。でもまあ——」

 オルファが肩をすくめた。

「そういうところ、嫌いじゃないけど」

「…よせやい」






翌朝。

「ユーヤ様~」

「なに?」

「畑の件なんですけど~、試しに種を撒いてみたんですが…」

「やっぱりダメだった?」

「はい…ダリオたちの言う通り、土が死んでるみたいで~、何を植えても芽が出ないですね~」

「……マジかぁ」


 俺は地面を見た。

 確かに、灰色っぽい。生気がない。砕けた岩みたいだ。

「どうしたもんかね~…」

 俺は頭を掻いた。


 その時——


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 地面が、揺れた。


「な、なんだ!?」

「地震っすか!?」


 地面の一部が、盛り上がっている。

 何かが——下から、上がってくる。


「全員、下がれ!!」

 俺は叫んだ。


 そして——


 ドゴォォォン!!


 目の前の地面が弾け飛び、巨大な影が姿を現した。
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